雄英体育祭へ
翌日、臨時休校だったので1日中出久と身体を鍛えた。最近の出久は天井を見せず、未だに1次関数のように個性と技術を伸ばし続けている。今の私は蛇の身体を活かした攻撃予測と索敵を可能にしている。だがUSJ襲撃を受け、ヴィランを身に染みて体験したことで出久と共に自らの力不足を感じた。
「オールマイトはああ言ってくれたけど、ワンフォーオールの扱いもまだまだだ。もっと頑張らないと!」
『現状で出力はフルカウル12%まで、1学期の間にある程度まで出力できるようにしたいな』
さらに想定外の実戦を経験したことで出久は自身の足りない部分に気づいたらしく、より連携を高める訓練を繰り返した。
休み明けのHR、包帯で包まれたままの相澤先生が教室に入ってきた。
「おはよう」
「「「相澤先生復帰早え!!!」」」
「プロすぎる!!」
「相澤先生!!無事だったのですね!!」
「無事言うんかなあれ………」
「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ、戦いは終わってねえ」
その言葉に教室が一気に静まり返った。
「………雄英体育祭が迫ってる」
「「「クソ学校っぽいの来たぁぁ!!!」」」
教室が湧いたが、中には心配の声も挙がった。
「待って待って!」
「ヴィランに侵入されたばっかなのに体育祭なんかやって大丈夫なんですか?」
「また襲撃されたりしたら………」
「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示すって考えらしい。警備も例年の5倍に強化するそうだ。何より
『なるほど、確かに体育祭は大事だな』
「
「当然全国のトップヒーローも観ますのよ、スカウト目的でね」
「卒業後はプロ事務所にサイドキック入りがセオリーだもんな」
「そっから独立しそびれて万年サイドキックってのも多いんだよね。上鳴あんたそーなりそう、アホだし」
「当然、名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる。時間は有限、プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。年に1回、計3回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ。その気があるなら準備は怠るな!!」
「「「はい!!!」」」
「HRは以上だ」
体育祭に向けて昨日の練習が適しているのではと2人で相談した。
◇ ◇ ◇
昼休みに食堂へ向かっている道で出久が麗日に聞いた。
「そう言えば麗日さん」
「何?」
「麗日さんはどうして雄英に?プロヒーローになろうとしてるの?」
「え、えっとそれは………」
「お、お金!?お金欲しいからヒーローに?」
「き、究極的にいえば………」
『お金がなければ人は生きていけないからな、そういう者もいるだろう』
「なんかごめんね!不純で!飯田くんとか立派な動機なのに………私恥ずかしい」
「なぜ!?生活のために目標を掲げることの、何が立派じゃないんだ!?」
「うん、けど意外だね」
「………ウチの実家、建設会社やってるんだけど全然仕事なくて素寒貧なの。あ、こういうのあまり人に言わん方がいいんやけど」
「建設………」
飯田と出久は麗日の個性がいいのではと考えたが、小さい時の麗日も同じことを考えて父に言ったらしい。だが、父に夢を叶える道を進むよう背中を押されたらしい。
「私は絶対ヒーローになって、お金稼いで、父ちゃんと母ちゃんに楽させたげるんだ!!」
麗日の決意を知り、出久と感心しているとオールマイトが現れた。
「緑谷少年がいた!!」
「オールマイト!!どうしたんですか!?」
「ごはん一緒に食べよ?いいかな?」
「ぜひ!」
『誘うということはワンフォーオールのことか?』
人気のない教室で語られたのはオールマイトに残る個性についてだった。
「『50分前後!!?』」
「ああ、私の活動限界時間だ、無茶が続いてね。あの脳無とやらも手強い相手だった。痛かったし。マッスルフォームはギリギリ1時間半ぐらい維持できる感じ」
『出久に個性を譲渡した影響もあるんだろうな』
「そんなことに……ごめんなさ………」
「ハーーッハッハッハ!!」
「謝らんでいいよ!まったく、似たとこあるよな!君と私!」
『出久はすぐ謝るからな』
「そんな謝ってる!?」
「それより体育祭の話だ。ぶっちゃけ、私が平和の象徴として立っていられる時間って実はそんなに長くない」
「そんな………!」
「悪意を蓄えている奴の中にそれに気づき始めている者がいる。君に力を授けたのは、私を受け継いでほしいからだ。雄英体育祭、プロヒーローが、いや、全国が注目しているビッグイベント。今こうして話しているのは他でもない、次世代のオールマイト、平和の象徴の卵。緑谷出久、君が来た!ってことを世の中に知らしめてほしい」
『具体的に何をすればいい?まさか………』
「優勝はできなくてもいい、ただ自己アピールを必ずしてくれ」
「わかりました!」
その日の放課後、帰ろうとするとA組の教室の前に人だかりができていた。
「君たち、A組に何か用が………」
「出れねーじゃん!何しに来たんだよ?」
「敵情視察だろ、雑魚。ヴィランの襲撃を耐え抜いた連中だもんな、体育祭の前に見ておきてえんだろ。そんなことしても意味ねぇから、どけモブ共」
「知らない人のこととりあえずモブっていうの止めなよ!」
すると、普通科らしい紫髪の男子が前に出てきた。
「噂のA組、どんなもんかと見に来たが随分と偉そうだな。ヒーロー科に在籍するやつはみんなこんななのかい?」
『皮肉だろうが、私たちと勝己を同じ物差しで測るな』
勝己の後ろで出久たちが必死に首を横に振っていた。
「こういうの見ちゃうと幻滅するなぁ。普通科とか他の科って、ヒーロー科落ちたから入ったってやつ結構いるんだ。知ってた?そんな俺らにも学校側はチャンスを残してくれてる。体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ」
『これほどの自信、ヒーロー科を落ちたのにもかかわらず体育祭で勝てる確信があるのか?』
「敵情視察?少なくとも俺は「いくらヒーロー科とはいえ調子に乗ってっと足元掬われちゃうぞ」っつう宣戦布告しに来たつもり」
(((この人も大胆不敵だな!!!)))
堂々と宣戦布告をした。その後にB組の男子が言った。
「ヴィランと戦ったっつうから話聞こうと思ってたんだけどよぅ!エラく調子づいちゃってんなオイ!」
勝己はそれすらも動じずにそのまま帰ろうとした。
「待てコラ爆豪!どうしてくれんだ!おめェのせいでヘイト集まりまくってんじゃねーか!」
「関係ねえよ、上にあがりゃ関係ねえ」
「っく!シンプルで男らしいじゃねえか!」
「言うねえ」
「上か、一理ある」
「いや騙されんな!!無駄に敵増やしただけだぞ!!」
『出久、私たちも行こう。鍛える時間がもったいない』
「う、うん」
出久を催促し、グラウンドβに向かった。
グラウンドβ含む雄英のグラウンドは、事前に申請を送って許可が得られれば放課後に借りることができる。雄英体育祭まであと2週間、出久と街中を移動する訓練をした。出久は戦闘においてかなり成長しているが、移動するのにもワンフォーオールをうまく使えば速く動くことができるはずだ。私は身体の使い方をアドバイスして、出久にうまく障害物を使って最高速を維持するコツを教えた。
「どうして鏑はそんなに知ってるの?」
『まあ、調べたからだな』
毎晩こっそり起きてパソコンで出久に有益な情報を探して調べていたと言えるはずがなく、曖昧に答えた。
『出久、前から思っていたんだがいつも拳ばかりじゃないか?』
「え?どういうこと?」
『攻撃手段が拳だけということだ。足を使わないのか?蹴りがあると聞いたが』
「あ………」
その言葉で表情が変わり、いきなり生き生きし始めた。
「そうか!!どうして今まで考えていなかったんだろう!!」
体育祭までに出久がより動けるように鍛えさせていると、あっという間に体育祭となった。