出久と友となり、私は出久の家の庭に巣窟を移動させた。
「おはよう!
『いい朝だな、出久』
巣窟を移動させた後、出久と話したいと願ったときに出久に言いたいことを伝えることができた。なぜなのかは知らないが、出久と心を通わせることができて嬉しくなった。
「お母さん!!鏑の言ってることがわかるんだ!!」
「え!?」
その時の出久とその母は何やら盛り上がっていた。
ようやく落ち着いた出久は私にケージに入るよう言った。
「鏑、入ってくれないか?」
『ここにか?どこかへ行くのか?』
そのケージはいつも私が出久と共に外へ出かけるときに入るケージだった。そのことからどこかへ行くのだと察した。
◇ ◇ ◇
ケージは出久に抱えられ、ケージの網から外を見ると白い壁の建物が見えた。
「鏑、あそこに行くんだ」
『あの建物で何をするんだ?』
出久はあそこで行われることを私に教えてくれた。
「あそこで「個性」を診てもらうんだ」
『「個性」?』
「人間が持ってる特別な能力のことだよ。僕が鏑と話せることが個性なのか診てもらうんだ」
受付の近くにある四角い箱から紙を取ると、広けた場所にある椅子に座って待っていた。出久によると、順番を待っているらしい。
「あ、呼ばれた」
『ようやくか』
呼ばれたらしく、出久に持ち上げられて真っ白な部屋に連れられた。
「蛇と話せるようになって………」
「見せてもらってもいいかな?」
私は真っ白な服を着た人の目の前で出久と話せることを証明した。
「これは間違いなく個性でしょう」
「本当ですか!?」
「はい。鏑くんでしたっけ?出久くんと意思疎通しているので個性でしょう」
出久は今まで「個性」が発現しなかったらしい。私は「個性」が発現したこと、純粋に出久と会話できたことを喜んだ。
「これからもよろしくね!鏑!」
『もちろんだ!』
個性を得たことで出久のモチベーションが上がり、出久は再びヒーローの夢を抱くようになった。私は出久のために何かできないかと考え、出久の家で放されていたため夜になってからオールマイトの動画を見るためだけに出久が使っていた「ぱそこん」というものを借りた。
文字に関しては出久の「どりる」の表面の僅かな温度差で形状を把握して読む練習から始め、気づけば計算や漢字など「きょうかしょ」の内容を全て理解することができるようになった。
『筋トレ?これが良いのか?』
調べるうちに今から始めるのは出久の成長に関わることも知り、今はランニングなど軽い運動から始めさせることにした。
翌朝、早速出久に運動について提案した。
『出久、1つ提案がある』
「提案?」
『そうだ、出久はヒーローになりたいだろう?何の努力もなしにヒーローになるものはいないと私は思う。今からでもその努力を始めないか?』
「確かに………する!僕頑張る!」
『出久ならそう言うと思っていた』
出久に走り込みを指示し、自身も壁越しに出久の熱源を追いかける練習をした。4年も続けると遠くの熱源の特徴などを把握することができた。
その頃には出久は中学校に通い始めた。
ヒーローになるために1番の最適解は雄英高校に通うこと、そのため私と出久は「雄英高校に入学する」ことを目標にした。そして出久と今できることを相談した。その結果、すべきことを2つ導き出した。1つ目は体力を増やし、筋トレをすること。2つ目は近くにある海浜公園にある大量のゴミを掃除すること。
『ヒーローとは慈善活動なのだろう?ヒーローへの第1歩として最適なのではないか?』
「確かに!」
さらに出久の母に許可を取って早朝の配達バイトをすることで体力を増やすことも始めた。
◇ ◇ ◇
その結果、たった2年で制服の下に立派な筋肉が顔を覗かすようになった。十分に筋肉を付けたため、海浜公園のゴミをサンドバックにして出久と対人戦闘の練習を重ねた。
そんなある日、重そうなゴミが出久に落ちそうになっていた。
『出久!左後ろ、ゴミが落ちてくるぞ!』
「えっ!?」
出久はすぐに反応してゴミを避けきった。そして何かを思いついたのか、私に笑顔で提案してきた。
「今思いついたんだけど!!一緒にヒーローにならない!?」
『一緒に……?いいのか……?』
「うん!鏑は周りをよく見てるし、鏑がいれば何でもできる気がするんだ!」
『わかった、2人でヒーローになろう!』
こうして私の定位置は出久の首となった。
『出久、首が気持ち悪くないか?』
「大丈夫だよ」
出久は自らが憧れるヒーロー「オールマイト」を真似たのか、武器を持たずに拳のみでの近接戦闘を主とするようになった。