「異次元の人」——高度魔法文明に住むエルフです、なぜか異世界召喚されました。 作:白木ケイ
——前書き
今更ですが、今作は独自設定ばかりです。
今話は短めです。
次回更新は少し時間がかかります。お待ちください。
紙のやり取りとはいえ、ずいぶんと楽しませてもらった。
手紙の送り主の盗みを許すことはないが。
それはそれ、これはこれだ。
『少しは楽しんでもらえたか?』
『はい。件の犯人はどうなりましたか?』
『自主的に無防備となり、爆破で怪我をした。今は痛みに悶えているな。』
星を破壊できるスマートな爆発の直撃を、無防備のまま生き残る犯人か。
これは、手紙の送り主の正体に関する大きな手がかりだ。
一連の妾さんの記入が嘘でないと仮定しよう。俺が知る限り、スマート爆弾の直撃を生来の能力で耐えられる種族は以下の三つだ。
スピル種、アトラ種、フロワ種。
残念ながら、俺には彼ら彼女らの詳細な知識はないし、実際に会話したこともない。
詳細な知識はないが、俺はこの三種族について保護者から印象的な話を聞かされたことがある。
◇◇◇
一つ目、アトラ種について。
初接触は共同体-システム歴400年代だそうだ。
基礎教育課程で学ぶ歴史において、同時代に第一次総力戦と呼ばれる出来事がある。
これは公式には、突如発生した侵略行為にエルガルド共同体は大きな損害を被りつつも、システムにより撃退されたという内容だ。
しかし、保護者曰く。
「本当は偶発的な事故の結果だよ」
「というと?」
「とある目的地に移動するアトラ種は、偶然にも道中に存在するエルガルド共同体の統合システムによる転移妨害に接触。そして移動が阻害された結果、故郷の居住拠点への不時着事故を起こしました」
「はい?」
「その結果、不幸なことに当時の戦闘防衛システムはいとも容易く崩壊し、当該居住拠点は消滅しましたとさ」
何も笑えない。
そして、後の聞き取りの結果、本人曰く目的は単なる移動で、敵対的な侵攻ではなかったことが判明。そこからいろいろあって、現代ではアトラ種と故郷は友好関係にあるそうだ。
いいのかそれで。
二つ目、スピル種について。
彼らは故郷の成立以前よりの友好関係と聞いた。統合システムの開発にも携わっているらしい。
しかし、仮に彼らが共同体への侵略を決定した場合、降伏以外に選択肢はないそうだ。
彼らの能力は十分なので、あとは意思次第。
保護者からは。
「エルガルド共同体は、いつでも、どこでも、常に崩壊の危機に瀕している……それは今起こるかもしれない」
という冗談を言われた。
俺の顔は引き攣っていた。
三つ目、フロワ種について。
主に植物の姿を持つ種族らしい。
保護者は、俺にある童話を聞かせてくれた。
あるところに、そこそこ発展した星間文明がありました。
星間文明は、新しく植民に適した星を発見し、開拓を開始しました。
そこには一輪の、ものすごく綺麗な、お花の姿をしたフロワ種が住んでいました。
星間文明の開拓によって、その星にある元々の景色は様変わりし、やがて星の大地のほとんどが文明色に塗り替えられてしまいました。
ある時、その星で自然保護区の解体が決定されました。解体作業員の一人は思います。
この雄大な自然の景色を眺められるのもこれで最後だと。
彼はそのまま機械を操り、自然を壊していきます。
でもその星に住むフロワ種は特に気にしていません。なぜなら安住の地を見つけたからです。
作業員は仕事を終え、家に帰ります。そこには趣味でお庭のガーデニングを行う彼のパートナーがいました。
二人はとても仲睦まじい夫婦です。
休暇中のパートナーは帰ってきた作業員を迎えようと駆け寄ります。
その時、彼女が偶然放り出したガーデニング用の小さなスコップが、いつのまにかお庭に生えていたお花の上に落ちてしまいました。
可哀想なことに、そのお花は潰れてしまいます。
仲睦まじい二人が抱きしめ合うその瞬間、潰されたお花であるフロワ種が怒ってしまい、星間文明を築き上げた種族は綺麗さっぱり絶滅しましたとさ。
おしまい。
「ということで、この事象を詳細に観測したエルガルド共同体は、生存圏内の植物を徹底的に保護することにしたのよ」
だから故郷では病的と評されるほどに環境保護に取り組んでいるのか。
というか。
「全然、笑えない」
「ちなみに、調査の結果なんと私達の生存圏内には四桁ものフロワ種が生息していましたとさ」
「地雷、多くないですか」
「それ、いい表現。今度会話する時に伝えておこうか?」
「本当にやめてください」
冗談でも怖いこと言わないで。
それ、笑えないから。
「ここで注意です。もし仮にフロワ種に遭遇したら全力で媚びへつらいなさい。特に、怪しい植物には要警戒ね」
「はい」
俺はその場で頷くしかなかった。
「それと、他にも理不尽な力を持つ種族はたくさんいるからね」
俺はその場で慄くしかなかった。
◇◇◇
『怪我の程度は大丈夫でしょうか?』
『心配してくれるのか。お主、優しいな。』
そんなことはない、推測を確信に変えたいだけだ。
『妾が爆破の威力を水滴サイズに収束させて当てたが、皮膚に多少の火傷を負ったくらいだな。治そうと思えばすぐに治る。』
『反省の意を込めて自主的に苦しんでおくと』
『その通りだ。』
天才にして天災なる友人作、スマート爆弾は全て同じ原理で動作する。
シリーズでの違いは効果範囲とエネルギー密度。
妾さんの記述によれば星を破壊する効果範囲を水滴に集めたらしい。エネルギー密度は何倍だろうか。
そして、手紙の送り主はそれを受けて軽い怪我で済むらしい。
「本当に笑えない」
つまり、手紙の送り主達の正体は先に述べた三種族と同等かそれ以上の力を持つ存在だ。
絶対に勝てない。
俺は爆弾を窃盗した件について諦めることにした。
第4話終わり
白木ケイ
——備考
・アトラ種
交通事故で拠点(人口10億の巨大拠点及び何重もの防衛網)を紙のように破壊してしまった。
当時の彼女は内心でめちゃくちゃ平謝りしていた。
一般アトラ種「本当にごめんなさい!」
そして、現代では共同防衛協定を締結済み。有事の際は彼ら彼女らが協力してくれる!
安心安全!
余波には目を瞑ろう!
・スピル種
エルガルド共同体とは、能動的武力行使に関する協定を締結している。
これはスピル種にのみ片務的な安全保障義務を負わせる内容。これまで、エルガルド共同体の脅威を事前に露払いしてくれていた。
エルガルド共同体がそこそこ発展した共同体-システム歴1912年の現代では、そのお仕事は下火になりつつある。
当然、スピル種にはそれを提供した十分な見返りがもたらされる予定。
統合システムは必死に頑張っている。
この種族のエピソードが短いのは、単純に作者が思いつかなかったから。
・フロワ種
とっても自由気ままに生きている、知的な植物の種族。その姿は苔から大木まで幅広い。
当たり前だが人化はできる。
なんの前触れもなく星が爆発した場合、原因は彼らかもしれない。
共存ガチャ大失敗の筆頭。よほど上手くやらない限り、いつか文明を滅ぼす種族。
道端に生えている雑草を踏みつけたせいで、文明が崩壊し、種族が絶滅するとか普通は考えない。考えたくもない。
エルガルド共同体はとても上手くやっている。
・他の理不尽な種族
たとえばそれは、お水様に酷似していたり。
限りなくお空気様に似ていて見分けがつかなかったり。
その辺のお岩石様だったり。
それらは発見されていないだけで、割とどこにいてもおかしくない。
・犯人の怪我
星を破壊するスマート爆弾の爆発、その全ての威力を収束させて人差し指に当てた結果、非常に軽い火傷を負った。冷やせば治る。
つまり爆破の成果はそれだけ。
謎の犯人「いたい。でもこれは反省の痛み!」
——後書き
そこにある植物を慈しむエルフ(ルガル種)。皆さんのイメージ通りですよね?
というか保護しないと滅亡しますから、かなり必死です。
エルガルド共同体において、植物を蔑ろにする思想家は(適切な合法化手続きを行わなければ)問答無用で粛正されます。
投稿時点での続きの進捗状況。
現在、第5話の制作途中です。書き直しの連発です。
白木ケイ