次の日、早速授業が始まった。午前は他の高校と同じ内容の何の変哲もない授業が行われ、皆が待ち望む科目「ヒーロー基礎学」が午後に行われた。初回授業ではオールマイトが教室に来た。
「わーたーしーがー普通にドアから来た!!」
「オールマイトだ!」
「すげぇ!本当に先生やってるんだな!」
「私が教えるのはヒーロー基礎学、ヒーローの素地を作るために様々な訓練を行う科目だ。教わることは最も多いぞ!早速だが今日はこれ!戦闘訓練だ!」
「「「戦闘訓練!!!」」」
「それに伴ってこちら!入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえたコスチューム!着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!」
「「「は-い!!」」」
出久とはコスチュームについてかなり話した。動きやすく、守ってくれるヒーローになくてはならない姿だ。憧れとはいえオールマイトの髪のような部分は邪魔なため外し、対読唇術を持つ人向けにマスクを着け、頭を守るヘルメット、プロテクターを2人で必死に考えたことが脳裏に浮かんだ。そしてコスチュームといえるものではないが、私にもアイテムが支給された。
「蛇専用視力向上眼鏡」
これをつけることで視力が上がり、本来視力を補完するサーモグラフィーと合わせることでさらに索敵の精度が上がるというものだ。もちろん、出久の首には蛇にとって適温が維持される取り外し可能な機能が取り付けられている。
「すごい!要望以上だ!」
『これはすごい!』
更衣室で着けると、想像以上の性能に出久が驚いていた。さらに私が首に巻かれていても気づかれにくい模様が施されており、私にとっても素晴らしいの言葉しかなかった。
「格好から入ることは大事なことだぜ!!少年少女!!今日から自分はヒーローなのだと!!」
グラウンドβに集合し、2人1組になりヴィランチームとヒーローチームに分かれて核を巡って戦うという訓練がオールマイトから説明された。私と出久は麗日とコンビAになった。
「よろしくね、麗日さん」
「よろしくね!鏑くんも!」
『よろしく』
「最初の対戦相手はこいつらだ!!Aコンビがヒーロー!!Dコンビがヴィランだ!!」
『Dコンビ、飯田と爆豪か………』
「ヴィランチームは先に入って準備をしてくれ!5分後にヒーローチームが潜入でスタートする!」
出久が勝己と戦うことになったことに不安を覚えていたが、出久を鼓舞して作戦を立てた。
『とりあえず個性を共有しよう』
「そうだね、僕の個性は「力増強型個性」、麗日さんは?」
「私は「無重力」、5本の指で触った何かを浮かせられるよ!」
勝己がじっと待つとは思えず、まず殴りに来ると考察しある提案をした。
『出久、私は麗日につこうと思う』
「え?麗日さんに?」
『今の出久なら私がいなくとも、勝己をその場に押しとどめることであれば可能だ。その間に麗日と核を取りに行く』
「なるほど、じゃあ麗日さんをお願いね、鏑」
『任せろ!』
首の機能ごと麗日の首に移動し、戦闘が開始された。
『AコンビとDコンビによる屋内対人戦闘訓練、スタート!!』
◇ ◇ ◇
中に入ると、言っていた通り勝己が出久狙いで突っ込んできた。
『右斜め上!勝己だ!』
「フルカウル10%!!」
「こらデク、避けてんじゃねえよ。中断されねぇ程度にぶっ飛ばしてやらァ!!」
「麗日さん行って!!」
「わかった!!」
出久が勝己の攻撃を避け、勝己を投げ飛ばした間に麗日と上へ向かった。今の出久の戦闘力は勝己と比べたらまだまだ低い。ただ、戦闘センスだけで言えば勝己と同等かそれ以上だ。
コンクリートは熱が伝わりにくいため、サーモグラフィーでもその先にあるものは見ることができない。だが、蛇である私の持つサーモグラフィーは0.001~0.003℃という温度変化を感知することができる。そのため、この超高性能サーモグラフィーは生物の呼吸による温度変化も視ることができる。さらに空気の匂いを分析することで索敵し、無線先の出久を介することで考えを麗日と共有した。
『匂いの濃さ的に飯田は最上階、配置からしておそらく核も最上階だ』
「麗日さん!飯田君は最上階だ、多分だけど核も同じ階!」
「わかった!」
最上階の1つ下の階に移動し、どうやって入るか考えていると窓が目に入った。
『出久、麗日の無重力で窓から侵入しよう』
「麗日さん、個性で浮いた状態で窓から出れない?」
「や、やってみる!」
麗日は窓を開けると、自分を浮かして壁を辿って最上階の窓へとたどり着いた。飯田は階段の方を見ており、窓に背を向けていた。音を立てないように窓を開けて侵入に成功した。
「麗日さん!?一体どこから!?」
「バレた!!」
しかし、核に触るギリギリで飯田にバレてしまった。飯田が走って麗日を捕まえようとするが、私は麗日の首を避けるべき方へ引くことで避け続けた。
「鏑くんありがと!」
「つ、捕まえられない!!」
麗日の動きから運動があまり得手ではないと察し、無理のない程度にアシストし続けた。そして私の尻尾にはその先を見越してとあるものを用意している。
「くっ!!爆豪くんの応答もないし、急がねば!!」
私のサポートがあったものの、速さにおいて負けている麗日が次第に飯田に追い詰められていった。
「デクくんウチもう無理~~!!」
「よし!!捕まえ………」
飯田の手が麗日の背中に触れようとした瞬間を逃さず、尻尾を飯田の手首に向けて振るった。その瞬間、飯田の手首に
「これは確保テープ!?」
そのまま素早く飯田の腕に移動し、口と尾で確保テープを縛って飯田を無効化してから麗日が核に触れた。
『ヒーローチームWIIIN!!!』
一方、勝己は放送を聞いて出久が自らを抑え続けていたことを察した。
「な、なんだとォ!?」
「かっちゃんとの差なんて僕が1番知ってる!僕は進んで囮を選ぶ!」
「デク、テメェ………」
「騙し討ちかもしれない、でもどんな方法でも勝利をつかみ取る、それが僕のヒーローだ!」
鏑の提案により、出久は何らかの理由で鏑が首にいなくても戦えるように訓練はしていた。出久はその場の情報から考えて戦い、それを可能にする戦闘センスの持ち主だ。鏑がいるときと比べてもどうしても回避が劣ってしまうが、それを自らの地頭でカバーしている。そしてこの幼馴染との戦いでは囮ではなく正面の戦闘であることを印象付けるため、回避だけでなく幾度か反撃していた。フルカウルを身に着けたこともあり、体操選手のようなバク転で避けることもあった。
戦った4人がクラスメートと合流し、講評がされた。出久は勝己の爆破を受けたのかコスチュームが所々壊れていたが、それでも前を向いていた。
「今戦のベストは麗日少女だ!これがなぜかわかる人はいるかな?」
「はい、オールマイト先生!それは麗日さんが一番状況に適応していたからです。階段から行かずに窓から侵入という方法を選び、飯田さんに見つかった後も核を触ろうとせずに確保テープで無効化していたからです」
「正解……」
「待ってください!」
「え?」
八百万の考えを肯定しようとしたオールマイトを麗日が遮った。
「それが理由なら、ベストは私じゃないです」
「麗日少女、どういうことだい?」
「階段から行かずに窓から入る方法も、飯田くんの攻撃を避けることができたのも鏑くんのおかげです!」
「「「………え?」」」
「先生、事実です。鏑が実際に提案したのが聞こえましたし、鏑は攻撃がどこから来るのか読むことが得意です」
「………ということでベストは鏑少年?だ!!」
今まで襟に隠れていたこともあり、A組全員が私に気づいたようだ。
「よーし!第1戦はこのくらいにして第2戦を始めよう!」
「「「はい!!」」」
他の戦闘訓練は別室のモニターで見ることができた。
『一応全員の個性を把握できたな』
「うん、やっぱりみんな慣れてるね」
自分が参加していないこともあり、あっという間に訓練が終わった。
「お疲れさん!大きなけがもなし!しかし、真摯に取り組んだ!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」
「相澤先生の後でこんな真っ当な授業……何だか拍子抜けというか」
「真っ当な授業もまた私たちの自由さ!」
放課後、クラスメートが集まって反省会をしていたので参加することにした。
『なるほど、出久は初見の動きに弱いな』
「やっぱり鏑がいるのが大きいね」
「鏑って頭が回るんだな!」
「ちなみに鏑は何ができるんだ?」
「今のところは索敵と作戦と回避の3つかな?」
「すげえ!!」
「かっけえ!!」
みんなが次々に頭を軽く撫でてくれた。だが、蛙吹だけは撫でることもおろか近づいてすらくれなかった。
「ごめんなさい、蛙の本能なのか蛇が苦手なの」
『そうか……無理はしないでくれ』
一方、個性体力テストと戦闘訓練を通して雄英の実力の高さを実感した勝己は1人帰っていた。
「クソ!!クソ!!」
勝己は一般試験において首位合格を果たしたが、あくまでも一般試験。推薦試験を突破した轟と八百万の方が上であると認識してしまっていた。
「こっからだ!!俺はここで1番になってやる!!」
勝己の宣言は物陰から声をかけようとしていたオールマイトと夕日しか知らない。
大きなけがをしていないのでこのような展開にしました。
USJ襲撃のときにはフルカウル12%にしようかなと考えています。