界渡りの不確定な切り札   作:アルフレッド

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ガンダムSEED編第11話「アルテミス・後編」

キョウスケside

 

「さてどこにいるかな……」

 

とりあえず俺は通気口から出て通路に降り立った。こういうものはびくびくしていた方がばれる確率が高い。堂々と歩いていけば意外とバレないものだ。

 

まずは優先的にアークエンジェルを探すか。ハッチはあそこだったから格納庫はこっちの方かな。

 

前方から二人の兵士が歩いてくる。

 

……まあ、ここで急に引き返す方が怪しいか。

 

そのまま歩く。

 

「…………」

 

「…………」

 

軽く会釈して通り過ぎた。

 

……バレないものだな。

 

……妙だな。

 

補給を受けに来た艦にしては、警備が多い。

 

「見つけた」

 

白い船体が格納区画の向こうに見える。

 

さて。

 

無事に補給を受けているだけなら、俺の仕事はここまでなんだが――。

 

まあそうはうまくいかないらしい。

 

ストライクのOSのロックをキラが外すように強要されているな。

 

人質はマードックやノイマン、ムウ、それにキラのクラスメイト達か。

 

【加速】!【集中】!

 

瞬時に近づいた俺はユーラシア兵を気絶させ人質を解放した。

 

「よっ!久しぶり最近何してた?」

 

「……あんたと別れたの、ついさっきだろうが!」

 

「そうだったか?」

 

「そうだよ!」

 

「で、何してた?」

 

「見りゃ分かるだろ! 人質だよ!」

 

「それは災難だったな」

 

「誰の話みたいに言ってんだ!」

 

さっきまで他人事だったからな。

 

「キョ、キョウスケさん!? どうしてここに!?」

 

「歩いてきた」

 

「そうじゃなくて!」

 

マードックも驚いたみたいで。

 

「……今、何しやがった?」

 

「少し急いだ」

 

「少し!?」

 

「どうやったんですか?」

 

「企業秘密だ」

 

「またですか!?」

 

「秘密は人間を魅力的にするんだ。憶えておいた方がいいぜ。少年少女たち?」

 

「まあ、積もる話は後だ」

 

倒れたユーラシア兵を見る。

 

「こいつらを殴った以上、俺も堂々と不法侵入者になった」

 

「最初から不法侵入でしょう!?」

 

「……そうとも言う」

 

実はそうとしか言わない。

 

「まあ次はマリューたちを解放してくる」

 

「アークエンジェルはいつでも出られるように準備をしてくれ」

 

「待ちな。俺も行く」

 

「人質だったんだろう。休んでいてもいいぞ」

 

「誰のせいで人質になったと思ってんだ」

 

「ユーラシア軍だろう」

 

「……間違ってないのが腹立つな」

 

「こっちを指揮する人間も必要なのはわかってるだろ。俺よりもムウの方が適任だ」

 

諦めたようにため息をつきながら。

 

「分かった。こっちは任せろ」

 

「頼む」

 

「で、艦長たちがどこにいるか分かってんのか?」

 

「知らん」

 

「…………」

 

「これから探す」

 

「あんたなぁ!」

 

「大声を出すなよ。俺にのされるアルテミス兵がかわいそうだ」

 

っとそうか、アルテミス兵の懐を探って端末をいただく。

 

「指紋認証か。これで良し」

 

気絶してる兵の指でロックを外してアルテミスの地図を出す。

 

「ああ、こいつら縛っておいてくれないか。なるべくならアークエンジェルの営倉の中の方がいい」

 

「じゃあ俺はお姫様たちを助けに行くから……」

 

「……お姫様“たち”?」

 

「二人いるだろう」

 

「ラミアス大尉とバジルール少尉のことか?」

 

「他に誰がいる」

 

「いや……あの少尉をお姫様って呼ぶ奴、初めて見たぜ」

 

「そうか?」

 

「本人の前でも言ってみろよ」

 

「構わんが」

 

「……やっぱやめとけ。撃たれても知らんぞ」

 

「その時は避ける」

 

「そういう問題じゃねえ!」

 

その前に……。

 

「学生のお嬢さんたちは後ろを向くか、さっさとアークエンジェルに乗り込んでくれ」

 

こいつらの服をいただいて着替える。

 

「じゃあムウ、後はよろしくな」

 

「はいよ、お姫様たちによろしく伝えてくれ」

 

端末に表示された地図を確認する。

 

「……こっちか」

 

さて。

 

お姫様たちが大人しく待っていてくれればいいんだがな。

 

……マリューはともかく、ナタルは無理か。

 

俺は端末を片手に通路を歩き出した。

 

◇ ◇ ◇

エクセレンside

 

「ふぅ……ダーリン遅いわねぇ」

 

ミラージュちゃんのコクピットで、私は大きく伸びをする。

 

「まさか中で綺麗なお姉さんでもナンパしてるんじゃないでしょうね♡」

 

ピピッ。

 

「……ん?」

 

センサーに反応。

 

レーダーには何も映っていない。

 

でも――。

 

「あら♡」

 

覚えがある。

 

「また会ったわね、かくれんぼ君♡」

 

私はミラージュフレームのミラージュコロイドシステムを使い姿を消すと岩塊を蹴って別の岩塊にうつった。

 

「こっちも姿は見えないでしょ♡」

 

『消えた……!?』

 

ニコルは周囲を見回す。

 

レーダーにも反応はない。

 

当然だ。

 

あの機体も、自分と同じミラージュコロイドを使っている。

 

『……そういうことですか』

 

だが、ニコルはすぐに考えを切り替えた。

 

『なら――探しません』

 

「あら?」

 

ブリッツがこちらを探していない。

 

そのままアルテミスへ向かっている。

 

「……なるほど♡」

 

私は思わず笑った。

 

「ちゃんと前回のお勉強を覚えてたのね、かくれんぼ君♡」

 

目的を見失わない、有望有望。

 

どうやらミラージュちゃんを見つけるつもりはないみたい。

 

「なるほどねぇ♡」

 

攻撃された瞬間だけ私の位置を推測して、避けながらアルテミスへ向かうつもりか。

 

「ちゃんと考えてきたじゃない♡」

 

私がライフルを撃てば、ビームから射線は分かる。ニコルはそれを利用して回避しながらアルテミスへ接近する。

 

「あらあら♡」

 

一発。

 

避けられる。

 

二発目。

 

また避けられた。

 

「前よりずっといい動きするじゃない♡」

 

「あちゃ~、抜かれちゃった♡」

 

でも。

 

「ダーリンが中にいるのよねぇ……」

 

一瞬考える。

 

「まあ、ダーリンなら大丈夫でしょ♡」

 

むしろ……。

 

「アルテミスの方が心配ね♡」

 

「追いかけてもいいんだけど……」

 

私はアルテミスを見る。

 

「私のお仕事はこっちでお留守番なのよねぇ♡」

 

それにダーリンが中にいる。

 

「まあ……」

 

少し考えて。

 

「かくれんぼ君より、ダーリンに見つかった人の方がかわいそうかしら♡」

 

アークエンジェルの退路を作るために準備しなきゃ。

 

◇ ◇ ◇

キョウスケside

 

どうやらこの部屋が司令官室らしいな。

 

ん?

 

「なんだ?」

 

要塞が揺れた。明らかに外部からの攻撃だ。とはいえまさかエクセレンじゃ無いだろうし……。

まあいい、これも利用させてもらおう。

 

インターフォンを押す。

 

「司令!至急指揮をお願いします!外部からの攻撃です!ザフトと思われます!」

 

扉があいた。

 

「馬鹿な!アルテミスの傘が破壊されたというのか!」

 

「現在周囲にMSが発見されています!機体の数はわかりません!」

 

「敵がザフトかどうかもわかりません。……一人ここにいますし」

 

と言いつつ殴り飛ばした。野心丸出しの司令官は縛ってしまいましょうねぇ。

 

「よっ!かぼちゃの馬車で迎えに来たぞ、お姫様」

 

「誰がお姫様ですか!!」

 

マリューは苦笑、ナタルは眉間にしわを寄せている。

 

「俺の目の前にいる美女たちだけど?」

 

と、言いながら司令室の内線を開く。

 

さっき端末で調べた情報を使って……

 

『司令部より全員に通達! 内部にザフト兵が侵入! エネルギー炉に爆発物を設置した可能性あり! ガルシア司令の命令により全員退去せよ!繰り返す全員退去せよ!』

 

「さて混乱にまぎれて帰ろうか。お二人さん」

 

「……爆発物など本当にあるのですか?」

 

「ないぞ」

 

「…………」

 

「あった方がよかったか?」

 

「そういう問題ではありません!!」

 

マリューが頭を押さえた。

 

「キョウスケさん……あなた、最初から全員を避難させるつもりで?」

 

「この状況で基地に残っても死ぬだけだろう」

 

「それは……そうだけど」

 

「なら問題ない」

 

「問題しかありません!」

 

「……ところで、この男はどうするのです?」

 

「連れていく」

 

「助けるのですか?」

 

「気に入らない奴だからって置いていく理由にはならんだろう」

 

「…………」

 

「あと、こいつには後で話を聞きたい」

 

「そっちが本音ですか?」

 

「両方だ」

 

ちゃんと素巻きにしてあるしな。

 

◇ ◇ ◇

第三者side

 

アルテミスから脱出艇が次々出ていく。

 

エクセレンがそれを見て、

 

「……あら?」

 

さっきまで戦闘態勢だったアルテミスから、次々と脱出艇が飛び出してくる。

 

「…………」

 

『ダーリン、何したの?♡』

 

『少し避難誘導をした』

 

「少し?♡」

 

『少しだ』

 

「……また何か企んでるでしょ♡」

 

『失礼な』

 

「その言い方するときのダーリン、大体何か企んでるのよねぇ♡」

 

『気のせいだ。艦長たちも助けたから俺たちはアークエンジェルで外に出る。エクセレンは脱出艇以外の戦艦の足をついでに潰していってくれ』

 

「りょーかい♡」

 

◇ ◇ ◇

キョウスケside

 

俺たちがアークエンジェルに戻ると、ムウが出迎えてくれた。

 

「遅かったな、お姫様」

 

余計な一言を添えて。

 

「ムウ大尉までその呼び方はやめてください!!」

 

「俺じゃない、そこの色男が言い出したんだ」

 

「責任転嫁はよくないぞ、ムウ」

 

「元凶が言うな!」

 

「どっちに責任があるかの論議は後でするとして、マリュー、全員搭乗したなら発進しよう」

 

「そうね。最近キョウスケが性格が変わったような気がする理由も聞きたいけど。とりあえずはアークエンジェル発進!」

 

「俺は人見知りなんだ」

 

「……人見知り?」

 

「ああ」

 

「私が初めて会った時、いきなり銃を向けてきた人が?」

 

「人見知りだったからな」

 

「どういう人見知りなのよ!」

 

「警戒心が強かった」

 

「それを人見知りって言わないでしょう!」

 

「俺の田舎の方言じゃそういうんだよ」

 

「艦長! 発進します!」

 

「分かってるわ!」

 

マリューは俺を一度睨んで。

 

「……この話、後でするからね」

 

「忘れてくれて構わんぞ」

 

「忘れません!」

 

◇ ◇ ◇

 

「エクセレン」

 

『はいはーい♡』

 

「アルテミスに攻撃を仕掛けたMSは?」

 

『初めてのお使いを終えて帰ったわよ?』

 

「サンキュー、アルテミス内部に生命反応は?」

 

ミリアリアの声が響く

 

「生命反応は?」

 

「……ありません。全員退避したようです」

 

「そうか」

 

「?」

 

「なら問題ない、ありがとう。マリュー艦長、ちょっとアルテミスまで忘れ物を取りに行ってきます」

 

「そういえばゴールドフレームがないわね。気を付けてね」

 

俺はハッチから外に出ると岩塊まで行き【ストレージ】からゴールドフレームを出した。

そのままゴールドフレームに乗り込むとアルテミスの近くまで行き手を伸ばし。

 

「……?」

 

「キョウスケさん、何をしてるの?」

 

『少し待ってろ』

 

アルテミスを【ストレージ】に【収納】。

 

――巨大なアルテミスが消える。

 

周りの目からは一瞬でアルテミスが消えたように見えるはずだ。

 

◇ ◇ ◇

 

ブリッジside

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

ミリアリアが目を瞬かせる。

 

「……アルテミス、どこ行ったんですか?」

 

ムウが額を押さえた。

 

「……あいつが持ってったんじゃないか?」

 

「持ってった!?」

 

ナタルが勢いよく立ち上がる。

 

「軍事要塞をですか!?」

 

そしてマリュー。

 

「キョウスケさん!」

 

『なんだ?』

 

「忘れ物ってゴールドフレームじゃなかったの!?」

 

『ゴールドも回収したぞ』

 

「“も”!?」

 

さらにエクセレンだけは、

 

『あ~あ、やっぱり♡』

 

「エクセレンさん、知ってたの!?」

 

『ダーリンが生命反応なんて確認するから、なんとなく♡』

 

『放棄された軍事施設だ。置いていくのはもったいないだろう』

 

「だからって持って帰る人はいません!!」

 

『今の流行はリサイクルだ』

 

「……なあ、一応聞いていいか?」

 

『なんだ?』

 

「今の、手品ってことで納得しちゃ駄目なんだよな?」

 

『手品だ』

 

「嘘つけ! 要塞消す手品師がどこにいる!」

 

『俺の田舎では普通だ』

 

「その田舎どこだよ!?」

 

飛行機や電車じゃいけないところだ。

 

◇ ◇ ◇

『ダーリン、さっきのかくれんぼ君たち、戻ってくるかもしれないわよ?♡』

 

『そうか』

 

『待ってる?♡』

 

『いや』

 

『でしょうね♡』

 

『忘れ物も回収した。帰るぞ』

 

『要塞を忘れ物扱いする人、初めて見たわ♡』

 

「マリュー艦長戻りました」

 

マリューは頭痛をこらえるように頭を押さえながら。

 

「今のは何だったの?アルテミスをどこに隠したの?」

 

「それはもちろん……」

 

「企業秘密♡」

 

だから俺のセリフを奪うなよエクセレン。

 

「それよりもザフトが戻ってくる可能性があります。すぐにここを離れたほうが良いかと」

 

「そうですね!では月基地に向かい発進!」

 

「了解しました!」

 

ノイマンの返事とともにまた進行方向にエンジンを噴出して止める慣性移動のエコドライブが始まった。

 

「結局補給もできなかったし、胃が痛くなるだけで終わったわね」

 

今度はマリューは胃を抑え始めた。

 

◇ ◇ ◇

ザフトside

 

三機が戻ってくる。

 

『……座標、ここで合ってるよな?』

 

『合っています』

 

『ならアルテミスはどこだ?』

 

『…………』

 

『…………』

 

『…………』

 

イザークが叫んだ。

 

『キョウスケ・ナンブゥゥゥ!!』

 

『いや、まだあいつがやったって決まってねえだろ!』

 

これで十分面白いwww

 

しかも三人はAAもゴールドもミラージュも既にいないから問い質すことすらできない。

 

ニコルだけ冷静に、

 

『僕が破壊したのはアルテミスの防御設備だけです。基地そのものが消滅するほどの損傷は与えていません』

 

『じゃあ、どこ行ったんだよ……』

 

『分かりません』

 

『あの男だ!!』

 

『だから落ち着けって、イザーク!』

 

アルテミス後編END

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