ケロロ軍曹ぷらすいち! 空兵参上であります! 作:性癖大爆発
「許しません」
「いえ、ですから業務上のことでして」
「そうじゃなくて、クルちゃんが我が家に住むのは構わないわ。だけど寝泊まりするのがナルちゃんの部屋じゃ問題よ。ケロちゃんの部屋があるじゃない」
「……そうなりますよね……」
クルルを連れて帰った私はママ様に連絡を取ることにいたしました。クルルの場合技術屋になりますので作業場が必要です。ケロロ隊長の部屋は便宜上指令室になりますのでそういうわけにはいきません。なので消去法で私の部屋……というわけにもいきませんよね、ママ様ならそうです。
「クックック~~、メンドくせぇな。いっそのこと空間でも歪ませるかぁ?」
「いやー、それはそれで問題でしょう。ついでに時間も歪みます。上か、下ですね」
「頼りになる隊長サマの意見をお聞きするとするか?今頃ガンプラでも作ってんだろ」
「ケロロ隊長の行動ルーティンをすぐに把握するのは流石ですね……」
隣にいて話をすべて聞いていたクルルの言う通りケロロ小隊は5人そろい大所帯になりました。ギロロ伍長などはテント生活で外にいるわけですし本格的な前線基地が必要になるでしょう。ないなら作ればいいのです、軍の基本ですね。それで完成したダメな事例はかくあれど作らなければ始まりません。
「ケロロ隊長、侵略会議を開きましょう。議題は前線基地の設立についてです」
「あー、2、3日待って。今このハイグレードデンドロビウムを作るので忙しいのであります」
「ケロロ隊長、前線基地が完成した暁にはそれだけには飽き足らず好きなだけガンプラを飾るスペースを確保できますよ?」
「モア殿!今すぐタママ二等と外でテント暮らししている赤ダルマを呼んでくるであります!」
「はいっ!てゆーか急転直下?」
ケロロ隊長はすぐさま侵略をする必要はないとのお考えなのかせかすと逆にものぐさになっていく傾向があります。なのでこういう時はやる気を出していただくのが一番早いのです。ちょうど大きなガンプラを組み立てていたケロロ隊長は私の囁きを聞くと一緒にいたモア様に指示を出しモア様は嬉しそうにすっ飛んでいきました。
「ククッ、隊長をその気にさせるのがうめーじゃねーの」
「隊長は腰が重いですからね。それに……」
「それに?」
「隊長がガンプラのコレクションルームを作るのならばあなたの個人工房やギロロ伍長の武器保管庫、私の乗騎のガレージを作っても許されるでしょう?」
「ちょっと見ねえ間に腹黒くなったじゃねえかよ」
「どこかの誰かさんの影響でしょうね」
どうせ作るのならしっかりしたものを。というのが基地建設における鉄則です。使い捨てではなくこれからの侵略を支える前線基地になるのです。こだわりにこだわりを持って作るべきでしょう。どたばたとにわかに騒がしくなりタママ二等兵とギロロ伍長が同時に部屋に入ってきました。
「なんですか軍曹さん、緊急集合だなんて。何かいいことでもあったんですぅ?」
「まったく、火をつけたばっかりだというのに。それで?何かいい侵略作戦でも思い浮かんだのか?」
「ウム!よく来てくれた二人とも!今回は
「はい。単刀直入に言いますと
モア様にホワイトボード用のペンをお渡ししつつ、私は立ち上がって議題を発表しました。ギロロ伍長とタママ二等兵はおお!とかなり好意的な感じです。好感触ですね。ところでクルル、ガムを嚙むのをおやめなさい。
「ごばっ!?あ、相変わらず容赦がねえぜぇ……」
「貴方に口で言っても素直に聞くはずないですからね。物理攻撃が一番早いです。メガネのスペアがなくなる前に態度を改めなさい」
「……ま、マジで容赦ないですぅ。机にひびが入っちゃってるですぅ」
「わ、吾輩マジでナルル殿を怒らせないように頑張るであります。夏美殿並に容赦ないであります」
メゴっ、と音をたててクルルの頭が机にめり込みます。私は空兵、つまりはパイロットですがそれ以前に軍人です。当然体は鍛えています、手の下にあるカレー臭がするもやしとは違って。いや、コレでも知り合ってからかなりの時間は口で注意をしていたのですが口じゃあ聞かないというのもいい加減学びまして。物理でやってみたらそれはもう効果覿面だったのでこの方法に落ち着きました。
「さて、
「吾輩は空!」
「ボクも空ですぅ」
「俺は地下だ」
「俺様も地下だぜぇ」
「私も地下です。現状の意見がこれということは多数決で地下となりますね」
空と地下なら断然地下です。空の場合奇襲を受けにくいことやレーダー網の構築、索敵範囲の拡大等が比較的容易ですがその分コストが高くつきます。地下の場合ですと初期のエネルギー投資が低コストかつ隠れやすいのがメリットですね。ケロロ隊長たちはどぅえーと文句を言っていますがこれが決定事項です。
「では次です。地下基地に必要な設備を列挙してください。あとで削ればいいのでとりあえず思いついたものを」
「はいはーい!ガンプラを飾る部屋が欲しゲロッ!?」
「ふざけるなケロロォ!まずは指令室とかの重要設備だろうが!趣味の部屋はここでやれ!」
「えーっ!?いいじゃんどうせ作るんだから最初に提案しても一緒だろぉ!?どーせ赤ダルマ君も武器庫とかつくるんでしょぉ!?ならワガハイと変わんないじゃん!」
まぁ、ケロロ隊長を焚きつけた言葉がガンプラ部屋でしたので真っ先にその言葉が出ることは分かっていました。ケロロ隊長は行動力はあるのですが行動するまでのスパンが非常に長いお方ですので、やる気が出なければこんなものでしょう。うーん、最近これできちんと隊長としての研修ができているのか不安になってきました。
で・す・が。今のこの状況は看過できません。ギロロ伍長が瞬間湯沸かし器のごとく沸点が低いのは知っていましたが議論の場で重火器を出して振り回しあまつさえ発砲してるのです。相手はケロロ隊長なのでまあ、昔馴染みのコミュニケーションかもしれませんが。いちいち発言するたびにマシンガンぶっぱなされちゃ話が進みません。
「そこまで。ギロロ伍長、以後抜銃は禁じます。例え提案がふざけていようと後で削ればいいだけの話です。いちいち話の腰を折らないように」
「ヌッ、ムゥ……すまん」
「ケロロ隊長も、真面目な話は真面目にお願いします。スペースが余れば作ればいいので今は必要なものを提案していきましょう」
「アッ、ハイ。スイマセン」
「うわ、まるでクラスに一人いる委員長みたいな仕切り方ですぅ」
「そういうタママ二等兵、何か提案がおありで?」
「タマッ!?書記と進行の立場を利用したパワハラですぅ!?んー、でもトレーニングルームとかは欲しいですぅ。モモッチのお家にもあるんですけど、軍事機密の装備なんかのトレーニングはできませんし……」
タママ二等兵が余計なことを言っているので発言を促してみると意外にもまともな答えが返ってきました。なるほどトレーニングルームですか。
「……ケロロに言われてしまったが武器庫だ。俺個人ではなくケロロ小隊のな。いざという時の武装をそこに置き、小隊の人間なら使えるようにしておく。どうだ」
「あー、んじゃあ通信設備でありますな。ケロン軍本隊との通信復旧は急務であります。ケロボールがなくても本隊との通信を行えるようにしておかねば」
「当然俺様はラボだな。侵略兵器を作るにも何するにも設備がねえと何もできねえ。一番に作ることを勧めるぜぇ。ク~~ッックックック~」
「武器庫と並びますが私の場合は格納庫ですね。空兵である私は言うに及ばず皆さまのソーサー、フライングボード、拡張兵装の保管場所、メンテナンス区画は必要です」
まぁ、最初はふざけていることもあるにせよ皆それぞれ軍功を積んだ軍人なので議題を定めて提案を回していけば必要なものは自ずとリストアップされるものです。大まかに必要な施設は決まったのでその場でクルルと私がささっとブラッシュアップ。これで後は建設を開始するだけです。
「よし!これにて第一回侵略会議を終了!ただいまより急ピッチにて基地建設を行うものとする!ものども!我々が
バゴン!とホワイトボードにまとめた情報を叩いたケロロ隊長が場を取り仕切ります。あれというのはあれですね、ケロン人が気合を高めるためにやるアレです。すっと全員立ち上がり円形状に顔を寄せ合いました。
「ゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロ……」
「ナルナルナルナルナルナルナル……」
「タマタマタマタマタマタマタマ……」
「ギロギロギロギロギロギロギロ……」
「クルクルクルクルクルクルクル……」
そう、共鳴です。ケロン人なら当たり前の行動ですね。ケロン人による一種の儀式のようなものでして
「やはり一人足りないともの寂しいですね」
「え~~、足りないって何言ってんのよナルル殿~~」
「……???ゼロロ兵長がまだ見つかっていないでしょう?」
「あ」「あ」「あ」「あ」
「なぜ私以外全員忘れてるんですか……。まあ、アサシンとしてはそれが本分なのでしょうけども。しかしクルル、あなたまで忘れているなんて遂にヤキが回りましたか」
「うるせえ。無駄なことに頭のリソース割いてねぇだけだ」
ゼロロ兵長、ケロロ小隊所属の暗殺兵です……おかしいですね、皆様に説教じみたことを言った手前言い出しにくいですが私も彼に対する記憶が若干曖昧です。ですが、アサシンは人の記憶からも消えることを目的とする兵、恐らくこれはゼロロ兵長の本分のはずです。
単騎で地球を落とせるほどの実力を持つ個の強さでは間違いなくケロン軍の中でもトップレベルの強さを誇る彼がいまだに合流しないというのは聊か不自然ですが……言っても始まりません。彼の居室及び希望については合流後ということにしましょう。
「それでは……クルル、これは?」
「ククッ、秘密基地だからなぁ。まさかご丁寧に日向家に知らせてやるわけにもいかねえだろぉ?地下っていうんだからよぉ……掘るぞ」
「いやそれは分かりますが……私の乗騎でも」
「そのスペースを確保するっつってんだよ。まさか隊長の部屋ぶっ壊すつもりかぁ?それはそれでいいけどなぁ。日向秋に知られたらヤバイぜぇ?」
「はぁ、反論しにくい正論を……。いいでしょう、掘りますか」
「入り口だけは超空間で作ってやる、出た土は外壁の材料にするから全部しまっとけぇ」
「では、気を取り直して……ケロロ小隊出撃であります!」
とりあえずゼロロ兵長のことは置いておいて、と気を取り直した私たちにクルルが渡したのはスコップとつるはしでした。いや、超空間のゲートをつなげてくれれば……と思うのです。私はありとあらゆる任務に対応するためケロン軍から条約締結後の兵器に限り機密関係問わず全ての乗り物と名のつく兵器を支給されています。なので当然土木建築用のそれもありますので掘るのでしたら私が……となっていたのですがクルルの言うことは正論です、負けた気分になるのは正直釈然としません。
というわけで道連れです。全員がつるはしあるいはスコップを手に持ちます。ですがクルルがやるわけありません。超空間を繋ぎ終え目の前に現れた壁に対して各々武装を振るい穴を掘っていきます。出た土は痕跡一つ残さず亜空間倉庫へ。
クルル、隅でさぼろうとしてもそうはいきませんよ。貴方も掘るのです、え?俺様は肉体労働はしない?結構、それではドリルをどうぞ、岩盤砕きをよろしくお願いします。ガムを噛んだ罰です。
ナニニ兵長、忘れられるの巻