午前十時四十分。
高度育成衛士高等学校の東部軍港から望む東京湾の空には、
昨日のお台場戦で生じた黒煙が、朝を迎えた今も消えずに残っていた。
風向きが変わるたびに煙は海上へ細長く流れ、
雲間から差し込む陽光を灰色に濁らせている。
遠方に見えるお台場の高層建築群も、昨日までとはまるで違う姿を晒していた。
上層部を大きく失った建物や、途中で崩れ落ちた湾岸道路、
消火活動が追いつかず炎を上げ続ける港湾施設が、
わずか数時間の戦闘によって東京の象徴が戦場へ変えられた事実を示している。
それでも東部軍港では、悲惨な光景へ立ち止まる間もなく、
次の作戦に向けた準備が進められていた。
作戦名は、暁光作戦。
鳳翼作戦で発見された海底縦坑から東京ハイヴ浅層部へ侵入し、
内部構造を確認する第一次強行偵察である。
侵入口は人工島から東へ約四キロ離れた東京湾の海底にあり、
海面からの深度は百八十メートルに達する。
岩盤を抉るように開いた巨大な空洞は、
そのまま東京ハイヴの浅層部へ接続していると推測されていた。
今回の参加戦力は、高度育成衛士高等学校教導隊の四機と、
第十三戦術機甲大隊サムライから選抜された六機で構成される。
教導隊からは、茶柱佐枝、坂上数馬、星之宮知恵、真嶋智也。
サムライ選抜小隊を加えて、合計十機。
本格的なハイヴ攻略を行うには、あまりにも少ない戦力だった。
しかし、今回の作戦目的はハイヴを制圧することではない。
内部構造を確認し、
東京の都心方向へ伸びている可能性が高い地下経路を特定する。
そのうえで爆破可能な地点を発見できた場合に限り、
経路を崩落させて封鎖する。
そして何より、得られた情報を持ち帰るために、全機が生還すること。
戦果ではなく、情報と帰還が優先される作戦だった。
軍港中央に停泊した大型輸送艦の甲板には、
出撃する十機の戦術機が固定装置によって直立状態で保持されていた。
教導隊が使用するのは不知火二機、陽炎一機、撃震一機。
サムライ選抜小隊は不知火六機で統一されている。
各機には、通常の地上戦とは異なる装備が施されていた。
基本武装となる突撃砲、長刀、短刀に加え、地下用の大型照明、
地形探査装置、有線式通信中継器、
経路封鎖用の爆薬コンテナが取りつけられている。
光線級による長距離照射を受けにくい地下戦では、
重金属雲を大量に搭載する必要性が低い。
そのため積載量は最低限まで抑えられ、
空いた重量分には弾薬と予備電源が割り当てられていた。
肩部と脚部には、狭い坑道内で壁や岩盤へ接触した際の
衝撃を軽減する追加装甲も装着されている。
一方、背部跳躍ユニットには厳しい出力制限が設けられていた。
地下で地上戦と同じ噴射を行えば、天井や壁面を崩落させ、
敵だけでなく味方や自分の退路まで巻き込む危険があるためだ。
戦術機にとって、ハイヴ内部は地上よりも不利な環境だった。
空間が狭いため自由に跳躍できず、敵との距離を保つことも難しい。
曲がりくねった坑道では射線も制限され、
前方の味方を避けながら戦わなければならない。
何より、人類側は内部の正確な地図を持っていない。
対するBETAは、暗闇と狭い地下空間を移動することに慣れている。
それでも、誰かが最初に中へ入らなければ、
東京ハイヴを攻略するために必要な情報は永遠に得られない。
甲板上では、整備員たちが出撃直前まで各機の最終確認を続けていた。
真嶋は自分の撃震へ搭乗する前に、残る九機を一機ずつ見て回り、
わずかな異常も見落とさないよう装甲や装備へ目を配っている。
「サムライ5、右脚部の補助装甲が浮いている」
指摘された担当整備員は、端末を装甲板の固定部へ当てた。
「測定値は規定範囲に収まっています」
「地上なら問題ないかもしれないが、
地下で壁へ擦れば、そのまま剥がれる。もう一度締め直せ」
「了解しました」
真嶋は返答を待たず、次の機体へ移る。
「サムライ7、地下照明の角度が高すぎる」
「すでに調整しています」
「前方ばかり照らすな。足元へ向けろ。
敵を見つける前に亀裂へ落ちたら、何の意味もない」
「再調整します」
自分も戦場へ出る立場でありながら、
整備主任としての責任を最後まで手放そうとはしない。
そんな真嶋の背後から、茶柱が近づいてきた。
「真嶋」
「何だ」
「自分の撃震は確認したのか」
「三回確認した」
「なら、少しくらい休め」
「お前にだけは言われたくない」
真嶋の言葉には理由があった。
茶柱の不知火も昨日のお台場戦で損傷し、左脚部装甲、
跳躍ユニット、突撃砲接続部に修理が必要な状態だった。
整備班が一晩かけて応急修理を終えているものの、万全には程遠い。
それでも茶柱は、自分だけ後方へ残るという選択をしなかった。
二人の間へ星之宮が割って入る。
「出発前くらい、もう少し仲良くできないの?」
「している」
茶柱が即答する。
真嶋も同時に答えた。
「何も問題はない」
星之宮は二人を交互に見た後、呆れたように肩を落とした。
「そういうところだけは、本当に息がぴったりなんだよね」
少し離れた場所では、坂上がサムライ選抜小隊の隊長と作戦経路を確認していた。
今回サムライ側を率いる衛士は、コールサインでサムライ3と呼ばれている。
第十三戦術機甲大隊の副長であり、
昨日のお台場戦でも要塞級撃破に加わった経験豊富な衛士だった。
「侵入口から第一分岐までの距離は約二百メートルだ」
坂上が立体地図を操作する。
「その地点までは、無人探査機で内部を確認できている」
サムライ3が第一分岐の先を拡大した。
「それ以降の情報は?」
「探査機との通信が途絶した」
「確認された敵は」
「戦車級が多数。要撃級については、少なくとも四体が映像に残っている」
「それだけか」
「確認できた範囲ではな」
サムライ3は暗く表示された未探査区域を見つめ、僅かに笑った。
「見えている敵より、見えていない敵の方が多そうだ」
「だから十機で入る」
坂上は地図を閉じながら答えた。
「多すぎれば、狭い坑道で互いの動きを妨げる。
少なすぎれば、敵と接触した時に帰還路を維持できない」
サムライ3は改めて十機の配置を見る。
「十機という数が正解だと思うか?」
坂上はすぐには答えなかった。
未知のハイヴ内部へ入る以上、正確な答えなど誰にも分からない。
それでも数秒後、迷いのない声で言った。
「正解にする」
サムライ3は、その言葉に満足したように頷いた。
「それでいい」
午前十時五十分。
第一作戦管制室では、候補生たちがそれぞれの作戦支援席へ配置されていた。
候補生が直接東京ハイヴへ入るわけではない。
しかし今回は、単なる見学者として映像を眺めることも許されていなかった。
地下部隊から送られてくる映像、振動データ、機体位置、弾薬残量、
損傷情報、通信中継器の状態を分析し、それぞれの適性に応じて現場を支援する。
Aクラスからは、坂柳有栖、橋本、神室。
Bクラスからは、一之瀬と神崎。
Cクラスからは、龍園とひより。
Dクラスからは、堀北、平田、高円寺、須藤。
そしてオレ。
坂柳はハイヴ全体構造の分析を担当し、
ひよりは内部地形と壁面の変化を観測する。
堀北は部隊位置と通信状態を管理し、
神崎は弾薬、燃料、機体損傷の推移を記録する。
平田と一之瀬は救難経路の確保と撤退判断を補助し、
橋本は複数回線から送られる情報を整理する。
神室は無人探査機を操作し、龍園は敵反応と進路を予測する。
高円寺は戦術機の挙動や出力変化を解析し、
須藤は前衛部隊から送られる戦闘映像を監視する。
オレに与えられたのは、それらの情報を一つにまとめる役割だった。
候補生を単なる学生として遠ざけるのではなく、
それぞれが持つ能力を、実際の作戦の一部として使う。
それが今回の方針だった。
司令卓には坂柳理事長が立っている。
普段と変わらない穏やかな表情を保っていたが、
その顔には連日の指揮による疲労がはっきりと残っていた。
お台場戦。
中央講堂の崩壊。
南部格納庫の喪失。
ほとんど眠る暇もなく、次々に起こる事態へ対処し続けている。
それでも、暁光作戦参加部隊へ向けて開かれた
通信回線から流れる声には、一切の揺らぎがなかった。
「暁光作戦参加部隊へ」
輸送艦甲板に固定された十機の戦術機。
教導隊。
サムライ選抜小隊。
全員が司令官の言葉を聞いている。
「今回の目的は、東京ハイヴを攻略することではありません」
大型スクリーンに、海底縦坑から都心方面へ伸びる推定経路が表示される。
「内部構造を確認し、都心方向へ続く地下経路を発見する。
そして、条件が整った場合に限り、その経路を爆破して封鎖します」
坂柳理事長は、今回求められているものを改めて明確にした。
「それ以上の戦果は必要ありません」
茶柱は管制ユニットの中で静かに目を閉じた。
坂上は正面を見据え、星之宮は小さく息を吐く。
真嶋は最後まで自機の状態表示を確認している。
「敵を深追いしないでください」
「戦果を求め、予定していない経路へ進まないでください」
「想定を超える大規模反応を確認した場合は、
作戦目標を達成していなくても、直ちに撤退してください」
サムライ3が答える。
『了解』
坂柳理事長はさらに続けた。
「未知の場所へ進むために必要なのは、勇敢さだけではありません」
「慎重に状況を確認すること。仲間と連携すること。
そして、進むべきではないと判断した時に、戻る決断を下すこと」
「そのすべてが必要です」
そこで一度言葉を切り、候補生たちが並ぶ管制席へも視線を向ける。
「皆さんが持ち帰る情報は、次に東京ハイヴへ入る者たちを救います」
候補生たちは誰も声を発さなかった。
次に戦う者。
その中には、自分たちも含まれている。
誰も口にはしないが、全員が理解していた。
「暁光作戦を開始します」
坂柳理事長の声が、僅かに強くなる。
「全機、必ず帰還してください」
茶柱。
『了解』
坂上。
『了解』
星之宮。
『了解』
真嶋。
『了解』
最後にサムライ3。
『サムライ選抜小隊、了解』
午前十一時。
大型輸送艦は二隻の護衛艦を左右に従え、東部軍港を離れた。
後方には潜水作業母艦が続き、上空では無人偵察機が航路を監視している。
海面下では探査艇が先行し、艦隊の進行方向に大型の障害物がないかを確認していた。
昨日のお台場戦によって、東京湾には大量の残骸が浮いている。
破損した船舶や輸送コンテナ、崩落した建築物の一部が海面を漂い、
軍の回収艇がそれらを移動させながら、艦隊の通れる航路を確保していた。
輸送艦は残骸を避け、ゆっくりと東京湾中央部へ進んでいく。
甲板上では、十機の戦術機が固定装置に保持されたまま直立している。
しばらくの間、教導隊回線には誰の声も流れなかった。
やがて、その沈黙へ耐えられなくなったように、星之宮が口を開く。
『誰か、面白い話はない?』
茶柱はすぐに返した。
『集中しろ』
『まだ侵入口にも着いてないよ』
坂上も会話へ加わる。
『今から集中しておけ』
『数馬まで佐枝ちゃんみたいなことを言うようになってる』
真嶋。
『暇なら、もう一度弾薬点検でもしていろ』
『本当にみんな冷たいね』
別回線で聞いていたサムライ3が笑う。
『教導隊は、いつもこの調子なのか』
茶柱。
『作戦中だけです』
星之宮。
『作戦外でも同じだよ』
『黙れ』
短いやり取りは、作戦管制室の候補生たちにも聞こえていた。
須藤が画面を見たまま呟く。
「ずいぶん余裕があるな」
高円寺は機体データから目を離さずに答えた。
「余裕があるのではなく、意識して作っているのだろうね」
「どういう意味だ」
「緊張を和らげるためさ。沈黙が長く続けば、自分の恐怖ばかりを考えることになる」
平田が僅かに頷く。
「星之宮先生なりに、みんなを落ち着かせようとしているんだ」
堀北は少し考えた後で言った。
「本人は、そこまで考えずに話している可能性もあるわ」
それも十分に考えられた。
午前十一時十二分。
作戦艦隊は海底縦坑の真上へ到着した。
海面には位置を示す大型ブイが浮かび、
その下には東京ハイヴ浅層部へ続く巨大な空洞がある。
輸送艦が停止すると、潜水作業母艦から遠隔操作式の無人探査機が投入された。
探査機から送られる映像が、管制室の大型スクリーンへ表示される。
周囲は完全な暗闇だった。
探査機の照明が海中を切り裂き、海底の岩盤に開いた巨大な穴を照らし出す。
直径は約六十メートル。
戦術機が複数同時に通過できるほどの大きさだった。
内壁には、人間の掘削機械では作れない不規則で深い傷が、無数に残されている。
BETAが硬い岩盤を削り、通路を作った痕跡だった。
探査機は縦坑へ進入する。
深度二十メートル。
四十メートル。
八十メートル。
水圧と通信状態は正常。
その先には、海水が流れ込んだ広い空洞があった。
侵入口周辺へ入った水はさらに奥の崖から落下し、
巨大な地下滝となって深部へ流れ込んでいる。
探査機は滝の近くを避けながら下降する。
深度百二十メートル。
そこはすでに、地表の光が一切届かない地下だった。
先行していた無人機が着地すると、周辺に少数の戦車級反応を確認した。
機体へ搭載された自動銃座が作動し、接近する個体を短い射撃で排除する。
管制官が周囲の安全を確認した。
「侵入口を確保しました。戦術機の降下を許可します」
輸送艦甲板の固定装置が解除された。
最初に降下するのは、サムライ3の不知火。
機体が海へ入った瞬間、甲板の横へ大きな水柱が上がる。
戦術機は水中戦を前提とした兵器ではないため、
跳躍ユニットによる自由な移動は行えない。
海中降下用ケーブルと姿勢制御装置を使い、
機体を直立させたまま慎重に下降していく。
続いてサムライ4。
茶柱。
坂上。
星之宮。
真嶋。
残るサムライ隊。
十機の機体反応が、一つずつ海面から地下へ移動する様子を、
管制室の候補生たちは見守っていた。
須藤は水中を降りていく戦術機から目を離さずに尋ねる。
「戦術機って、水へ入れて大丈夫なのか?」
堀北が事前資料の内容を思い出しながら答えた。
「完全な水中戦には対応していないけれど、
短時間の潜水に耐えられるよう耐水処理は施されているわ」
「それでも内部へ水が入ったら?」
「管制系や駆動部が損傷する可能性がある」
須藤は顔をしかめる。
「それ、大丈夫とは言わねぇだろ」
高円寺が淡々と返した。
「大丈夫ではないから、こうして時間をかけて降ろしているのさ」
最後の一機が地下空洞へ着地する。
全機の状態は正常。
降下ケーブルが切り離され、十機の地下用照明が一斉に点灯した。
白い光が、地下水に濡れた地面と、不規則な穴の開いた壁面を照らし出す。
その光の先で、複数の影が蠢いた。
戦車級。
確認できるだけでも数十体。
茶柱が短く命じる。
『射撃を許可する』
先頭のサムライ機が突撃砲を構え、地下空洞へ銃声を響かせた。
発射音は地上とは比べものにならないほど強く反響し、
壁と天井へ跳ね返りながら空洞全体を震わせる。
砲口炎が暗闇を赤く照らし、先頭の戦車級が倒れる。
後続のサムライ隊も左右へ射撃区域を分け、
味方の射線と重ならないように群れを排除していく。
教導隊は正面の敵だけを見ず、左右の壁面と後方を警戒する。
真嶋の撃震は最後尾へ位置し、侵入口へ戻るための道を確保していた。
全機の動きに無駄はない。
第一空洞の戦車級は、短時間で排除された。
サムライ3が周囲を確認する。
『第一地点を確保した。通信中継器を設置する』
サムライ6が背部コンテナから有線通信中継器を降ろし、安定した岩盤へ固定する。
装置が起動すると、地下部隊と海上艦隊、
作戦管制室を結ぶ通信状態が安定した。
堀北が記録へ入力する。
「第一中継器、暁光1。正常作動を確認」
中継器の設置地点は、侵入口から約百五十メートル。
その先には、三方向へ伸びる分岐があった。
左側は、戦術機一機が通れる程度の狭い横坑。
中央は、東京ハイヴ深部へ向かうように下っている。
右側は、緩やかに上昇しながら都心方向へ伸びていた。
無人探査機が通信を失ったのは中央経路だったが、
今回の第一目標は深部ではなく都心経路の確認である。
坂柳有栖が地形を立体表示する。
「中央経路は、ハイヴ深部へ接続している可能性が高いです」
ひよりが方角を確認する。
「右側の経路は、東京中心部の方向と一致しています」
龍園も左側の角度を見た。
「左は人工島側だな」
坂柳理事長は、地上地図と地下経路を重ね合わせた。
「第一目標は、都心方面へ続く地下経路の確認です。右側へ進んでください」
サムライ3。
『了解』
十機は隊形を組み直す。
前衛にはサムライ3とサムライ4。
その後ろに茶柱と坂上が続く。
星之宮、サムライ5、サムライ6が中央支援。
最後尾には真嶋、サムライ7、サムライ8。
十機は右坑道へ入った。
坑道の幅は戦術機三機分ほどあり、高さにも余裕はある。
しかし、道は何度も曲がっているため、照明の届く先まで見通すことはできない。
壁面は地下水によって濡れ、
その一部には自然の岩盤とは異なる膜状の組織が張りついている。
ひよりが映像を拡大した。
「壁の表面が動いています」
須藤が画面へ身を乗り出す。
「岩じゃないのか?」
「岩盤の表面へ、有機的な組織が重なっています」
壁の一部は、巨大な生物が呼吸しているように、ゆっくりと収縮していた。
東京ハイヴの内部は、自然の地層だけで形作られているのではない。
BETAが作り出した有機組織と岩盤が混ざり合い、
一つの巨大な構造を形成している。
坂柳有栖が記録担当へ指示する。
「映像を保存し、組織サンプルを採取してください」
無人探査機が壁面へ近づき、
膜状組織の一部を採取して密閉容器へ格納する。
その間も、有人部隊は前進を続けた。
最初の百メートルでは敵反応なし。
二百メートル地点で少数の戦車級と接触したが、
前衛二機の射撃によって短時間で排除された。
三百メートル地点には、事前に確認されていなかった新しい分岐があった。
ひよりは現在位置と、戦前の東京地下施設図を重ねる。
「右側は旧共同溝の方向へ伸びています。左側は自然地層へ入っています」
龍園がすぐに言った。
「右だ」
堀北が理由を求める。
「根拠は?」
「BETAが都心へ進みたいなら、硬い岩盤を最初から掘るより、
既存の地下設備を広げた方が早い」
ひよりも同意する。
「右側経路は、旧共同溝の延長線とほぼ一致しています」
坂柳有栖も地図を確認した。
「右側への進行を推奨します」
坂柳理事長が決定する。
「右へ進んでください」
サムライ3。
『了解』
部隊は右側へ進む。
地下には戦術機の足音だけが響いていた。
金属製の脚部が湿った地面へ下ろされるたび、重い音が坑道の奥まで反響する。
教導隊もサムライ隊も、必要のない会話をしない。
管制室の候補生たちも、息を潜めるように映像を見つめていた。
侵入口から五百メートル地点へ到達すると、二つ目の通信中継器が設置された。
「暁光2、正常作動を確認」
通信状態は安定。
全機の機体状態にも、現時点では異常がない。
弾薬消費量も平均五パーセント以下。
作戦は順調に進んでいた。
だが。
順調すぎる。
龍園が低い声で言う。
「敵が少なすぎるな」
須藤は首を傾げた。
「さっきから戦車級を倒してるだろ」
「ハイヴの中にしては少なすぎるって話だ」
ひよりも、部隊が進んできた地面の痕跡を確認する。
「この規模のハイヴ内部なら、さらに多くの個体がいても不自然ではありません」
神崎が可能性を挙げる。
「この経路が、まだ本格的には使われていないということは?」
ひよりは地面へ残る痕跡を拡大し、首を横へ振った。
「それでは、これだけ多くの通過痕を説明できません」
坑道には、戦車級の細かな足跡だけでなく、
要撃級や突撃級が通ったと思われる深い溝が幾重にも刻まれていた。
かなりの数のBETAが、過去にこの経路を通過している。
それなのに、現在はほとんど姿が見えない。
お台場方面へ移動したのか。
それとも。
別の場所へ集まっているのか。
オレは通信中継器から送られてくる振動データへ目を向けた。
暁光1。
暁光2。
通信はどちらも正常。
侵入口周辺にも異常表示はない。
だが、第一中継器の周囲で、僅かに地震波が増加していた。
部隊の前方ではない。
後方。
侵入口と第一分岐の間である。
「後ろだ」
オレが言うと、堀北がこちらを向いた。
「何が?」
「暁光1周辺の振動が増えている」
ひよりが波形を拡大する。
変化は小さい。
だが、一つではない。
複数の振動源が、侵入口側から接近している。
龍園が後方経路を見た。
「部隊が中へ入った後で、出口を塞ぎに来たか」
坂柳有栖も敵反応表示を切り替える。
「部隊後方に、小型反応が急増しています」
管制官から警告が送られた。
『暁光隊へ。後方から多数の小型反応が接近しています』
真嶋が尋ねる。
『数は』
『推定三百以上』
サムライ3。
『前方に敵反応は?』
『現時点では確認できません』
茶柱が低く呟く。
『罠か』
BETAが、人間と同じ思考によって罠を作ったかどうかは分からない。
しかし、部隊が奥へ進んだ後に、後方へ多数の個体が集中している。
結果として、人類側の退路を塞ごうとしていることに変わりはなかった。
坂上が尋ねる。
『全機で反転するか』
サムライ3は、まだ確認できていない前方経路を見る。
『都心へ続く道を特定していない』
茶柱が返す。
『退路を失えば、情報を持ち帰ることもできない』
坂柳理事長は、前方と後方の反応を数秒間見比べた。
「三機を後方防衛へ回します」
「残る部隊は、現在地点を維持してください」
サムライ3。
『サムライ7、サムライ8、真嶋機は反転し、後方防衛へ』
真嶋。
『了解』
三機が隊列の後方から反転する。
坑道は狭く、他機の横を簡単に通過することはできない。
前方の機体が一度壁際へ寄り、隊形を崩しながら一機ずつ真嶋たちを通す。
その間にも、敵が発する振動は近づいていた。
暁光1から送られる監視映像。
暗闇の奥へ、照明が伸びている。
やがて、その白い光の中に無数の影が現れた。
戦車級の群れ。
地面だけではない。
壁際の斜面へ密集し、天井近くまで埋め尽くしながら押し寄せてくる。
管制官が告げる。
『接敵まで二十秒』
真嶋の撃震が坑道中央へ立つ。
サムライ7とサムライ8は左右へ展開し、突撃砲を構えた。
『射撃区域を分担する』
真嶋は正面中央へ照準を合わせる。
『中央は俺が受け持つ。二機は左右を頼む』
『了解』
戦車級の群れが射程へ入る。
真嶋が叫んだ。
『撃て!』
三機の突撃砲が一斉に火を噴く。
砲口炎と着弾の爆発によって、暗かった坑道が一瞬で白く照らし出される。
狭い通路へ撃ち込まれた砲弾は先頭の戦車級をまとめて吹き飛ばし、
爆風によって後続の群れまで押し戻した。
だが、その背後からさらに多くの個体が現れる。
真嶋の撃震は、重装甲を活かして坑道中央を塞ぐ盾となった。
左右の不知火は、その脇から射線を通して射撃を続ける。
近距離での爆発が第一中継器を揺らした。
『暁光1、損傷を確認!』
堀北が通信強度を見る。
「第一中継器の出力が低下しています」
橋本はすぐに予備経路へ切り替える。
「副回線へ通信を移す」
真嶋は射撃を続けながら言う。
『中継器まで守っている余裕はない』
坂柳理事長。
「破壊されれば、地下部隊との通信が大きく不安定になります」
真嶋。
『機械を守るために、衛士を残せとは言わないでしょう』
「言いません」
坂柳理事長は即答した。
「ですが、可能な範囲で維持してください」
『可能な範囲でやります』
三機は射撃を続ける。
弾薬消費は十パーセントを超え。
やがて二十パーセントへ近づいた。
それでも戦車級の群れは止まらない。
さらに暗闇の奥から、大型反応が二つ現れる。
要撃級。
巨体が坑道の岩盤を押し広げるように近づいてくる。
真嶋は照明の奥へ現れた影を見ながら、短く息を吐いた。
『狭い坑道なら、あいつらも自由には動けない』
サムライ7が答える。
『俺たちも同じだ』
『だからこそ、動けないうちに撃つ』
一方、前方に残った茶柱たちは、現在地点を維持したまま判断を待っていた。
都心経路の確認を続けるか。
後方防衛隊を支援するために、全機で撤退するか。
坂柳理事長は、後方戦闘と前方の未探査経路を見比べた。
後ろでは激しい戦闘が続いている。
前方には今のところ敵反応がない。
だが、作戦目標である都心経路の特定も終わっていない。
「前方へ無人探査機を二機送ります」
「有人部隊は現在地点から動かないでください」
茶柱。
『了解』
二機の小型探査車両が、前方部隊から発進した。
低い車体に照明と走査装置を搭載し、右坑道を走っていく。
百メートル。
二百メートル。
坑道の曲がり角を越えたところで、映像が急に開けた。
その先には、長い地下道路のような空間が存在していた。
コンクリート製の壁。
古い配管。
破損した照明設備。
BETAの掘った坑道が、人間の作った共同溝へ接続している。
ひよりが地下施設図と照合する。
「都心方向で間違いありません」
橋本が旧東京地下図面を重ねる。
「旧共同溝C-7と一致している」
「このまま進めば、新橋方面へ続く」
神崎が距離を確認する。
「地上換算で、どの程度だ?」
「十七キロ以上ある」
長い距離だった。
しかし、経路は確実に存在していた。
BETAがこの共同溝を利用すれば、人類側の地上防衛線を避け、
東京ハイヴから都心へ直接侵入できる。
暁光作戦の第二目標である都心経路の発見は、達成された。
坂柳理事長は、次の段階へ移る。
「爆破封鎖に適した地点を探してください」
無人探査機が共同溝をさらに進む。
崩れかけた天井や支柱、複数の分岐が映る。
一部は損傷していたが、大型BETAが通過できるだけの幅は残されている。
やがて、ひよりが一か所へ注目した。
「ここなら封鎖できます」
地下河川の上を、橋のように跨いでいる共同溝。
上部の構造物と地層は、複数の太い支柱によって支えられている。
「この支柱群を破壊すれば、上部地層を大規模に崩落させられます」
真嶋は後方戦闘中のため、
作戦管制室にいる施設技術者が代わりに構造を計算した。
「崩落規模は十分です」
「都心側へ続く共同溝を、長区間にわたって封鎖できる可能性があります」
ただし。
無人探査機には、必要な量の爆薬を運ぶことができない。
爆破地点まで、有人の戦術機が進む必要がある。
現在位置からの距離は約四百メートル。
前方に敵反応はない。
それでも、爆薬を設置し、戻ってくるまでに後方防衛線が持つ保証はなかった。
茶柱が通信を開く。
『爆薬は私が運ぶ』
坂上が止める。
『一機で行くつもりか』
『二機抜ければ、中間地点の火力が落ちる』
星之宮。
『なら、私が一緒に行く』
茶柱。
『お前は中継器を守れ』
『また一人で格好つけるつもり?』
坂上。
『俺が行く』
サムライ3が即座に反対する。
『作戦指揮を担当する機体が二機とも抜けるな』
短い言い争いが続く。
坂柳理事長が判断を下した。
「茶柱機とサムライ4が爆破地点へ向かってください」
「坂上機、星之宮機、サムライ3、サムライ5、サムライ6は中間地点を維持します」
茶柱。
『了解』
サムライ4。
『了解』
二機は中間地点の部隊を離れ、共同溝の奥へ進んでいく。
爆薬コンテナの重量と低い天井のため、跳躍ユニットは使用できない。
全力で走ることもできず、通常より速い歩行で距離を詰めていく。
茶柱機が先頭。
サムライ4が後方を守る。
照明の届く範囲には、BETAの姿がない。
だが、共同溝の地面には、数え切れないほど多くの通過痕が残っていた。
敵が存在しないのではない。
どこかへ隠れている。
管制室で地形振動を監視していたひよりが、異常を捉えた。
「壁面の向こうに振動があります」
堀北が尋ねる。
「前方から?」
「違います。左右の壁の向こうです」
共同溝の両側。
厚いコンクリートと地層を挟んだ先から、複数の振動源が二機へ近づいてくる。
龍園が低く言う。
「待ち伏せか」
須藤。
「BETAが壁ごと壊してくるってのか」
オレは振動源の移動を確認する。
「一本道へ入るまで待っていた可能性がある」
坂柳有栖が茶柱たちへ警告する。
『左右の壁面から大型反応が接近しています』
茶柱。
『最短距離は』
『十五メートル』
サムライ4。
『近いな』
茶柱。
『止まるな。そのまま進め』
二機は歩行速度を維持する。
爆破地点まで二百メートル。
振動源は十メートル。
さらに五メートルまで近づく。
共同溝左側のコンクリート壁が、ゆっくりと内側へ膨らんだ。
ひよりが叫ぶ。
『来ます!』
壁へ無数の亀裂が走る。
次の瞬間、土砂とコンクリート片を撒き散らしながら、壁面が内側へ吹き飛んだ。
開いた穴から要撃級の巨大な腕が伸びる。
身体全体は共同溝へ入れない。
それでも、壁の向こうから伸ばされた腕だけで、戦術機を破壊できる。
茶柱機は即座に後退した。
要撃級の腕が、先ほどまで機体がいた通路を横切る。
サムライ4が至近距離から突撃砲を撃ち込み、腕を壁の向こうへ押し戻した。
だが今度は、右側の壁にも新しい亀裂が生じる。
崩れた穴から、戦車級の群れが共同溝へ流れ込んできた。
茶柱が叫ぶ。
『止まるな! 射撃しながら進め!』
二機は前方と左右へ射撃を行いながら、爆破地点を目指す。
戦車級が通路を埋め。
砲口炎と爆発が狭い共同溝を赤く染める。
煙と粉塵によって視界が急速に低下した。
サムライ4が言う。
『前方が見えない!』
茶柱はすぐに指示を変える。
『照明を足元へ下げろ!進路だけを確認しろ!』
足元へ集まる戦車級を踏みつければ、機体の姿勢を崩しかねない。
二機は照明で進路を確かめながら、足元の個体だけを正確に排除していく。
再び左壁から要撃級の腕が伸びた。
今度の標的はサムライ4。
茶柱が腕の付け根へ砲撃を集中させる。
要撃級の動きが僅かに逸れた。
サムライ4は機体を低くし、横薙ぎの一撃を回避する。
それでも腕の先端が右肩部装甲を掠めた。
『サムライ4、右肩部小破!』
茶柱。
『動けるか』
『操縦系に問題はない』
爆破地点まで、残り百メートル。
同じ頃、後方の真嶋たちも二体の要撃級と接触していた。
狭い坑道で身体を自由に動かせなくても、要撃級の長い前肢は真嶋機へ届く。
巨大な腕が撃震の盾へ激突した。
重装甲の機体が一歩後退する。
左右へ展開したサムライ7とサムライ8が、要撃級の脚部へ射撃を集中させる。
巨体が坑道中央へ入ったことで、
後ろから押し寄せる戦車級は一時的に進めなくなっていた。
真嶋はそれを見て判断した。
『こいつを、この場所で倒す』
サムライ7が懸念を示す。
『死体で退路が狭くなるぞ』
『巨体を壁にして、後続も止める』
『なるほど』
三機は要撃級の脚部へ火力を集中させた。
真嶋の撃震が正面で盾を構え、再び振り下ろされた腕を受ける。
装甲が軋み、右脚部へ強い負荷を示す警告が表示された。
サムライ7が側面へ回り、長刀を脚部関節へ振り下ろす。
同じ場所へ、サムライ8が百二十ミリ砲を撃ち込んだ。
大爆発が坑道を揺らす。
脚部を失った要撃級は坑道中央へ崩れ落ち、
その巨体によって後続の戦車級の進行を塞いだ。
真嶋は残弾を確認しながら命じる。
『一体目を排除した』
『二体目が来る前に、全機再装填しろ』
管制室では、神崎が後方防衛隊の弾薬消費を計算していた。
「三機の平均残弾は五十七パーセント」
「現在の消費速度が続けば、十分は持ちません」
平田が茶柱たちの現在位置を確認する。
「爆薬を置いて戻るまで、最短でも八分は必要だ」
堀北は各機の損傷表示を見ていた。
その中で、高円寺が真嶋機の異常へ気づく。
「真嶋先生の撃震は、右脚部出力が低下している」
須藤が尋ねる。
「どのくらいだ」
「正常値から十二パーセント落ちている」
「まだ歩けるだろ」
高円寺は感情を交えずに答えた。
「今はね」
龍園が撤退時の隊形と機体速度を重ねる。
「帰りは、真嶋の撃震が一番遅くなる」
オレも位置関係を確認する。
後方防衛線には真嶋。
中間地点には坂上たち。
最前方には茶柱とサムライ4。
このまま撤退へ入れば、真嶋が最後尾となる可能性が高い。
右脚部損傷が進めば、撃震は狭い坑道内で歩けなくなる。
その状態で機体を牽引する余裕はない。
「真嶋機を中間地点へ下げるべきだ」
堀北が尋ねる。
「代わりに前へ出す機体は?」
「サムライ7」
「不知火の装甲では、撃震のように攻撃を受け止められない」
「受け止める必要はない。機動力を使って、避けながら引きつけさせる」
「動けなくなってから交代しようとしても遅い」
坂柳有栖も通路幅と三機の位置関係を確認した。
「現時点なら、隊列交代は可能です」
坂柳理事長へ提案する。
「後方防衛の前衛を交代させます」
だが真嶋は拒否した。
『まだ動ける』
坂柳理事長。
「動けるうちに下がってください」
『この場所は、撃震の装甲がある方が長く持ちます』
高円寺が管制回線への発言許可を求める。
坂柳理事長は許可した。
『真嶋先生』
『何だ』
『右脚部出力が、正常値より十二パーセント低下している』
『それくらいは分かっている』
『同程度の衝撃をあと三度受ければ、歩行速度が撤退基準を下回る』
真嶋は苛立ったように言う。
『計算上の話だろ』
『事実に基づいた計算だよ』
高円寺は淡々と続ける。
『今なら、サムライ7と前後を入れ替えられる』
『動けなくなってからでは、狭い坑道で交代することもできない』
真嶋は返答しなかった。
そこへ茶柱の声が入る。
『真嶋、下がれ』
『お前は前方へ集中していろ』
『教官命令だ』
『俺も教官だ』
坂上も通信へ加わる。
『なら、整備主任として命令を出せ』
真嶋。
『何をだ』
『壊れる前に、自分の機体を下げろ』
一瞬の沈黙が流れた。
やがて真嶋が、諦めたように息を吐く。
『……了解』
撃震が一歩下がり、代わりにサムライ7の不知火が前へ出た。
不知火の盾は小さく、装甲も撃震ほど厚くない。
その代わり、要撃級の攻撃を真正面から受ける必要はない。
接近した腕を引きつけ、直撃する直前に回避する。
後方の真嶋機とサムライ8が、その隙へ砲撃を集中させる。
防御によって支える戦い方から、
機動によって敵の攻撃を外させる戦い方へ切り替えた。
真嶋機は中央へ下がり、右脚部へ余計な負荷をかけずに射撃支援を続ける。
これなら撤退に必要な歩行速度も維持できる。
高円寺は、隊形が正常に入れ替わったことを確認した。
須藤が隣から言う。
「よく先生にそこまで言えたな」
「必要だったからね」
「命令してるみたいだったぞ」
「私は機体の状態と、予測される結果を伝えただけさ」
平田が少しだけ笑った。
「それでも、真嶋先生は助かったと思うよ」
高円寺は返事をしなかった。
ただ、前衛を交代した後方防衛隊の映像を見続けていた。
その頃、茶柱機とサムライ4は、爆破予定地点へ到着していた。
目の前には、地下河川を跨ぐように建設された
巨大な共同溝の橋梁部が広がっている。
幅は約四十メートル。
橋梁の下には、照明を向けても底を確認できないほど深い暗闇があり、
遥か下から大量の水が流れる音だけが響いていた。
都心側へ続く共同溝は、複数の太い支柱によって支えられている。
その上には人工構造物だけでなく、厚い地層も重なっていた。
この支柱群へ爆薬を設置し、まとめて破壊すれば、
上部構造と岩盤が一気に落下する。
崩落によって共同溝は広い範囲で埋まり、
BETAが利用している都心経路を長期間封鎖できる。
茶柱は周囲の敵反応と支柱の配置を確認した。
『爆破予定地点へ到着した』
管制室に報告が届く。
作戦目標は、目前まで来ている。
だが、背後では真嶋たちが要撃級と戦い。
中間地点にもBETAの反応が近づきつつある。
茶柱たちの左右の壁の向こうにも、まだ大型反応が残っていた。
爆薬を設置するだけでは、暁光作戦は終わらない。
十機すべてが。
侵入した同じ道を通り。
持ち帰るべき情報とともに。
地上へ戻らなければならなかった。