今日も出久の母に内緒で隠れて中学に来ている。ちなみに私はバレないように襟の隙間に隠れている。
「お前らも3年と言うことで本格的に将来を考えていく時期だ。今から進路希望のプリントを配るが、まあ大体ヒーロー科志望だよねぇ」
担任はクラスを見渡してそう言った。
「先生!皆とか一緒くたにすんなよ!俺はこんな没個性どもと仲良く底辺なんざ行かねえよ」
クラスでブーイングが飛ぶ中、担任は勝己が雄英であることを明かした。
「雄英って国立の?」
「今年偏差値79だぞ!」
「倍率も毎度やべぇんだろ?」
勝己が自信満々に雄英高校志望を自慢する中、担任が出久の志望先を漏らした。
「そういえば緑谷も雄英志望だったな」
クラスが笑いに包まれる中、勝己は出久の机を壊した。
「無個性同然のテメェがなんで俺と同じ土俵に立てるんだ!!」
「昔は嘆くだけだったさ。でも、今なら君と多少渡り合える!!」
「やってみやがれ!!」
勝己が爆破で突っ込んでくるが、長い間一緒にいた私たちは知っている。勝己の攻撃の最初は大抵右の大振りだ。出久は拳を躱すと掌底を勝己の腹にあてた。
「ウグッ!!」
「僕はもう前の弱い僕と違うんだ!!」
これにはクラス全体が驚いていた。無理もない、鍛錬は私と出久の他には母しか知らない秘密だったからな。
『ざまぁないな』
かつて私に力を奮った出久の幼馴染、勝己の拍子抜けた顔は実に面白い。
放課後、私は出久の首に巻きつきながら帰路についていた。
『出久、勝己に言われたことは気にしないでいい。今まで頑張った自分を信じればいい』
「ありがとう、鏑」
すると、突然下から水が弾ける音が聞こえた。直近で大雨は降っていない。となると可能性は………
『出久!!マンホールから異常だ!!』
「何!?」
私が出久に伝えると同時にマンホールが浮き、液体状のヴィランが姿を現した。
「Mサイズの隠れ蓑ォォ!!」
『出久!!逃げろ!!』
「うん!!」
私は攻撃の方向を的確に言うことで出久の手助けをした。
「上手く避けたなァァ!!」
そのヴィランの後ろから近づく人影があった。あの特徴的な髪型と輪郭は………
「もう大丈夫だ少年たち!私が来た!」
『「オールマイト!!」』
「TEXAS SMASH!!」
オールマイトはたった拳一振りでヴィランを気絶させ、ペットボトルに詰め込んだ。詰め込み終えたオールマイトは緊張でガチガチの出久に話しかけた。
「元気そうで何よりだ。いやぁ悪かった、ヴィラン退治に巻き込んでしまった。いつもはこんなミスはしないのだが、オフだったのと慣れない土地で浮かれちゃったかなぁ!あはははは!」
出久は本物のオールマイトに話しかけられたことで緊張し、頭が混乱しているようだった。
「サインしてもらっても!?」
「もちろんさ!」
「あああああありがとうございます!」
そのまま去ろうとするオールマイトに対し、出久はオールマイトの足に抱き着いた。
『出久!!?』
「こらこらこら!!離しなさい!!」
「あ……な……た……に……!!」
「OKOK!わかったから目と口閉じな!」
強烈な空の旅を終え、ある屋上に降りた。私と出久が息を整えてから、出久がオールマイトに聞いた。
「個性がなくてもヒーローはできますか?個性のない人間でもあなたみたいになれますか?」
すると突然、目の雨のオールマイトがしぼんで別の人のようになった。
「しぼんでる!さっきまで……え!?偽物!?」
『オールマイトなのか!?』
「見られたついでだ少年、間違ってもネットには書き込むな」
そういってオールマイトは経緯を話してくれた。5年前にヴィランとの戦いで負った傷のせいで活動限界が短くなったこと、それを公表していないことを。
「プロはいつだって命がけだよ。力がなくとも成り立つ、とはとてもじゃないが口にできないね」
事実上の否定を憧れから聞いた出久はショックを受けていたが、私は出久を鼓舞した。
『出久、だからといって今まで頑張ってきた努力が無駄になるとは思えない。自分を信じろ』
「………うん、そうだね」
すると、帰り道でヴィランが暴れているのを見かけた。暴れているヴィランは先程オールマイトが制圧したはずのヴィランだった。さらに、勝己がそのヴィランに捕まっていた。
「えっ!?」
『オールマイトが捕まえていたはずでは!?』
「………僕のせいだ。」
『出久?』
出久の方を向いた瞬間、出久は何かを見てからヴィランに向かって走っていった。
『出久!!』
私は出久に驚きながらも、首から顔を出して攻撃の方向を伝えた。
『右!!少し遅れて左だ!!』
「かっちゃん!!」
「なんでてめぇが!!」
「君が助けを求める顔をしてた!!」
出久は鍛えた拳で流体のヴィランを乱打し続け、拘束が緩んだ瞬間に勝己を抱えて逃げようとした。
『真上だ!!』
「うおおおお!!!」
そこでようやくヒーローたちが前に来た。そしてあの男の姿もあった。
「本当に情けない!」
『「オールマイト………」』
「君に諭しておいて己が実践しないなんて!プロはいつだって命懸け!」
オールマイトはたった一振りの拳による風圧でヴィランを吹き飛ばし、上昇気流を作り出して雨を降らせて火災を鎮火した。このときの衝撃で出久は気を失った。
「君!危ないだろう!」
出久はヒーローに怒られていたが、私はなぜ出久が怒られるのか全くもってわからなかった。
『出久、私は微塵も悪いことをしたと思っていない。勝己のことを思ってヴィランに立ち向かった。それだけでこの場にいる誰よりもヒーローだ』
「鏑………!」
私は出久に初めての実戦訓練だと思うよう言い、更なる戦闘技術の飛躍に努めた。