最終種目までの昼飯を兼ねた休憩時間、出久と共に轟に呼び出された。
「あの、話って何?早くしないと食堂すごい混みそうだし」
勝己とはまた違った圧を感じた。
「………気圧された。テメェの誓約を破っちまう程によ。飯田も上鳴も八百万も常闇も麗日も感じてなかった。最後の場面、あの場で俺だけが気圧された。本気のオールマイトを身近で経験した俺だけ」
「それ、つまりどういう………」
「お前に同様の何かを感じたってことだ」
「『っ!!』」
「緑谷、お前………」
「『え?』」
斜め上の質問に出久と私の目が点になった。
「どうなんだ?」
「ち、違うよそれは!!って言ってももし本当に隠し子だったら違うって言うに決まってるから納得しないと思うけど、とにかくそんなんじゃなくて!!そもそも聞くけど、なんで僕なんかにそんな………」
「「そんなんじゃなくて」って言い方、少なくとも言えないつながりがあるってことだな?」
「っ!!」
『誘導が上手いな、轟』
「俺の親父はエンデヴァー、知ってるだろ?万年No.2のヒーローだ。お前がNo.1ヒーローの何かを持ってるなら俺は、なおさら勝たなきゃいけねえ」
『親と師匠の確執を持ち込むと?笑止だな』
「親父はきわめて上昇志向の強いやつだ。ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたが、それだけに生ける伝説オールマイトが目障りで仕方なかったらしい。自分ではオールマイトを超えられねえ親父は次の策に出た」
「何の話だよ、轟くん。僕に何を言いたいんだ?」
「個性婚、知ってるよな?超常が起きてから第2~第3世代間で問題になったやつ。自身の個性をより強化して継がせるためだけに配偶者を選び結婚を強いる。臨死間の欠落した前時代的発想。実績と金だけはある男だ。親父は母の親族を丸め込み、母の個性を手に入れた。俺をオールマイト以上のヒーローに育て上げることで自身の欲求を満たそうってこった。うっとしい!そんな屑の道具にはならねえ!記憶の中の母はいつも泣いてる。俺の左側が醜いと、母は俺に煮え湯を浴びせた」
「『っ!!』」
「ざっと話したが、俺がお前に突っかかるのは見返すためだ。クソ親父の個性なんかなくたって、いや、使わず1番になることで奴を完全否定する!!」
轟は言い終えたのか、その場を去ろうとした。
「お前がオールマイトの何であろうと、俺は右だけでお前の上に行く。時間取らせたな」
『出久!!呼び止めろ!!』
「と、轟くん!!」
轟がこちらを振り向いた。
『出久、言ってくれ。右だけ使えば最悪凍死するぞ、と』
「っ!?………轟くん!!右だけ使ったら凍死するんでしょ?」
「っ!!何でそれを!?」
「轟くんの目的は知らないけど、成し遂げたとしても死んじゃったら元も子もないよ!!」
『轟、純粋にヒーローになりたいと思ったことがあるんじゃないのか!?』
「轟くんも、ヒーローになりたいって思ったことがあるんでしょ?」
『父親の炎?母親の氷?2つが混ざった時点でそれは轟の力だ!!』
「エンデヴァーと轟くんのお母さんの個性、2つが混ざったらそれはエンデヴァーの個性じゃなくなるんだ!!君の、轟くんの個性なんだ!!」
「っ………!!」
再び背中を向けた轟の雰囲気が変わった。
焦凍 side
「エンデヴァーと轟くんのお母さんの個性、2つが混ざったらそれはエンデヴァーの個性じゃなくなるんだ!!君の、轟くんの力なんだ!!」
「っ………!!」
緑谷の言うことを頭で理解した時、小さい時の記憶が呼び起こされた。
リビングでお母さんとテレビを見ていた。そのテレビでオールマイトが言っていた。
「個性というものは親から子へと受け継がれていきます。しかし、本当に大事なのはその繋がりではなく自分の血肉、自分である!と認識すること。そういう意味もあって私はこういうのさ、私が来た!ってね。」
「いいのよ、お前は。血に囚われることなんかない。なりたい自分になっていいんだよ。」
鏑 side
「俺だってヒーローに………」
「轟くん?」
「ありがとう、緑谷」
「轟くん!」
「でも、まだ迷ってる。体育祭じゃ全力は無理かもしれねえ」
「いいんだ、轟くん。今のうちに迷って迷いまくるんだ」
「ちょっと1人にさせてくれ」
『さあ!!昼休憩も終わって!!いよいよ最終種目発表!!っとその前に?予選落ちのみんなに朗報だ!!集まれ体育祭!!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!!本場アメリカからチアリーダーも呼んでより一層盛り上げ………』
マイク先生の視線の先では、A組の女子6人がチアリーダーの服を着ていた。
『どーしたA組!?どんなサービスだそりゃ!!』
「峰田さん上鳴さんだましましたわね!!」
峰田と上鳴がガッツポーズをし合っており、私は遠い目をしておいた。
「なぜこうも峰田さんの策略に嵌ってしまうの私……衣装まで創造で作って………」
「アホだろこいつら!!」
「まあ本選まで時間空くし、張り詰めててもしんどいしさ!!いいじゃん!!やったろ!!」
「ええーーーっ!?」
「透ちゃん、好きね」
『さあさあ!!みんな楽しく競えよレクリエーション!!それが終われば、最終種目進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!!1対1のガチバトルだ!!』
「最終種目は
「去年トーナメントだっけ?」
「形式は違ったりするけど、例年
「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうよ!!組が決まったらレクリエーション挟んで開始になります。レクに関しては進出者16名は参加するもしないも個人の判断に任せるわ!息抜きしたい人も温存したい人もいるしね。じゃあ1位のチームから………」
「あの!!すみません、俺辞退します」
何と、尾白がトーナメントを辞退すると申し出たのだ。
「尾白くん!!何で!?」
「せっかくプロに見てもらえる場なのに!!」
「騎馬戦の記憶、終盤ギリギリまでほぼぼんやりとしかないんだ、多分やつの個性で」
『尾白が組んでたのは誰だ?………ダメだ、覚えてない』
「チャンスの場だってのはわかってる。それを不意にするなんて愚かなことだってのも」
「尾白くん………」
「でもさ!!みんなが力を出し合って、争ってきた場なんだ!!こんな……こんなわけわかんないままそこに並ぶなんて、俺にはできない!!」
「気にしすぎだよ!本選でちゃんと成果を出せばいいんだよ!」
「そんなん言ったら私だってそうだよ」
「違うんだ………俺のプライドの話さ。俺が嫌なんだ!」
すると、同じ理由でB組の庄田二連撃という生徒も辞退を申し出た。
「なんだこいつら!!漢らしいな!!」
「そういう青臭い話はさあ………好み!!庄田、尾白の棄権を認めます!!」
(((好みで決めた!!!)))
抜けた2人にB組の鉄哲と塩崎という生徒が入り、トーナメントが発表された。
「抽選の結果、組はこうなりました!!」
画面にトーナメントが表示された。
『第1試合か、轟も勝てば2回戦で戦うことになるな』
「心操ってたしか………」
「アンタだよな?緑谷出久って」
「!?」
『こいつか………』
その心操という生徒が出久の後ろに立っていた。
「1回戦、よろしく」
「よ………」
「緑谷!」
出久の口は尾白の尻尾に塞がれた。それを見た心操は不敵な笑みを浮かべて去っていった。
「尾白くんどうしたの?」
「ヤツに答えるな」
「………えっ?」
『それが心操とやらのキーか』
『よーし!!それじゃトーナメントは一先ず置いといて!!It's ツカノマ!!楽しく遊ぶぞレクリエーション!!』
レクリエーションを楽しめと言われても、トーナメントの参加者は難しい。参加者たちはトーナメントに向けて最終調整をしていた。俺と出久は尾白から心操のことを聞いていた。