紅蓮の騎士と神狼の銀閃   作:うしえもん

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解放の光

 

「んっ……」

 

 

 

出発を控えた深夜、眠っていたラビの目が不意に覚めた。

 

 

 

────あれ、なんだか暖かい……

 

 

 

夢現の意識がとろとろと自分の状況を教え始める。

 

 

 

────え、あれ?

 

 

 

ラビはヴァイスの膝の上に乗り、頭と腰を優しく抱き寄せられた状態で眠っていた。

 

 

 

(え?なんで……?)

 

 

 

意識が落ちる前の記憶を手繰り寄せると────ヴァイスに構って欲しくて勇気を振り絞った事を思い出した。

 

 

 

その時、ヴァイスはニコリと笑顔でラビを抱き上げ、膝の上に乗せ上げた。

 

 

 

────優しいヴィー様に甘えて……そのまま眠っちゃったんだ……ど、どうしよう……私……。

 

 

 

ラビがあわあわとしていると、突然ヴァイスの腕が動いた。そのままラビの腰をギュッと抱きしめ固定してしまう。

 

 

 

────わ……!

 

 

 

突然の甘い締めつけに胸が高鳴る。脈がトクトクと速くなり、覚醒した意識が再び痺れ始める。

 

 

 

とても心地よかった……ヴァイスの体温も、匂いも、大きな身体も────その全てが少女にとてつもない幸福感を与えていた。

 

 

 

────あぁ……このままヴィー様に抱かれたまま眠れたらどんなに幸せかしら……でも、だめよ私。ヴィー様が重くて疲れちゃう……

 

 

 

ラビは決死の覚悟で膝から降り────れなかった。

 

降りなきゃと思う思考に反して、頭はヴァイスの胸板にピタリと寄り添い、離れるどころか顔を擦り寄せてしまう。

 

 

 

 

「ホントに可愛い子だね、君は」

 

 

 

上から囁くような甘い声が聞こえた。

 

 

 

「わっ……あ、あの……これは、その、違くて……」

 

 

 

「違うんだ……じゃあ降ろそうか?」

 

 

 

「えっ、やっ、やだっ!……あっ……///」

 

 

 

「プッ……ほら、おいで」

 

 

 

ヴァイスはそれ以上なにも言わず、ラビの頭を撫でながら抱き寄せる。

 

 

 

「あ……ヴィー…様ぁ」

 

 

 

ラビも無言になり、やがて安らかな寝息を立て始める。

 

 

 

(………全く……)

 

 

 

二人だけの甘いムードを垂れ流す空間で内心嘆息をつき、一人素知らぬ振りで眠るグレンであった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

朝日が若干姿を見せ、街の喧騒が聞こえ始める頃、グレン達は帰還の準備を整えた。

 

 

 

「よし、行くぞ」

 

 

 

「あいよ、ほらラビちゃん、おいで」

 

 

 

「はい、ヴィー様!」

 

 

 

ヴァイスに差し出された手を嬉しそうに握るラビ。グレンはそれを見て少し思案顔になる。

 

 

 

「………」

 

 

 

「どうした?グレン。」

 

 

 

「いや……ラビ」

 

 

 

グレンはラビの名前を呼ぶ。

 

 

 

「はい、グレン様?」

 

 

 

ラビはキョトンとして返事をする。

 

 

 

「……幸せか?」

 

 

 

脈絡の読めない問いかけ。ラビは一瞬「へ?」と言った顔になるが、すぐにモジモジと顔を赤らめて答える。

 

 

 

「は、はい……二日前までの自分からはとても考えられないくらい……幸せです」

 

 

 

握ったヴァイスの手にキュッと力を入れ、目を潤ませるラビ。

 

 

 

「可愛い子だ────で、グレン、結局何が言いたいんだよ?」

 

 

 

 

「……道端で繋がれて売られている奴隷がそこら中にいたな」

 

 

 

 

グレンがヴァイスに言う。

 

 

 

「……なるほどね」

 

 

 

理解したヴァイス。

 

 

 

「せっかく俺とお前がいるんだ。まだ手は3つも余ってる」

 

 

 

珍しく不敵な笑みを浮かべるグレン。

 

 

 

「オッケー、で、どうする?」

 

 

 

歴戦の友との間での阿吽の呼吸。長々とした説明は無い。

 

 

 

「最初に目に入った者を三人だ。足は付かないよう、魔装を纏った状態で居住区を突っ切る。」

 

 

 

そこで言葉を区切ると、踵を返し、身体を階段に続く方向へと向け直す。

 

 

 

「地下道を引き返す。街に出る直前に召喚して、一気に突破する。ラビを地下道に残し、奴隷を助け出した後は一旦俺が場を掻き回す、その間にお前が地下道に三人を連れて入れ────しっかり守りきれ」

 

 

 

「お前こそ、この前みたいに倒れたりすんじゃねえぞ?にひ」

 

 

 

「一言多いのは相変わらずだな、行くぞ」

 

 

 

二人の守護者が動き出す。

 

 

 

 

 

「準備はいいか」

 

 

 

 

階段を出たところで、グレンが叢雲に手をかける。それに合わせてヴァイスも双剣を構える。

 

 

 

 

グレンとヴァイスが召喚の構えを取った瞬間、周囲の空気が凍りついた。ラビは固唾を呑んで見守る。

 

 

 

「────ニヴルヘイム」

 

 

 

グレンが叢雲を掲げた。

 

 

 

「来い、ギース!」

 

 

 

ヴァイスも双剣を十字に交差させる。

 

 

 

 

瞬間、薄暗い廃教会内が燦然と輝き、真昼のように辺りを染め上げた。

 

 

 

顕現せし二体の神の使徒が光となり、雄々しく、美しい螺旋を描きながら魔装騎士の全身を巡っていく。

 

 

 

少女が眩しさに一瞬眼を瞑り再び見開いた時、

 

そこにあったのは────

 

 

 

太陽の如く力強い威光を放つ白金の皇竜騎士と、鋭利かつ流麗な三日月のように佇む神狼騎士────二人の守護者の姿であった。

 

 

 

 

「す……すごい……!」

 

 

 

ラビの瞳が陶酔に染まる。今目の前に存在する圧倒的な神秘。

 

それに比べれば、人間族の圧力や恐怖など全く取るに足らないもののように少女は感じた。

 

 

 

「グレン、お前その姿は……」

 

 

 

自身の記憶と違う姿に思わず声を漏らすヴァイス。

 

 

 

「色々とあってな────お前こそ、まだ余裕はあるのか?」

 

 

 

「ああ────恐らく転移したことが関係してるんだろうが……まあその辺の話は追々だな」

 

 

 

双剣をガチリ、と握り直し、話を切り上げるヴァイス。

 

 

 

「そうだな────遅れるなよ、ヴァイス」

 

 

 

「任せとけ。ラビちゃん、いい子にしてろよ。すぐに戻ってくるからな」

 

 

 

「はい!お待ちしております!」

 

 

 

 

 

陽光と月光、ふたつの光が欲望にまみれた闇を切り裂き、流星となり駆ける。

 

 




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