「マジかよ……」
驚きで口が閉じないバーグルだが、グレンは確信を持った口調で伝える。
「俺達が魔装を使っている時点で、この世界でもその概念が通用するのは明らかだ。闘気を身に付けたお前ならきっとやれる」
ヴァイスが籠をバーグルの元に持ってくる。
「指先で触れるだけでいい。そして力を貸してくれと念じろ。ロイがその波動を受け入れてくれれば契約は完了する」
バーグルは今日一番の緊張を持って、震える指先をロイに近づけ、グッと目を閉じる。
「ロイ……俺に、みんなを守れる力を貸してくれ……!」
バーグルの指先の前で、一瞬何かを感じ取ったロイがピクリと反応する。そしてその前足をパタパタと伸ばし────指先に捕まった。その瞬間
────キィ……ィン!ガシャ!
テント内に光が迸り、それはやがて纏まり、バーグルとロイの周りを巡りながらその体に溶けていく。
そして光が収まった後────静寂。
「ほう……」
「ヒュー!カッケェなおい!」
二人の声を聞き、バーグルがギュッと閉じていた瞼を開くと
────そこには艶のある漆黒の全身鎧に身を包んだ自分の姿があった。
元々装備していた金属のアーマーパッドがそのまま全身を覆うように分厚く、巨大なものになり、如何なる攻撃にも動じない揺るぎなさを感じさせる美しく輝く漆黒の全身鎧。
兜の額部分にはカブトムシの象徴のような逞しく巨大な角が天を突いている。
そしてその両腕の肘から先はそれぞれが巨大で肉厚の盾が付いた手甲になっており、腕を合わせることで、それは更に倍の大きさになる。
────まさに、バーグルが以前語ったこともある「命を賭けて同胞を守る」という信条に根ざした堂々たる魔装となり、顕現していた。
「これが……俺の魔装……!」
未だ信じられぬ様子で全身を見渡すバーグル。そこにヴァイスがロイを指さし声を掛ける。
「ほら、見ろよバーグル!」
バーグルが籠を覗き込むと、そこには在りし日のロイの姿────雄々しく突き上げた完全なる角をたくわえ、変わらずバーグルに向けて手を振っているロイの姿があった。
「ロイ……!お前……!」
「契約は何もこちらだけが力を借りるわけではない。ロイもまた、お前の魂を受け継ぎ、その強さを宿す」
鎧を解除したバーグル、その顔には大粒の涙が流れていた。
「良かったなあ、ロイ……!お前、やっぱりカッコイイやつだったな!」
小さなカブトムシを見つめ、おいおいと漢泣きを続ける巨漢。
「これでロイも自然で生きていける力を取り戻した訳だな…………まあ、本人はそのつもりも無さそうだが。」
「仲良くやれよ、お二人さん♪」
騎士達は二人の友情を見届け、テントを後にする。
ロイはバーグルの肩に飛んでいき、ヒシと抱きつく。
涙を流し続けるバーグルを宥めるように、顔へと向かい立ち上がると、パタパタと前足を振り、いつまでも友情を示し続けていた。
***
バーグルが魔装騎士の力を身に付けて数刻後。
訓練の礼を伝えに来たバーグルと共に、グレン達は広場にて取り留めのない雑談を交わしていた。
「いやー、身に纏ったらハッキリわかったわ!ありゃ確かに具現化魔法なんて目じゃねえわ」
「そりゃそうだ、こっちは魂削って召喚してんだし────そもそも体の鍛え方もくぐってきた修羅場の数も違うんだよ、負けるわけにいかねえさ!」
「だが、具現化魔法とやらも上から下まで幅があるのだろう?たまたま今はそれほどの使い手に会っていないだけなのかもしれん」
未だ興奮冷めやらぬバーグルと、それに合わせるヴァイス。そして普段通り冷静なグレン。三人の話も盛り上がっているところに、何やら思い詰めた様子のマリエルが通りかかった。
────マリエル?何かをブツブツ唱えているのか……?こちらには気づいていないようだが………
気になったグレンはマリエルが驚かないよう、控えめに名前を呼んでみる。
「……マリエル?」