ストックが無くなりました
展開自体は考えてますが文章の書き方が少し変わるかもしれません
pipipipi…
けたたましく鳴り響くアラームに眉を顰めつつ目を開ける。
アラームを消して一息。
「さっむ」
未だ朝は冬の気配を残しており、布団から出るにはそれなりの勇気が必要であった。
朝一番の水分補給をしつつ、昨夜のことを思い出す。
「夢…だったのかなぁ」
冷静に考えてみればあり得ない光景ではあったため疑いを向けてみる。
しかし、脳裏に鮮烈に刻まれたあの光景は、夢というにはあまりにもリアルで、
リアルというにはあまりにも常識の埒外であった。
「あー…憂鬱」
結局あの場に居たことはバレてないと思う。
そもそも、3人も武器(?)を持った人間がいるとは…
それにあの獣――。
魂まで響いてくるような咆哮。
存在するだけでどこか息が詰まるような威圧感。
巨躯に似合わぬ素早さと一撃で命を刈り取る様なパワー。
例え猟銃を持っていようが相対したくはない。
そう思えるほどに圧倒的強者であった。
それに相対していたのは小柄な少女達。
武器を持っていたとはいえ猟銃には到底劣るような前時代的な武器だった。
到底敵うような相手じゃなかったはずだった。
しかし実際に地に伏したのは熊の方。
それに
「黒い…霧」
切り付けられた熊から噴き出ていたのは血ではなく黒い霧のようなものだった。
それに、最後は灰のように消えてしまった。
どこからどこまでが現実なのか、それともすべて夢なのか。
段々と自信が無くなってくる。
「そういえば…」
そういえばそうだ。
俺の体に吸い込まれていったあの光。
刀少女達には吸い込まれていく様子は無かったあの光は一体…
「俺の体…大丈夫なんだよな…?」
自分の体を観察してみるが特に変わった様子は無い。
強いて言えばふくらはぎに走るほのかな筋肉痛。
これが音を立てないよう気を使いながら走ったことによるものなのか、はたまた光による影響なのかは判断が出来ないが、願わくばすぐ治るといいなと思う。
「あ、やばい」
ふと時計を見る。
あれこれ考えているうちに登校しなければならない時間になっていた。
学園内の寮とはいえ、そもそもの敷地が馬鹿でかいため、校舎まではそこそこ歩く必要がある。
今から朝食を食べるなんて悠長なことをしている時間はなかった。
慌ててパンを咥えつつ寮を出る。
時間的には遅刻するほどの時間ではないため普通に生徒が歩いていた。
しかし湊は忘れていたことを一つ思い出す。
「あ!課題やってない」
筋肉痛のふくらはぎに鞭を打ち校舎へと駆ける。
教室に到着すると、既にクラスの半分程度は登校していた。
素早く自分の席に着くと、目当ての人間に体を向ける。
「おはよう春人!頼む!課題見せてくれ」
すると眠たそうに欠伸をしていた春人が意外そうな顔を向ける。
「珍しいな…湊が課題やってないなんて」
「昨日色々あってな…頼む!」
両の手を合わせて頼み込む。
しかし
「だが残念だ。俺もやってない」
「なんでだよやれよ」
「というか俺はお前頼みだったから絶望しているところだぜ」
「ちくしょうこの不真面目め」
「おう、今日はお前も一緒にこの汚名を被ろうや」
「本当の畜生じゃねえか」
屈辱だ…これと一緒にされるだなんて…
春人は課題に対してとんとやる気がなく、気が乗らないとやらないためやっているかどうかは半々であったが、どうやら賭けに負けたようだった。
しかし本当に性が悪いのは春人はこれでも成績上位者であることだ。
「では私のを借りるなんてのは如何でしょう?」
「え?」
振り返るとそこには笑顔で佇む黒髪の少女が。
「あれ、水瀬さん珍しいね貸してくれるの?」
「いえ、神代さんに」
「なんだ残念…って湊なに呆けてんの?」
「い、いや何でもない」
流石にびっくりした。
咄嗟のことで昨日見た光景が脳裏に浮かぶ。
回復の魔法?のようなものを使っていたあの光景。
今1番会いたくない人の内の1人が目の前に現れた。
「それで、お貸ししましょうか?」
「あ、うん、水瀬さんがいいなら…」
必死に平静を演じる。
聞いたらあの魔法の使い方とか教えてくれるのかななんて思いつつ、実際に聞いたら記憶とか存在とかを消されてしまうんじゃないかという恐れで選択肢から除外される。
「それと神代さんにお渡ししたいものがあるので後で来てもらえますか?」
「え?」
課題のノートを手渡しながら有無を言わせぬ笑みでとんでもないことを言い去っていく水瀬さんに、思わず顔が引き攣る。
「お前…水瀬さんといつの間に仲良くなったんだ?」
「い、いや…話すのは初めてなんだが…」
「じゃあ今のは何だ?」
「いや、何が何やらさっぱり…」
疑いの目を向けてくる春人に対し、本当に身に覚えがないため困惑したまま言葉を返す。
いや、正確には心当たりがないことはないが…昨日はバレなかった筈…
魔法か何かでバレた…とか?
「てか借りたんだから早くやれって」
「あ」
そうだった。
せっかく借りたんだからさっさとやってしまおう。
見た感じ優等生なのに貸してくれるなんて意外と気さくなんだなあと思いつつノートを写す。
「終わったら見せてな」
「終わってんのはお前だ」
本当にこいつだけは許しちゃいけないのかもしれない。
なんて思いつつノートに目をやる。
綺麗な字だ、途中式も見やすく、時折吹き出しで入る解説はとても分かりやすい。
外部の特待制度を活用して入学している俺は、成績を落とすことが出来ない。
学費や寮の優遇により学園に通っているため、生活はそもそもがカツカツなので春人には課題を餌にしてよく昼食を奢ってもらっている。
「ほらよ、半分くらいは自力で解いたとこだから、続き写すなら水瀬さんにもお礼言いなよ?」
「あ、これ授業中にやったやつ?」
「そうだよ最後10分くらい時間余ってやっていいって言われたとこ」
「あぁ俺やってたわ」
「ムカつく~^^」
そういいながら水瀬さんにノートを返却するために席を立つ。
ほんとにこれだから頭のいい奴は…。
ため息をつきつつ水瀬さんの席に向かう。
「水瀬さんこれ」
「あら、もうですか?早いですね」
「半分くらいはやってたので…」
「役に立ったなら何よりです、次は自力でやりましょうね」
「あはは…以後気を付ける、ありがとうございました」
「いえいえ」
心の準備をする時間があったからか、割と自然にやり取りが出来た。
「そういえば渡したいものって?」
「そうでした…はい、こちらです、落としてましたよ」
そう言って渡してきたのは湊の顔が映っている学生証だった。
「あ、ありがとう…落としてたんだ」
全然気づかなかった…どこに落ちてたんだろう。
「昨日はどちらに行かれてました?」
なんで急にそんなことを聞くんだろうか。
「いや普通に…学園の敷地内を散歩してたけど」
「そうですか、学園奥の森ヘはあまり近づかない方が良いですよ」
「そうなんですか?」
「ええ、時折"大きな獣"が出ますから」
「っ…!?」
ば、バレてたか?
「そ、それは怖いですね…」
「ええ、学生証が森に落ちていたりしましたので一応」
にこやかな笑みの裏にこちらを探るような雰囲気を感じた。
まじすか…あそこに落としてってたんすか俺…
「昨夜は森に行かれましたか?」
「い、いや、日が沈む前には帰ったよ」
「それなら良かった。熊が出たりするかもしれないので気を付けてくださいね」
「く、熊…」
脳裏には昨夜見た大きな熊のような獣の姿が浮かび、背中に流れる嫌な汗に顔が引き攣る。
「気を付けます…」
「ふふ…冗談です、熊なんて出ませんよ」
「え…そうなんですか」
「はい、でも猪くらいは出るので、近づかない方がいいのは事実です」
「以後気を付けます」
なんてタイムリーな冗談を言うんだこの人…と思いつつなるべく平静を装う。
「そ、そろそろチャイム鳴るから戻るよ」
「はい、またお話ししましょう」
「あはは…」
出来ればあなたとはお話したくないです。あはは
なんて言える訳ないので愛想笑いを浮かべておく。
あんなに清楚そうなのに実は腹黒なのか?と疑いを持ちながら自席へ戻る。
しっかり疑われてて笑う。
「なんて顔してんだ」
「え?変な顔してた?」
「いや変な顔っつーか…まあいいけど」
「なんだよ」
「そんなことよりお前は周りの目を気にした方が良いかもな」
「…?周りの目ってなん…」
周囲を見渡すと感じるのは視線。
奇異の視線の他に嫉妬の視線も感じる。
「どういうことだ?」
「そりゃお前、外の人間が清流ノ家の娘と親し気に話してたからだろ」
「親し気って…初めて話したんだぞ?」
「周りにはそう見えてないってことだな…まあ向こうから話しかけてきたのがデカいな」
「それに関しちゃ俺のせいじゃない…」
とんだとばっちりだ。
言われてから周囲の目線が気になってしょうがない。
何の関係もないどころか、関わり合いたくもないってのに。
「そういえば何渡されたん?ラブレター?」
「違えよ学生証だよ、俺が落としたの拾ってくれてたみたいだ」
「なーんだつまんないの」
「お前なあ…」
春人がラブレターなんて言うせいで周囲からの目線が一層増した。
とことん人騒がせというか…いい奴ではあるが。
なんて考えていたらチャイムが鳴った。
今日は集中できる気がしないな…
そう思いながら大きくため息をつくのだった。
キーンコーン…
昼休憩を告げるチャイムが鳴る。
「気を付け、礼」
日直の号令に合わせて授業終わりの挨拶を済ませる。
腕を回して凝り固まった肩のストレッチをしながら後ろに振り向く。
「今日はどうする?」
「悪ぃ、今日は委員会あるからちゃっちゃと食って行くわ」
「そうか…じゃあ俺は学食行くかな」
「おうすまんな」
そういいながら持参したおにぎりを爆速で食べる春人。
意外も意外だが、なんとこいつ図書委員に立候補していた。
本なんてまるで興味もなく楽そうだから選んだのかと思いきや、実は結構本の虫だったりして驚いたものだ。
こいつの知識量というか、ナチュラルに勉強が出来るのはそういうところから来ているのかもしれない。
それでいて運動神経も良いのだから文句のつけようもない。
「はぁ…」
世の不平等さに辟易しつつ学食へ向かう。
地味に他より20円ほど安い日替わり丼定食は牛…いや豚丼定食だった。
大きめの丼ぶりに味噌汁とサラダが付いて530円。学食にしてはかなりお得だと思う。しかし一人暮らしの高校生的には割とダメージが大きい。
やはり自炊をするべきなんだろうなと思いつつ席に着いて食べ始める。
昼休憩の学食はそれはすごい人間でごった返しているのだが運よく座ることが出来た。
「いただきます」
一人で来ているため特に会話も無く黙々と食べ進める。
やっぱり自炊すべきなんだろうけど…料理とか自信ないなぁ…忘れて腐らす自信はあるけど。
なんて考えていると
「ここ、大丈夫?」
「あ、はいどうぞ」
いよいよ混んできて席数が足りなくなってきたのか、湊は2人用の席を1人で使っていたため相席の申し出を快諾する。
あまり他人に視線を向けるものではないが返事と共にちらりと視線を上げる。
「むぐっごほっごほっ!」
驚きでご飯を喉に詰まらせる。
「だ、だいじょうぶ?」
心配する人物に再度視線を向ける。
そこに居たのは――日向日和だった。
会いたくない内の2人目に遭遇したことに動揺して詰まらせたご飯を何とか水で流し込む。
「いやぁごめんね驚かせちゃったみたいで」
「いや全然…大丈夫です」
「敬語っ!無くていいよ同い年でしょ!」
「あ、うん」
「うんって!あはは!」
陽過ぎる雰囲気にあてられて思わず気が小さくなってしまう。
「神代君はいつもここで食べてるの?」
「一応…」
「へえ~じゃあ明日も来る?」
「まあ来るかも」
「りょうかーい」
何を了解したんだろうか。
出来れば早くここを去りたいが何故か話しかけられてしまい逃げるタイミングを失ってしまった。
「あ、でも春人と来るから…」
「春人って…相良春人君?」
「知ってるの?」
「この辺の人は大体ね~春人とは割と仲良いよ私!全然おっけー」
何がおっけーなのだろうか。
というか春人あんな仰々しく説明しときながら仲良いんかい。
「そっかー」
気の無い返事だが了承さえしなければこっちのものだ。
明るい雰囲気というのは良いことだが段々と周囲の目が気になってきたぞ。
なんせ美少女、なんせ良家の娘だ。影響力も計り知れない。
に、逃げたい…っ
切実な願いだった。
その後も延々と話しかけてくる日向日和をなあなあで躱しつつ、何とか振り切って中庭に逃げ出すことに成功した。
はあ…疲れた。
明日は中庭で食べようかな。自炊?やる気出てきたカモ…
とにかく関わり合いになりたくない。というか、巻き込まれる予感しかしてない。
あんな危ないことに付き合っていける自信は、ただの人間の自分にはなかった。
自販機で買った甘いパック牛乳を飲みながらため息を吐いた。
にしても、あれは本当に何なのだろうか。
スマホで軽く調べてみるも、都市伝説やらバトル物の漫画やらアニメやらしかヒットしない。
現実的にありえない光景ではあるのだが、春人の言っていた言葉を思い出す。
『五つの家が守っているだとか』
天結樹…か。何か関係があるのだろうか。
スマホで天結樹に関しても調べてみるが、こちらも特に昨日や先日の光景を説明できるような内容の物は一つとしてなかった。
何一つとして収穫が無く、少し凹んでいると
キュ
足元に獣が現れた。
「うわっ」
瞬間、あの熊を思い出しベンチから転げ落ちそうになる。
いつものファンシー動物かと思いきや、今回はいつものあいつではなく、どこか猫のような…でも猫じゃないような…とにかく見たことのない猫が現れた。
その猫(?)も例に漏れず足にすり寄り頭を向けてくる。
「あいつの友達か?」
どこか雰囲気が似ているというか、姿は全く違うのに何故かそう感じた。
なんでだろう。毛並み?毛並みかな?
撫でると分かる野生とは思えないほどの毛並み。
撫で心地抜群、あざとい仕草、愛猫家だったらこいつを放ってはおかないだろう。
かく言う俺も愛猫家ではないが骨抜きにされかけていたところ
キーンコーン…
授業の予鈴が鳴った。
「やば」
大急ぎで下駄箱に戻り靴を履き替え教室に戻る。
途中でベンチで爆睡している少女がいた気がするが、優しさを振りまいている場合じゃないので急いで戻る。
俺はラノベ主人公じゃないのだ。時間が止まる訳でもない、ああいうのに構っていたら遅刻してしまう。
何とか授業には間に合い午後の授業が始まる。
その後は特筆すべき点は無く、集中が出来ないまま授業を受け、放課後はファンシー動物と出会うこともなく家に帰ることが出来た。
今日は早く寝よう。
普段よりどっと疲れが来てやることをやった後はすぐに寝てしまった。
明日は何もないといいな…
そうして意識はゆっくりと沈んでいった。
放課後
「で、どうだった?」
「ええ、渡せましたよ」
「それはそうなんだけど!そうじゃなくって!」
「わかってますよ、少し探りを入れてみたところ、動揺はしていましたが夜に訪れた訳ではないとおっしゃっていました」
「なるほどね、そういえば私もお昼一緒に食べたんだけどね」
「ん?えぇ…?」
「私に対しても結構動揺してたよ?」
「ちょっと待ってください、何が起こったんですか」
「学食でたまたま空いてるとこが神代君のとこだったからさ~一緒に食べちゃった」
「な、なるほど…」
「明日も食べる約束したから澪ちゃんも一緒に食べよ」
「えぇ…はいわかりました」
「やったー」
「それで、星里先輩は何か気づいたことはありますか?」
「ん…特になし」
「そうですか…」
「あ、でも――」
「なるほど、一応共有しておきましょう」
春人のキャラが若干変わってる気もしますが
仲良い友達とはこういうものだと思ってます
今後もこの程度の文量で行きたいですね
誤字脱字報告、感想などお待ちしてます