紅蓮の騎士と神狼の銀閃   作:うしえもん

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世界の理

 

 

 

────手合わせから数刻後、グレンは村の中を歩き回り、誰かを探している様子だった。それを見た農作業中の老獣人がグレンに話しかける。

 

 

 

「グレン殿、誰かお探しで?」

 

 

 

グレンは足を止め、老獣人の正面に向き直り答える。

 

 

 

「ああ、先程手合わせした……バーグルと言ったか、彼はどこに?」

 

 

 

「バーグルなら、普段は男衆で門の見張りをしておりますよ」

 

 

 

「なるほど、確かに守りを任されてると言っていたな────御老輩、感謝する」

 

 

 

「いえいえ」

 

 

 

グレンは礼をとり、門の方向へ歩をすすめる。

 

 

 

「いたか、バーグル」

 

 

 

「あん?おお、グレンじゃねえか、どうしたんだよ」

 

 

 

男衆達と雑談を交わしながら見張りをしていたバーグルが振り向く。

 

 

 

「少し聞きたいことがある」

 

 

 

「なんだよ、また手合わせってか?もう勘弁してくれ、アンタの力はもう十分わかったからよ、ガハハッ」

 

 

 

自嘲気味に笑い飛ばすバーグル。

 

 

 

「そうではない、いや………関係ない話でもないが」

 

 

 

「なんだよ、まどろっこしい言い方だな」

 

 

 

不思議そうに目を丸くするバーグル。

 

 

 

「まず、さっきの試合だが────バーグル、お前は強かった」

 

 

 

「へへっ、そいつはどうも……アンタにゃ手も足も出なかったけどな」

 

 

 

「そういう事ではない────周りにいる者達はどれくらいの強さなんだ?」

 

 

 

「あ?まあそりゃ防衛担当だからよ、俺ほどじゃなくても全員ここじゃ腕っ節は強い奴らよ」

 

 

 

グレンは男達を見渡す。

 

 

 

バーグルは熊獣人だった。ここにいる者たちはバーグル以外にも熊獣人、虎獣人、角があるのはサイ獣人だろうか────恐らく、力の強い野生動物がベースとなる獣人は強くなる傾向があるのだろう。

 

 

 

「なるほど……疑問なんだが、バーグル、お前の強さは、俺の故郷では…少なくとも表で生きる者の中では上澄み中の上澄みと言えるものだ────それでも遅れを取るほどこの世界の人間族は強いというのか?それを知りたくてな」

 

 

 

グレンは淡々と尋ねる。

 

 

 

「あー……なるほどな、そういうことか………」

 

 

 

合点がいった様子でバーグルは考え込む。

 

 

 

「まあ座れや。ちっと長くなるが説明してやっからよ」

 

 

 

「ああ、頼む」

 

 

 

グレンは男衆に混じり、地面に敷かれた藁の上に座り込んだ。

 

 

 

「まず、最初に言っておくことだが、単純な肉体の力比べなら人間より俺たちの方が有利なヤツが多い」

 

 

 

バーグルは腕を組みながら言った。

 

 

 

「特に俺みたいな大型獣人なら尚更だ。だがな――」

 

 

 

そこで一度言葉を切り、遠い目をしながら頭をガリガリと掻きむしった。

 

 

 

「この世界じゃ“魔法”ってものが幅を利かせてる。それがある限り、どんなに力が強くても亜人は不利ってワケよ」

 

 

 

 

グレンは黙って続きを促した。男衆も頷きながら耳を傾けている。

 

 

 

「魔法ってのは、肉体を強化したり、火やら水やらぶっぱなしたりといくつか種類があるんだが────人間族しか使えねえのが“具現化魔法”ってやつだ。

 

 

 

────具現化……。

 

 

 

グレンの脳裏に魔装がチラと浮かぶ。

 

 

 

「剣やら盾やら鎧やら――必要なときに都合よく生み出せるんだ。しかもそいつらは筋力も魔法で強化してるからな。そうだな、例えば────」

 

 

 

顎に手をやり考え込むバーグル。

 

 

 

「生身の人間じゃ絶対腕が持ってかれちまうようなバカでかい斧でも平然と使いこなせる。人間族はテクニックもありやがるしな。つまり“技術×力×魔力”の掛け算ってワケだ」

 

 

 

「なるほど……」

 

 

 

「つっても、人間族なら誰でも使えるってワケでもねえ。それに具現化できる規模もピンキリだ。篭手1個のやつから上半身丸ごと、あとは武器の具現化だったりな。別に自分で具現化する部分を選べる訳でもないって話だぜ」

 

 

 

「その話を聞くだけでは、使い勝手のいい魔法とは言えないみたいだが?」

 

 

 

「まあ聞けよ。確かに人間族でも具現化を使えるやつはひと握り、オマケに何のどこを具現化できるかも分からねえって訳だが………その代わりか知らねえが────具現化した装備は強えんだ、とんでもなくな」

 

 

 

苦々しい顔をするバーグル。

 

 

 

「例えば、腕一本だけの具現化だったとしても、肉体強化の魔法と相まって、大木をパンチ一発でへし折ったりしやがるし、脚なら速さ自慢の獣人でも追いつけねえ。上半身全部とかやられてみろ、下半身だけ気をつけてりゃ全く攻撃は通らねえ上に、パワーでゴリゴリこっちがぶっ飛ばされる塊になっちまうんだぜ」

 

 

 

「ほう……それは確かに厄介だな」

 

 

 

「厄介なんてもんじゃねえよ! 亜人にも魔法を使える奴もいるっちゃいるが、ほとんどの場合火力不足でな。“指先に種火が出る”だとか“コップ一杯の水が出る”とかその程度で終わっちまう。魔法より殴った方が遥かにマシってもんだ」

 

 

 

「つまり魔力量の桁が違うということか」

 

 

 

グレンの洞察にバーグルは「そういうこった」と頷く。

 

 

 

「そうなると結局体格と腕っぷしだけじゃ追いつけねえ。この村も人間どもに見つかったらどうなることか……」

 

周りの連中も渋い顔をしながら頷いている。

 

「まっ、そういうわけで、多少俺らみてえな腕自慢がいたところでなんの意味もねえってことよ…」

 

 

 

「ふむ……お前達の話を聞く限り、獣人族は魔法が不得意のようだが、他の種族も全てそうなのか?」

 

 

 

「そりゃ全てってわけじゃねぇが……そうだな、一般魔法だけという話なら、エルフ族とかは魔力もあるし、身体能力も低くねえ、人間ともいい勝負できるんじゃねえかな……しかしなあ」

 

 

 

「やはり具現化魔法とやらか」

 

 

 

「だな……それにエルフ族は数が居ねえからなー、どの道人間族が圧倒的なのは変わんねえよ」

 

 

 

「なるほどな………」

 

 

 

グレンは理解したという風に顎を下げる。

 

 

 

と、そこでふいにバーグルが思い出したかのようにグレンに詰め寄ってきた。

 

 




キリが悪いところになってしまったので、二話分投稿しました。お暇な時に次エピソードまで読んでいただけると嬉しいですm(*_ _)m
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