バーグルは期待のこもった眼差しでグレンに問いかける。
「ってかよグレン、アンタこの世界のもんじゃねえけど人間だろ、魔法使えねえのかよ?さっきのだって素でアレなんだろ?魔法も使えるならもっと強えんじゃねえか」
期待のこもった眼差しで見つめるバーグル。
「……魔法とは違うが、魔装騎士としての特殊な技術なら身につけている。気を練ることで身体能力の底上げも可能だ。具現化魔法は────」
「────?具現化魔法がなんだよ?」
途中まで言いかけて止まったグレンを男衆が揃って見つめる。
────最後の戦いで俺は全てを使い切った。俺の残り火ではもうニヴルヘイムを呼ぶことは出来ん────そう思っていたが……
考えながらグレンは自らの手を見つめる。
────感じる。明らかに内側の部分も回復の兆しを見せている。それに進化した叢雲から日々感じる波動……まさか。
グレンは、見つめたままの右手に闘気を練り、召喚のイメージをしてみる。
すると……
キィ……ィイン────ガシャンッ!
音を立ててニヴルヘイムの鎧の手甲がグレンの右腕を覆う。
彼の竜の姿を彷彿とさせる、雄々しき爪のようなディテールが肘までを包んだガントレット。
それは指の先まで隙間なく守られつつ、グレンの可動域を邪魔しない設計になっている。
────しかし、この色は……。
変化にすぐに気づく。シルエットはそのまま、だが全面が黄金に輝いていた鎧は、白を基調とし、縁取りやその他一部に金色の装甲が嵌め込まれたようになっていた。
見た目だけではない。
強大な力と引き換えに相応のエネルギーを喰っていた鎧が、今のグレンにとって過負荷にならない程度に消費も出力も調整されるようになっていた。
グレンは叢雲をじっと見つめる。
────叢雲……マリエル────お前達の力が俺を守ってくれているのか────
突如として現れた白金色の篭手を目の当たりにしたバーグル達は一様に固まった。
「……えっ!?」
「な、なんだそりゃぁっ!?」
「ひぃ……!」
「かっけぇ……!」
驚愕の声と感嘆の声が入り混じる。バーグルも例外ではないようだ。
「おいおいおい!いきなりヤバそうな篭手が出てきたぞ!?どうなってんだよそれ!」
「これが……俺の世界の魔法のようなものだ」
グレンは全てを理解出来たように、少しだけ優しい笑みを浮かべ、換装を解除する。
光の粒子と共に手甲が消える。
「な、なんだよ今のはよ……」
呆然とするバーグル。
「俺の世界では魔装召喚と言ってな。己の魂の力を使って鎧を召喚する儀式みたいなものだ……俺の力が回復すれば、胴や下半身、足元も召喚することが可能だ」
「ていうかグレン……さっきその篭手だけで人間族の具現化と同等かそれ以上に強いんじゃねえのか?」
「────もし同じ条件下で戦えば恐らくは負けることはないと思うが……」
グレンは答える。同時にバーグルや他の男衆にも質問を投げかける。
「お前達はどうなんだ、いざ戦いになった時は何も対抗策はないのか」
「そうだな、俺一人なら死ぬ気で逃げる。仲間がいたなら────そいつが逃げ切るまで死ぬ気で時間稼ぎするまでよ。情けねえ話だけどな!」
ガハハ、と務めて陽気に笑うバーグルとそれに頷く男衆。
だがグレンは笑わなかった。
「情けないものか。お前達も騎士だ、俺と何も変わらない」
「グレン……嬉しいこと言ってくれやがって!」
彼らの目に薄らと涙が浮かんだ。
「話は大体わかった、長話させて悪かったな」
「おうよ、グレン、アンタも門番役やりてえならやってくれていいんだぜ?」
軽口を飛ばすバーグル。
「そうだな、今日は俺がやろう」
グレンはこともなく返す。
「はっ?マジかよ」
自分で言っておきながら驚くバーグル。
「ああ、この前決まっただろう。俺もお前達の同胞だ。村を守る理由がある」
「………」
全員がグレンの誠実な反応に感嘆の息を吐く。
「じゃあ全員でやろうぜ、親睦を深めながらよ、グレンの言ってた『セルシウス』ってやつについて教えてくれよ、どんな世界なんだ?」
「ああ、そうだな………」
力試しから繋がった男たちの縁。
意外な親睦会は、日が落ち始める頃まで続いたのであった。