俺たち百八魔貴族 作:ジエン
「…ここよ、西の森の教授の館。そこに、アビスゲートがあるわ。」
「ああ、前に一度、来たことがあるよ。ネズミ退治の為に薬を貰ったっけ。」
「あの町長、今思い出しても腹が立つよ!一発殴っておけば良かった!」
「大丈夫さ、あの町長はキドラントのトレードの担当者だったからね。
今頃は信義を欠いたって世界中の商会に嫌われているよ。」
「おいおい、おっかない人間になったもんだな?オレの評判は良くしてくれよ?」
「ハハハ、トルネードの悪評なんか立てたら、うちの商会の方が悪く言われてしまうよ。」
「そうだな。ロアーヌでもトルネードは名を上げている。下手な噂など立てれば、商売がし辛くなってしまうだろう。想像だが。」
「想像にしては具体的じゃない?ねえ『影』さん。」
「フッ、これでも影を務める身。国の動きも多少なりと把握しているさ。」
「影ってのは大変なもんだな。…また儲け話があったら呼んでくれよ?」
「当然だ。目一杯働いてもらうさ。」
「「「ハハハッ!」」」
「…あ、あのー。」
「何?義姉さん。」
「その、何も、聞かないのかしら?」
「何もって、何?はっきり言ってよ。」
「あー、ほら…私が魔貴族って、事。」
「そりゃ、気にしてないって言ったら、嘘になるけど。」
「それじゃあ聞くよ、モリー。
いつから、そうだったんだ?」
「…初めから。…死食の後、子供の姿で開拓村で会ってから、ずっとよ。」
「ならいいじゃない、変わってないんだし。
義姉さんは義姉さんでしょ。」
「そうだな。今だって俺達を嫌いじゃないんだろ?」
「ええ!?それはそうだけど、…いいの?」
「別に、過去が変わるわけじゃないんだから。
それに義姉さんの隠し事は、今に始まった事じゃないよ。」
「そうそう。一人で狩りに行って、開拓村じゃ見ないモンスターを狩ってきたりしただろ?」
「あー…、あれは眷属のモンスターを呼んでね…ほら、食べ物が少なくて。」
「そんな事も出来たんだ。
そういうモンスターで義姉さんがスープを作ってさ、失敗して涙目になったりしたよね。」
「へえ、そんな事があったのか。今度料理を教えようか?」
「ちょっとエレン!?今それは関係ないでしょう!?
それに今はそれなりに出来るし、開拓者協会にレシピだって採用されたんだからね!!」
「冗談冗談。それに、開拓村に人が増えてさ。
小麦だけじゃない、米なんかの色んな作物を持ってきただろ?
売り先が被ることも無くてさ、助かったよ。」
「ベントさん家に入り浸ってさ、難しい本を読んで、お話を教えてくれたりしたよね。
どこで読めるようになったんだろ?って思ったものだけど。」
「お爺さまも気にしていたからね。実は良い所の家出娘じゃないかって。たまに調べていたらしいよ。」
「そうだったの!?お爺さまには悪い事をしたわね…。」
「帰ったら、一緒に謝ろうか。お爺さまは怒ると怖いよ?」
「いいね、あたしも一緒に謝ろうか?ちゃんと一人で謝れる?」
「子供扱いされてるわ!?」
「くっ、ハハ、諦めろよモリー。二人とも分かってて、お前をからかってんのさ。」
「アハハ、ともかく。全部終わったら、皆で村に帰ろうよ。
ユリアンは…分からないけど。」
「あ、ユリアンはうちの連中が言うには、無事に出世街道に入ってモニカ様と仲良くしてるらしいわよ?」
「そうなんだ?って何を見てんのよ、魔貴族ってやつら。」
「横から失礼するが。そうだな。騎士ユリアンはよくやっていると聞いている。
望みを叶える日も、遠くはないだろう。」
「! エレン、トム、聞いた!?どうしましょう!式には出られるかしら!!…あ。」
「聞いた聞いた。…ねえ。」
「あのさ、モリー。」
「あ、はい…なんでしょう。」
「一人で決めてさ、勝手に居なくならないでくれよ。」
「あたしもサラも、家族なんだからさ。困ったら教えてよね。」
「…二人とも、ありがとうね。」
「あっ、あそこ。うちの仲間だわ。この森の番人なの。
クローディア!」
「…ついに、来てしまったのね。モリー。
そして、『主人公』の皆さん。お久しぶりね。」
「数カ月ぶりかな?その『主人公』は分からないけれど。
教授の館に行きたいんだ。案内して貰えないかな。」
「ええ、いいわよ。…とうとう、終わってしまうのね。
暖かな世界に居られたのに、追われてまた、凍えてしまうの…。」
「終わる…?君も、魔貴族なんだろう?終わるっていうのは、一体?」
「決まっているでしょう。
自宅警備員兼、スローライフよ。」
「え…警備?スローライフ?」
「はいはい、相手にしなくていいわよ、こういう奴だから。
ほら行くわよー。」
「ついたわ、ここよ。って、一度来ていたわね。
教授、例のお客様を連れてきたわ。入ります。」
「あ〜ら、いらっしゃい。
アルジャーノンの始末と、ツヴィリヒト・ズィーガーの時は助かったわ。
お元気そうで何よりね。」
「その2つ目の話、後でじっくり聞かせて貰うわね。
終わりの時間よ。地下室へ行きましょう。」
「そうね、時がやってきたのね…。」
「長いようで、短い時間だったわ…。
ゲートが開いて、魔貴族がやってきて…色々な世界に繋がって、色々なものを作って。
まるで一炊の夢…光陰矢の如し…いえ。」
─ 胡蝶のように〜
「ゲートは地下室よ、行きましょ。」
「お待ちになって!置いて行かないでくださる!?」
「いきなり踊りだすからよ。ほら行くわよ。」
「お邪魔します…。これは、研究室か!?…この、浮いているものは?」
「フフ、気になってしまうかしら?
この中に居るのは、愛玩用のモンスターや、未知のモンスターや、コッペリアよ!」
「モンスターを作っているのか?
国が違うとは言え、ツヴァイクの友好国としては見逃せんが。」
「そのツヴァイク公の依頼で作っていますのよ?
トーナメントで使う改造ゴブリンからドラゴンズ、女性モンスターの一部など、賑やかしの準備ですわね。」
「なるほどな…。よそが口を出すものではないか。」
「それに、ただのモンスターではありませんわ。人に友好的な個体を集めて行う、品種改良なの。
未来には人とオーガが親しくなって、酒に酔って共に倒れる姿がある、かもしれませんわ。」
「魔貴族と組むが故に、集められる素体か…。竜も、居るのだな。
む、そこの扉が終点か?」
「この扉の奥よ。この先にゲートがあって…うちの責任者がいるわ。」
「この先にアビスゲートが…。みんな、準備は」
「開けるわね。会長!連れてきたわよ!」
「えっ、待ってくれ準備が…!
…商会さん?」
「よう、トーマスさん。いや、トーマス。
ついに、ここまで来ちまったな。」
「商会さん…。教えてください。
あなたは魔貴族で、俺たちの敵なんですか?」
「前半は、そうだ。後半は…いっても仕方ないだろ。
お前たちがどう思うかだよ。」
「…あなた達がやっていた事は、敵と言うより…
でも、どうしてサラを…。」
「ちょっと代わって。どうだっていいよそんなの。
サラは大事な妹なの。さっさと返してくれない?」
「だよなあ。分かってはいるんだけどさ。
こっちも出来るなら、サラちゃんを日常に返してやりたいんだが。」
「だったら!」
「『宿命の子』だからさ」
【トマホーク】
「エレン!」
「わっと!…ああ良い。言い方が悪かったよ。
…あの子にしか出来ないことがあるんだ。それは俺達じゃ出来ない事だ。」
「知らない。早く返してよ。
『宿命の子』なんて定め、あの子には要らないものよ。」
「ああ、俺たちもそう思うよ。全部終わったら普通の子になれるはずだ。」
「!?」
「商会さん…もしもサラのために動いてるなら、俺達に出来る事は」
「あくまで俺達は、サラちゃんを、彼女の宿命を利用しているだけだ。」
「それは…。」
「ともかく、今は返せないが、サラちゃんは無事に帰ってくるから安心しな。」
「そうですか…。すみません。俺たちには、ここで手を引く道は無いんです。」
「そりゃそうだよな。クローディア。」
「了解よ。…黒べえ!マリー!ゲラ=ハ!お願い!!」
GRRRRRR…。
…。
…ギャ。
「黒い竜と、マリーチと言う新種、それとリザードマン…ですよね。」
「ま、すまんが、ココを黙って通すわけにも行かなくてさ。」
「はい、解ってます…力尽くで、押し通りますよ。」
「それは困るんだよな。
…教授、先にゲートを」
「ついに私の出番のようね!秘密兵器を起動するわ!
ポチッとね!」
「えっ?」
「なんだって?」
ゴゴゴゴゴゴゴ…
「さあ、起きなさい!私の最高傑作兵器!!
ウルトラアルティメットファイナルディフェンサーツインシステムマシーン!!」
「…あー、教授…。聞き間違いかな?今なんて言った?」
「そうね、もっと分かりやすい名前で言おうかしら!
<最終防衛システム type.きょ・う・じゅ >
よ!!」
「…。」
「…。」
「なんてもん作ってんだあんたはああああ!!!!」
「あの、さっきから権能センサーがガンガンなんだけど!
危なくないわよね!?」
「ふっ、それはもちろん…
あなた達の知る、"スターバスター"もちゃんと搭載しているわ!!!」
「ドヤってんじゃねえこのクソ馬鹿天才教授ううぅ!!!」
「あの、商会さん…?」
「すまんトーマス!一時休戦だ!!
こいつを破壊する!手伝ってくれ!!」
「危機感知がガンガンなってるー!!
流れ弾がツヴァイク城にでも当たったらお終いよぉ!!!」
「流石は私!!国が敵に回っても守り切れるわ!!」
「今まさに敵に回しかねないし滅ぼしかけてんだよアンタはあぁぁ!!」
「クロべえ!!マリー!!ゲラ=ハ!!あーもう森の皆も!皆、手伝ってぇ!!!」
「大袈裟ねえ、国くらい例のアレで戻るんじゃないの?」
「ナジュ王国みたく戻らない可能性もあるんだよ!!」
「!!…どうやら、サラを助ける前に、一仕事残ってるみたいだな?」
「…義姉さん、あの鎧の化け物、そんなに不味いの?」
「えーと、多分…外に出て、一番威力の高い攻撃をしたら…その先の街や国が消えるくらい…。」
「魔貴族は世界を滅ぼす気か?そうは思えないような話を聞いていたが…。」
「誤解よ!いやある意味は誤解じゃないけど!滅ぼす気はないから!!」
「あー、うん。モリー。悪意がないのは分かったよ。
俺はどうすればいい?」
「ご…ごめんね、トーマス、エレン、ハリード、ミカエル様…。
手伝ってくれる?」
『"スターバスター" 充填開始 10%』
「そいつを止めろおおお!!!ここから外に出すなあああ!!!!」
【破壊光線銃】
「【幻体戦士術】【竜幻術】!!こっちに向けてこっちに!!!」
【ファングクラッシュ】
【落雷】
【無双三段】
【スターソード】
【ローリングサンダー】
「まあ、商会さんも知らない仲じゃないしな…。」
「サラを助けるのに障害が増えたってだけ。
何時も通り、叩き割るよ。」
「間違えてロアーヌを滅ぼされては困る。手を貸そう。」
「ハッ、追加の報酬は頂くぜ?聞きたいことも出来たしな。」
「皆、ありがとうね。助かるわ!」
『"スターバスター" 充填 20%』
『ほうだい1 発射』
『ほうだい2 発射』
『ほうだい3 発射』
『ほうだい4 発射』
「そっちも付いてるのかよぉ!当たり前だな畜生!!」
【シャッタースタッフ】
「こっちに撃ちなさい!そうそうハズレよハズレ!!」
【夢想弓】
「教授ぅ!まだなんか隠して無いだろうな!?」
「もちろんあるわよ!!
魔貴族を取り込む『ドッキングシステム』がね!!」
「そのあと操作は!?」
「出来ないわ!!!」
「絶対に使うんじゃねえぞ馬鹿野郎!!!」
「よし…。みんな、俺たちも行こう!!」
【かめごうら割り】
【ラウンドスライサー】
【サザンクロス】
【スカイドライブ】
【黄龍剣】
──
「っぐ…悪い、戦闘は向いてなくてな!先に離脱させてくれ!
すまん、後は任せた!」
「もう駄目、術力も技力もカラカラよ…。でも、もう少しだわ!
後お願いね!皆死なないでね!それじゃお先に!」
「先に帰ってズルい…ズルくない??
もう、いいわよ!任されたわ!!」
『"スターバスター" 充填 80%
…機関部ニ損傷アリ 修復中』
『メガスマッシュ』
「このまま、押し込めえええ!!」
【デミルーンエコー】
【ウェアバスター】
【ヨーヨー】
【スペルエンハンス】
【超重力】
『深刻 ナ エラー ガ 発生
…システム キンキュウテイシ…。』
「げ、撃破したわあ…。」
「そうだな…みんな、お疲れ様。だけど…。」
「言わなくてもわかるよ。…アビスゲート、もう駄目だね。」
「仕方ないさ。それに…まだ別の場所が有るんだろ?モリー?」
「ほう?…なるほど、正解らしいな。」
「え、う、うん。そうだけど…良く分かったわね?」
「義姉さんが、サラに会えなくなって落ち着いてる訳ないでしょ。
みんなにバレバレだよ。」
「ハハ、言われてるぜ。それで、どこなんだ?」
「後で言うつもりだったけれど…。
最後のゲートは東方の、砂漠を越えて、更に先。東の人の文化の国、黄京よ。
私が行ったことがあるから、道案内するわ。」
「ほう…その様な国が。
少し時間を貰って良いだろうか?私も付いていこう。」
「私は良いけど…。国の方は大丈夫なの?」
「ふっ、影が居ても居なくても影響はあるまい。
不在にすることを伝えるだけだ。」
「それ、押し通すのね…。」
「…ところでモリー。さっき聞こえた話なんだが。
教授の言った『アレで戻る』と、『ナジュ』について。聞いても、良いか?」
「ううん…ごめんなさい。上手く説明出来ないわ。
そこは、確実ではないの。」
「…そうか。まあ付いていけば分かる事か。俺も行くぜ。」
「ありがとう、頼りになるわぁ。」
「頼りにか…。お前たちの狙いは、何なんだろうな。」
「の、ノーコメントで…。」
★教授
私たちはココに来れたし、ゲートを壊す手間も省けたし!
主人公?も東方に行ったし、結果オーライね!
商会の魔貴族
もうツッコミを入れる気力もねえ…
警備員の魔貴族
開拓民さん、森の皆にお礼をあげておいて…もう無理かしら
開拓民の魔貴族
お礼、了解よ、休んだらあげてくるわ…
名無しの魔貴族
お疲れさん(くつろぎつつ)
名無しの魔貴族
アビス側の入り口塞いでなきゃなー行ったけどなー俺もなー
名無しの魔貴族
サラちゃんを甘やかすので忙しかったわー
名無しの魔貴族
英気を養って貰わないとねー
商会の魔貴族
こいつら…
開拓民の魔貴族
まあ、うん…一休みしたら、東方に案内するから。
みんな、最後の準備しててね
名無しの魔貴族
うーす
名無しの魔貴族
いよいよ最後かぁ
商会の魔貴族
全員、確認して回るからな
名無しの魔貴族
うへえ、了解
★教授
それじゃ、異世界移動計画!
いよいよラストスパートよ!!