界渡りの不確定な切り札 作:アルフレッド
『我が名はユニクロン』
『汝らの目の前にある光体が我が意志でありエネルギー体である』
これが星の意志だというのか?
『そうだ』
俺の心を読んでいるのか。
『そういうわけだ』
『我は遥かな過去において宇宙の破壊と混沌を司り【星帝】と呼ばれ【邪神】と呼ばれ【カオスブリンガー】と呼ばれたもの』
「破壊と混沌を司る邪神、か……」
『恐ろしくないのか?』
「今のところ、俺たちを助けてるからな」
「そんな破壊神が、なんでこんな状態になっている?」
『我はすでに創造神に敗れ、我が意志は希薄になってきている』
『だが我が体は星として残り、希薄なる遺志はこの星を制御するだろう』
『だがそれでも星帝と呼ばれた力は残る。その力を継承するものとしてキョウスケ・ナンブ、おぬしに来てもらった』
「……なぜ俺だ?」
『汝だからだ』
「答えになってないぞ」
『汝は力に飲まれない、汝は力を制御する、汝は力と共鳴する』
『そして……汝は力の使い方をすでに知っている』
「俺に何をさせたい?」
『何も』
「何?」
『我は汝に力を託す。それを何に使うかは汝が決めればよい』
「俺がその力を、お前の望まないことに使ったらどうする?」
『それもまた汝の選択だ』
『汝らは拠点を欲しがっていたな。我が体であるこの星を使うが良い。人型にはもうなれぬが居住するには不便はあるまい』
「いいのか?」
『我がここまで意識を保ってきたのも継承者が欲しかったため』
『汝が継承してくれるならそれもまた本望』
『新たなる星帝よ』
「それはいらない」
「「「「「「「……」」」」」」」
『……そうか』
「ああ」
『ならば、キョウスケ・ナンブよ――』
『我が遺志と力だけでいい受け取ってくれ』
『汝らの言う光の玉【スパーク】にキョウスケ・ナンブが触れれば継承へと至る』
俺は言う通り【スパーク】に手を近づけた。
触れた瞬間、念動力と共鳴したのか様々な【力】が俺の中に発生したのがわかった。
『最後に残った我が力で、中層部を汝らが住めるよう整えておこう』
『さらばだ』
「さらばだ、孤独なる破壊神よ」
レモンが息を吐いて。
「真面目過ぎて口をはさめなかったわ。ここが惑星サイズだとしたら中層部だけでも相当な広さね」
「レモンさん口を挟まなくてよかったと思いますよ?」
クスハはさすがに空気が読めるな。
レオナが俺を見て首を傾げる。
「で、隊長は結局この星の王様になるんですの?」
「……勘弁してくれ」
「ですが、この星の所有権と管理権を譲渡されたのは隊長ですよね?」
「……そうなるな」
「では実質的には――」
「それ以上言うな」
レモンが追撃してくる。
「諦めなさい、キョウスケ自身が管理システムの主になったようなものよ」
「まずは格納庫まで戻ってみんなに説明しなくちゃ」
「さいわい継承式の動画は撮っておいたから、説明の手間は省けるし」
「ラ・ギアスの皆さんも来るんですよね」
さすが気遣いのクスハ、誰かとは違う。
セニアが代表してなのか、口を開く。
「はい、お世話になることになると思います」
「さて帰るか。シャインも待っているだろうしな」
◇ ◇ ◇
キョウスケside
リニアシャトルの中……
「なるほど……目の前にタブレットが出てくる感じなのか」
「あらキョウスケ、【力】を確認してるの?」
「ああ、レモンか。二時間あるしな。今のうちに確認しとかないとみんなに説明するときに何ができるかわからないという羽目になる」
「中枢部にコアともいえるエネルギー炉がある。もちろんスパークとは別のものだ。それと大規模な元素変換装置があるな。鉱山の代わりになる。中層部の広さは二段に分かれていて二つ合わせて地球レベルはあるな」
「便利すぎね」
「そうだな。ただし全部使えるとは思わない方がいい」
「どうして?」
「俺たちしかいない」
「……ああ」
「地球一個分の土地があっても、管理する人間がいなければ意味がない」
「ウェンディに協力してもらってWシリーズの起動を進めておくわ」
「それと元素変換……なんでも作れるの?」
「いや。生命体は無理らしい。植物も含めてな」
「じゃあ食料は?」
「自分たちで作るしかない」
「……鉱山はいらないのに畑はいるのね」
「そういうことだ」
「そして格納庫があったあたりは外縁部になるな。格納庫の他にも工場やここに攻めてこれる人間がいるかわからないが戦闘区域になりそうだ」
「それとレモン、早めにシステムXNの解析を進めてくれ。ユニクロンが新しい居住地になるとはいえ元々の俺たちの世界も気になる」
さすがにレモンも真面目な顔になった。
「そうね。転移先はランダムになるでしょうけど一度転移したところの座標をわかるようにした方がいいわね。システムXNも中枢部に移して端末だけを外縁部に作れるようにしておくわ」
「ああ、どうやら人工的に太陽光を再現して、二十四時間周期で昼夜も作れるらしい」
「食糧生産は今のところ量産型Wを優先してまわしましょう」
「水は?」
「問題ない」
「土壌は?」
「必要な成分は元素変換で用意できる」
「……種は?」
「…………」
「ないわよね」
「ないな」
「種は……始めはリクセント公国の資材や病院にあったものを使うしかないか」
「……まだあるぞ」
「え?」
「今のはこの星の機能だ。俺自身に継承された力は別にある」
「…………」
「レモン?」
「ちょっと待って。今ので終わりじゃないの?」
かなり驚いた顔をしてるがあくまで星の機能だ。
「俺が受け継いだ力はまずは『ストレージ』」
「『ストレージ』?」
「そうだな、こういうことができる」
コインを一枚取り出すと、目の前で消してみせる。
「手品?じゃないのよね」
「もちろん違う。出すときはこんな感じだ」
レモンの膝の上にコインはいきなり現れた。
「亜空間にものをしまえるようだ。限界は今のところ不明だな。入れるときは触らないとだめで出すときは1メートルぐらいの範囲なら任意の位置に出せる」
「生き物は?」
「無理らしい」
「時間は?」
「ん?」
「中に入れた物の時間よ。食べ物を入れて一週間後に取り出したらどうなるの?」
「……そこまではまだ確認してない」
「試してみるか」
腕時計を外して『ストレージ』に入れてみる。
レモンの時計で十分経ったのを確認してから取り出してみた。
俺の腕時計が示しているのは、収納した時刻のままだ。
◇ ◇ ◇
「次は精神コマンドだ」
「まだあるの?」
「まだあるんだよ。これは以前から使えたものを、可視化してくれたようだ」
「正確には、アインストが変化した能力で、人の思いを継承して超能力化させたもの……という感じかな」
「まずはアヤから受け継いだ【加速】。これは移動速度を、本来の限界を超えて引き上げる」
「ただし、単純に速くなるだけじゃない。おそらく肉体と機体、両方に相応の負荷がかかるはずだ」
「次に【熱血】、これはリュウセイから継承した精神コマンドで一撃に込められる出力を一時的に限界突破させる」
「乗っている機体でも生身でもどちらにも活用できるがコレは2割増しぐらいだな」
レモンは冷めた目で。
「【熱血】……ねぇ、キョウスケにはあまり似合わない言葉ね」
「俺が名前を付けたわけじゃない」
「でしょうね。あなたが自分で付けたなら【冷静】とか【賭け】とかになりそうだもの」
「【賭け】は嫌だな」
当たり外れが大きそうだ……
「そしてライから継承した【集中】。これだけは一度……エクセレンを救出した時に使っている」
「知覚・判断・反応精度を高める。そのために居合斬りでパイロットコアを抜き出すことに成功したわけだ」
「そして今使える最後の精神コマンドは【手加減】、これはリシュウ先生に教わったものだ。本気を出して攻撃しても殺さず気絶させることができる」
「ちょっと待って。【手加減】って、どんな攻撃でも?」
「おそらくな」
「リボルビング・ステークを撃ち込んでも?」
「……たぶん」
「それはもう手加減じゃないわよ」
「名前については俺が決めたわけじゃないって言ってるだろ」
まあ超能力のようなものだからな。大体機体が爆発しても気絶で済むというのが俺自身不思議だ。
「……精神コマンドって、かなり無茶苦茶な能力なのね」
「俺もそう思う」
「で、これで全部?」
「精神コマンドはな」
「…………まだあるのね」
「次は特殊技能だ」
「特殊技能?」
「スキルという呼び方もあるな。これはちょっと量がある。」
「今まで俺が修練して覚えたものと継承して覚えたものの2種類がある」
「まず継承して覚えたのは【念動力】。これはアヤやリュウセイから継承したものだ」
「そして、ここからは俺自身が修練して身につけたものになる」
「【インファイト】【ガンファイト】。それとリシュウ先生のところで覚えた【見切り】だな」
「【インファイト】と【ガンファイト】は分かるけど……【見切り】?」
「リシュウ先生に教わった『観の目』だな。相手の動き、視線、重心……そういったものから次の行動を読む」
「なるほど。薪割りしてた成果がちゃんと出てるのね」
「……そこだけ聞くと何を習ってたのか分からないな」
「【底力】……これは説明いらないわね」
「なんでだ」
「あなたを見てれば分かるもの」
「そして【カウンター】も、敵より先に仕掛ける……というより、相手が動いた瞬間に潰す能力か」
「それも今さらね」
「…………」
「特殊技能に関してはこれからの俺の生き方にもかかわってくるから何が増えるか俺も分からない……」
「もしかしたら魔法や忍法を覚えるかもな」
「それはないでしょ」
「そうだな」
◇ ◇ ◇
二時間後――
俺たちはシロガネのある格納庫へ戻ってきた。
シロガネへ戻った俺たちは、さっそく主だったメンバーを集めた。
レモンが撮影していた映像も使い、ユニクロンとのやり取りから、この星の機能、俺が継承した力について一通り説明する。
なお、エクセレンはまだ眠ったままだ。
……起きていたら絶対に面倒なことになっていただろうから、今だけは助かったと思っておこう。
一通り説明を聞いたシャインが口を開く。
「つまりキョウスケ様が、この星の所有者になられたということですの?」
「……そういう言い方はやめてくれ」
間違ってはいないんだが独裁者みたいで気分が良くない。
そして新しい仲間、ラ・ギアス組を紹介する。
レモンが。
「ウェンディとセニアには技術関係を手伝ってもらうわ」
「もう決まってるのか?」
「帰りに話しておいたもの」
「……仕事が早いな」
システムXNを使って俺たちの世界を探すのが当面の目標だ。
が、その前に俺たちは生き延びなければならない。
「ヤンロンとテュッティは、量産型Wを使って農地の造成を頼む」
「分かった」
「シャインはリクセント公国から運び込んだ物資の確認を。食料と種になりそうなものを優先してくれ」
「承知しましたわ」
「ウェンディとセニアはレモンと一緒に技術関係を頼む」
「任せて!」
「はい」
住む場所はできた。
水もある。資源もある。
だが、人手も食料も足りない。
元の世界へ帰る方法すら、まだ見つかっていない。
それでも――
何もない次元の狭間を漂っていた時よりは、ずっといい。
まずはここで生きていく。
すべては、それからだ。