「待たせたな」
黄金の輝きと共にグレンが合流、鎧を解除する。鎧の下から現れた顔は普段通りの無表情────それは決して不機嫌という訳では無く、ヴァイスへの信頼の現れであった。
「さあ急ぐぞ。日が登りきる前に街を離れる」
四人の獣人を守りながら魔装騎士が地下道を駆ける。彼らの先には解放への道が開かれていた。
「ここまで来れば安心だな。追手の気配も感じない」
グレンが街から離れた草原で口にした。夜明けの光が薄く辺りを照らす中、守護者に導かれ、四人の獣人は希望に満ちた未来へと歩を進める。
***
街を脱出してから一刻程、グレンは立ち止まり、獣人達に告げる。
「一旦休憩にする。お前たちは疲れも溜まっているだろう」
ヴァイスは既に適当な岩場を見つけ、簡易的な休息場を設営し始めていた。
「まあまあお疲れさん。グレン、お前も座れよ」
「……そうだな」
グレンが腰を下ろすと、ヴァイスが水筒を差し出す。二人の間に漂う穏やかな空気。しかしすぐ傍では……
「あの……本当にありがとうございます!」
犬耳の青年が深々と頭を下げる。
「このような老いぼれにまでお手を……」
老婆が涙ぐみながら感謝を述べる。
「ピィ!」
小鳥娘が嬉しそうにヴァイスの肩で羽ばたく。
そしてラビはというと――
「ヴィー様……」
兎耳を垂らしながら恐る恐るヴァイスに近づく。彼女は他の獣人達に────特に彼の肩に乗っている小鳥娘に気兼ねしているようだった。
「ん?どうしたんだいラビちゃん」
「あっ……いえ、その……!」
頬を真っ赤に染めて俯く少女。ヴァイスは優しく微笑み、小鳥娘を肩から降ろし、ラビを抱き寄せる。
「言いたいことは言葉に出さないと伝わんないぞ、子ネコちゃん────あ、子ウサギちゃんだな、ハハッ」
陽気なヴァイスの抱擁に、ラビの顔はますます赤くなる。
最早リンゴの様だ。
「ゎっ……ゎ…わか……りました……」
モジモジと俯いていた少女はゆっくりとヴァイスの顔を見上げ、覚悟を決めたような表情で口を開く。
「私……ヴィー様のこと……好き……です」
「ん~?な~にが好きなんだい?俺だってこの子達だって助けてくれたグレン様だって……みんな好きなんだろ?」
ヴァイスは意地悪くそう返す。
「ぁっ……違くて……ヴィー様のことが、大好き……なんです!私……ヴィー様を一目見た時から……」
ラビは半泣きで顔を真っ赤にしながら訴える。
────またか…………。
グレンは呆れたようにため息をつく。ヴァイスのこういう所に辟易しつつも、どこか安心感を覚えている自分に気付くグレン。
マリエルのことが頭をよぎり、自らの気持ちも整理できないまま物思いにふける。
「なんだって!?そんなに嬉しいこと言われちゃうと……」
レイは少し考える素振りを見せ
「とりあえずラビちゃんからの告白は受けるけどぉ~」
ニヤッと悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「本当に俺を選んで良いのかな!?この可愛いウサギちゃんめ!」
そしてそのままラビを抱きかかえ上げる。
「ひゃっ!……なっなにするんですか!ヴィー様!!」
「まぁまぁ落ち着けって☆」
ラビを降ろし、逃げ出したヴァイスを追いかけるラビ。二人はそのまま茂みの奥に消えて行った。
────全く、あいつは…………
グレンは溜め息を吐きながらも、念の為にと立ち上がり、後を追うように茂みに向かって歩き出す。
茂みの奥の方で小さな笑い声が聞こえる。少し離れた位置から様子を伺うと二人の姿が見える。どうやら追いかけっこをしているようだ。
あいつは何をしているんだ、と思いつつしばらく様子を見る。
暫く経つと、疲れたのか二人とも地面に寝転ぶ。そしてどちらともなく起き上がるとゆっくりとした動きで身体を寄せ合い、見つめ合うと再びキャッキャ、ケラケラと笑い声をあげ始めた。
────まだ村の近くまでも来てないんだがな……、まあ、たまにはこういうのもいいだろう。
グレンは踵を返し、元の場所へと戻って行った。