仮面ライダー555 外伝 ―灰翼のモルフォ―   作:木崎真帆

2 / 5
# 仮面ライダー555 外伝

# 灰翼のモルフォ

## 第2話「同族」

**人間として生きたい。**

**だが、世界はもう私を人間として見てくれない。**

---


第2話「同族」

### Scene.1 翌朝

 

午前九時。

 

国立自然史博物館。

 

「おはようございます。」

 

いつもと変わらない朝。

 

真綾は白衣に袖を通し、標本修復室へ向かう。

 

事故から一週間。

 

昨日、公園で起きた出来事は夢ではなかった。

 

机へ向かう。

 

修復途中のモルフォチョウの標本。

 

翅へ触れようとした、その時だった。

 

ドクン──

 

胸の奥が脈打つ。

 

リバースハート。

 

一瞬だけ視界が鮮明になる。

 

遠く離れた展示室の来館者の話し声。

 

廊下を歩く職員の足音。

 

すべてが聞こえる。

 

「……また。」

 

以前の身体ではない。

 

真綾は改めて実感する。

 

---

 

### Scene.2 違和感

 

昼休み。

 

同僚たちと食堂。

 

「九条さん、本当にもう大丈夫?」

 

「事故、大変だったね。」

 

笑顔で答える。

 

「はい。ご心配をおかけしました。」

 

しかし。

 

料理へ箸を伸ばした瞬間。

 

鼻をつく匂い。

 

肉。

 

魚。

 

野菜。

 

それとは別に──

 

人間から漂う、奇妙な香り。

 

胸がざわつく。

 

(何、この匂い……。)

 

無意識に隣の席の男性を見つめてしまう。

 

その瞬間。

 

ドクン。

 

リバースハートが強く脈打つ。

 

真綾は慌てて立ち上がる。

 

「すみません……少し気分が。」

 

食堂を飛び出した。

 

人気のない非常階段。

 

壁へもたれ、息を整える。

 

「違う……。」

 

「私は人を襲いたいわけじゃない。」

 

胸を押さえる。

 

鼓動は少しずつ落ち着いていった。

 

---

 

### Scene.3 スマートブレイン

 

一方。

 

都内・スマートブレイン本社。

 

地下研究室。

 

大型モニターには、公園の監視映像が映っていた。

 

モルフォオルフェノク。

 

女性型。

 

「変身時間、二十七秒。」

 

「戦闘経験なし。」

 

「にもかかわらず、コピー個体を圧倒。」

 

研究員が報告する。

 

奥の椅子へ座る男が静かに口を開いた。

 

「オリジナルは個体差が大きい。」

 

「観察を続けろ。」

 

研究員が頷く。

 

「確保は。」

 

「まだだ。」

 

男は画面を見つめる。

 

「自分が何者なのか知ろうとする。」

 

「その時が一番捕らえやすい。」

 

---

 

### Scene.4 再会

 

夜。

 

仕事帰り。

 

真綾は昨日の公園へ足を運んでいた。

 

なぜ来たのか。

 

自分でも分からない。

 

すると。

 

ベンチに、一人の青年が座っていた。

 

黒いジャケット。

 

二十代後半ほど。

 

「来ると思ってた。」

 

真綾は警戒する。

 

「誰ですか。」

 

青年はゆっくり立ち上がる。

 

「安心しろ。」

 

「俺も……オルフェノクだ。」

 

「!」

 

その瞬間。

 

青年の首筋へ灰色の亀裂が走る。

 

だが完全には変身しない。

 

人間の姿のまま止まる。

 

「見えるだろ?」

 

「俺たちは同じだ。」

 

---

 

### Scene.5 オリジナルとコピー

 

青年は名乗る。

 

「相沢透。」

 

「三年前に死んだ。」

 

真綾は息を呑む。

 

「死んだ……?」

 

「ああ。」

 

「俺はオルフェノクに殺された。」

 

「使徒再生。」

 

「それで蘇った。」

 

真綾は昨日の言葉を思い出す。

 

コピー。

 

オリジナル。

 

「あなたは……。」

 

「コピーだ。」

 

相沢は苦笑する。

 

「でも生きてる。」

 

「だから別に気にしてない。」

 

少し沈黙。

 

「君は違う。」

 

「自然に目覚めた。」

 

「オリジナル。」

 

「珍しい。」

 

---

 

### Scene.6 オルフェノクの社会

 

真綾は尋ねる。

 

「オルフェノクって……何人いるんですか。」

 

相沢は遠くを見る。

 

「結構いる。」

 

「普通に働いてる奴。」

 

「家族を持ってる奴。」

 

「人間を襲う奴。」

 

「人間を守る奴。」

 

「色々だ。」

 

真綾は驚く。

 

「そんな……。」

 

「人間と変わらない。」

 

相沢は静かに笑う。

 

「結局、人間だった頃と同じさ。」

 

---

 

### Scene.7 狩る理由

 

その時。

 

悲鳴。

 

公園の反対側。

 

若い男が女性へ襲い掛かっていた。

 

しかし様子がおかしい。

 

男の皮膚が灰色へ変わる。

 

オルフェノク。

 

「腹が減った……。」

 

相沢が舌打ちする。

 

「あいつ。」

 

「知ってるの?」

 

「コピー個体だ。」

 

「覚醒したばかりなんだ。」

 

男は苦しそうに胸を押さえている。

 

「苦しい……。」

 

「助けて……。」

 

次の瞬間。

 

女性へ襲い掛かった。

 

---

 

### Scene.8 戦い

 

「止めるぞ!」

 

相沢が走る。

 

真綾も後を追う。

 

ドクン。

 

リバースハートが鼓動する。

 

身体が反応する。

 

皮膚へ亀裂。

 

灰色の甲殻。

 

背中の石化した翅。

 

モルフォオルフェノク。

 

相沢も変身する。

 

彼のモチーフは**キングフィッシャー(カワセミ)**。

 

鋭い嘴を思わせる頭部。

 

流線形の甲殻。

 

二体のオルフェノクが並び立つ。

 

暴走するオルフェノクは叫ぶ。

 

「食わなきゃ……!」

 

「死ぬんだ!」

 

真綾は動揺する。

 

「どういうこと?」

 

相沢が叫ぶ。

 

「コピーは覚醒直後、不安定なんだ!」

 

「理性を失う奴もいる!」

 

男は泣きながら襲い掛かる。

 

「死にたくない!」

 

その叫びは怪物ではなく、人間のものだった。

 

---

 

### Scene.9 終焉

 

真綾は攻撃を受け流す。

 

相沢が背後へ回る。

 

「悪い。」

 

一撃。

 

男の身体へ深い亀裂が入る。

 

「ありがとう……。」

 

男は笑った。

 

次の瞬間。

 

全身が灰となり、崩れ落ちる。

 

風が吹く。

 

灰だけが夜空へ舞った。

 

真綾は立ち尽くす。

 

「助けられなかった……。」

 

相沢は静かに答える。

 

「俺たちは。」

 

「人間でも。」

 

「怪物でもない。」

 

「だから難しい。」

 

---

 

### Scene.10 監視者

 

二人の知らない場所。

 

ビル屋上。

 

双眼鏡で戦いを見つめる男。

 

「接触しました。」

 

「モルフォとキングフィッシャー。」

 

通信の向こうから声が返る。

 

「予定通りだ。」

 

「二人まとめて確保する。」

 

男はスーツの内ポケットから、一枚の社員証を取り出した。

 

**SMART BRAIN**

 

そのロゴだけが、街の灯りを受けて静かに光っていた。

 

---

 

### ラストシーン

 

相沢は帰り際に真綾へ言う。

 

「また会おう。」

 

「君には見せたいものがある。」

 

「俺たちの世界を。」

 

真綾は答えられない。

 

オルフェノクにも、人間と同じように生きようとする者がいる。

 

一方で、生きるために人を襲う者もいる。

 

人間とは。

 

怪物とは。

 

その境界は、思っていたよりも曖昧だった。

 

真綾は夜空を見上げる。

 

街灯に照らされ、一匹の蝶が静かに舞っていた。

 

しかし、その羽ばたきはどこか儚く見えた。

 

---

 

**第3話「選択」へつづく。**

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。