「異次元の人」——高度魔法文明に住むエルフです、なぜか異世界召喚されました。 作:白木ケイ
お知らせ→新たに序章を投稿しました。1章より以前の話です。目次からどうぞ。
この閑話では手紙の送り主である私様と妾様、お二人がご登場です。
どうか皆様、とても厳格である初登場の二方を盛大な拍手でお出迎えください。
そしてボク様も出ますよ!
ついでに踊り場の奥にいる人物も登場します。というか彼女の紹介がメインです。
全然そうなってませんが。
そして初めてのまともな閑話です。少し難産でしたが、まあとにかく。
閑話を書けたぞやったあ!
と思いきや残念!それはプロローグになりましたとさ。
そして、このお話の時系列は15話直後くらいになりそうです。
———
プロローグ 踊り場の奥に潜む者(まあ閉じ込めたのは私だがな)
私達が苦労して作った異空間には一つの屋敷がある。
そして建屋の中には一つの階段がある。それは一階と二階を繋ぐ役割を果たすものだ。
しかし、そこには機能的に一つ余計なものがある。必要がないものと言い換えてもいい。
それは一体なんだろうか。
そう、踊り場だ。
「あ゛ー!ふっざけんなこの!この!」
実は踊り場にはとある大切な役目があるのだ。
決して屋敷を適当に作った結果、意図せず生まれたデッドスペースを誤魔化すために設置した訳ではない。
照明担当の妾が適当すぎる仕事をしたせいで、非常によろしくないレイアウトになっているが、まあ完成したものはしょうがない。
そういえば、どこかの誰かに照明について文句を言われたていたな。
ざまあ。実に無様な妾なことだ。
「な・に・が、お前なら簡単な作業だろう、よ!あたしこんなこと初めてするのよ!知らないことをするのが簡単なはずないじゃない!むきー!」
むきー!妾だって……妾だって必死なんだもん!
そもそも妾の仕事が多すぎなのよー!
なによ、異空間法理の作成と設定だけじゃなくて干渉に対する防御構築とか、とっても面倒な作業を皆で押し付けてきやがって。
ボクはほんの少しだけど手伝ったよ。
それはとっても感謝してる。無言の皆もお手伝いありがとう。
で、挙げ句の果てには全ての仕事を完璧に仕上げた結果、疲れ果てた妾に向けて?
何もしていないお前が?
全く完成していない屋敷の照明を先に設置しろだあ?
そりゃこうなるわよー!
お前は先に妾が設置した照明に合わせてデザインしなさいよ!妾悪くないもん!
なのになんで妾だけ貧乏籤を引かされるのよ。
妾だって、わらわだって、うえーん!
もう知らない!
「あーもう、一応この本も読んで全部理解したけど。今までの常識とは違いすぎるのよ。こんなのどう説明しろっていうのよ。馬鹿どもがちゃんと理解できるか分からないじゃない!」
ふう、よし落ち着いた。
でも踊り場の奥の部屋にいる人物に、妾は心底同情するわ。
こんな性悪が担当なんだものね。
あーあ、とっても可哀想なお人。
でもお似合いかしら。
「はあ、やるしかないのよ」
ならば今からでもお前が代わってもいいんだぞ。
そうだな。是非そうしよう、これで私の面倒な仕事がさらに減るな。
ならば暇な時間でやりたいことができる。
感謝するぞわらわらー!っ!っ!ぐっ!
「気張ってやりなさい。そう、あたしなら出来る!」
あれれー?
突然どうしたんですか。わ・た・し?
まさかこの程度の児戯でそんな無様なことになるなんて。とっても可愛いおバカさん。
ああ、そうねえ。妾達の中で一番怠惰で能力がないくせにプライドだけは高くて、とっても醜い人格だものねえ。
あの人が私の事を見たら、どう思うのかしらねえ?
もしかして……ね?
「でも無理無理ー!一切の前提知識も無しだと話にならないのよ!」
今それを言うのは無しだ!
ふざあああ!っ!はぐっ!この!
「くそあー、今から考えても憂鬱だわー」
そうだ。
可愛い可愛いおバカさんには教育が必要ですよねえ。
またあの地獄を味合わせてあげましょうか?
しかも今度は妾の真心をたっぷり込めて差し上げましょう。
ね?
「くよくよしてても仕方ないわ。とりあえず。まずは土台作りからよ。とにかく頑張るのよあたし!」
ひっ、あ、いやその。
わっ、わかりました。
ひい。
是非やらせていただきます!
真剣にやらせていただきます!
本当に真面目にやります!誠実に!清く正しく!
相手の心に寄り添いながら!
「で、材料がまだ届いてないんだけどー。ちょっとー?聞いてるんでしょー?」
ん?
まさか貴方。
ああ、そういうこと。
お前さぁ。流石にこれは許せないわ。
ねえお前、これがどれだけ大切な舞台なのか理解してるのか?ん?
当然理解できてないんだろうな。そうでなければこんな雑な仕事をするはずないよなぁ。
「なんで呼びかけても来ないのよ。話違うじゃない」
ゆ、ひ、あぁ!
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
もうしませんもうしませんもうしませんもうしませんもうしませんもうしませんもうしませんもうしませんもうしませんもうしませんもうしません。
きちんとやりますきちんとやりますきちんとやりますきちんとやりますきちんとやりますきちんとやりますきちんとやりますきちんとやります。
させてくださいさせてくださいさせてくださいさせてくださいさせてくださいさせてくださいさせてくださいさせてくださいさせてください。
やらせてくださいやらせてくださいやらせてくださいやらせてくださいやらせてくださいやらせてくださいやらせてくださいやらせてください。
どうかお許し下さい。私のせいでそんなことが起こらないように努力します。努力させてください。更生する機会をください。
どうか本当に、本当にお願いします。
私もそうなりたいんです。
「返事もない……なら出来ることはないし、休憩をしましょう」
じゃあさっさとしろ。しくじるなよ。もし失敗したらお前は人格として消滅しろ。
次はもっと真面目で有能な奴にしよう。
ボクは全面的に同意する。此方もだ。わたくしもですわ。アタシも忘れないでね!
これで今返事ができる全人格の同意が取れた。
妾達のルールに基づき、これを個体意思として採用する。
そういうことだ、これに従え。私よ。
返事も無しか。まあいい。
では仕事に取り掛かれ。
「でも、ここだと美味しいお茶が飲めないのよね」
「私が淹れましょうか?」
「は?」
踊り場の奥の部屋にいる彼女は、しばらく返事ができなかった。
「え、え?あんた誰よ。まさかあいつ死んだの?それはとっても嬉しいけど……じゃあこれもお終いってこと?」
「いえ、同一人物ですよ」
「嘘よ!絶対にあり得ない!」
以前の奴とは違う。
踊り場の奥の部屋にいる人物は僅かな、しかし判断するには十分すぎるやり取りでその確信を抱いた。
「その信じられない思い。まさしく私の不徳の致すところでございます。誠に申し訳ありません」
「は?謝罪とかマジですか。そんなの天地がひっくり返ってもあり得ないことなんだけど」
彼女に浮かぶただ一つの強い感情、それは困惑だ。
そして彼女は心の中でこう思う。
誰だこいつ、と。
「以前の私は愚図で愚鈍で必要なことができないゴミクズでした。それを反省し、更生の機会を得まして、私は変化したのです」
「いやもうそれ別人になってるんですけど」
「そうとも言います」
「いや。え?本当に」
そこで見兼ねたボクが現れるのさ。妾は少し仕事ができて対応できなし。いや本人がやりたがっているし、あの仕事はボクもやりたいんなだけど。
まあ頑張ってた妾へのご褒美ということで。
そうなるとボクはちょうど暇になるんだ。
「私という人格は更生しようとしている。それは本当だよ。ボクが保証する」
「うわ、びっくしたあ!」
驚かせてごめんね。
でも君。いいリアクションするね。ヒマイとヨラメの次に面白いよ。でも違う。
「こんにちはボクさん、私です」
「うわなんか、こう見ると気持ち悪っ」
「そうですよね、ボクさんはわかってくれるんですね」
ボクがそういうと、君は涙を流しつつボクに親近感を抱くと。
そして近寄ってきて、手を握る。顔はしきりに頷いているね。
うん、君はすごく素直で何も変化しないね。
ヒマイとヨラメの方は、最初からほんの少しだけズレてくれたのに。
やっぱり君は全く面白くない。
「ああ、良かった。まともに会話ができる方が来てくれて。あたしはボクさんには本当に感謝しています」
これで、ああならなければ、素直に喜べるんだけどさあ。未だに君はああゆう風になるんだよねー。
つまんない。この時間無駄なんだけど。
ほんとにさ、これで邪魔をするならもう殺しているところだよ。
でもしないんだよなー、こいつ。
私も同意します。
そうだね、憂鬱だけどボクは仕事としての演技はしておこう。
「なら良かった。でも君の担当は私の方だから。反省してるようだし、あんまり邪険にしないであげてね?」
「えっと、担当の方を交代していただくことは……お願いできるでしょうか」
は?なに?
お前如きがボクに指図かよ。
何の生産性もないお前が?
あぁ、そんな。ボクに向かって頭を下げて、誠実にお願いしてくるなんてさ。
じゃあ本当に殺してやろうと思ったけど、それはヒマイとヨラメが困るからやめておこう。
あー、ならしょうがないか。
我慢してあげるよ。お前如きにこのボクが。
うん、今なら私の気持ちがよくわかる。それでもあの態度はないよね。
君は謝罪じゃなくて感謝をしろよ?
じゃないとさ、本当にキレそう。
「ごめんねー。いろいろ事情があってそれはできないんだ。本当にごめんね」
「いっいえ、こちらこそ突然のお願いでご迷惑をかけ——ひぃ!」
踊り場の奥にいる人物は、ボクと名乗る存在から放たれた怒気に恐怖した。
私が思うに、ボクよ、あなたは普段の冷静さを欠きすぎだ。何か問題でも発生したのか?
いや別の体の方でさー。
そうか、同じく別のところで愚痴を聞こう。そしてわかってくれたか。
うん、でもね。
それについては、そして今までの行動についても深く反省している。これから先、何か一つでも問題が生まれば遠慮なく消去してくれ。
おお、あの私がよくぞここまで。ボクは感動したよ。そしてお前は黙ってろよ。寄生虫め。
「ボクさんの機嫌を損ねてしまい申し訳ありません!」
脆弱な我らではミスがあるのは仕方がないことだ。
私という人格が反省し、真に更生したのならば、これから先で誠実に貢献する限りは問題ない。
我はそう考える。どうだ。
ボクが集計したよ。我の意見は個体意思として採用だね。
「あの……ボクさん?」
「黙れ」
「はひ」
ボクはもう相手しないから。悪いけど私、あとはよろしく。
「私の方と会話しましょうか。あなたのための材料はこちらに。わかりやすい工作指南書も作成しました。よろしければどうぞ」
「あんた本当に誰なのよ。って、ボクさんがいない。ああ、またあたしやらかしたぁ」
ふむ、私もボクと同じでイライラする。
だが私は変わったのだ。もう皆に迷惑はかけない。
ああしてボクが不調である以上、寄生虫の担当としての仕事をこなさなければ。
頑張ろう私。
「あとは、作業の方をお手伝いいたしますよ?それと最初に求めていた美味しいお茶です。あなたの故郷での好みに合わせてみました」
「なんか、すごく丁寧だけど、すごく不気味ね」
「申し訳ありません、ご不快なところがあればすぐに私の性格を変更します」
「真顔で怖い事言わないでよ」
しかしコレ、あとアレ、それと巻き添え。
この後の私はどうしようかな。ああ、そうしようかな。決定。
1章-2 プロローグ終わり
——備考
・発狂した私様
一体何があったんでしょうね(すっとぼけ)。
まあ、私様でも嫌なことはあるんです。それが本当に大切な事なら尚更ね。
・お前如きがボクに『指図』
この時の踊り場の奥のいる彼女の内心を覗いてみましょう。
思考→絶対にあれとは話したくない。
あんなのが担当なんてふざけやがって。ボクとかいうやつさ。お前が全部責任取れよな。責任を取るのなら担当くらい交代できるよな。
私の願いに従え。肯定の返事をしろ!
はい。しっかりボク様へと『指図』していますね。
なので誤表現とかボク様が事実に沿わない表現をしているわけではないんですよ。ええ。
でも読者の皆様の中で違和感があれば指摘してください。周囲の目を気にしながら。
・脆弱な我ら
お前のような規格外がそんなこと言うなよ!
絶対に皮肉だろこれ!
そう思った読者の方も居られることでしょう。
でもこれは手紙の送り主達の中では不変の真実なのです。手紙の送り主達は……とある事実を知っています。
それは作中世界観で結構な範囲が震撼した出来事です。
でも本作でそれが明かされる可能性は限りなく低いです。
——後書き
本当は怖い手紙の送り主達。まあ、この視点は容赦ない意思の面を少しだけ誇張しているのですが。
あと、読み返して気がついたのですが、意外とキャラの初登場時には作中のどこかで見たことのあるシュチュエーションとか、聞いたことのあるセリフや表現を使いまわしています。
これは、物語の初回、これから何かが始まるんだよと言う作中での共通の雰囲気作りだと思ってください。というか、そうなっているといいなと作者は思います。
でも別にそれを意識して書いているわけではないので、しれっと別のパターンで書くかもしれません。
まあ、今までの物語では異空間という舞台が共通だしね。デジャブがあってもしょうがないよね。
噛みすぎて味がなくなったガムにならないうちに、さっさと次の舞台に行かないと。
でもまだまだ味がするんだよなぁ。
頑張ります。
この作品ではコミカル要素が少ないと思うので、今話はそれを意識して……はいませんでしたが、まあ作者が楽しく書けたのでいいでしょう。
最近少しずつ見ていたとある有名コメディアニメ(作者主観)の影響かな。見ていてとても勉強になりました。あれは1話から本当にすごかった。
これはブラックコメディ(←あんまりよく知らない)な気がする。
抽出方式(作者命名の視点の作り方)は本当に便利だなぁ。
実は書かれてないだけで、同時並行でとても真面目なやり取りもしてるんだよなあ、と思う作者でした。
おしまい。
白木ケイ