「異次元の人」——高度魔法文明に住むエルフです、なぜか異世界召喚されました。   作:白木ケイ

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——前書き
 筆談の続きからです。主人公よ、はよ運動してくれ(作者の嘆き)。
 短めです。


第3話 ボカーン!(誠に、心から反省しています)

 

 

 俺の些細ではない懸念はさておこう。

 妾さんが記入した続きだ。

 

『実に気分がいい。ここまで良いのは久しぶりだ。だからエイサンドの状態について教えてやろう。』

 

 エイサンドの状態について教えられてもな。正直に白状すると、あまり関心がない。

 それよりも俺が知りたいのは。

 

『あなた方について教えてください』

『やだ』

 

 どうしてそうなる。

 俺は純粋に情報を教えてほしいだけだ。当然、皆さまのプライベートには配慮する。

 

『そんな風にお主が手を合わせて、うるうるした瞳で見つめられても、無理なものは無理』

 

 これはいけるかも。

 さらに、うるうる。

 

『妾達のことは絶対に教えないから』

 

 やっぱりダメでした。

 

『そうですか、ではエイサンドさんについて教えてください』

 

 俺は肩を落として落胆を表現する。

 ここで紙の続きをちらり。

 

『妾達についてそんなに興味があるの?』

 

 よしきたよっしゃー!

 

『はい、是非教えてください』

 

 主に安全保障上の切実な理由で。あとはほんの少しの好奇心だ。

 

『いつか、お主に教える。妾が。』

『約束ですよ』

『約束する』

 

 これで確約がとれた。

 しかし、もはや必要が無くなった頃に教えられるような気がしてならないのは何故だろうか。

 この懸念が当たりませんように。

 

『では話を戻してエイサンドについてだ。彼は今、トマトによって受けた洗脳を自力で克服し始めている。このまま数時間もすれば完全に抜け出せるだろう。』

 

 エイサンドさんの洗脳が解けそうで良かったですね。

 

『元々の彼は、ありのままの現実を受け入れる性格だ。あえて悪くいえばドライな傾向がある。そして、目的のために手段を選ばない。』

 

 あの友情に熱い漢、エイサンド、は消え去ろうとしている。少し寂しいな。

 そして、残るのは面倒くさい方のエイサンドか。

 

『まあ、落ち着いた後にお主から軽く謝罪しておけばよい。その時、抜け目のない彼から出される要求を飲む必要はない。』

『真剣に配慮した結果、利益にならない場合は無視すると』

『それでいい』

 

 改めて見返すと、エイサンドさんにとって何一つ益のない酷い内容だ。

 

『では要望の続きを』

『要望4、これは罠ではない。少なくともお主に対するものではない。』

 

 この前置きを見ればわかる。この先、ろくなことが書かれるはずがない。

 少し加速して、今のうちに覚悟しておこう。俺は胸に手を当てて深呼吸をした。

 よし覚悟完了、少し速度を下げる。

 

『自然な機会を待って自室に戻れ。机の上には新たな依頼と卵型の何かが置いてある。お主がそれ読み、卵のような何かを《収納》すれば異世界召喚だ。』

 

 俺はお地蔵のように固まる。しかし、俺の心はこれまたお地蔵のように穏やかであった。

 というか満面の笑みだった。

 

『繰り返すがこれは罠ではない。』

 

 久々に閾値を超えた驚愕を味わったよ。妾さん、星を破壊するスマート爆弾をお持ちなのですね。

 というか。

 

『もしかして寝ている間に俺の荷物から盗りました?』

『そして改造した』

 

 わー、この天災め。

 お前の余計な配慮のせいで改造されたじゃねえか。ふざけんなこれ、どうしてくれるんだよ。

 だから俺はいつもセキュリティをしっかりしておけと。せめて、認証機能くらいつけておけよ。

 そもそもブツが盗まれたことに気づけなかった俺も間抜けだな。

 

『いくつですか?』

『誓って書くが、これはお主への罠ではない。』

『いくつ盗りました?』

 

 文字から滲み出るインクのシミが、俺の感情の強さを表していた。

 本気でキレそう。

 

『お主に渡す改造用に一つ。サンプルとして一つ。合計二つ。』

 

 ここで妾さんが弱々しく文字を震わせようが、俺は許さない。

 

『そうですか。お役に立ちましたか?』

『申し訳ない』

 

 何故ここで謝罪するのだろうか。妾さんが独りよがりな俺の怒りを気にする必要はないはずだ。

 妾さんは妾さん達の利益のために行動した。その結果、俺が一方的に激情に駆られているだけだ。

 

『お役に立てて何よりです。次があれば事前にご相談くださいね。』

 

 後先考えずに、俺の使える最強の攻撃魔法で異空間を壊してやろうか。無理そうだけど。

 そしてもし仮に実行しても、手紙の送り主達の作品がほんの少し壊れるだけだ。かの存在の生存を脅かすことはできないだろう。

 

『本当に申し訳ない。』

 

 今必死に抑えているんだから少し黙れよ。余計なことを書くな。

 

『謝罪は結構ですよ。』

 

 そうだな、二度経験して理解した。一度目は部屋を出た直後の白魔女によって、二度目は今回の件で。

 これが異文化コミュニケーションの真髄というやつだ。価値観が違うからこそ、容易に他者の逆鱗に触れる。

 他人の振り見て我が振りなおせ。俺も注意しないとな。このまま生きていれば。

 

「ふざけるな」

 

 まあ、順当にいけば俺の攻撃魔法は無効化される可能性が高い。

 そして俺は反撃を受け……そもそも魔法を放つことすらできずに、何もできずに終わるだろう。

 死にたくないなぁ。

 

「俺は生きて故郷に帰りたい。戻りたい」

 

 怒りで余裕がなくなった俺は、つい奥底の本音が漏れ出していた。

 ごめんよ。俺が間抜けなせいで、お前から贈られた爆弾を奪われてしまったよ。

 しかも力不足で取り戻せないんだ。本当にごめん。

 こうして情けない事情を説明したら、あいつは許してくれるだろうか。

 ……笑いながら新しい起爆スイッチを作りそうだな。そして奪われたスマート爆弾が爆発する。

 俺もそうしたいのは山々だが、やり方がわからない。

 そして俺はふと、前を向いた。

 

『お主の足元に爆弾のスイッチを転送した。それを押せば件の犯人を爆破できるぞ。』

「ブフッ」

 

 それはずるい。

 でも笑いが止まらない。

 

『既に犯人は妾によって拘束済みだ。そして申し訳ないが、爆弾が奴の至近距離で爆発しても死ぬことはない。』

「そうか」

 

 俺は足元のスイッチを躊躇することなく踏みつけた。カチッ。

 ボカーン!

 

第3話終わり

白木ケイ




——備考
・お地蔵さん
 これは翻訳の結果です。本来は別の固有名詞になります。名前は考えていません。

・作中で主人公がキレた理由
 天才にして天災なる友人からの大切な贈り物を知らない奴らに奪われたから。ただそれだけ。
 主人公にとって友人からの贈り物は、たとえゴミであっても、それに対して文句を言っていても、例外なく奪われてはならない大切なものである。
 それらが他者の窃盗の対象になることは主人公にとっては許容できないことである。
 正味、手紙の送り主達の目的や用途については興味がない。
 ちなみに、いくら友人から贈られた大切なものとはいえ限度はある。というより、主人公は使用用途の自由があると信じている。
 それはノイエルに渡した女性物の服が該当する。主人公的には持っていても使わないし、渡しても惜しくない物である。
 ここで読者の皆様は大切な物とは何かについて、深く考えてはいけない。

 たとえば、ある友人からカビの生えたパンをプレゼントされた場合、それはすぐに焼却されるか有機物リサイクル用のゴミ箱行きとなる。
 いろんな意味で、口にすることはない。

・主人公のスマート爆弾を奪ったお馬鹿な犯人は?
 察してください。

・なぜ主人公の足元に爆弾のスイッチが?
 それも察してください。犯人がわかれば自ずと推測できると思います。
 読者への指示ばかりで申し訳ありません。

——後書き
 ギャグって難しいですね。それと、作品の路線は迷走中です。

白木ケイ
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