一行はついに国境を越え、メイリーン領地へと入った。数刻ほど進んだところで、遠方から馬の嘶きが聞こえる。
「あれは我が国の……!」
シャルロットは歓喜の声をあげる。
「あれは……」
リリアーヌも喜び指差す。馬に跨る騎士団が見える。
「やった!」
リリアーヌが嬉しそうに飛び跳ねる。グレンは周囲を警戒しつつも安堵する。
「皆……!」
騎士団は三人の姿を認めると速度を上げてくる。
「シャルロット王女殿下!」
「殿下────なんとおいたわしいお姿に……!」
次々と騎士達が跪き忠誠を誓う。シャルロットは感激の涙を流しながら彼らを迎える。
「ありがとう……皆」
そこで騎士団長が、シャルロットを抱き上げているグレンに目を向ける。
彼もまた歴戦の猛者であり、傷だらけのシャルロットが負担を感じないように佇むグレンの立ち振る舞いを見て、これまでの経緯を一目で悟った。
「騎士団長を預かっております、セバスと申します。名も知らぬ騎士殿、此度の御助力────真に感謝致します。貴殿の高潔なる魂と強さに敬意を。」
隊長に倣(なら)い、周りの騎士達も一斉に武器を垂直に掲げ、騎士の礼を取る。
「────グレンだ。王女の傷は深い、騎馬では揺れるだろう。俺がこのまま抱いていく」
「はっ────引き続きの守護、お頼み申し上げます。」
グレンの周囲に展開するように騎馬が囲み、後続の憂いを絶つように帰還の陣が取られる。
無事母国の騎士団との合流を果たし、シャルロット一行はそのまま王都へ向かうこととなった。
***
騎士団と共に、グレンに抱き抱えられながら帰国したシャルロット。
この国ならではの種族入り乱れた国民により、生還への歓喜の涙と歓声に迎えられながら入城を果たした。専属医師に導かれ、彼女の寝室へとグレンは足を運ぶ。
「降ろすぞ」
「はい」
シャルロットのベッドの前に立ち、グレンはシャルロットを慎重にその上へと横たえた。
魔装騎士の持つ『気』を利用した治療により、シャルロットは目を疑う程の回復を見せていたが、それでも元が瀕死の重症────未だ身体を動かすことは叶わぬ状況であった。
「しかし、これほどまでに回復の兆しを見せるとは……」
シャルロットの身体を診る医師の顔にも驚愕の色が走る。
「基本的な治療は任せるが、俺も毎日気の治療には来る」
「はい、グレン様────心より感謝しております」
「────ああ」
グレンはぶっきらぼうに答え、踵を返したが────もうその心の内をシャルロットは知っている。
少女はにこやかに破顔していた。
寝室を出たグレンに、控えていたリリアーヌが話しかける。
「グレン様、国王陛下との謁見を願います。今からよろしいでしょうか」
「ああ。今後のためにも詳細を知る必要がある────今回の騒動の経緯も知りたい。リリアーヌ、お前も同席しろ」
「かしこまりました」
「それと、騎士団長のセバスと言ったな────彼もだ」
「はい、申し伝えます」
二人は連れ立って歩き出した。