宇宙の平和より俺の命を大切にして何が悪い   作:最高司祭アドミニストレータ

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電子戦演習

「──各艦、電子防壁を展開せよ! 敵の強力なジャミング波が来るぞ!」

 

 

 午後一番のカリキュラム、それは士官候補生たちにとって最も胃が痛くなる【電子戦演習】であった。

 

 帝国中央士官学校の第三シミュレーションルーム。独立した無数の卵型カプセルが整然と並ぶ中、内部のスピーカーからは鼓膜を劈くような警報音と、荒れ狂う嵐のような電磁ノイズの再生音が絶え間なく鳴り響いていた。

 

 強力な妨害電波下における味方艦隊との通信維持、および敵の探知網を潜り抜けるステルス行動。

 

 光と実弾が交差する物理的な戦闘もさることながら、現代のラグランジュネットワークにおける戦いとは、まず情報とセンサーの奪い合いから始まる。敵の目を潰し自らの耳を確保する。

 

 この不可視の戦場を制するものだけが、銀河の覇権争いにおいて生き残る資格を持つのである。

 

 

「くそっ、メインの通信帯域が完全に途絶した! 補助モジュールに出力を回せ!」

「ダメです教官、センサーアレイが熱で焼き切れます!」

 

 

 防音壁で隔てられた別のカプセルからは、エリート候補生たちの血走った悲鳴が漏れ聞こえてきそうだった。彼らは皆、昨日の歴史授業で叩き込まれた軍国主義のプロパガンダを胸に、真っ赤に染まった仮想レーダー画面と必死に格闘している。

 

 だが──そんな地獄のような情報戦の真っ只中にあって、ケイイチ・フォン・タチバナが操る仮想艦艇のコックピット内だけは、およそ軍事施設とは思えぬほど長閑で、かつ圧倒的な「静寂」に包まれていた。

 

 

(眠い。マジで眠い。死ぬほど眠い…)

 

 

 メインシートに深く腰を沈めたタチバナは、涙目になりながら大きな欠伸を噛み殺した。

 

 無理もない。午前中の白兵戦訓練では教官から全力で逃げ回るために全神経を使い果たし、その後の兵站学と艦船工学では「いかに自分の引きこもり部屋を安全にするか」という脳内設計にフルスロットルで脳細胞を回したのだ。

 

 彼の精神力ゲージは、既にお昼休みの時点でゼロを割り込んでいた。

 

 その上、前回の艦船工学で彼が提出した『武装を全廃した分厚い要塞ルーム(ただのサボり部屋)』を、神経質そうな技術教官が「指揮系統を守り抜く不沈の絶対旗艦だ!」と勝手に大絶賛したせいで、事態は最悪な方向へと転がっていた。

 

 あの直後、隣のフィリアが冷酷に「あれはただの引きこもり用の魔改造です」と密告したにもかかわらず、教官はあろうことか満面の笑み──いわゆるニコニコ顔で、タチバナの肩を骨が軋むほど強く掴み、こう言ったのだ。

 

『それほどの才能がありながら、なんという謙虚さだ! 貴様のような逸材を辺境の事務官などで腐らせるわけにはいかん。明日から私の研究室で、特別に指導してやろう!』と。

 

 

(…ふざけんなよ。なんで俺がそんな目に遭わなきゃなんないんだよ!)

 

 

 タチバナは心の中で血の涙を流していた。

 

 目立たず騒がれず、平均点ギリギリの無難な成績をキープして、誰も来ないような辺境基地のハンコ押し事務官になる。

 その完璧なライフプランが自分の意図しない過大評価の連鎖によって、少しずつ最前線の英雄ルートへと強制舗装されている。

 

 

(しかも、フィリアのやつ…あんな余計なチクり方をしやがって。伝説の聖剣の精霊のくせに、主人の安全より軍規の方が大事なのかよ!)

 

 

 ちらりと横を盗み見ると、副操縦席に座る美少女──フィリア・アージェントは、タチバナと完全に目を合わせようともしなかった。

 

 彼女は士官候補生に扮した端正な制服姿のまま、涼しい顔でコンソールを弾き、冷徹な手つきで電子防壁のコードを組み立てている。脳内に響いてくるはずのテレパシーすら完全に遮断されており、明らかな冷戦状態であった。

 

 

(チェッなんだよ。お前がその気なら、こっちだって考えてやるよ)

 

 

 タチバナは再び正面のコンソールに向き直った。画面には、相変わらず敵勢力から送られてくる悪質なジャミング波が、幾何学模様のノイズとなって荒れ狂っている。

 

 普通に考えれば、この妨害電波を跳ね返すために自艦のレーザー通信出力を上げ、ノイズフィルターの演算モジュールをフル稼働させなければならない。

 

 だが、タチバナの極限まで追い詰められた生存本能と圧倒的なサボり根性は、ここで常識を覆すインスピレーションを生み出した。

 

 

(待てよ…そもそも、なんで教官は俺たちがサボってないか監視できるんだ? 俺たちの機体から『電波』が出てるからだろ。ジャミングと戦おうとしてシステムを動かすから、教官の統制レーダーに俺たちの機体識別信号が映るんだ)

 

 

 タチバナの目の奥に、悪魔的な閃きの光が宿った。

 

 

(逆に考えろ。教官のレーダーから俺の機体が完全に消えうせれば…演習終了のブザーが鳴るまで、この薄暗くてエアコンの効いたコックピットで、誰にも邪魔されずに完璧な昼寝ができるんじゃないか!?)

 

 

 思い立ったが吉日、タチバナの指先がメインコンソールの物理スイッチへと伸びた。

 

 

「よし…やるぞ。まずは仮想エンジン出力をゼロへ。メイン動力炉、シャットダウン」

 

 

 プンッという小さな電源断の音と共に、コックピット内の照明が一段階暗くなる。

 

 

「次、アクティブ・レーダーおよび索敵アレイ、全電源オフ。パッシブセンサーの受信モジュールも…うるさいから切る! さらに機体表層の熱排出ダクトをすべて物理防壁で密閉!」

 

 

 タチバナが次々とコンソールのレバーを引いていくと、機体から生じていた微かな環境重力ジェネレーターの振動すらも消え失せた。

 

 

「仕上げに、生命維持システムと室内温度を…俺が一番ふかふかの毛布に包まって気持ちよく眠れる『摂氏二十二度の快適睡眠モード』へ固定! これでよし!」

 

 

 実行されたのは、対ジャミング戦闘の放棄ではない。機体そのものの「存在の消去」であった。

 

 熱紋ゼロ、電磁波放出ゼロ、通信応答ゼロ。それはラグランジュネットワークのセンサー網から見れば、軍艦ではなく、ただ宇宙空間をあてどなく漂う『ただの冷たいデブリ』と全く同じ状態である。

 

 当然、中央統制室でモニターを見つめている教官の全体マップからも、タチバナの機体を表す光点は綺麗に消失したはずであった。

 

 

「タチバナ。あなた、一体何をしているのですか」

 

 

 たまらず、といった様子でフィリアが横から口を出した。冷戦状態を破るほどの呆れを含んだ声だった。

 

 

「ん? 見りゃ分かんだろフィリア。高度な『パッシブ・ステルス』の実験だよ」

 

 

 タチバナは悪びれもせず、カバンから持ち込んだ私物のふかふかクッションを取り出し、コンソールの平らな部分へとセットした。

 

 

「馬鹿なのですかあなたは。そんな全システムを物理遮断すれば、外部の状況が一切分からなくなります。仮想空間とはいえ、敵の自動哨戒艇に衝突されても回避すらできませんよ」

「はっ! 素人はこれだから困るぜ。いいか、宇宙ってのはとてつもなく広いんだ。デブリと同化したこの艦に偶然敵がぶつかる確率なんて、宝くじで一等を引くより低い。つまり、動かないことこそが現代における究極の安全策なのさ。それじゃ、おやすみー…ふにゃ」

 

 

 言い終わるか終わらないかのうちに、タチバナはクッションに顔を埋め、信じられないほどの早さで幸福な安眠の世界へと旅立っていった。

 あとに残されたのは、真っ暗なコンソールと、気持ちよさそうな主人の寝息、そして額を抑えて静かに絶望する聖剣の精霊だけである。

 

 そうして、誰も来ない静寂の中で、きっかり二時間が経過した。

 

 

『──これより本日の電子戦演習を終了する。全候補生は速やかにカプセルを開放し、シミュレーターから退出せよ』

 

 

 無機質なシステムアナウンスが響き渡ると同時に、密閉されていたカプセルのハッチがプシュゥゥゥと自動でロックを解除した。

 

 

「んんんーっ! …はぁぁ、よく寝た〜!」

 

 

 タチバナは両腕を天に向けて大きく伸ばし、最高の目覚めを謳歌した。

 

 頭痛はすっかり消え去り、体力は完全に全回復している。作戦は大・大・大成功である。あの鬱陶しいノイズの嵐から完全にログアウトし、誰にも邪魔されない至福の午睡タイムを手に入れたのだ。

 

 

(ふふん、今頃教官もパニックになってるだろうぜ。『あの猛烈なジャミングの嵐の中で、自らの熱源と電磁波を完全に消し去ってゴーストになった候補生がいる!』ってな! 下手したらまた「一切の気配を絶つエイグラム星域の怪異のような天才戦術だ!」なんて勘違いされて、楽々Sランクをもらえちゃうかもな)

 

 

 そんな自分のこれまでの「ラッキー勘違いルート」に完全に味を占めた甘い妄想を胸に抱きながら、タチバナは余裕満面の笑顔でコックピットから外のステップへと足を踏み出した…まさにその時。

 

 

「タチバナ候補生」

 

 

 地獄の最下層から這い上がってきたような、極限の殺意を宿した鬼の形相の電子戦教官が目の前に立っていた。

 

 

「ヒッ、ヒギィッ!?」

 

 

 タチバナの顔面から、一瞬にして全血流が吹き飛んだ。教官の背後は静まり返っており、他の同級生たちの姿は既になかった。ただ一人、教官だけが腕を組み、仁王立ちでカプセルの出口を塞いでいたのだ。

 

 

「き、きょ、教官……? どうなさったんですかそんな怖い顔をして…」

「貴様ぁぁぁ…ッ! よくも、よくも私の神聖なる統制モニターを二時間もの間、完全にブラックアウトさせてくれたな!!」

 

 

 教官の怒号が、誰もいない無人のシミュレーションルームの天井にビリビリと反響した。

 

 

「演習開始からわずか十分後! 貴様のカプセルから生体データはおろか、機体の全駆動信号が完全にロストした! 撃破判定も出ず、強制アクセスコマンドすら一切弾かれる! 私はシミュレーターのメインフレームが深刻な熱暴走を起こして貴様が中で蒸し焼きになったのかと思い、レスキュー部隊を呼ぶ手配までしたのだぞ!」

(えっ…? あ、あれ? 天才的なゴースト戦術だっていう感動の勘違いは…?)

 

 

 タチバナの思考がフリーズした。どうやら、今回は「常識を覆す大局観」などという都合の良い誤認は一切発生せず、ただ純粋に『演習中に勝手に電源を抜いてログアウトした規格外の大バカ者』として100%正確にマークされていたらしい。

 

 

「ひぃぃぃっ! ち、違います教官! これは現代の過酷な電磁環境における、極限のパッシブ・ステルス生存術のシミュレートであって…!」

 

 

 タチバナがガクガクと膝を震わせて弁明した、その時。彼の背後のコックピットから、涼しい顔をしたフィリアが優雅にステップを降りてきた。

 

 教官は怒りの矛先を、その端正な少女へと向けた。

 

 

「まさか…優等生だと思っていたフィリア候補生! 貴様まで一緒になって、このふざけたサボタージュに加担していたとはな! 主人が馬鹿なら付き人も馬鹿かッ!」

 

 

 教官がフィリアを厳しく処断しようと一歩踏み出した、まさにその刹那である。

 

 

「──私は悪くありません。すべてはタチバナ候補生の単独の仕業です」

 

 

 フィリアは一切の感情を挟まない、極北の氷河よりも冷たい声で、コンマゼロ一秒の躊躇もなく即答した。

 

 

「……は?」

 

 

 タチバナは目を見開き、自分の付き人であるはずの聖剣の精霊を振り返った。

 

 

「私は演習中、再三にわたり『軍規違反であるからシステムを再起動せよ』と彼に警告いたしました。しかし、タチバナ候補生は『宇宙のゴミになれば絶対にバレないし、昼寝ができる』と豪語し、全電源を意図的に遮断。あまつさえコンソールに私物のクッションを敷き、よだれを垂らして熟睡し始めたのです」

「おまっ…!? フィ、フィリアァ!? てめぇ、自分の命欲しさに主人をあっさり売り飛ばしやがったな!?」

 

 

 タチバナの悲鳴のような抗議を完全に無視し、フィリアは教官に向かって完璧な美しい角度で一礼してみせた。

 

 

「私には、彼がいびきをかきながら『へへへ…後方事務官の椅子…誰も来ない安全な星でスタンプ押すだけ…ふにゃあ』と、寝言を垂れ流していた音声データ。および、終始白目を剥いて爆睡していたコックピット内映像ログが、すべてハイレゾ音質で保存されています。教官、軍法会議への確たる証拠として、今すぐお手元の端末へ転送いたしましょうか?」

「きっ、貴様ぁぁぁーッ!!」

 

 

 教官の堪忍袋の緒が、文字通り物理的な音を立ててぶち切れた。

 

 

「神聖なる帝国軍の最新鋭シミュレーターを! 貴様個人の、ただの昼寝用のベッド代わりに使ったというのかぁぁぁッ!!」

「ひぃぃぃぃっ! ごめんなさい! 違うんです、これは不可抗力で…!」

「問答無用!! 貴様のその腐りきった性根、次代の司令官に相応しい精神構造に叩き直してやる! こっちへ来いタチバナ!」

 

 

 教官はタチバナの制服の胸ぐらを万力のような握力で鷲掴みにし、床をズルズルと引きずり始めた。

 

 

(終わった。俺の平和な事務官ライフが、この鬼教官の特別しごきによって物理的に粉砕される…!)

 

 

 絶望の淵に立たされたタチバナ。

 

 そして彼の視界の端には、地獄へ引きずられていく主人を、まるで路傍のゴミでも見るような冷徹な紫水晶の瞳で見送っている精霊、フィリアの姿があった。

 

 その表情には「自業自得です、お静かに」という明らかな優越感が張り付いている。

 

 その涼しい顔を見た瞬間──タチバナの中の何かが、弾け飛んだ。

 

 極限の恐怖と、裏切られた怒り。そして「自分だけが安全圏で助かろうとする奴は絶対に許さない」という、彼自身の歪んだエゴイズムが、奇跡的な反撃のインスピレーションを呼び覚ましたのである。

 

 

「ま、待て! 待ってくれ教官! 俺だけじゃない! そいつのログも見てくれ!!」

 

 

 タチバナは教官の腕にすがりつきながら、血走った目でフィリアをビシッと指差した。

 

 

「は…? なにを往生際悪く…」

「俺が寝てる間、こいつが真面目に電子戦の防壁を構築してたと思うか!? 違うね! 教官、そいつのサブモニターのローカルフォルダを開いてみろ! こいつはシミュレーターの超高性能な量子プロセッサをフル稼働させて、自分の趣味の『同人誌の絵』を描いてやがったんだよ!!」

 

 

 その言葉が響いた瞬間、フィリアの能面のような完璧な表情が、ピキリと凍りついた。

 

 

「…ッ!? タ、タチバナ、あなた…私のセキュリティ防壁をいつの間に…!」

「ハッ! 毎日毎日、隣で俺の悪口を手記に書き込んでる奴のモニターくらい、横目でチラ見すりゃ何やってるか分かるんだよ! 教官、早く! 右下の隠しディレクトリだ!」

 

 

 教官はタチバナのただならぬ気迫に押され、半信半疑のままフィリアのコンソールへと歩み寄り、マスター権限で強制アクセスを行った。

 

 ピピッという電子音と共に、誰もいない広大なシミュレーションルームのメインスクリーンに、フィリアが演習の裏で隠れて描き進めていた「大作」が、軍事用の8K超高解像度で大々的に投影された。

 

 そこに映し出されていたのは──

 

『歴史上の暴君(皇帝)を女体化した美少女が、丈の短い学生服を着こなし、重厚なタクティカル・スナイパーライフルを構えている』という、設定が渋滞しすぎている極めてマニアックなフルカラー・イラストレーションであった。

 

 銃身のライフリングから、タクティカルベストの留め具、そして制服のシワに至るまで、常軌を逸した解像度と執念で描き込まれている。それは確かに、凄まじい熱量が込められた神絵であった。

 

 ただし、神聖な帝国軍の演習中に描くものでは絶対にない。

 

 

「な」

 

 

 教官はスクリーンを見上げたまま、完全に言葉を失って絶句した。

 

 

「見ろ教官! こいつは軍のシミュレーターの演算能力を無駄遣いして、女体化皇帝とアサルト兵装というニッチすぎる性癖の錬成をしていたんだ! 電子防壁を構築してたように見えたのは、ただのダミープログラムだ!」

「あ、あ、ああ…」

 

 

 フィリアの顔が、かつてタチバナが見たこともないレベルで真っ赤に染まり上がっていく。彼女は震える手でコンソールを隠そうとしたが、もはや後の祭りであった。

 

 

「ち、違います教官! これは決して私の個人的な趣味などではなく、歴史的指導者の概念的転換と旧式火器の戦術的有用性を掛け合わせた、高度な社会文化的シミュレーションであって…!」

「黙れぇぇぇぇッ!!!」

 

 

 教官の咆哮が、ドームの天井を揺るがした。

 

 

「貴様ら揃いも揃って、帝国の誇る最新鋭設備をなんだと思っている!! 一人は昼寝のベッドにし、もう一人は低俗なラクガキのキャンバスにするとは!! 貴様ら二人の腐りきった性根、まとめて宇宙の塵になるまで再教育してやる!!」

「ひぃぃぃぃっ!」

「きゃああっ!?」

 

 

 教官はタチバナの胸ぐらを右手に、そして完璧な令嬢を気取っていたフィリアの首根っこを左手に引っ掴むと、怒涛の勢いでドームの出口へと向かってズンズンと歩き出した。

 

 

「タチバナ! あなたという人間は…! 自分が地獄に落ちるからといって、巻き添えにするなんて最低のクズです!」

「うるせえ! 俺を売って自分だけ涼しい顔してやり過ごそうなんて、百年早いんだよこのポンコツ精霊! はーっはっはっは! ざまぁみろ!」

 

 

 教官の恐るべき握力で引きずられながらも、タチバナの胸中には、ある種の清々しいほどの達成感が満ちていた。

 

 

「離してください! 私の、私の大作がまだ未保存で…!」

「アハハハハ! 消えろ消えろ! んなモン電子の海に消えちまえ!」

「問答無用だバカモノ共がぁ!!」

 

 

 無人のシミュレーションルームに怒り狂う教官の怒号と、悲痛な叫びを上げる精霊、そして高笑いするタチバナの声が虚しく響き渡った。

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