中国・軽慶市、発光する乳児が生まれたというニュースから全てが始まった。
それを皮切りに世界各地で超常を持つ人々が発見され、なぜ超常が生まれるのか理由も判然としないまま時が流れた。生物が生きるために進化するように超常が日常に溶け込み、数十年たって世界総人口の約8割が何らかの特異体質を持つようになる超人社会となった。
その社会の中でも動物の力を持つ超常者がいる。その超常者たちは2つに分けられる。動物に姿を変える者、動物の要素を持つ者だ。特に完全な動物の姿に変えられるため、見た目だけでは動物なのか動物に姿を変えた人間なのか判断が難しい。また、超常が動物の姿での力のみに限定される。一方で後者は見た目で何の動物なのか見抜くのが容易であり、超常が付与される形で力が底上げされる。社会になじみやすいのはどちらかといえば後者だ。動物の力が人間の姿で行使されることで使い勝手もいい。そのため動物に姿を変える者は実質的な超常を持たざる者、無個性者と同等として社会に溶け込めずにいた。そんな者たちはどのような道を選んだのか、それは人としての意識を捨ててその動物として生きる道だった。
超常を持つ元人間と動物、その間に生まれた子供はどうなるのか?その答えは不完全な人格が芽生え、動物でありながら微量な超常を持つようになることだ。しかし、大量の黒に少量の白を混ぜても黒に限りなく近い色になるように動物の思考に似通っている。超常の中でも動物の力を持つ者、その中でも動物に姿を変え、社会に溶け込めない者が最終手段として滅多に進む事のない道。そのため生態系に及ぼす影響はゼロに近かった。だが、ある蛇に先祖返りもいいことに完全な超常を持った蛇が現れた。
◇ ◇ ◇
超常の影響で人間の要素が強く現れ、はっきりとした人格を持ち、人間と同じくらい長寿となった。しかし、その蛇は自らが超常を持っていることを自覚していなかった。
(そうだ、人間に会ってみよう!)
記憶の遺伝で微かに脳裏に浮かぶ人間という生き物に興味を持った彼は、住んでいた山を下りて町へと這っていった。
(これが人間が住むコロニーか!)
心が踊り、町を見ながら這って進んでいると山に似た自然が少し施された区域があることに気づいた。
(ここは私の巣窟のある場所に似ているな)
区域の中へと進んでいったが、この行為が間違いであったと気づくのにそんなに時間はかからなかった。
「お!白蛇がいるぞ!お前ら見たことあるか?」
「見たことない!」
そのとき遊んでいた小さな人間に囲まれ、いきなり首を掴まれた。
(な、何をする!?)
「へぇ~、目が赤いんだな!おもしれえ!」
(放せ!!)
木の内部に似た毛色の子供に首を掴まれ、尻尾も持ち上げられて自由が利かなくなった。拘束から逃れるために牙を見せながら暴れると、逃れることができたが突然身体が動かなくなった。子供が足で踏みつけたのだ。
(グエッ!!)
「よくも俺を噛んでくれたなあ!!」
暴れたときにこの子供を噛んでしまったらしく、報復と言わんばかりに踏みつけられた。何度も何度も踏みつけられて逃げる力もなくなりかけたとき、急に踏みつけられなくなった。なぜ助かったのか周りを見ようとすると、明らかに優しい力で抱えられた。
「何すんだクソデク!!」
「かっちゃん!!いくら何でも動物に暴力はいけないよ!!」
山の新緑より深い緑の毛色は自然と心を落ち着かせ、抱きかかえる力加減がより私を安心させた。
「チッ、テメェは無個性らしくそのクソ蛇と仲良しこよししてろや!!」
手から火花を出して私に当てようとするが、その全てを子供が身を挺して庇ってくれた。火花を出した子供がその場を去ると、子供が声をかけた。
「大丈夫?」
(大丈夫だ。君が守ってくれたおかげでな)
「それにしても、君は白くて綺麗だね!」
(褒めてくれるのか?ありがとう、君は優しいな)
「そうだ!僕の友達になってくれない?」
(友達………?)
「僕、友達がいないんだ。もし君がなってくれるなら嬉しいな」
(もちろんだ!)
人間の言葉を話せないため、返事の代わりに鎌首を持ち上げて頷いた。
「っ!!よろしくね!!」
こうして私は出久という子供と友達になった。