ケロロ軍曹ぷらすいち! 空兵参上であります! 作:性癖大爆発
「ずるいであります!ナルル殿ばっかりママ殿に連れて行ってもらって!吾輩もお出かけしたいであります!」
「って言ってもね~~ボケガエルとナルルちゃんだと天と地の差があるわよ」
「なんですとぉ!?隊長たる吾輩の華麗なる仕事を前にしてそんなことを言いますかぁ!?」
「はぁ?じゃあ今ナルルちゃんが何やってるのか言ってみなさいよ」
「ケロ?皿洗い、でありますな」
「本当ならあんたがやるはずだった仕事の、ね。ナルルちゃんから言い出したのよ?アンタ変わるって言えたかしら?」
ゲ、ゲロォ……と夏美の前でぷんすかと怒って身の丈一杯の主張をしていた宇宙軍人ケロロ軍曹は黙り込む。ケロン軍本隊から見捨てられ、隊はバラバラになり地球人である日向家に居候することになって早幾日。ケロロの怒りは爆発してしまったのだ。
というのも、ケロロ小隊に隊長研修という名目で引っ付いてきて、ケロロと同行していたもう一人のケロン人、ナルル空准尉のことである。なぜか彼女は毎日日向家の家長にして最高権力者でもある秋に連れられ外界調査という名目のお出かけをしていたからである。
ケロロがやることと言えば掃除、洗濯、家事手伝いの3コンボを決めてからの家から出るなの一言であった。さすがにこれはどうなんでありますかぁ!?と文句の一つも言ってもいいものであるが、ナルルを連れて行くと決めたのは秋本人であるし子供たちは母親を信頼している上にそれに反対するつもりもなかった。そして最後の理由は
「いや不公平っしょ!?吾輩だってナルル殿みたくお出かけしてもいージャナイ!」
「ごめんね軍曹、僕たち普通の日は学校だから軍曹と一緒にお出かけできないんだ。バッグの中でずっとじっとしているよりも家にいたほうがいいでしょ?軍曹何もしないで止まってるの無理そうだし」
「そーんなのナルル殿も一緒でありましょ……あ、そっかぁ……ナルル殿任務中の待機時間めちゃんこ多いから動かないでじっとしてるのが苦じゃないんだったぁ……」
「そもそもアンタ連れてったら連れてったでなんかやりそうじゃない。侵略~~~ってさ。ナルルちゃんは何かしようとしてもママが止めるだろうし」
とてつもなく酷い言われようである。ケロロの積み重ねとナルルの積み重ねの違いが明確にあらわされた結果であった。初日から家事手伝いをさぼったケロロと積まれたタスクを消化していくことが割と好きなナルルをみた日向家の感想である。
ケロロは知らない、ナルルはそれなりに外で秋と楽しんでいるということを。ついでにアンチバリアの存在も知らない。ナルルは知ってて当然という知識なので改めてケロロに確認することもない。何というひどい循環が出来上がってしまっているのだろうか。
「ナル、ケロロ隊長が仰ることはもっともです。公平性を担保するべきというのならば私が明日以降自宅で待機し、ママ様のお仕事にケロロ隊長が同行するのはいかがでしょう」
「ん~~~、そうなんだけどねぇ……ケロちゃんゲロロ艦長のファンなんでしょ?」
「そりゃあもう!初版から全巻もってるであります!」
「じゃ、だめね。吉崎先生のところには連れていけないわ。私は仕事をしに行くのであってファンを案内するわけじゃないもの」
「なん……ですと……?」
「ごめんねケロちゃん。これママの会社のルールなの。身内でもファンを作家に会わせたりしいてはいけませんっていう。作家さんに迷惑かかったら本末転倒だから。ナルちゃんは一切知らなかったしね、うちの雑誌」
どこからか秋が調達してきたらしいきっちりサイズエプロンを綺麗にたたみながら登場したナルルの提案は自分の代わりに秋の仕事に同行すればよいのではないか、ということであった。秋はそれを苦笑いで仕事中と同じトーンで一刀両断に断ってしまう。ファンを作家に会わすことができないというルールがケロロの出撃を拒んでいた。
「……お出かけするなら、条件があります。ケロちゃん、いい?」
「ゲロォっ!?良いでありますか!?」
「ちょっとママ!?」
「夏美、ケロちゃんだって私たちと同じ感情があるのよ。侵略者だって言ってずっと上から押さえつけるのはよくないわ。だから、約束が守れるかどうかで判断しましょう。ナルちゃんも、ね」
どこか含みもある言い方で秋がナルルの方を見ながらそんなことを言う。正論ではあるがどこか無理筋な印象を受けるものの夏美自身もケロロを閉じ込めたままにしておくことには後ろめたさを感じていたので強く反論はできない。一瞬で場を制圧した秋がそのまま条件を並べ始める。
「まず二人セットで行動すること、どこかで単独行動は絶対になし。そして誰にも見つからないようにすること。ご飯を食べたり息抜きをするのも自由だけどそれは守ってね。人の迷惑にならないようにすること。侵略行為はもってのほか!最後に、乗り物のハンドルはナルちゃんが握ること。以上!守れるかしら?」
「りょ、了解であります!ケロロ軍曹、ママ殿の指令をすべて順守してお出かけの任をやり遂げるであります!」
「はい、よろしい。それじゃナルちゃん?これを持って行ってどこかに行くたびに1枚写真を撮ってきて。ナルちゃんかケロちゃんが映ってるようにしてね。証拠よ」
「ナル、わかりました。ナルル空准尉、ママ様からの任務を受諾しました」
秋がナルルに手渡したのはポラロイドカメラと沢山のフィルムであった。ナルルの手には大きいそれを不可思議そうに見まわすナルルにほっこりとしたらしい秋はよかったね軍曹とケロロに駆け寄る冬樹と不安そうに見つめる夏美を撫でた。ナルルはその光景を見て思わず使い方を教えてもらったばかりのカメラでシャッターを切る。出てきたフィルムに浮かんだ絵をみてふっと微笑んだナルルは自分専用の亜空間倉庫にそのフィルムをそっと入れるのだった。
「こ、これは絶版になったファン垂涎もののソーサーKRR-SPの超高カスタム限定モデル……!KRR‐LG!?な、ナルル殿がなぜこれを持っているのでありますか……!?」
「たしか、これはケロン軍の慰安イベントで行われたフラッグレースに出場した際の優勝賞品です。全力で操縦出来て尚且つこんなものまでいただける、一石二鳥とこの星ではいうらしいですね、ナル」
「さ、流石は『群霊』のナルル、伊達ではなかったか……!?」
「では参りましょう、ケロロ隊長。後部にどうぞ」
「あの~~~、ナルル殿。ちょっと運転させてもらったりとか、どすか?」
「ダメです、ママ様との約束ですから」
お出かけです。お出かけなのです。と翌日の朝私はママ様に増設していただいたポラロイドカメラというらしい記憶媒体を紐で斜めに下げて私物のソーサーをガレージから呼び出しました。それを見たケロロ隊長が飛び上がりながらソーサーを四方八方から嘗め回すように見つめています。
しかし、ケロロ隊長はソーサーの部類にお詳しいのですね。私はいくつかソーサーを使い分けていますがこのソーサーはもっぱらドライブ用の私物です。敵地に潜入するときなんかはもっと別のものを使いますし。戦闘ならフライングボードですね。実は旧式の反動力エンジンの良さを連日のママ様とのお仕事の道中で思い出したのです。
静かでパワーがあるのが最新式の良さですが、旧式の心地よい振動と音も悪くはないものです。運転してみたいと仰るケロロ隊長ですが今回はママ様からの任務が優先、よって要請は却下とします。ナル、上官の命令に逆らってしまいました。
「出発でありま~~す!!ナルル殿フルスロットル!」
「はい!」
「ゲロ~~~!?さ、流石はKRR-LG!殺人的な加速であります~~~!ナルル殿ブレーキ!」
「はい!」
「キイイヤアアアア~~~誰が後方左ドリフトしろっつったんでありますかああああ!?」
ケロロ隊長の号令で朝、ソーサー二人乗りで私たちは奥東京の街に繰り出すことになりました。ケロロ隊長はどうやら外に出られるが嬉しいご様子で私越しにソーサーを操るのを楽しんでおられるご様子。不肖ナルル、持てる力を総動員してケロロ隊長を楽しませてみせます!
「ゲ、ゲロ……まさか生身でノイマンが操縦するアークエンジェルがごとき軌道を味わえるとは……あー休憩休憩!ナルル殿公園あるしひと休みするであります」
「了解、地面に着地するのでアンチバリアの展開をお願いします」
「アンチバリア?あーー、あったねそれ……ゲロォッ!?」
「????どうかされましたかケロロ隊長」
「いやなんでも!アンチバリア展開!(やっべー頭からすっぽ抜けてたであります!というかこれあったら捕虜になんかならなかったんじゃ……)」
どうかしたのでしょうか、それにしても良い天気です。ママ様の運転するバイクも悪くはないですがやはり操縦するのは自分自身に限ります。しかし、
「あーナルル殿。次はあちらの大きな建物に行ってみようであります。あんなに大きな建物、きっと
「了解。では上空より偵察飛行を行いましょう」
装備は私は、ママ様より頂いた糧食はケロロ隊長が管理しております。ケロロ隊長と水筒からお茶を分け合い暫く公園でのんびりしました。もちろん忘れずにカメラで写真を撮ることを忘れずに。ケロロ隊長のまったり顔、貴重な一枚です。
ケロロ隊長が指さしたのは確かに他の
「はー、でっかいでありますなぁ……ん!?んん!?ナルル空准尉、速度を維持したまま降下せよ。目標地点はあそこであります」
「……あれは、タママ二等兵?」
「……えっ!?ぐんそーさんと……何してんだこのアマァ!?」
「上官になんて口をきいているのですか貴方は……」
なんと、なんとです。建物の敷地内で拳を振るっていたケロン人を見つけて近づいてみれば作戦行動の際に散りじりになってしまった小隊メンバーの一人、タママ二等兵を発見できました。彼は私たちを見ると一瞬嬉しそうに笑顔になりましたがケロロ隊長と私がソーサーを二人乗りしてるのを確認するととてつもなく乱暴な口調になって私を罵倒し始めます、なんでですか?
「ぼ、僕を差し置いて愛しの軍曹さんとランデヴーで二人乗りなんて許せないですぅ!今すぐそこを飛びのくか僕に場所を変われですぅ!」
「いや、これはママ様の御命令でして……タママ二等兵?とりあえずは落ち着いて」
「小隊の新参者の癖に拒否ですか!?階級は上でも小隊では僕の方が先輩ですぅ!そのイカしたソーサー事灰にしてやる!タママインパクトォ!!」
「ゲロ~~~~ッ!?」
「あ、ママ様の糧食が……タママ二等兵?」
なぜか私たちに向けて気功砲を口から撃ち出したタママ二等兵。ひょいっと避けると後ろのケロロ隊長がとんでもない悲鳴をあげます。しまった、いつもの調子で直角回避軌道をとってしまいました、慣れてない人ならブラックアウトしてもおかしくありません。
ケロロ隊長もその例にもれなかったらしく一瞬気をやってしまったようで持っていた荷物をぶちまけてしまいました。そして、その中に混じっていたママ様がわざわざ手作りしてくださったお弁当、もとい糧食も無残に地面に散らばってしまいます。流石にカチンときました、私のミスでもあるかもしれませんがタママ二等兵はそれよりも悪いことをしています。
「(ゲッヤバ、ナルル殿キれておられる!あのクルルが怒らすとやばいって言ってたから何が起こるかわかんないであります!)タママ二等!今すぐ戦闘行為をやめて謝罪するであります!吾輩は怒ってないからナルル殿に~~~!」
「ええいやかましいですぅ!ボクの軍曹さんから離れるまでボクは止まらないです!食らえ拡散型タママイメゴッ!?」
「おしおき、です。落ち着くまで反省なさい」
「み、ミンチよりひどいであります……!」
めしゃり、とタママ二等兵が巨大な腕につぶされて沈黙します。ガレージより腕だけを呼び出した大型ロボのマニピュレーターが拳骨の形になってタママ二等兵を押しつぶしたのです。平手でたたいてやろうと思いましたがそんなことすると本気で殺してしまうので指の間に収まるよう拳骨ですませることにしました。
にわかに周囲がけたたましい警報音を鳴り響かせています。どうやら警報に引っかかったみたいですが、どうしましょうか。クルルがくれた記憶改竄装置をどこに仕舞ったのか思い出さないといけないかもしれません。
タママ
よくわからん上官が研修に来るとかで先輩風吹かせてわからせてやろうと初日に襲い掛かったがあっさりと返り討ちにされた可哀そうな新兵。ケロロとめちゃくちゃ近い(ようにみえる)ナルルは完全に「アノ女ァ」という評価、アバズレレベルである。素の戦闘力はタママの方が高いがナルルには乗騎を完全に取り上げない限り勝てない。乗り物に乗らせたらたとえそれが武器が一切ついてないスクーターだろうがママチャリだろうがナルルは負けないのである。相手が悪い。