天絆のその先へ   作:萃。

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場面転換の横棒は面倒だったので廃止しました
見辛かったら教えてください


違和感

 

4月も半ばに差し掛かろうという頃、未だに朝の空気は鋭く肌を刺していた。

「くぁ…」

欠伸をしながら体を起こす。

働かない頭でコップに水を注ぎ飲み干す。

そこまでしてやっと頭が冴えてきた。

時計をちらと見ると、登校するにはまだまだ余裕があった。

食パンを焼きながら昨日のことを思い出す。

水瀬澪

日向日和

関わるつもりのない、むしろ避ける気だった人達との交流。

可愛いからと能天気に関わっていくにはあまりにも鮮烈な戦闘の光景に身震いをする。

水瀬からはあの光景を見たのかと疑われている気がしている為、現状では一番近づきたくないと思っている。

「そういえば」

昨日はなあなあで躱したつもりなのだが、日向日和は本当に昼を一緒する気なのだろうか。

嫌だなぁ…行きたくないなぁ…

結局春人にも話してないし…中庭で食ってたらワンチャンバレないんじゃないかな。

食堂に行きたくなくなってしまったため、食パンを食べながら昼食用のサンドイッチを作る。

家を出る準備を終えて時計を見ると時刻は7時半。

今から出るとだいたい8時前くらいに着く。

「そろそろ出るか」

少し早く着いてしまうが特にやることもないので教室で復習でもしようかと寮を出る。

満開だった桜も少しずつ花びらを散らしており、入学当初と比べて少しだけ寂しくなっていた。

確か数学の教師が小テストをやると言っていたので数学の範囲を思い返しながら歩く。

「おはようございます」

「あぁ、おはようございます」

突然後ろから挨拶されてしまい、反射で軽く頭を下げて挨拶を返す。

そのまま前を向いて歩きだそうと頭を上げるとそこには暗めの茶髪を揺らす少女の姿が。

確か…大樹ノ家の。

予想外の人物に思わず固まってしまう。

「神代さんで合ってますか?」

「あ、はい」

「私は2年の榊楓です」

「生徒会の方ですよね」

「よくご存じですね、その件でお話がありまして」

「生徒会の用件…?」

何かやらかしただろうかと軽い不安に襲われる。

「えぇと…水瀬さんと日向さんはご存じですか?」

「同じ学年のですか?」

「そうです」

「一応知ってます」

今一番関わりたくない二人です

なんて言えないので当たり障りのない返答をする。

「その二人と仲が良いと聞きまして」

誰だそんなこと言ったやつ。

「んん、まあ知人という感じの仲ですけどね…その二人に用事が?」

「いえ、用事というのは神代さんにでして」

「俺に?」

「はい、生徒会室に運びたい荷物があるのですが男手が足りず…水瀬さんと日向さんにもお願いしていたのですが、お二人から神代さんにも頼んでみたらどうかと言われまして」

「なるほど」

つまり都合の良い男手が欲しかったと、なるほど。

「それって今日ですか?」

「そうです、今日の放課後にお願いしたいのですが…大丈夫でしょうか?」

そう言って不安そうな顔で見つめてくる。

「大丈夫です」

「ありがとうございます、では放課後生徒会室に来てください」

「分かりました」

「それでは、よろしくお願いします」

気付けば放課後の予定を抑えられてしまった。

実際予定はないが…水瀬さんと日向さんにもお願いしてるって言ってたよな…?

男手が確保出来たからと言って手伝いに来ないとは考えられない。

断ってしまえば良かったと後悔しながら教室に着くと既に何人かは登校しており、その中には春人の姿があった。

「おはよう」

席に着いて早速声をかけると本を読んでいた春人が顔を上げる。

「ん、おはー」

「春人って意外と早く来てるよな」

結構遅刻しそうなタイプに見えるが、意外と誰よりも早く来ている。

「まあ本読んでるだけだけどな」

「数学小テストあるけど復習しなくていいのか?」

「分かんないとこ無いからいいや」

「かっこよ」

俺も言いたいそんなこと。

羨ましさを覚えながらノートと教科書を開き、いくつか問題を解いていく。

数問解いた所でチャイムの音が響く前のノイズが聞こえたので机の上を片付ける。

結果、小テストは満点を取れて一安心。

色々と待遇を受けるには成績を維持しなければいけないのでこういう時緊張する。

特に数学の教師は授業態度ではなくテスト100%で成績を付けると言っていたので他より緊張するのだ。

出来れば授業態度や課題を含んでくれると安心できるんだが…文句を言っても仕方がない。

ちなみに春人は普通に満点だった。

かっこよ。

キーンコーン…

昼を告げるチャイムが鳴る。

日直の号令と共に終わりの挨拶をして、教師が教室を出ていく。

「ふぅ~」

伸びをしながら後ろを向く。

「湊は今日も学食か?」

「いや、今日は持ってきた」

弁当袋を持ちながらそう返す。

「珍し、自炊でも始めたか?」

「まあそんなとこ」

「俺も今日は持ってきてるからな、教室で食うか?」

「いや、今日は中庭に行こうかと」

「中庭?」

「結構人少なかったし、今の季節は外でも快適だから」

「あーね」

日向日和を避けるためとは言えないので適当な理由をでっちあげる。

「何作ってきたん?」

「サンドイッチ」

「おぉ~まともだ」

何だと思われてるんだろうか。

「具は?」

「昨日買って帰った総菜のハンバーグと春巻きだな」

「どこもまともじゃなかった…」

「美味けりゃいいだろうが」

常識は壊していかないと。

結局美味けりゃなんでもいいというのが持論だ。

「そう言う春人は今日もおにぎりか?」

「おう、肉巻きおにぎりとオムライスおにぎりだ」

「お前も大概変じゃねえか」

「そりゃそう」

どの口で人の飯を批判していたんだろうか。

他愛もない話で笑いながら昼飯を食っていると。

「楽しそうだね」

後ろから圧が。

ふ、振り返ってはいけない。

猛獣が…居るっ!

「お、日和じゃんどした?」

は、春人貴様!振り返るなと言ったばかりじゃないか!(※言ってない)

「あれ、聞いてないんだ」

「聞いてないって何をだ?」

ま、まずい。

こうなったら先手を取るしかない。

「あ、あー忘れてたー、そういえば一緒に食べる約束してたんだったー」

「ふーん…」

目を細めてこちらを見てくる日向さん。

「あれ、俺お邪魔だった?」

春人が気まずそうに言う。

「いや、元々春人も一緒に食べようって誘うつもりだったから大丈夫だよ」

「あれ、そうなん?」

「神代君が忘れてたんだよね?約束自体をさ」

これって取っても意味ない先手だったんだ。

「へー美味しそうなの食べてるじゃん…私たちを放ってさ」

「私たち…?」

すると日向日和の後ろから水瀬さんがひょっこりはん。

「うぉ」

思わず冷笑界隈みたいになってしまう。

俺の会いたくないツートップじゃないですかやだー。

「澪も一緒だったのか…ほんと、いつの間に仲良くなったんだ湊?」

「仲良いってほどじゃないけど…昨日学食で一緒になって」

「それでまた学食で食べる約束したんだよね」

「で、忘れられてたと」

「そそ」

「それは湊が悪いなぁ」

春人も敵に回ってしまった。

寝返るとは…友情はどこへ行ったのだ。

「ほんっとにすまんかった」

頭を下げて謝る。

俺は全然約束したつもり無いけど向こうが言ってるってことは約束したことになっていたんだろう。

悲しいかな、俺が悪い。

「ま、良いけどね」

あ、良いんだ。

「それで何食べてるの?」

「サンドイッチ」

「自分で作ったの?自炊するんだ」

「騙されるなよ日和、こいつのサンドイッチはとんでもないぞ」

心外な。

美味しいんだぞ。

「とんでもないって?」

「ハンバーグと春巻きが入ってるらしい」

「えぇ…」

ドン引きである。

何?喧嘩する?

全然逃げるけどこっちは。

刀ブンブンしてるやつに喧嘩売るほど馬鹿ではないのだ。

「美味いから良いんだよ」

「そういうものなんですね」

「んん、違うよ?澪ちゃん、神代君が変なだけ」

「変とは何だ変とは」

「いや変だろ」

非常に不服である。

ちなみに一口食わせたら春人は黙った。

これがかの有名な分からせ…

「それではそろそろ失礼しますね」

「おう、またな」

「神代君も、また後で」

「じゃあな」

また後で…?

――あ。

「気を付け、礼」

帰りのHRも終わり、教室には騒がしさが舞い戻る。

帰る者、部活に向かう者、友人と駄弁る者、宿題をしている者。

彼らの横を素通りし、向かうは生徒会室。

ほら、媚とかね、売ったりしておこうかなって。

断れなかっただけですけども。

そんなことを思いつつ歩き生徒会室に着き、ノックを3回。

トイレは2回、親しい人には3回、他人に礼儀正しくするには4回だぞ、覚えておこうな。

まあ面接意外じゃあんまり使わないし、相場3回で十分ではある。

今回の場合そこまで畏まってもと思い3回。

「どうぞ」

一応ノックしておこうと思ってしただけだったのだが、返事が来たので扉を開ける。

「失礼します、榊先輩に呼ばれてきたんですが…」

「なんだ神代か」

なんだって何だ。

どうやらどうぞと返事してくれたのは生徒会長の御門千景だったようだ。

「楓から話は聞いている、荷物は北倉庫にあるそうだ、先に向かっているから後から来てくれとのことだ」

「北倉庫…?」

って何処にあるんですかね。

敷地内結構散歩したけどあんまり建物の名前とかは見てないから知らないぞ。

「あぁ、北の森の手前にある建物だ、一応言っておくが、森には入るなよ?立ち入り禁止の札が貼られているし野生の動物が出たりするからな」

「大丈夫です、もう入りませんよ」

「まあそれならいいが」

野宿を見られているからか、やけに心配されている気がする。

あれは事故なんです…わかってください。

それにしてもあの森の手前か…近寄らないようにしようと思っていたから全く知らなかった。

「とりあえず北倉庫に向かえばいいんですね」

「そうだ、それなりに重いからゆっくり運んでくれ」

「会長は来ないんですね」

「私はか弱いからな」

か弱い…?

逞しいの間違いじゃないか?

いや実際は逞しいのは精神面だけで身体の方はか弱いのかもしれない。

「今一瞬訳が分からないみたいな顔をしただろう」

「いえ、してません」

「ふむ、まあいい、早く行ってこい、野宿する羽目になる前にな」

「はい…」

なんか凄く言葉の棘を感じます。

会長がチクチク言葉を使うのはどうなんですかね。

チクチク言葉じゃない?刺さるのは俺だけ?

そですか…ハイ。

そんなこんなで北倉庫に向かう。

「お疲れ様です」

到着したので開いていた扉から挨拶しながら入る。

「あ、神代さん」

荷物を前にバインダーとペンを持っていた榊先輩が振り返る。

奥には日向日和と水瀬澪の姿も見える。

なるほど、やはり先ほどの『また後で』ってそういうことだったか。

それはそうと、

「それで、運ぶのはどれですか?」

「このバインダーに書かれた物を持っていくのですが」

そう言ってバインダーを見せてくる。

こまごまとした雑貨の他に、一つ重たいものがあった。

プリンター

「もしかして俺が持っていくのって…」

「そうです…あの、プリンターをお願いしたいなと…」

「一人でですか…?」

流石の俺もプリンターを一人で運ぶのは無理があるぞ。

「台車があるので持っていくのはそこまで苦ではないのですが…」

何故か含みを持たせる。

「持って上がるのが…」

なるほど、台車で持っていけるのは1階で、3階にある生徒会室に持っていくのは確かに一苦労だ。

しかし

「搬入用のエレベーターありませんでした?」

古き良き校舎ながら改修工事も行っているらしく、搬入用のエレベーターがあったはずだ。

それを使えば持って上がるのはそこまで苦ではない気がするが。

「そのエレベーターがですね、現在故障してまして…」

「え"」

つ、つまり…?

「俺が持って上がる…と」

「お願いします」

いやいやいや

そこにおりますやん、刀ブンブン振り回してる子がさ。

バフかけたりできる子がさ。

ま言えないんですけどそんなこと。

「ガンバリマース」

流石にちょっと厳しい

かと、思っていたが。

「あれ?意外と軽い」

業務用と聞いて身構えていたが大した重さではなかった。

なんだ脅しだったのね、これならあなたたちだけで行けたんじゃない?

「え?」

「ちょっと持ってみます?」

「あ、はい」

そう言って一度地面に降ろす。

「そんなに軽いんですか…?って重っ!重いですよ神代さんこれ」

少しだけ持ち上げて弱音を上げる榊先輩。

えぇ…?

噓ぉ…ひ弱過ぎない?

そのひ弱さを会長に見習わせてあげた方が良いんじゃ…ヒッなんか寒気が。

「これ意外と一人で行けそうなんで運んじゃいますね」

「あ、お願いします」

休むことなく3階まで持って上がり、生徒会室に設置することが出来た。

意外とそこまで苦労しなかったな、これくらいならお安い御用ですよ。

そんなこんなで他の面々とも軽く会話をしつつ荷物を運び、全て終えたところで会長に自販機のジュースを奢ってもらえた。

ラッキー。

手伝いの駄賃としては安いのだろうが、媚売りしてジュースも貰えるならアツい。

今日は肉体労働もしたし、寮に帰ってさっさと寝よう。

そう思いながら歩いていると、視線を感じる。

「ん…?」

辺りを見渡すと少し離れたベンチに小柄な少女の姿が。

じっとこちらを見つめてくるので見つめ返す。

「…」

えーと、宵宮先輩?

なんで見つめてくるんですか?

思わず見つめ返してしまったせいで睨めっこのようになってしまった。

相変わらず綺麗な…というか可愛らしい顔してるなぁ。

にしては戦い方はだいぶアグレッシブというか。

あの槍の一撃、どう考えてもこの小柄な体格の膂力ではなかったと思うが、人体の神秘なのだろうか。

なんて思いつつ眺めていると、気が付けば目の前にいた。

「うぉっ」

慌てて2,3歩後退する。

「見えてたの?」

「え?」

「私のこと、見えてた?」

何を言っているんだろうかこの人は。

見えてた…?何それホラーの話?

「見えてたって…別に普通に見えますけど」

「そう」

相変わらずのほのかに眠そうな無表情のままそう返してベンチに戻る先輩。

本当に不思議な人だ。

というかずっと寝てて成績は大丈夫なんだろうか。

そんなことを思いながら帰路につく。

家に帰ってからは課題やら家事やらをして風呂で一息つく。

肉体労働は体感きつくなかったとは言え体は疲労していたらしく、比較的すぐに眠気が来た。

明日は厄介ごとに巻き込まれないといいな。

そう思いながら目を瞑った。

あれ、今日ひょっとして5家の全員と会話したってコト…?

眠る寸前にその事実に気づき、逆に目が冴えてしまった湊なのであった。

 





湊がキャラ崩壊してきてる気がしてるのは私だけですか?
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