かなり短めです
というかこの回に盛り込める話あんまりなかったです
静寂。
ノートPCの打鍵音と静かな息遣いだけが響く。
片や無言で手元の資料を眺める凛とした少女。
片やノートPCで報告書を眺める温和な少女。
その静かな雰囲気を壊すように扉が開く。
「お待たせしましたー」
明るい声で入ってくるのは、亜麻色の髪の少女。
その後に続くのは申し訳なさそうにしている黒髪の少女と、無言&無表情で入室する銀髪の少女。
「ん、遅かったな」
「そうですか?」
時計を見ると、伝えていた時間の3分前であった。
「いや、いつもより遅かったのでな、連絡もないから心配した」
「それは失礼しました」
「いやいい、さて全員揃ったな」
部屋の真ん中に置かれた大きな机を囲むように座っている4人を見渡す。
「5人が揃ったのでこれより"五家会議"を始める」
全員が頷く。
「まずは厄獣について、楓」
「はい」
指示された少女は資料を手にする。
「厄獣に関してですが、皆さんのお手元にある資料をご覧ください」
皆が資料を開く。
「まず図1を見てください、これは今年の厄獣発生数の数値なのですが、4月上旬にも拘わらず例年の発生件数を既に越しています」
「ふむ」
「図2は各月の発生件数の表なのですが、見て頂くと分かる通り、4月からの発生件数が異様に多く、分家からの報告によると、被害もまた、かなりのものとなっています」
「ほんとだ、倍以上…」
「市街地に出ていないのがせめてもの救いと言ったところか」
「捜索班からは負傷者も出ているらしく、個々の個体としても、例年より強い傾向にあるようです」
会議室に沈黙が落ちる。
実際に厄獣と相対している5人は、数字以上に実感するものがあった。
分家からの情報や討伐時の場所から想定される発生予測地を見ると、4月から増えているのは主に学園の敷地内であることが分かる。
「何か、原因や規則性などあるのでしょうか」
「現状まだ油断は出来ないが、傾向を見るに学園内が異様なほどに増えているな」
「昨日も参位階のが出てたよね」
「ああ、向日葵、清流、星辰に討伐に当たってもらった厄獣だったか」
「そうそう結構強かった」
「それも森の奥ということで発見が遅れ、強くなってしまった個体だと思われます」
「なるほど、数が多いとそれだけ発見も遅れる可能性があるか」
「分家にも人員の増強を頼んでいるのですが、実際"視える人"というのも中々…」
「訓練すれば見えるようになる者もいると聞くが…時間がかかり過ぎるな」
厄獣を視認するにはある程度の素養が必要なのだが、これまで5家とそれに連なる分家でしか生まれつき素養を持つ者は確認されていない。
「これまでの情報を整理しても原因は不明でした」
「ふむ、4月に起こったこととしては何がある?」
「直近ですと〇〇県沿岸での地震や台風などが挙げられますが、歴史的に見ても関連性があるとは考えられません」
「もう一点」
「ん?何かあるのか」
楓が資料をめくる。
「はい、昨夜の厄獣討伐において少し気になることがあったらしく報告が」
「ふむ」
資料をめくり読み込む。
「謎の気配に、落ちていた学生証…」
「学生証の持ち主は1年生の神代湊、外部からの入学で分家に調べて貰ったところ、この土地との関わりは薄いと考えられます」
「気配というのは?」
「厄獣討伐の際に宵宮先輩が茂みに気配を感じたらしく、そこに落ちていたのがその学生証だったそうです」
「間違いないか?」
小柄な銀髪の少女に視線が集まる。
「ん」
短く肯定を返す。
「あれは神代だったと思う」
「厄獣討伐の際は分家による人除けの結界が張られている筈なのだが、それより前に落としたという方が考えららるが?」
「神代だった」
「根拠は?」
「勘」
「それは根拠とは呼べないな」
「そう」
マイペースな銀髪少女と理路整然としている黒髪少女の間に険悪な雰囲気が流れる。
「はい」
その空気を切り裂くかのように一人の少女が手を上げる。
「澪さん、どうぞ」
「追加でいくつか情報があります」
「情報?」
「はい、私が今朝、当人に返却した際なのですが、いくつか探りを入れました」
「探り」
「昨夜の厄獣の特徴は熊に近いものだったので、熊に関しての話と、森へ行ったのは昨日だったかという話をしました」
「結構攻めたな」
会話の内容は当人しか知らず、会議室に合流する前にした情報共有の中でも会話の内容までは話していなかったため、大樹と丘陵以外も少し驚いていた。
「出せる情報が少なく、関りの無い方だったので仕方なく…」
「あー…そういえば外部生か」
「はい、その会話によると、森へ行ったのは昨日ですが日が暮れる前に帰ったとのことでした」
「ふむ、それが正しければ星辰の勘違いということになるな」
「しかし、厄獣に関する話では動揺が見られました」
「ほう」
「それと日和さんからの情報なのですが、昼食の際に神代さんと相席した際」
「あ、相席…?」
「相席の許可を求めた際は普通の受け答えをしていたそうなのですが、日和さんの顔を見た途端に食事をのどに詰まらせ咳き込んだらしく、これが動揺によるものか、ただ詰まらせたのか」
「根拠としては薄いな」
「それともう一つ、昼休憩が終わる際の出来事らしいのですが、彼は"気配を消して眠っていた宵宮先輩"に気づいたそうです」
「なっ」
驚いて目を開く。
星辰と相性が悪く、彼女の勘は信用していないが、その戦闘センスからくる"気配を消す力"にはある程度の信頼がある。
それこそ、一度視界や思考から外した彼女を発見することはほとんどの者が出来ないことであることはよく知っている。
ただの一般人であれば尚更だ。
「それは本当か?」
「ん、神代は私をしっかりと見てた」
「なるほど…偶然か、あるいは…」
「感知能力が高いのかもしれません、それに彼は4月に入学しています、発生件数が増えているのも4月に入ってから…関係性は捨てきれませんね」
「まだ確定ではない、しかし当人に聞くわけにもいかないからな、しばらくは様子見と言ったところか」
「ですね」
その後も些細な情報や報告の共有が行われ、短い針が差す数字が一つ変わったところで会議は終了した。
大樹と丘陵は分家への情報共有のためにすぐに退室し、部屋には昨夜厄獣を討伐した三人が残った。
時刻は夕方、日が沈み切るにはもう半刻ほどであろう時間だった。
「皆は神代君についてどう思う?」
「神代君?」
それぞれが接した際のことを思い返す。
「悪い人ではなさそうでした、結構顔に出やすいタイプみたいでしたね」
「あはは、確かに!」
「神代は…変」
「変…?」
「結構普通な感じでしたけど」
「変な気配」
「気配ですか…私たちにはあまり分かりませんね」
「変な気配ってどういう感じ?」
「ん…なんだろう」
首を傾げて固まる。
「わかんない」
「えぇ…」
困惑する二人。
「でも、変」
「な、なるほど…頭には入れときますね」
一番変なのはこの先輩なんじゃないかと考える1年生'sなのだった。
質問などありましたら答えます
ネタバレにならない範囲ですが