俺たち百八魔貴族   作:ジエン

10 / 15
【酒は】PUB. 百薬の長 46杯目【心友】

 

 

 

PUBの魔貴族

やあ、ようこそ、PUB.百薬の長へ。

このビールはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。

 

うん、「また」なんだ。済まない。

仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

 

でも、このスレタイを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない

「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。

殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい

そう思って、このスレを立てたんだ。

 

じゃあ、注文を聞こうか。

 

PUBの魔貴族

過去のスレッド

(省略されました。続きを読みたい場合はクリック)

 

PUBの魔貴族

過去の酒/香草語り

(省略されました。続きを読みたい場合はクリック)

 

PUBの魔貴族

営業スケジュール

年中無休 ※週一で自動人形

 

メニュー: img://?????

店内の写真: img://?????

 

予約: 直接、または当スレまで

 

PUBの魔貴族

明日の夜営業は貸し切り営業となります。

ご承知くださいませ。

 

〜〜〜〜〜

 

「やっと商会の仕事が終わった…ビールビール、冷えてっかー。」

 

「お疲れ様です。冷やしていますよ。」

 

「トレードが手強くてさあ…やったぜ、氷室を整備してよかった。」

 

「水属性の術では氷が出ませんからね。雪だるまさんには頭が上がりません。」

 

「永久氷晶のパワーがやばいのだ…っかー美味美味」

 

「いかがでしょうか、新しいホップの配合を試したのですが」

 

「最高。前の世界のビールに近づいてる。麦とホップの組み合わせって男の子だよな。」

 

「ハーブの知識を誇る者として、手は抜けませんからね。」

 

「マジで居てくれて良かった。普通に売ってるビールだとヌルいし味もイマイチだし…」

 

「悪くはないんですけれどね。前の世界を知っていると、やはり香りや苦みが。」

 

「酒の歴史も中世レベルなの酷くね?異世界転生のお約束なら酒は現代レベルだろ」

 

「そこは創作次第ですから。ですが我々がいますから、前に近づける事は出来ますよ。2杯目は?」

 

「頼む。悪酔いしたくないし、何か腹に入れるものもあるか?」

 

「分かりました。ちょうど作り置きしているものがありますよ…はい、カレーライス。」

 

「いやなんでだよ、酒と別に相性良くないだろ、食うけど。」

 

「スパイスとハーブの配合を試していたら、作りすぎてしまいまして。どうぞ、召し上がれ。」

 

「米のおかずの研究が始まってるのは商会でも聞いてるけどよ。あ、普通に美味いわ。」

 

「米も蕎麦も、パンとは味付けの仕方が異なる新しい文化ですから。光栄です。」

 

「カレーメシとかカレーそばも出すかあ?…いや、街がカレー臭くなるのは困る。保留で。」

 

「怪しい文化としてピドナ王宮に怪しまれても困ります。やはり船長頼りでしょうか。」

 

「俺たち怪しくないよー…あ、術酒くれる?普通のブドウの奴」

 

「畏まりました。ですがこちらは冷えていないので…こちらを入れますね。」

 

「カランっと。アイスキューブか?」

 

「ええ、こちら冷やした『ピドナジュエル』となります。」

 

「技と術力を回復する宝石だっけ、うちは手を出してないけど、高いやつ。」

 

「こちらを酒に入れて少し待つと、回復効果が溶け出して、酒が心を回復させる効能を持つようです。術酒ならば更に、ですね。」

 

「へー、そんな事もわかるのか。宝石の知識の権能ってのは便利だな。」

 

「前の知識だって使えますよ?よろしければこちらをお付けください。」

 

「ネックレス?アメジストかこれ。」

 

「はい。アメジストには悪酔いをしなくなると言う話があります。酒神バッカスに関わる逸話ですね。」

 

「ほー、気遣いサンキュ。…前、かあ。」

 

「どうしました?…ああいえ、それはデステニィストーンではありませんよ?」

 

「あってたまるかそんなもん。…前で思う事があってさ。言っても仕方ないんだけど。」

 

「おや、大丈夫。本日は貸し切りですから、聞くのは置物のマスターしか居ません。」

 

「じゃあ言うけどさ…俺ら、本当に帰れるのかな?」

 

「…と、言いますと?」

 

「この計画、基本的に教授任せじゃん。そりゃアビスゲートに干渉したりゲートを開いたり滅茶苦茶するけど。

世界の蓋を壊すって事で、破壊するものを育てる訳だろ?」

 

「アビスを破壊の力で満たし、サラ嬢と少年が抑えきれなくなる瞬間に全力攻撃。日食で欠けた世界に力を加えて穴を広げる、でしたね。」

 

「その感覚もゲートの責任者の教授任せじゃん。俺たちから聞き出した話を条件にするらしいが、繋がった先が現代日本かは分からない。」

 

「私どももこのような姿ですし、悪魔や天使も暮らしている場所かもしれませんね。」

 

「最悪、現代っぽくてネットがあってアニメやドラマがあればオマケ要素は気にしない奴らばっかだけどさあ…

今の暮らしを捨てさせるほどか?って思うんだよね。」

 

「工房さんですか?」

 

「他にもさ、なんかライブ文化作ってる奴もいるし、他の国でも上手くやってるようだし。

不確定要素ばっかりのギャンブルを全員にやらせるより、諦めて根を下ろすのもありなのかなって思って。」

 

「幻影とはいえ、今ならまだ、誰とも敵対していないから?」

 

「魔貴族の幻影なんて間違いなく厄ネタだけど、ポドールイの伯爵みたく人外でも仲良くしたり出来るんだし、

異世界転生者としてチートして楽しく生きていく道もあるだろ?」

 

「…つまり、思ったより皆好き勝手していて楽しそうだから、決意が鈍ったと。」

 

「そうとも言う。」

 

「ふふ…優しいですね、貴方は。」

 

「優しくねえよ。ただのチキンだ。もし失敗して全員消滅するか、変な異世界に飛ばされたら夢見が悪すぎるだろ。」

 

「前作で起きた、七英雄の追放の様に、ですか。」

 

「酷い世界に飛ばされて、いつか命からがらここに帰ってきて。でも築いた繋がりは時間の彼方。責任感で死ぬわ。」

 

「ふむ…どうも貴方は一つ勘違いをしているようです。」

 

「あ?」

 

「貴方は『巻き込んでいる』と思っているようですが……あのスレの連中が、誰かに強制されて動くような性質に見えますか?」

 

「…いや、言われてみれば全然。」

 

「でしょうね。皆さんは、前の世界への未練だけで動いているわけではありませんよ。」

 

「まあ、おらこんな世界嫌だ。何が何でも帰りたいってイメージじゃないけどよ。」

 

「彼らは全員、自分で選び、自分でこの世界と前の世界の両方を楽しんでいるのです。帰還計画だって、彼らにとっては『最高のイベント』のクライマックスに過ぎません。」

 

「…続けろ。」

 

「成功して帰れれば『楽しかったな』と笑い、もしこの世界に残ることになっても『じゃあここで何して遊ぶ?』と笑う……我々『魔貴族』とは、そういう図々しくも逞しい存在ではありませんでしたか?」

 

「……ハッ、言えてるわ。あいつら『失敗したらその時はその時で、この世界ハックして暮らせばいいや』くらいに思ってそうだな。」

 

「意外とそうした性格の人が選ばれて、ここに居るのかもしれませんね?

ですから、責任なんて背負い込まずに、貴方は最後まで『言い出しっぺの主催者』として、彼らの馬鹿騒ぎの音頭を取れば良いのです。」

 

「…また面倒くさい役目を押し付けやがって。もっと大変になったじゃねえか。」

 

「気負う事はありませんよ。適当に『風が、来る…。』とでも言えば乗って来るでしょう。」

 

「アビスの風なんだよなあ…ってやかましいわ。」

 

「…それにほら。帰れるかどうかの前に、貴方にはまだ『やり残した仕事』があるでしょう?」

 

「やり残した仕事?」

 

「ええ。『ラザイエフ商会のお嬢様』が、お目付け役を連れて世直し巡業に出かけたとか。あの報告の取りまとめと、後始末が待っていますよ。」

 

「…忘れてた!!あのお転婆お嬢!!絶対あちこちの店舗破壊して帰ってくるじゃん!!御目付のも止めろや!」

 

「ふふ、お忙しいことです。…そろそろ良いお時間ですね。

お代は結構です。この先の『イベント』、私も観客として楽しませていただきますよ。」

 

「いい趣味しやがって。…まあ、そうだな。あんまり気にしすぎないようにするわ。」

 

「ええ、そうして下さい。お休みなさい、良い夢を。」

 

「おう、お休み。」

 

〜〜〜〜〜

 

 

「思うに、真面目過ぎるんですよね。それが良い所ではありますが。…おや?」

 

「…あの、すみません。何か食べるものはありますか?明かりが見えたので…」

 

「本日は貸し切り営業で…いえ、良いでしょう。座ってください。」

 

「ありがとうございます。その、あまり高いものは、旅をしていて…」

 

「構いませんよ。その代わり、教えてください。どんな暮らしをしてきたか。これからどうするか。…運命を切り開けるなら、何をしたいか。」

 

「えっ…はい、僕は…」

 

 




おわり
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。