ケロロ軍曹ぷらすいち! 空兵参上であります! 作:性癖大爆発
「思ったより長くかかっちゃったわね~~。ナルちゃんありがと♡いろいろアドバイスたすかったわぁ~~」
「いえいえ私にできることなど微々たるものです。素人意見で申し訳なく」
「もう、何言ってるのよ。さて、それじゃあ次は売れっ子作家の原稿ね。ゲロロ艦長の原稿はどうしたって落とすわけにはいかないわ……!」
「ゲロロ艦長、ですか。確かケロロ隊長が面白い作品だと仰っていた覚えがあります」
「そう!吉崎先生渾身の作よ!でも、やっぱりネタ出しに苦労してるみたいでね。今日中に原稿をもっていかないと休載になってしまうわ!月刊誌だからこれは致命的なの!」
今日中……たしか
「ママ様、ママ様はまさかいつもこんなに時間的余裕のない仕事をしてらっしゃるのですか……!?」
「まっさかー、原稿が詰まったときだけよ……って言いたいんだけど実際その通りなのよねえ。私としてももうちょっと家に帰る頻度増やして夏美や冬樹と一緒にいたいんだけど……」
「確かに私もスクランブルや任務で時間制限のある作戦行動をしたことはあります。ですがそれは緊急事態だからであって普段から家に帰れるか帰れないかという観点はありませんでした。
「大袈裟よ、お・お・げ・さ。さ、此処からだと吉崎先生のアトリエまでは1時間かかるわ、印刷所が閉まるのが7時だから急ぐわよ~~~!」
ブルオオン、とアクセルをママ様が捻ると旧文明としか言えない燃料に着火するタイプのエンジンが勢いよくうなりをあげます。ソーサーとは少々勝手が違いますがママ様のドライビングテクニックは相当なものです。思わずバッグの中で左右に振り回されながら感心して頷きます。これ私がパイロットじゃなかったら溶けるかゲル状の何かになってますね。
何だか途中でスリップ音がしたり空中にふわりと浮かんだような感触がありましたが千無き事です。ケロン星でも似たようなことはありますが空中道路ですのでもっと安全ですし。時刻は午後四時を回ったところで少々大きめの家屋の前にママ様がバイクを留めました。ここが吉崎先生とやらの前線基地ですね。
「吉崎先生~~?こんにちは~~~?原稿できてますか~?」
「ああ、秋さん!ごめん!あとペン入れが2ページ残ってるんだ!できるだけ急ぐから待っててくれないか!?」
「もう、印刷所待たせてるんだから急いでくださいよ!まってますから!」
「すまん!お茶は勝手に淹れてくれ!じゃ!」
ペン入れ、というのは道中で聞いた漫画の原稿の仕上げだったはずです。他にもトーン貼りやカラーと言ったものもあるそうですが今月はカラーの扉絵というものは完成していてあとはペン入れを施した原稿だけなのだそうです。
しかし、この空気……!これは最前線で今まさに撃ち合っている戦場の空気です!まさか、戦場だとでもいうのですかここは!?修羅場、修羅場という奴です!ママ様は呑気な顔で冷蔵庫というらしい箱からお茶を取り出してコップに注いでいますが私はここで呑気にお茶を啜るのは不可能です!できれば武器を構えていたいくらい!
「なぁにナルちゃんそんな緊張した顔しちゃって。そんなにここまでの道中辛かったのかしら?ごめんなさい、酔い止めは今持ってないの」
「い、いえこの前線の空気に呑まれそうでして……!新兵の頃何度か味わいましたがまさか
「まあ、そんなにかしら?私たちにとってはこれはもう当たり前なんだけど……とにかく急いでもらわないとほんとに困るわ。印刷所の締め切りが毎度ギリギリで契約切られちゃうかもしれないし」
「これが当たり前……!もしやママ様は
恐れおののく私の言葉にママ様はくすくすと笑いを漏らすとそんなことないわ、と私を撫で繰り回します。ママ様、ママ様はもしかして私を子供か何かと勘違いしていらっしゃいませんか?私、コレでも正規の軍人できちんと大人なのですけども。それなりに戦果をあげて……あ~~~マフラーとらないでください~~~。
「にしても、遅いわねえ。吉崎先生とアシスタントだったらペン入れくらいすぐに終わると思うんだけどな」
「日向さん!ごめんなさい!今原稿に墨をぶちまけて……!スキャナーで取り込んだ原稿からペン入れし直しになっちゃいました!」
「な、なんですって!?と、とにかく急いで!もう持ち込み期限過ぎちゃうわ!」
転がり込むように入ってきた男性の言葉から察するに原稿をダメにしてしまって今新たに新しいものを作っている、ということでよろしいのでしょうか。さっきまでまだ大丈夫、という顔をしていたママ様もこれには焦りを隠せていません。あと2時間もないですが、大丈夫でしょうか。
「ママ様、印刷所というのはここから近いのでしょうか?」
「いいえ、県を跨ぐから結構遠いわ!だけどメールでの入稿ができるから編集室からすぐに行けるはずなの!だけど、これじゃあ完成しても間に合わないかも……!」
「直接持っていくのとどちらがいいのでしょう?」
「どっちでも構わないけどスキャナーで取り込む作業がある分直接持ち込みの方が手間が省ける分速いわね!っていくら私でも今から原稿完成まで待ってたら両方とも間に合わないわ!」
ママ様の焦り顔を見るにこれはかなりの一大事の御様子。ここで静観するのが侵略者としては正しいのでしょうがママ様は今日一日大変な仕事をこなしながら私に
「ママ様、でしたら私が直接その印刷所とやらに原稿とママ様をお届けしましょう。軍機を使わなければセーフです。さ、座標をご存知でしたらお教えください」
「え、いいの、かしら?ナルちゃんってそういうの厳しそうだなって思ってたわ。それに、そういうズルみたいなのもね。」
「よく言われます、が今回のこれは規律の隙間を縫う行為です。違反ではありませんがかといって合法というわけでもありません。ですが、恩を受けた身としては返さないほうがよほど問題です。ズルはズルかもしれませんがママ様のお仕事を落としてしまうのは心苦しいのでお目を瞑っていただけると……」
一番丸いのは超空間を使った移動ですがこれは正確な空間座標がいるのでママ様から聞きかじっただけの座標では難しいでしょう。こうなっては直接機体を操り空を飛んで最短距離でママ様を届けるのが最速!問題ありません、亜光速程度まで出せれば時間には間に合います。
ママ様から提供された住所?をこの星のネット経由で調べてみると、見つけました。これならば亜光速まで加速せずとも1分程度でつくでしょう。私が空間に画面を投影してあれこれしているのをママ様は驚いたような顔で見ていました。
「ナルちゃん、ほんとに軍人なのね。さっきまでとは雰囲気全然違うわ」
「ナルッ!?やはり私にはケロロ隊長のような威厳はありませんか……!?」
「いいえ、そんなことないわよ。今のナルちゃんとってもカッコいいわ。私が男だったら惚れてたかもね」
「光栄です!ではナルル空准尉これよりママ様を護衛し目的地までの空輸の任に就きます!ママ様はお気になさらず原稿の完成をお待ちくださいますよう」
「はい、よろしくお願いします。ありがとう、ナルちゃん」
ビシリ、と軍属になってから毎日欠かさずとり続けて居る敬礼をとるとママ様はカッコイイとほめてくださいました。ケロロ隊長のように渋さはないかもしれませんが実直さでは負けていないつもりです。お先に準備をして待っていますと外に出て機体を呼び出します。
距離を考えるならばケロン軍の機体の中でも平均的な速度があれば全く問題はありません。ですが、ママ様とそのバイクを乗せることを考えると輸送機が適任です。私専用亜空間ガレージからずんぐりむっくりの輸送船『メンダク』を呼び出しました。サブアームでママ殿のバイクを掴み格納庫に仕舞って固定します。あとはハッチを開けてママ様を待つだけです!
目的地までのナビは……必要ありませんね。
いつでも飛び立てるように機長席に座り待機の時間です。幸いメンダクを出せる程度には広めの空き地があって助かりました。えーと、残り時間は一時間くらいですか、まだまだ余裕ですがさすがに時間を過ぎてしまったらどうしようもありません。
「ナルちゃんっ!お待たせ!間に合うかしら!?」
「問題ありません!ハッチ閉鎖、緊急出撃プロトコルを開始。ママ様、しっかり掴まってください!」
大きく手を振って現れたママ様にメンダクのサブアームを振ってこたえます。サブアームでコックピッチハッチを指し示すとママ様は迷いなくコックピット内に飛び込んでくれました。すぐさまハッチを締めます。
さすがにメンダクに
「秘匿活動のため通信はカット、アンチバリア正常。発進します」
「お願いねってきゃっ!?」
「到着しました」
「えっ!?早いわ!?感動も何も全部おいて来ちゃったわよ!?」
「では、帰りはゆっくり飛ぶことにしましょう」
メンダクがスラスターを吹かせて浮かび、私は右手でスロットルを思いっきり吹かします。一瞬大きく揺れてママ様がバランスととったと同時に目的地まで到着しました。急いだので加速の瞬間揺れてしまったのが反省点ですね、次からは揺らさないように急ぎましょう。反省を生かしメンダクを揺らさず接地させてハッチを開けるとそこは印刷所とやら近くの公園です。薄暗くなったからか人がいないのでここにしました。
場所を認識したママ様はすぐさま飛び出して原稿が入った封筒を振り回しながら印刷所に飛び込んでいきました。時間的にはばっちり間に合ったわけですが、大丈夫でしょうか。少々やきもきしながら考え事をしていると思ったよりも早くママ様が戻っていらっしゃいました。もしやこれでお仕事が終わりならばママ様は今日も自宅に帰宅できるという事でしょうか?それはつまり……
「ナル?もしかしたら私がママ様を送り迎えすればママ様は毎日夏美様と冬樹様とご一緒に暮らせるということでは?」
「とっても魅力的な提案なんだけど、それはホントにただのズルよ。だから遠慮させて、ね?世の中子供に会いたくて早く帰ろうとする親はたくさんいるの。私だけナルちゃんっていうズルをしたら私が夏美と冬樹に顔向けできないわ」
「ナル……了解しました。不躾な提案をお許しください」
「あーん、ちがうわよそんな落ち込んじゃダメ!それに、今回はホントに助かったんだから!」
あう、すこし余計なことを言ってしまったのかもしれません。子供のもとに親が早く帰りたいのは当たり前、それで公平に競っているのに一人だけ出し抜くという行為は確かに誉められたものではありません。しょもん、としてしまった私と先ほどまでとは別の意味で慌てたママ様が抱っこして慰めてくださいます。
「ナルちゃん、ありがとう。ギリギリの入稿ってほんとに印刷所には嫌がられるの。私たち締め切り5分前の入稿が当たり前になってたから今回の入稿は逆に驚かれたくらいよ。ナルちゃんのおかげで子供たちが起きている時間に家に帰れるわ」
「それはよかったです。では、ゆっくりではなく急いで帰投することにしましょう」
「んー、それはゆっくりでお願いするわ。ナルちゃんにかまってあげられる時間がへっちゃうもの」
「……ナル、私は別に構っていただかなくても平気です」
「ふふ、じゃあ言い方変えようかしら。ナルちゃんの事もっと知りたいの。これから家族になるんだから」
むむ、ママ様はやはり日向家最強の防衛ラインに違いありません。少なくとも言葉での反撃はどうやら私には不可能のようです。ゆっくりとメンダクを発進させた私は日向家に向けて進路を切ります。私はママ様に頭を撫でられながら赤くなるしかないのでした。
「ちょっとナルル殿!なんばしよっとね!?隊長の命令なしで敵地に単独潜入ってなにかんがえてんのぉ!」
「す、すみませんケロロ隊長。ですがボイスメッセージは枕元に端末を……それに夕食の時間に威力偵察の許可はとったはずですが……」
「……え?」
「……ナル?あの、私の私物の録音装置なのですが……黄色で渦巻き模様の」
「もしかして、これ?(粉砕された機械のスクラップ)」
「……(無言の涙目)」
「ボケガエル……」
「ゲロォっ!?ち、違うんでありますよナルル殿!これは寝ぼけてしまっただけであってあああああ~~~~冬樹殿ケロボール一回返してぇ!!!!」
こんなことが帰宅後にあったとかなかったとか。