暗い、とても暗い光景が目の前にあった。
それは光のないとても暗い暗黒の世界。
音もなにも聞こえないその光景は少し恐怖を覚える。
そんな中にいたくなくて必死に身体を動かしていた。
手も脚も必死にここから出ようと動かす。
そしたら段々と身体が重くなっていくような感じがあった。
それは身体全部がまどろみの中に落ちるくらいのだるさもある。
どうしたのだろうと混乱していると、ひとすじの光が見えた。
希望の光のようにも思えた。
だから、そこまで必死に身体を動かすことにした。
重くても必死にゆっくりとでも光を目指して。
突然眩しく思えたので目を瞑るけど、なんとか耐えて目を開ける。
視界に飛び込むのはみたことのない世界。
そもそもここにいること自体が信じられない気持ちに思えた。
『起きたのかい、我が子よ』
突然、聞こえてきた声に導かれるように視線を向けると……。
そこには大きな翼の生えた狼がいた。
「わきゅー!?(で、でたぁー?! わ、わたしを食べても美味しくないよっー!!)」
と慌てて必死に前足を動かすのだけどって……まて。
今、なにをしたのだろうか?
視線を落とすとぷにぷにした肉球が見える前足。
そう前足なのだ、それも獣だとしか考えられないくらいの。
この状態について混乱していると、首ねっこをくわえられてそばに置かれた。
『落ち着きよ、我が子よ。 なにをそんなに慌てておるのだ?』
声の主はどうやら目の前にいる狼さんのようです。
ちょっと待てよ、さきほどから我が子って言われてるけど。
も、もしや私は……いわゆる獣になっているの?!
硬直している私に生暖かい感触がおきる。
どうやら舐められているようだが、不思議と落ち着くのはなぜだろう。
「きゅ、きゅふう(あ、ありがとう)」
ありがとうという思いで告げた言葉は間抜けな鳴き声だった。
そんな私はなぜか情けなくなって前足を抱えてしまう。
おそらく、いや間違えてはいないだろうけど。
今、目の前にいるのは私の母親なのだろう。
まさか、あのカードのとおりに私は魔獣になってしまったのか。
『ふむ、生まれてからすぐ鳴けるとは、賢い子に育ちそうだ』
と、お母さんはどこか満足気に呟いている。
あれ、普通はすぐに鳴き声は出せないのかな?
「きゅうん?」
とりあえず、尋ねるように言ってはみたけど。
出るのは幼い獣の鳴き声だった。
『いや、そう珍しいわけではないよ? たまにそういう子が生まれてくるというだけさ』
どうやらさきほどの言葉というか、鳴き声だけで理解されたようだ。
母様すっごい! 博識だ!と思ったのは私だけではないはず。
いや、そもそもそんな知識は普通は生まれてすぐに理解されるようなものなのだが。
それがないということは人間のわたしに押しつぶされてしまっているのだろうか。
そう考えると母様にひどいことしている気分に陥る。
「くぅん」
『おや、どうしたんだい? なにか嫌なことでもあったのかい?』
しょんぼりしていたのか、自然と耳と尾が垂れていたようで。
心配をかけてしまったようである。