デッドエンドホロウの奥深く。
巨大な咆哮が響き渡った。
その衝撃だけで、周囲の建物が揺れる。
瓦礫が落下し、地面に亀裂が走る。
しかし――。
四人は退かなかった。
ニコが武器を構える。
「正直、勝算なんて分からない。」
「でも――。」
ニコは前を見る。
「ここで倒さなきゃ、みんな助からない。」
アンビーが静かに頷く。
「了解。」
「敵は巨大。」
「だけど、動きは単純。」
ビリーが銃を構える。
「へっ。」
「単純って言っても、あのサイズで殴られたら一発アウトだけどな。」
レイは純白の翼を広げる。
「ならば。」
「攻撃を受けないように、動きを止めます。」
デッドエンドブッチャーが咆哮する。
そして。
道路標識アックスを振り上げた。
「来る!」
アンビーが駆け出す。
次の瞬間。
巨大な斧が振り下ろされる。
――ズドォォォン!!
地面が爆発した。
しかし。
そこにアンビーはいない。
極限まで引き付けた回避。
その一瞬。
アンビーの刃が怪物の足元を切り裂く。
「今。」
ビリーが叫ぶ。
「任せろ!」
銃弾の雨が降り注ぐ。
無数の弾丸がデッドエンドブッチャーの身体を撃ち抜く。
だが。
傷は浅い。
「硬すぎるだろ!?」
ビリーが叫ぶ。
その瞬間。
翼から二挺のライフルが展開される。
「照準固定。」
「発射します。」
黄色の閃光が走る。
ビーム弾が怪物の肩へ直撃。
巨体が僅かに揺らぐ。
ニコはその隙を逃さない。
「今よ!!」
爆薬を仕掛けた武器を投げ込む。
「邪兎屋を舐めないでよね!」
爆発。
巨大な衝撃がデッドエンドブッチャーを包み込む。
四人の連携攻撃。
それは確実に効いていた。
怪物の動きが止まる。
そして――。
膝をついた。
「……やった?」
ビリーが呟く。
「倒したのか?」
しかし。
レイの表情は変わらなかった。
「……違います。」
「まだ終わっていません。」
次の瞬間。
デッドエンドブッチャーの身体から。
異音が響いた。
ズキ……。
ズキズキ……。
まるで内部から何かが蠢いているような音。
背中の肉体が裂ける。
「な、何……?」
ニコが息を呑む。
内部から露出した巨大なエーテルコア。
そこから。
黒い肉塊が膨張していく。
腕。
さらに腕。
二本だった腕が。
四本へ。
道路標識アックスは崩れ落ち、消滅する。
代わりに。
肉を引き裂くためだけに存在する巨大な腕が形成される。
ビリーが青ざめる。
「……嘘だろ。」
「まだ変身残してたのかよ……。」
アンビーが呟く。
「第二形態。」
レイが分析する。
「先ほどまでとは別物です。」
怪物は立ち上がった。
四本の腕を広げる。
そして。
咆哮。
先ほどを遥かに超える衝撃波がホロウ全体を揺らした。
◇
戦闘が再開される。
だが。
先ほどとは違った。
速い。
重い。
そして――。
逃げ場がない。
四本の腕が嵐のように襲い掛かる。
アンビーが回避する。
しかし。
次の腕が待っている。
「……!」
間一髪で避ける。
ニコが叫ぶ。
「アンビー!」
「分かってる。」
アンビーは距離を取る。
「一撃目を避けても、次が来る。」
ビリーが射撃する。
しかし。
デッドエンドブッチャーは腕で弾丸を防ぐ。
「防御まで完璧かよ!」
レイがビームサーベルを展開する。
「ならば、接近します。」
翼を羽ばたかせ、一気に接近。
斬撃。
しかし。
四本の腕の一本がレイを迎撃する。
「危ない!」
アンビーが叫ぶ。
レイは空中で方向を変える。
だが。
その瞬間。
もう一本の腕が迫る。
「……!」
避けられない。
その時。
アンビーが狙われた。
巨大な拳が振り下ろされる。
「アンビー!!」
レイが反応する。
考えるより先に。
翼が動いていた。
レイがアンビーを庇う
直後。
巨大な一撃がレイを直撃した。
「レイ!!」
轟音。
レイの身体が吹き飛ぶ。
壁へ叩き付けられる。
「……っ。」
瓦礫が崩れ落ちる。
レイは動かない。
「レイ!」
アンビーが駆け寄る。
しかし。
返事はない。
ニコが歯を食いしばる。
「そんな……。」
ビリーが銃を握り締める。
「おい……。」
「まだ終わってねぇぞ……。」
だが。
現実は残酷だった。
デッドエンドブッチャーは健在。
レイは戦闘不能。
そして。
巨大な怪物が再び腕を振り上げる。
「……。」
誰もが思った。
もう無理だ。
その時――。
レイの意識の奥。
暗闇。
そこに。
聞き覚えのある声が響いた。
『あなたは、まだ恐れている。』
『力を使うことを。』
『未来を見ることを。』
「……誰……?」
『私はあなた。』
『あなたが失ったもの。』
『ゼロシステム。』
瞬間。
レイの瞳が開く。
緑色の光が宿る。
「……見える。」
全てが。
敵の動き。
筋肉の収縮。
攻撃までの時間。
次に振るわれる腕の軌道。
全て。
「未来予測……。」
「違う。」
レイは立ち上がる。
「これは――。」
「勝利への可能性。」
◇
デッドエンドブッチャーが腕を振り下ろす。
しかし。
レイは動いた。
一歩。
ただそれだけ。
攻撃が空を切る。
次の攻撃。
回避。
三撃目。
すでに背後へ。
「……!?」
怪物が初めて怯む。
レイの姿が消える。
緑色の残光。
ビームサーベルが閃く。
一閃。
二閃。
三閃。
四本の腕が防御に動く。
しかし。
全て読まれていた。
「遅いです。」
レイの斬撃が怪物を切り裂く。
デッドエンドブッチャーが後退する。
ビリーが目を見開く。
「おいおい……。」
「さっきまで苦戦してた相手を……。」
アンビーが呟く。
「未来を読んでいるみたいな動き……。」
ニコも驚く。
「これが……レイの力……。」
レイが呟く。
「……そうだ、思い出した。」
「これは……。」
「ツインバスターライフル。」
翼が展開する。
背中から巨大なライフル、ツインバスターライフルが現れる。
レイはそれを掴む。
「出力……制限。」
「本来の十パーセント。」
「それでも……。」
「十分です。」
デッドエンドブッチャーが突進する。
しかし。
遅い。
全て見える。
レイは翼を大きく羽ばたかせた。
上空へ。
ホロウの天井近くまで飛翔する。
二挺のツインバスターライフルを並列接続。
巨大なエネルギーが集束する。
「ツインバスターライフル。」
「照準。」
「完了。」
怪物が腕を構える。
迎撃。
しかし。
もう遅い。
「攻撃開始。」
緑色の光がホロウを貫いた。
凄まじい閃光。
デッドエンドブッチャーは避けようと身体を捻る。
直撃は免れる。
しかし。
光は肩を掠めた。
次の瞬間。
一本の腕が。
消滅した。
四本あった腕。
その一本が完全に吹き飛ぶ。
怪物が初めて苦痛の咆哮を上げる。
光はそのまま地面を抉りクレーターを作り出す。
そして。
遠くから。
音が聞こえた。
汽笛。
列車の音。
ビリーが振り返る。
「……まさか。」
ニコが目を見開く。
「来た!」
レイは上空から遠くを見る。
その先には。
こちらへ向かって走る列車の姿があった。
◇
光が消える。
そしてレイは地面に着地する
静寂。
デッドエンドブッチャーの身体から、黒い煙が立ち上る。
一本の腕を失った巨大な怪物は、ゆっくりとレイを見上げた。
しかし――。
倒れない。
「……嘘でしょ。」
ニコが呟く。
ビリーも表情を引きつらせる。
「いやいやいや……。」
「今の食らってまだ立ってんのかよ……。」
アンビーは冷静に観察する。
「損傷は大きい。」
「でも、活動停止には至っていない。」
レイ敵を見る。
緑色に輝く瞳。
ゼロシステムは、さらに未来を映し出していた。
数秒後。
デッドエンドブッチャーが取る行動。
攻撃軌道。
回避可能地点。
全て。
だが――。
「……。」
レイの表情が僅かに曇る。
「未来が……多すぎる。」
ゼロシステムは答えを示している。
しかし。
その答えは一つではない。
戦えば勝てる。
だが。
仲間が負傷する未来。
列車が間に合わない未来。
住民が犠牲になる未来。
無数の可能性が、レイの頭の中へ流れ込む。
「……っ。」
頭を押さえるレイ。
「レイ!」
ニコが叫ぶ。
「大丈夫!?」
レイは答えない。
見えている。
全てが。
敵の動きも。
味方の動きも。
そして――。
自分自身の限界も。
『感情を捨てれば、勝てる。』
かつて聞いた声が響く。
『迷う必要はない。』
『最適な未来だけを選べばいい。』
レイは目を閉じる。
「……違う。」
「私は……。」
「ただ勝つために戦っているんじゃない。」
再び目を開く。
「守るために戦っています。」
デッドエンドブッチャーの残った三本の腕が地面を叩く。
怒り。
苦痛。
そして殺意。
それら全てを混ぜ合わせた咆哮がホロウ全体を震わせる。
しかし――。
その前に立つ者達は、もう怯えてはいなかった。
「もう大丈夫よ、レイ。」
ニコが笑う。
「後は私たちに任せなさい!」
ニコはデッドエンドブッチャーへ向き直る。
「まいった?」
「化け物!」
「サプライズよ!」
その時。
遠くの駅から。
機械音声が響く。
『まもなく、列車が到着いたします。』
『線の内側までお下がりください。』
列車は速度を落とさない。
そのまま。
デッドエンドブッチャーへ向かって突進する。
イアスは直前で飛び降りる。
地面へ着地。
「Fairy。」
「仕事だ。」
Fairyの声が響く。
『了解。』
『空気中の電荷を測定します。』
ニコが叫ぶ。
「ビリー!」
「任せろ!」
ビリーが銃を構える。
狙う先は。
爆薬。
引き金を引く。
弾丸が爆薬へ向かう。
その瞬間。
アンビーが動いた。
投げたナタが一直線に飛ぶ。
爆薬へ突き刺さる。
『臨界電位差到達まで――』
『残り4秒。』
ニコはレイへ駆け寄る。
「レイ、歩ける?」
「……問題ありません。」
しかし。
声には僅かな疲労が混じっていた。
ニコは肩を貸す。
「強がらないの。」
「今は頼りなさい。」
4人と1体は瓦礫の陰へ隠れる。
『3秒。』
『2秒。』
『1秒。』
『0。』
アキラが見る。
「……?」
何も起こらない。
デッドエンドブッチャーは残った腕で爆薬を掴む。
ニコが叫ぶ。
「ちょっと!」
「何とかしなさいよ!!」
Fairy。
『やり直します、43210!』
その瞬間。
空が光った。
ゴロゴロゴロ……。
雷鳴。
そして。
アンビーのナタに。
落雷が直撃する。
「――!!」
次の瞬間。
巨大な爆発が起こった。
デッドエンドブッチャーの巨体が炎と煙に包まれる。
ホロウ全体が揺れる。
デッドエンドブッチャーは撃破されたのであった。
ようやく最初の書きたいとこ書けました。