Legend of Zero   作:猫ロボF

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第九話 ――白翼と集合――

カンバス通り。

 

荒廃した街並みの中。

 

避難できずに取り残された住民たちは、不安そうに周囲を見渡していた。

 

その中で。

 

アンビーは集めた書類を確認する。

 

「これで委任状は全部。」

 

「ありがとう。」

 

近くにいた老人が微笑む。

 

「いやいや。」

 

「お礼を言うのはこっちの方だよ。」

 

「あなたたちがいなかったら……。」

 

「あたしら全員、どうなっていたことか。」

 

老人は遠くを見る。

 

「それにしても……。」

 

「助けを呼びに行ってくれたお嬢ちゃん。」

 

「なかなか戻って来ないねぇ。」

 

ニコは腕を組んだ。

 

「……確かに妙ね。」

 

「また想定外のことに巻き込まれたんじゃないでしょうね。」

 

その時。

 

声が響いた。

 

「確かに想定外のことはあったけど。」

 

「策を思い付いた。」

 

ニコが振り向く。

 

「……この声。」

 

「プロキシ!?」

 

その瞬間。

 

「みんな!」

 

「お待たせ!」

 

猫又が勢いよく姿を現す。

 

その隣にはレイ。

 

「お待たせしました。」

 

ニコは目を丸くする。

 

「猫又……。」

 

「それにレイまで。」

 

アキラは通信越しに説明を始めた。

 

列車を止めようとしたこと。

 

しかし。

 

その車両には爆薬だけではなく、武装した人間たちが乗っていたこと。

 

全てを聞いたニコは、静かに笑う。

 

「なるほどね。」

 

「列車を止めて爆破そのものをやめさせようとした。」

 

「でも車両の中は、ヴィジョンの武装した増援でいっぱいだった……。」

 

「ふん。」

 

「どうやらヴィジョンは。」

 

「住民たちの決死の抵抗を、よっぽど恐れているみたいね。」

 

そして。

 

ニコは笑顔になる。

 

「でも。」

 

「プロキシの考えた作戦は悪くないわ!」

 

「さすが、知恵と勇気の『パエトーン』ね!」

 

アキラは少し苦笑する。

 

「褒めすぎだよ。」

 

ニコは近くの老人へ向き直る。

 

「おばあさん。」

 

「さっきの救助計画は聞いていたわよね?」

 

「住民のみんなを、一番近い地下鉄駅へ集めてくれる?」

 

老人は胸を張る。

 

「安心しなさい。」

 

「足手まといにはならないよ。」

 

「すぐみんなに知らせてこよう。」

 

「お願い。」

 

ニコは頷く。

 

「あ……。」

 

「そうそう。」

 

「この近くのホロウに、赤牙組の古い拠点があるって聞いたんだけど。」

 

「何か知らない?」

 

アキラが首を傾げる。

 

「急に話が変わったけど……。」

 

「どうして今、それを?」

 

ニコは視線を逸らす。

 

「だって……。」

 

「猫又の依頼料……じゃなくて。」

 

「家族の形見が、まだ見つかってないのよ。」

 

「ここの住民なら、何か知っているかと思って。」

 

老人は少し考える。

 

「その話なら知っているよ。」

 

「というより……。」

 

「ここに住んでいる人間で、赤牙組を知らない者はいない。」

 

ニコが驚く。

 

「え?」

 

老人は続けた。

 

「なにせ。」

 

「赤牙組は、この場所で生まれたんだからね。」

 

猫又が顔を上げる。

 

老人の声は続く。

 

「昔の赤牙組は、今とは違った。」

 

「孤児を引き取り。」

 

「戦い方だけじゃなく、読み書きも教えていた。」

 

「弱い者を守るために立ち上がったことも、一度や二度じゃない。」

 

「ずっとこの場所を。」

 

「故郷を守ると言っていた。」

 

「……でも。」

 

老人の表情が曇る。

 

「シルバーヘッドという若造が頭になってから。」

 

「少しずつ変わっていった。」

 

「貧民街を見下すようになり。」

 

「人様には言えないようなことにも手を出し始めた。」

 

「それを見ていられず、組を抜けた者も多い。」

 

「やがて赤牙組自身も、この場所を離れた。」

 

「今の赤牙組とは関わりたくない。」

 

「シルバーヘッドが治安局に追われてホロウへ落ちたのも……。」

 

「ただの自業自得さ。」

 

猫又の耳が動いた。

 

「……え?」

 

「今、なんて言った?」

 

老人が首を傾げる。

 

「どうしたんだい?」

 

猫又は詰め寄る。

 

「シルバーヘッドは……。」

 

「治安局に追われてホロウに落ちたの?」

 

「邪兎屋に……やられたんじゃなくて?」

 

ニコの表情が固まる。

 

「……。」

 

「それは……。」

 

その時。

 

ビリーが咳払いをする。

 

「コホン。」

 

「子猫ちゃん……いや。」

 

「依頼人さん。」

 

「誤解を解こうとはしたんだ。」

 

「でも、そのキラキラした目で見られると……。」

 

「何も言えなくなっちまってな。」

 

猫又が振り向く。

 

ビリーは申し訳なさそうに続ける。

 

「悪い。」

 

「確かに俺たちは、たまたま現場に居合わせた。」

 

「けど。」

 

「あいつを倒したのは……。」

 

「治安局なんだ。」

 

猫又の表情が崩れる。

 

「そんな……。」

 

「あんたたちじゃ……なかったのか。」

 

アンビーが静かに言う。

 

「猫又。」

 

「気を落とさないで。」

 

「仮に治安局の介入がなかったとしても。」

 

「邪兎屋なら、シルバーヘッドに苦戦はしなかった。」

 

ニコはため息をつく。

 

「……今回の件。」

 

「確かに猫又が勝手に誤解した部分もあるけど。」

 

「あたしたちにも少し責任はあるわ。」

 

「だから。」

 

「形見探しの依頼料は、ちょっとだけオマケしてあげる!」

 

猫又の顔が少し明るくなる。

 

ニコはすぐに手を叩いた。

 

「と、とにかく!」

 

「今はこの話は終わり!」

 

「一刻も早く列車を奪って。」

 

「住民たちをここから連れ出すわよ!」

 

「出発!」

 

 

数分後。

 

一行はホロウ内部へ侵入した。

 

ニコが前を見る。

 

「さあ。」

 

「もうすぐ列車に着くわよ。」

 

「作戦目標は単純!」

 

「守衛を倒す!」

 

「列車を奪う!」

 

「そのまま逃げる!」

 

「以上!」

 

ビリーが敬礼する。

 

「了解!」

 

アンビーは突然、口ずさみ始めた。

 

「ドンドドドンドン……。」

 

「ドンドンドンドンドドドンドン……。」

 

レイが首を傾げる。

 

「……?」

 

猫又も不思議そうに見る。

 

「アンビー?」

 

「緊張で壊れちゃった?」

 

ビリーが苦笑する。

 

「いや……。」

 

「たぶんBGMで盛り上げようとしてるんじゃねえか?」

 

「十中八九、映画の影響だな。」

 

ニコは笑う。

 

「大丈夫よ、アンビー。」

 

「そんなものがなくても。」

 

「この作戦の重大さは、みんな分かってる。」

 

そして。

 

「プロキシ。」

 

「運転はあんたに任せたからね。」

 

「そっちは大丈夫?」

 

アキラが答える。

 

「……免許は車しか持ってないけど。」

 

「頑張ってみるよ。」

 

Fairyが補足する。

 

「マスター。」

 

「ご安心ください。」

 

「私が詳細な操作方法を説明します。」

 

ニコは頷いた。

 

「よし。」

 

「それじゃあ――。」

 

「行くわよ!」

 

「ヴィジョンに思い知らせてやる!」

 

 

警備兵たちが異変に気付く。

 

「敵襲だ!」

 

ニコが叫ぶ。

 

「みんな!」

 

「一気にやっちゃうわよ!」

 

「行くわ!」

 

レイは翼部装置を展開する。

 

大型ライフルが現れる。

 

しかし。

 

今回は出力を調整する。

 

「非殺傷モード。」

 

淡い光が銃身へ集まる。

 

放たれた光弾は、敵の武器だけを弾き飛ばした。

 

「な、なんだ!?」

 

次々と倒れていく警備兵。

 

レイは静かに進む。

 

「問題ありません。」

 

猫又が笑う。

 

「相変わらず頼りになるな!」

 

ビリーが銃を構える。

 

「さあ。」

 

「列車強奪作戦の始まりだ!」

 

アンビーも刀を抜く。

 

「目標確認。」

 

「突破する。」

 

ニコは先頭へ立った。

 

「行くわよ!」

 

「住民たちを救い出す!」

 

一行は列車へ向かって駆け出した。

 

 

 




戦闘描写はないです。無口だけどもう少しレイちゃん喋らせたほうがいいのかな?
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