ヤンデレと関わりたくない俺は、最強の異能を隠して異能学園を生き抜く 作:2F29くん
「ねぇ……
夜風が吹く。
住宅街の街灯だけが、静かに俺たちを照らしていた。
目の前には、一人の少女。
「どうして私を見てくれないの?」
俺は小さく息を吐く。
「見てるだろ」
「違う!」
少女は一歩踏み出した。
「そういう意味じゃない!」
その瞳には俺しか映っていない。
……この目だ。
何度も見てきた。 嫌というほど。
「私は玲斗だけを見てる」
「朝起きても」
「学校でも」
「寝る前も」
「夢の中でも」
「ずっと」
「ずっと」
「ずっと」
「はぁ…もう、俺に関わるのは止めてくれ。もう散々なんだよ」
ため息を大きく吐く。このようなやりとりは何度やっただろうか。俺は体質なのか女神に呪われているのか分からないが、こうやって重い感情を向けられることが以前から多々あった。
そいつらはみんな俺を縛ろうとする。言葉、行動、異能、手段は変わるが目的はいつも変わらない。
「なんでそんなこと言うの?」
「お前に興味がないからだよ」
冷たく言い放つ。少し前までは仲が良かったが、こうなった彼女とは距離を置くしかない。俺のためにも彼女のためにも。
「ふーん、そっか。じゃあ一緒に死のう!」
その瞬間、異能が発動した。
炎が少女の腕を包み込む。周囲の空気が熱を帯びて、こちらの肌までひりつく。
「お願い。私だけを見て」
少女が炎を纏ったままこちらへ駆け出した。
俺は動かない。
足元へ視線をそっと落とす。街灯に照らされた影。それを俺は操る。
「――縛れ」
影が蠢いた。
地面を這う闇が少女の足元へ伸びる。
「えっ……」
一瞬だった。影は脚を拘束し、そのまま腕へ絡みつく。
炎ごと押さえ込み、完全に動きを封じた。
「な、なんで……!」
「もう一度だけ繰り返す。俺に関わらないでくれ」
そう言い残して玲斗はこの場を立ち去る。その背中には疲労の色が滲んでいる。
異能は彼女が追いつけない距離まで離れるまでは解かない。あの執着の塊なら、俺を見失っても探し続けるかもしれないから。
これは何か対策を考えておかないといけない。
そう考えながら歩いていると、スマホが震えた。妙に気になって見てみると、一件のメッセージが俺に届いていた。送り主は朝倉結衣、俺の残された幼馴染だ。前まではもう少しいたんだけどな…。
「すごく自由で校則にも縛られない学園があるんだって。玲斗くんにはきっとぴったりだと思うから一緒に受験してみない?」
その言葉を信じたことが俺の平穏を壊す始まりになるとは、この時はまだ知らなかった。|
お久しぶりでございます