「奴ら1日中あのままだぜ!」
「鏑の索敵があってよかった、普通なら念のために水中に何人か伏せておくべきだもの………」
「緑谷ちゃん、やめて、怖い」
『出久、反省は二の次だ。今やるべきことはこれからどうするか考えることだ』
「そ、そうだね」
『このまま水辺に沿って広場を避けて出口に向かうのはどうだ?』
「峰田くん、つっ梅雨ちゃん。これからだけど、このまま出口へ向かって助けを呼びに行くのが最善だと思う」
「そうね、広場は相澤先生が敵を大勢引き付けてくれている」
広場に目を向けると、未だ土煙が上がり相澤先生が戦い続けているのがわかった。ただ、相澤先生は本当に多対一が得意なのか?自らがヒーロー、ましてや後ろには戦闘経験がなく未熟な学生。多対一が苦手でも戦い、学生を少しでも安心させるために無理を通したのではないか?そんな考えが浮かんできた。そしてその考えに出久も至っていた。
「相澤先生、やっぱり僕らを守るために無理を通して飛び込んだと思うんだ」
「おい、まさか緑谷………バカバカバカ!」
「邪魔になるようなことは考えていないよ。ただ、隙を見て少しでも先生の負担を減らせればって」
「な、なあ緑谷。様子を見るだけだぞ?様子を?」
「ケロ」
「わかってる、危ないと感じたらすぐ逃げるから!」
広場が見える位置、かつ逃げることができる位置まで近づき、相澤先生の戦う様子を伺っていた。一瞬優勢を確認して安心したが、手が身体中に付けたヴィランによって肘が崩れたことで形勢が変わった。いや、蓄積されていたのだろう。そしてさらに巨体ヴィランが参加したことで一方的に暴力を受けるようになった。相澤先生が敵わない相手に私たちが勝てるはずがない。無暗に向かえば死ぬのがオチだ。
「イレイザーヘッド、教えてやるよ。そいつが対平和の象徴、怪人「脳無」」
「み、緑谷ダメだ………さすがに考え改めたろ?」
「ケロ………」
『相澤先生が戦ってこれということは、個性を消した素の力であれほどということか………』
巨体ヴィランは到底人のような声を発しておらず、明らかに他のヴィランと違い一線を越えていた。見ることしかできない中、私たちを転移させたモヤヴィランと手を付けたヴィランが話し出した。
「死柄木弔」
「黒霧」
「13号はヤったのか?」
「行動不能にできたものの散らし損ねた生徒がおりまして、1名逃げられました」
「は?はァ………黒霧お前!お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ!」
『明らかな苛立ちを見せないよにする仕草もない、戦闘のセンスは高いが精神は子供だな』
「さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ。あーあ、今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」
私はそれに違和感を感じた。
(13号先生と相澤先生が重症という状況はオールマイトを殺すという目標に対して明らかに少ない………何かある)
「君が悪いわ、緑谷ちゃん」
「これだけのことをしといてあっさり引き下がるなんて………」
何かあった時に備え、出久から隣の蛙吹の首に渡ろうとするとヴィランが呟くのが聞こえた。
「あ、そうだ。帰る前に平和の象徴としての
『伏せろ!!』
「へし折って帰ろう!!」
出久に叫ぶとともに蛙吹の首に移動し、蛙吹と峰田の首を互いに引き寄せて体勢を崩した。軌道上にあった蛙吹の顔は体勢が崩れたことでヴィランの手を躱した。
「チッ、本っ当かっこいいぜ。イレイザーヘッド!!」
『離脱しろ!!蛙吹に峰田回収指示!!』
「蛙吹さん!!峰田くんを!!」
「わかったわ!!」
「DETROIT SMASH!!」
出久が目の前の水を叩いて高い水の壁が生成された隙に出久の首に戻り、蛙吹と水中を潜水して逃げた。私だけが顔を水面から出し、状況を把握しようとした。だが、その必要は一瞬でなくなった。
『出久、来たぞ。顔を出しても大丈夫だ』
出久が蛙吹に出ても大丈夫なことを伝えて3人が顔を出した。
「ああ、コンティニューだ………!!」
「来た?誰が………オール……マイト!!」
「オールマイト!!」
「ケロ!!」
「待ったよヒーロー、社会のゴミめ!!」
オールマイトに安心していると、瞬きの間にオールマイトに担がれて移動していた。相澤先生の方を見たが、既にオールマイトによって救助されていた。
「皆入口へ!!相澤くんを頼んだ!!意識がない、早く!!」
「オールマイトダメです!!あの脳みそヴィラン、僕の力が効かなかった!!きっとあいつ………!!」
「緑谷少年!!大丈夫!!」
そう言ってオールマイトはヴィランに向かっていった。3人で相澤先生を担ぎ、散り散りになっていないクラスメートがいる出口へと向かった。
「何でバックドロップで爆発みたいになるんだろうなあ!!やっぱダンチだぜオールマイト!!」
「授業はカンペ見ながらの新米さんなのに!」
『これでようやく終息か?』
だが、オールマイトがあの脳無に拘束されているのが見えた。
『オールマイト!!』
「蛙吹さん」
「何?緑谷ちゃん」
「相澤先生担ぐの代わって」
「ケロ……けど何で?」
私は理由を察した。そして出久はオールマイトの方へ走っていった。
「フルカウル12%!!」
だが靄のようなヴィランが現れて私たちを包み込もうとしたときに勝己が横やりを入れた。
「どけ邪魔だデク!!」
そのままモヤヴィランを押さえつけると同時に、轟が脳無を凍らせた。
「オールマイト!!」
それにより、オールマイトが拘束から抜け出せた。
「スカしてんじゃねえぞモヤモブが!!」
「平和の象徴はテメェら如きにヤれねえよ」
「かっちゃん、みんな!」
「このうっかり野郎め、思った通りだ!!モヤ状のワープゲートになれる箇所は限られてる!!そのモヤで実体部分を覆ってたんだ!!そうだろ!?全身モヤの物理無効人生なら、あんとき危ねぇっつう発想が出ねぇもんなあ!?」
「っく!!」
「動くな!!怪しい動きをしたと俺が判断したらすぐ爆破する!!」
「ヒーローらしからぬ言動………」
勝己がモヤヴィランを抑え、さらに脅しで身動きをとれなくしていた。
「攻略された上に全員ほぼ無傷、すごいなあ、最近の子どもは。恥ずかしくなってくるぜ、ヴィラン連合」
その直後、巨体ヴィランが動き出した。
「「『!?』」」
「身体が割れてるのに動いてる!!」
「みんな下がれ!!」
そのヴィランは全員の目の前で割れた腕と足を再生させた。
「なんだ!?ショック吸収の個性じゃないのか!?」
「別にそれだけとは言ってないだろう?これは超再生だね。脳無はお前の100%にも耐えられるよう改造された、超高性能サンドバック人間さ」
オールマイトの言葉に嬉々として情報を答えるヴィランに寒気がした。これほどの情報を言うということは、こいつがオールマイトを殺せる自信があるということだからだ。
「まずは出入口の奪還だ。行け、脳無」
出入口と聞いた瞬間、私はモヤヴィランを抑えていた勝己が危ないと悟ったが伝えることができなかった。こいつの通常速度は私の反応速度と同等!!
『勝己!!』
「かっちゃん!!」
余波に軽く吹き飛ばされ、気づけば勝己と切島が隣にいた。
「かっちゃん!?避けたの!?すごい!!」
「違えと黙れカス!!」
『………オールマイトの対応力は凄まじいな』
2人の代わりに拳を受け止めたのはオールマイトだった。
「3対5だ」
「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた!!」
「とんでもねえ奴らだが、俺らでオールマイトのサポートすりゃあ撃退できる!!」
「ダメだ!!逃げなさい!!」
「さっきのは俺がサポートに入らなきゃヤバかったでしょう?」
「それはそれだ轟少年、ありがとな!!しかし大丈夫!!プロの本気を見ていなさい!!」
オールマイトは私たちに逃げるよう言い、ヴィランに向かっていった。しかしその攻撃の余波はとんでもなく大きく、ヴィラン含め巨体ヴィラン以外の全員が風圧に吹き飛ばされた。
「真正面からの殴り合い!!」
「す、すげえ!!」
「君の個性が無効でなく吸収ならば!!限度があるんじゃないか!?私対策!?私の100%を耐えるなら!!さらに上からねじ伏せよう!!」
『な、なんてパワーだ。時間が少ないのにも関わらず一発一発の威力がワンフォーオール100%を超えている!!』
「ヒーローとは!!常にピンチをぶち壊していくもの!!」
巨体ヴィランは、オールマイトがショック吸収の容量を真っ向から越える量の拳の雨を浴びせた。
「ヴィランよ、こんな言葉を知っているか!?さらに向こうへ!!
そのまま巨体ヴィランを吹き飛ばし、USJの屋根を突き破った。
「コミックかよ、ショック吸収をないことにしちまった……究極の脳筋だぜ」
「でたらめな力だ………再生も間に合わねえほどのラッシュってことか」
「やはり衰えた!!全盛期なら5発で十分だったろうに、300発以上も打ってしまった!!」
だが、私と出久はオールマイトが限界に近いことを知った。土煙に混じるフォームが変わる際の煙、喋るだけで動かない、限界を超えていることなど容易に考えついた。
「オールマイト………」
「さすがだ、俺たちの出る幕はねえみてえだな」
ヴィランがオールマイトに近づこうとするのを見て出久が飛び出した。
『出るなら事前に言え!!』
「オールマイトから離れろ!!」
『………酔った』
速度的に出久は無意識にワンフォーオール100%を出力したことを察した。私の三半規管が耐えきれず、視界に異常をきたしたからだ。だが出久の拳が当たることはなく、モヤヴィランのゲートによってヴィランの射程が伸びて手が出久に近づいてきた。出久がまだ空中にいたということ、私が速度に酔っていたこともあって対応が遅れた。ただ、出久に害が及ぼされるようなことはなかった。
何かがヴィランの手に当たり、軌道が逸れたことで出久は無事だった。
「「「!?」」」
「来たか!!」
雄英の先生方が到着し、スナイプ先生による狙撃がヴィランの右手を打ち抜いたのだ。
「1ーAクラス委員長!!飯田天哉!!ただいま戻りました!!」
プロヒーローである先生方によってヴィランたちが次々に制圧されていった。
「あーあ、来ちゃったよ。ゲームオーバーだ、帰って出直すか黒霧………」
逃げようとしたヴィランをスナイプ先生が撃ったが、黒い靄に阻まれた。
「今回は失敗だったけど今度は殺すぞ!!平和の象徴オールマイト!!」
捨て台詞とオールマイトが吹っ飛ばした巨体ヴィランを残し、ヴィランはその場から消え去った。
『終わったな』
「鏑、僕、何もできなかった!!オールマイトがいなかったら………!!」
「そんなことはないさ」
「『オールマイト!!』」
「君がヴィランへ攻撃したその数秒、それがなければ私はやられていた。また救けられちゃったな」
「オールマイト……無事でよかったです……!!」
ワンフォーオールを100%使ったことで両足が折れてしまった出久と共に担架で保健室に運ばれた。幸いにもリカバリーガールの治療のみで済んだため、その日のうちに帰宅が可能になった。
ということでUSJ襲撃を終えたということで1期が終わりました。
これから2期に入っていきます!