Legend of Zero   作:猫ロボF

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第十六話 ――白翼とお留守番?――

 

朝。

 

『Random Play』の前。

 

アキラは車へ荷物を積み込み、零号ホロウへ行くための準備を進めていた。

 

店内ではリンが最終調整を行っている。

 

その一方で――。

 

「なぜですか!」

 

レイの声が店内へ響いた。

 

「私も行っていいはずです!」

 

珍しく感情を露わにするレイに、リンは苦笑しながら振り返る。

 

「ごめんね、レイちゃん。」

 

「今回はホロウ調査協会の人が監督につくの。」

 

「探索許可の試験もあるし、レイちゃんは目立ちすぎるんだよ。」

 

「まだ顔が広く知られてるわけじゃないけど、ホロウレイダーとして活動してるでしょ?」

 

「万が一、正体が知られたら色々面倒なの。」

 

レイは言い返そうと口を開く。

 

しかし。

 

「……。」

 

ゆっくりと閉じた。

 

「……分かりました。」

 

その返事にアキラは微笑む。

 

「その代わり。」

 

「帰りにルミナススクエアへ寄って、何か買ってきてあげるよ。」

 

「だから今日は大人しく留守番していてくれ。」

 

レイは小さく頷いた。

 

「……はい。」

 

「分かりました。」

 

こうして。

 

アキラは車へ乗り込み、スコット前哨基地へ向かって出発した。

 

 

店内は静かだった。

 

リンは端末を操作し続けている。

 

レイへ視線を向ける余裕もないほど忙しそうだった。

 

レイは窓から空を見る。

 

零号ホロウ。

 

旧都を滅ぼした巨大なホロウ。

 

胸の奥が落ち着かない。

 

「……。」

 

すると。

 

一つの考えが浮かぶ。

 

「……バレなければ。」

 

「行っても問題ないのでは?」

 

レイは少し考える。

 

そして。

 

「……。」

 

「そうしましょう。」

 

思い立ったが吉日だった。

 

レイは財布を手に取る。

 

「リンさん。」

 

「少し出掛けてきます。」

 

リンは画面から目を離さないまま答えた。

 

「うん、いってらっしゃーい。」

 

「気を付けてねー。」

 

返事を聞いたレイは外へ出る。

 

四枚の純白の翼が広がる。

 

しかし。

 

その直前。

 

ガラスへ映る自分の姿を見て、足を止めた。

 

「……。」

 

純白の翼。

 

この姿では目立つ。

 

レイは静かに呟く。

 

「染めますか。」

 

「でもまずは服を買いましょう。」

 

次の瞬間。

 

翼が大きく羽ばたいた。

 

空へ舞い上がる。

 

六分街の上空を白い影が駆け抜けていく。

 

一直線に服屋へ向かって飛んでいった。

 

 

その頃――。

 

アキラは羊飼いから聞いていた通り、スコット前哨基地へ到着していた。

 

探索許可取得のため。

 

零号ホロウ内部で協会試験官立ち会いの下、資格試験が始まる。

 

静かなホロウ。

 

イアスが先頭を歩く。

 

その時だった。

 

ピッ。

 

端末が鳴る。

 

協会試験官の表情が変わる。

 

「……反応あり。」

 

さらに。

 

ピッ、ピッ。

 

「高活性……。」

 

次の瞬間。

 

ピッ、ピッ、ピッ。

 

「強烈反応……!」

 

そして。

 

――ピーーーーーーーーーーーッ!!

 

耳をつんざく警報音。

 

試験官の顔から血の気が引いた。

 

「そんな……。」

 

「四段階目……!?」

 

アキラが息を呑む。

 

「何が起きて――」

 

言葉は途中で止まった。

 

端末が火花を散らす。

 

バチッ!!

 

液晶が砕けた。

 

その直後。

 

ズゥン……

 

ズゥン……

 

試験官が叫ぶ。

 

「隠れて!!」

 

イアスごと階段の陰へ飛び込む。

 

二人は息を潜めた。

 

「この音……。」

 

「まさか……。」

 

ゆっくりと。

 

巨大な影が頭上を横切る。

 

空気が震える。

 

エーテル濃度が急上昇する。

 

ホロウそのものが悲鳴を上げているようだった。

 

アキラはイアス越しに少しだけ身を乗り出す。

 

そして。

 

それを見た。

 

女性を思わせる流麗な体躯。

 

花弁のように開いた顔面。

 

巨大な胸部。

 

ゆるやかな曲線を描く両腕。

 

腰には花びらのような装甲が幾重にも重なり。

 

その姿はまるで。

 

ホロウに咲いた巨大な花だった。

 

美しい。

 

だが。

 

本能が告げる。

 

あれは危険だ。

 

言葉では説明できないほど。

 

圧倒的な存在だった。

 

やがて巨大なエーテリアスは遠ざかっていく。

 

「……行ったか。」

 

アキラが息を吐いた。

 

しかし。

 

「後ろ!」

 

アキラが振り返る。

 

そこには。

 

取り巻きと思われる小型エーテリアスがいた。

 

刃が迫ってくる。

 

間に合わない。

 

その瞬間だった。

 

一人の少女が空から舞い降りる。

 

刀が閃く。

 

一閃。

 

小型エーテリアスは真っ二つとなり、光の粒子となって消えた。

 

少女は一瞬だけ立ち止まり、巨大なエーテリアスが去った方向を見る。

 

そして。

 

何も言わず走り出した。

 

その姿はあっという間に見えなくなる。

 

続いて。

 

同じ制服を着た者たちが駆け込んできた。

 

「課長!」

 

月城柳が声を張る。

 

「目標とは安全な距離を維持してください!」

 

浅羽悠真が息を切らしながら続く。

 

「ぜぇ……。」

 

「全速力の課長なんて追いつけないって……。」

 

協会試験官は目を見開いた。

 

「あの制服は……。」

 

「H.A.N.D.!」

 

「しかも……対ホロウ特別行動部、第六課!」

 

柳は二人へ向き直る。

 

「対ホロウ特別行動部第六課です。」

 

「現在、緊急鎮圧任務を執行しています。」

 

「こちらのエリアで情報にない『極超』級エーテリアスを確認しました。」

 

「貴方がたの任務が何であれ。」

 

「遊撃部隊として本作戦の支援を要請します。」

 

「これは第六課副課長としての正式な召集です。」

 

リンの声が通信越しに響く。

 

「『極超』級エーテリアス!?」

 

「さっきから様子が変なのは、そいつの仕業だね。」

 

「エーテリアスにしてはおっきすぎない!?…早くみんなを連れて、離脱ポイントに向かおう!」

 

協会試験官も頷く。

 

「本来の任務は中止です!」

 

「これより任務を変更!」

 

「対ホロウ行動部の支援を最優先とします!」

 

緊張が一気に高まる。

 

だが。

 

彼らはまだ知らなかった。

 

さらに遠く。

 

零号ホロウ上空。

 

誰にも気付かれることなく。

 

もう一人。

 

その戦いを見下ろしている存在がいることを。

 

黒いドレス。

 

顔を覆う奇妙なマスク。

 

そこからはみ出た長髪の黒髪

 

四枚の漆黒の翼。

 

その翼の付け根には、どこか見覚えのある機構が取り付けられていた。

 

風が吹く。

 

黒い翼が静かに羽ばたく。

 

その人物は何も語らない。

 

ただ。

 

仮面の奥から、戦場を静かに見下ろえていた。

 




一体誰なんだろうなー{白目}
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