Legend of Zero   作:猫ロボF

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いまさらですが小説を書くのは初めてなのでお見苦しいかもしれませんがよろしくお願いします。


第十三話 ――白翼と一件落着――

数分後――。

 

デッドエンドホロウの外。

 

ヴィジョン爆破解体本部。

 

猫又は地面へ倒れ込みながら、サラを睨み付けていた。

 

「……そうか。」

 

「パールマンは、ただの操り人形。」

 

「陰で糸を引いて爆破解体を企てたのは……あんただったんだ!」

 

サラは表情一つ変えない。

 

「どうして……。」

 

「ヴィジョンにとって、このプロジェクトは人の命より大事だったの?」

 

サラは鼻で笑う。

 

「大事かどうか?」

 

「あなたみたいな小物に尋ねる資格はないわ。」

 

そして、小さく肩をすくめる。

 

「無駄話をしすぎたわね。」

 

「そろそろ本題に入りましょう。」

 

サラは胸元から、小さな装置を取り出した。

 

猫又の表情が変わる。

 

「……それは!」

 

サラは微笑む。

 

「この小さなおもちゃ?」

 

「もちろん。」

 

「爆薬の起爆スイッチに決まってるじゃない。」

 

猫又は叫ぶ。

 

「待っ――!」

 

「だめだ!!」

 

サラは迷いなくスイッチを押した。

 

「私からも。」

 

「"存在しない住民"たちへ、お悔やみを申し上げるわ。」

 

「さようなら。」

 

「すべては――私たちヴィジョンのため。」

 

カチッ。

 

サラは静かに振り返る。

 

「爆破完了です。」

 

傭兵が敬礼する。

 

「サラ長官、爆破の完了を確認しました。」

 

「ええ、ご苦労さま。」

 

しかし。

 

次の瞬間だった。

 

「ま、待て!」

 

傭兵がホロウ側を指差す。

 

「トンネルから……誰か出てきたぞ!」

 

土煙の向こう。

 

最初に姿を現したのは、避難していた住民たちだった。

 

次々と人々が出口から現れる。

 

そして、その後ろには――。

 

アンビー。

 

ビリー。

 

ニコ。

 

さらに、ニコへ肩を借りながら歩くレイの姿もあった。

 

猫又は目を見開く。

 

「……ニコ!」

 

「レイ!」

 

「みんな!」

 

住民たちの怒号が響く。

 

「ヴィジョンは命を軽んじた!」

 

「ヴィジョンを倒せ!」

 

「その手は血まみれだ!」

 

「いつまでも俺たちの口を封じられると思うな!」

 

サラの笑みが消える。

 

「……。」

 

「なるほど。」

 

「爆破エリアから抜け出してくるなんて、中々やるじゃない。」

 

しかし、すぐに冷静さを取り戻す。

 

「でも。」

 

「これで全てが公になるなんて思ってないわよね?」

 

「忘れないで。」

 

「ここには、うちの人間しかいない。」

 

サラが静かに右手を上げる。

 

「命令よ。」

 

「撃ちなさい。」

 

その瞬間。

 

レイの瞳が鋭く細まる。

 

「――!」

 

住民たちの悲鳴が上がる。

 

「本気だ!」

 

「撃たれる!」

 

だが――。

 

その時。

 

遠くからサイレンが鳴り響いた。

 

ウゥゥゥゥゥ――。

 

パトカー。

 

さらに報道ヘリ。

 

テレビ中継車。

 

レポーターの声が拡声器から響く。

 

「速報です!」

 

「あのヴィジョンに重大な人命軽視が発覚しました!」

 

「情報提供を受けた本局取材班は、治安局部隊と共にデッドエンドホロウ入口へ到着!」

 

「現在、現場は治安局によって封鎖!」

 

「治安官を装っていた不審者を多数拘束したとのことです!」

 

傭兵たちは完全に動揺した。

 

「サラ長官!」

 

「治安局に囲まれました!」

 

サラは無言。

 

さらに別の傭兵が叫ぶ。

 

「白祇重工も来ています!」

 

「メディアまで連れて来ています!」

 

「もう制御できません!」

 

ニコが得意げに笑った。

 

「ふふん。」

 

「ヴィジョンが素直に交渉するわけないと思ってね。」

 

「ホロウを出てすぐ、白祇重工へ連絡したのよ。」

 

「さすが競合他社。」

 

「動きが早いわね。」

 

傭兵たちは完全に戦意を失う。

 

「サラ長官……。」

 

「どうしましょう……?」

 

返事はない。

 

「サラ長官?」

 

「……いない!」

 

その瞬間。

 

レイが前へ出た。

 

「逃がしません。」

 

ニコが肩を掴む。

 

「ちょっ――!」

 

しかしレイは静かにその手を外した。

 

「サラは危険です。」

 

「ここで逃がすわけにはいきません。」

 

四枚の純白の翼が大きく広がる。

 

次の瞬間。

 

レイは一直線に空へ舞い上がった。

 

「レイ!」

 

ニコは思わずため息をつく。

 

「まったくもう……。」

 

 

その頃。

 

治安局は現場を完全に制圧していた。

 

「報告!」

 

「現場の容疑者は全面降伏!」

 

「住民全員の無事を確認しました!」

 

歓声が上がる。

 

「助かった!」

 

「俺たちは助かったんだ!」

 

「あとで治安局で事情聴取を受けるらしいぞ!」

 

猫又は静かにその場を離れようとする。

 

「……。」

 

だが。

 

「うわぁっ!」

 

誰かと正面からぶつかった。

 

「いたた……。」

 

見上げると、そこにはアンビーが立っていた。

 

「何してるの?」

 

「一人でこそこそしてたから。」

 

「治安局が事情聴取をするって、さっき放送してたでしょう。」

 

猫又は目を逸らす。

 

「でも……。」

 

「解決したのはあんたたちだし。」

 

「あたしなんか、いなくても……。」

 

アンビーは首を振る。

 

「違う。」

 

「あなたはヴィジョンを裁くための重要な証人。」

 

「それに――。」

 

「邪兎屋にとっても。」

 

猫又は苦笑した。

 

「罠にかけようとした犯人、でしょ……。」

 

アンビーは淡々と言う。

 

「あなたはまだ、自分の分を払ってない。」

 

「……え?」

 

「食事代。」

 

「依頼が終わったら、みんなでご飯に行くって言ったでしょう。」

 

「今回は割り勘。」

 

「待って!」

 

「なんであたしまで払うの!?」

 

そこへビリーが割って入る。

 

「店長たちもプロキシ兄妹も来るぜ!」

 

「しかも食べ放題だ!」

 

アンビーは猫又へ手を差し伸べる。

 

「正式に聞く。」

 

「猫又。」

 

「私たちと、ご飯に行く?」

 

ニコも笑う。

 

「サバなら好きなだけ食べられるわよ。」

 

猫又は照れ臭そうに頬を掻く。

 

「……。」

 

「ほんとに。」

 

「好きなだけ食べていいなら……。」

 

「考えてやっても……いいぞ。」

 

その言葉に、その場は笑いに包まれた。

 

ビリーがふと思い出す。

 

「そういえば親分。」

 

「レイちゃんは?」

 

ニコはスマートフォンを見ながら肩をすくめた。

 

「メールは送ってあるわ。」

 

「たぶん、そのうち来るでしょ。」

 

 

その頃――。

 

人気のない裏路地。

 

崩れた建物の影へ、一人の女性が静かに身を潜めていた。

 

 

「……。」

 

足音が近付く。

 

次の瞬間。

 

四枚の純白の翼を広げた少女が、音もなく路地へ降り立った。

 

翼がゆっくりと閉じる。

 

翼の付け根へ取り付けられた機構から、小さな駆動音が響いた。

 

レイは静かに告げる。

 

「見つけました。」

 

「これ以上の逃走は無意味です。」

 

「大人しくしてください。」

 

サラは振り返る。

 

その口元には、恐怖ではなく興味深そうな笑みが浮かんでいた。

 

「……へぇ。」

 

レイは一歩前へ出る。

 

「治安局へ引き渡します。」

 

「抵抗はやめてください。」

 

サラは首を傾げる。

 

「あなた。」

 

「本当に不思議な存在ね。」

 

「……?」

 

レイは僅かに眉をひそめた。

 

サラはまるで研究者が実験結果を眺めるような視線で、レイの全身を見渡す。

 

「ホロウ内部に長時間滞在しても、エーテル侵蝕は一切確認されない。」

 

「翼に取り付けられた未知の機構。」

 

「そこから展開される武装。」

 

「そして――」

 

サラは微笑む。

 

「あなたの体内で循環している、未知のエネルギー。」

 

「それを統括しているシステム。」

 

その言葉に。

 

レイの瞳が大きく揺れた。

 

「……!」

 

どうして。

 

この女性が。

 

そこまで知っている。

 

レイの表情を見て、サラは満足そうに笑う。

 

「やっぱり。」

 

「図星だったのね。」

 

レイは無意識に一歩下がる。

 

胸の奥がざわつく。

 

今まで感じたことのない寒気。

 

目の前の女は、自分という存在を丸裸にしようとしている。

 

そんな感覚だった。

 

サラは静かに続ける。

 

「あなた。」

 

「欲しいわ。」

 

「……。」

 

「その体も。」

 

「その翼も。」

 

「その武器も。」

 

「そのシステムも。」

 

「全部。」

 

レイは無言のまま警戒を強める。

 

サラは小さく肩をすくめた。

 

「でも。」

 

「今日は分が悪いわね。」

 

「治安局も来ているし。」

 

「あなたとも、まだ十分に遊べていない。」

 

サラは意味深に微笑む。

 

「また会いましょう。」

 

「レイちゃん。」

 

その瞬間。

 

足元へ小さな筒が落ちた。

 

シュウゥゥ――。

 

白煙が一気に路地を埋め尽くす。

 

「!」

 

レイは翼を大きく羽ばたかせる。

 

突風が煙を吹き飛ばす。

 

しかし。

 

煙の向こうには、もう誰の姿もなかった。

 

「……逃げられました。」

 

静まり返った路地。

 

レイは煙が消えた先を見つめながら、小さく拳を握る。

 

胸の奥が、ざわつく。

 

今まで感じたことのない感覚。

 

サラという女性は、自分の知らない何かを知っていた。

 

まるで、自分という存在そのものを見透かされたような感覚。

 

「……これは。」

 

レイは胸へそっと手を当てる。

 

鼓動が、少しだけ速い。

 

『君は感情のままに生きればいい。』

 

あの声が脳裏によみがえった。

 

「……これも、感情なのでしょうか。」

 

答えはない。

 

路地を吹き抜ける風だけが、白い羽根を静かに揺らしていた。

 




次回一章はラストです。その次は間を挟んで二章に入ろうかなと思っています。
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