ガンダムビルドダイバーズ 命を繋ぐ翼   作:イエッサム

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正しさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リタがメールを見ながらエントランスで待っていると、声を掛けてくるダイバーが一人。

 振り返ると、ピンクのポニーテールにネコ耳、ノースリーブのシャツにピンクのスカートのダイバー。

 顔は……本人というかモモカ? 

 スキャニングしたのかよく似ている。

「ゴメンね、遅れて。リタ……で良いんだっけ?」

 苦笑いのアバターは、モモと名乗った。

 モモカが作成したのは随分と可愛らしいアバター。

「気合い入れてるから可愛いね、モモ」

「でしょ? いっぱい種類あって検索かけてたら遅くなっちゃった」

 メニュー画面からプロフィールを見せる。

 モモのプロフィールから見るに本当に初心者。

 ダイバーランク、初期値のF。

 フォースを作るのに必要なランクがDなので当分先。

 胸を張って見せつけるモモ。

「良いと思うよ。じゃあ、どうしようか?」

 来たは良いが予定が無い。

 GBNの見学にするかと言うとモモはお願いする。

 だったら丁度良い。エントランスを歩くとマギーを発見。

 向こうも気付いて、声を掛けてくる。

「あらリタちゃん、こんにちは。そっちの子は?」

「どうもマギーさん。彼女はモモ。この間のリク達のリアルの知り合いです」

 軽く挨拶すると、モモを紹介する。

 ……案の定、ちょっとアバターに引いてるモモ。

「初めまして、ご新規さん。お姉さんはマギーって言うの」

「……男性なのにお姉さん?」

 自称お姉さんにさらに引くモモ。

 リタがこれでもプロフェッショナルのダイバーだと言うと、驚愕でモモは驚く。

 世界規模の相手が完全なオネエなんだからそれはそう。

 引き攣った顔で自己紹介をするモモに、マギーは問う。

 リタのリアルの知り合いか。

 リタはリアルではユッキー、リクとも知り合いでその繋がりでモモは来た。

 本当はサッカーをして欲しいのだが、彼等がGBNを優先しているので知ろうと思った。

 そう伝える。つまりガンダムもガンプラも知らないド素人。

 要するにガンダムという作品自体を未知のモモ。

 マギーは珍しい表情をする。

 リタが完全初見でGBNに誘ったのか。

「何も知らないの? ガンプラなしで来てるのかしら」

「いえ、私が貸してます。一緒にやってるので」

 曰く、どういうモノかを知るために来たのであって目的はGBNを見ることだ。

 だからマギーに色々と聞くと良い。

 リタは別行動をすることにした。

 丁度、メニュー画面にメール受信の通知が出る。

 モモを任せると言って、マギーに預けた。

「えぇ!? リタ、何処に行くの!?」

「……私用、かな。ちょっと知り合いに会ってくる」

 突然の知らない人に任せられてもモモは困る。

 このオネエに何を聞けば良いと。

 マギーはリタの空気に勘付いた。

「……そう。モモちゃん、だったわね。行かせてあげて。これは重要な事だから。大丈夫、お姉さんは歴としたハイランカー。言わばGBNの著名人よ?」

「有名人だから信用しろって言われても……」

 困惑するモモに、申し訳ないとリタは言った。

 出来れば直ぐに片付けたい。

 だが、これは……。

「ゴメンねモモ。ま、ガンダムあるあるの戦争だから」

「GBNはガンプラの世界だよね!?」

 物騒なことを言うと、行ってくるとメニュー画面から転送して一瞬でリタはエントランスから消えた。

 置いてけぼりのモモに、一言マギーは説明する。

 彼女も元ハイランカー。責任をみないといけない。

 アレでも上位フォースの代表格だったダイバーだ。

 その重みを何もわからないモモには知らなくて良い。

「リタってそんなに有名なんですか?」

「そうね。今じゃGBNの汚れ仕事を引き受けるフォースの、わかりやすく言うと集団のトップだった子。あの子なりに責任があるのよ」

「そうなんだ……」

 モモがエントランスの隅でマギーからGBNの紹介や説明を受ける頃。

 リタが向かったのは、コンパスの拠点。

 城の大広間だった。

「……来たか」

 待っていたのは、フォースの代表、ガレムソン。

 険しい表情で、多くのダイバーと共に待っていた。

 先程リタのログインに気付いて一報を入れたようだ。

「前置きは無し。ガレムソン、コンパスに敵対しているダイバーが出たんでしょ? 向こうは妨害と悪質なPK行為だよ。通報したら?」

 合流するリタは運営に伝えろと言うが、ガレムソンは厳つい顔で否定する。

 曰く、既にここに居る。

 散々邪魔してきた謎の一般ダイバーが、異論を唱えるダイバーと共にとうとうコンパス本拠地に乗り込んできたと。

「はい? 誰のこと?」

 多くのダイバーがいる大広間。

 それの何処に、その悪質なダイバーがいる。

 こいつだ、と近くに居たダイバーを指すガレムソン。

 ……初期アバターのハロだった。

 象牙色のネコ耳ハロ。

 もう一人はピンクブロンドのふわっとした髪型に鉄華団の制服を着たダイバー。

 多分双方女性。

「此奴らはワシ達にマスダイバーへの対応を止めろと言い出している。理由は語った。事情を聞いても尚折れない。大した度胸よな。本拠地に直談判をしに来たらしい」

 腕組みしてその胆力は認めるが、ガレムソンは退く気は無いと返答する。

 本来は部外者に語る理由は無いが、乗り込んできたその言動に免じて説明した。

「私はレモングラスって言います」

「……ベルと申します」

 ふわっとした髪型のアバターがレモングラス。

 ハロがベルと名乗った。

「なるほど。で? PKやら妨害で通報されたい訳だ。この二人は」

 リタが名乗りもせずに容赦なく正論で直球で叩き潰す。

「お題目があればマスダイバー殲滅をしていいっていうそっちの意見の押しつけを止めて下さいって言ってるだけです」

「運営の方針に逆らってる単なるアンチじゃん。押しつけ? これ正式な決定だけど?」

 バッサリ切るリタに、事情すら聞かずに追い詰めて何が楽しいとレモングラスは問う。

「楽しんでやってると思うその被害者側みたいに言うの止めたら? 要するに不愉快なだけなら、関わらなくていい事でしょうに。押しつけはそっちも同じだよ」

「運営の決定ならAVALONもコンパスも正義みたいに振る舞うのが正しいと?」

「如何にも自分勝手な感情論だねあなた。犯罪者を庇うってどんな気分?」

 呆れるリタに、レモングラスは悔しそうに黙る。

 だったら何か? 事情があればチート行為を許せ?

 GBNをバグらせる違反行為を放置しろと?

 身勝手な屁理屈で巫山戯るのも大概にしろと軽く論破してリタはぶった切る。

「私は……元々マスダイバーのフォースに居ました。私はブレイクデカールは使ってないんですけど。運営からもこれ以上コンパスやAVALONに介入をするなら、アカウント停止をすると言われています」

 黙っていたベルが漸く喋る。

 こいつがコンパスやAVALONにケンカを売った一般ダイバーか。

「へえ? じゃあ予想通り仲間意識? マスダイバーに加担したって意味じゃあなたもマスダイバーだと思うけど」

 庇っている時点で此奴は当事者だ。

 運営からももう狙われているレッドカード一歩手前。

「分かってます。この感情論が、多くのダイバーを迷惑になるって。AVALONのキョウヤさんに倒されても、私は……」

「尚更タチ悪いよ、あなたも。PK行為繰り返して、うちの邪魔をして。剰えチャンピオンに叩きのめされても、怒られても懲りないって事だよね」

 リタはもう、言うべき事も無い。

 開き直りもここまで来ると迷惑行為だ。

 運営に通達して出禁にした方が良い。

「はい……。頭では分かってはいるんです。身勝手、滅茶苦茶……。でも、私にはマスダイバーだったとしても……。違反行為だとしても……。あのフォースは、居場所だったんです……」

 これがベルの事情か。

 なるほど、性格的にGBNでも上手く付き合いが出来ないらしい。

「そこまで分かってて、その癖一歩前に進まずにこっちにいちゃもんだけつけに来たの? ……ガレムソン、この二人AVALONと相談して処分しよう。ダメだ、この手のダイバーはGBNに良くないよ」

「そうやって相手の事情は切り捨ててどうでも良いんですね」

 吐き捨てるレモングラスに嘲笑するリタ。

 だから何度も言わせるな。

 お前らの屁理屈が通れば利用規約は存在しない。

 違反行為を許せというその言動こそ何様だ。

 ルールを違反したら罰が下る。当然だろうに。

「……でしょうね。ええ、分かってますよ。運営の決定ならそれが正しいと。違反行為の時点で私達の言い分は通用しない」

「顔に出てる。あなたもしかしてムカついてるだけ?」

 最早笑うしかないリタにレモングラスが言い返す。

「そうですね。違反行為は当然悪いとは思いますけど、悪党だと決めつけていくのは運営もどうかと思うんですが」

 結局そこか。リタはハッキリ言った。

 自分が幼稚な自覚をしろ。自分の価値観にそぐわないから直談判に来るなど筋違いも良いところだ。

 違反行為の重みを理解できないほど子供なのか。

 だったら親に聞け。正しい社会性と倫理観を持って来い。

「ワシ達に一方的に突っかかる事は貴様らはGBNにいるダイバーの大半が身勝手と言うだけだぞ」

「それ、話を聞かれたAVALONのダイバーにも言われましたよ。特にヒロトって上位ランカーにこっぴどく。それで? 運営が絶対なら、秩序と治安維持の排斥をして平和って来るんですかね」

 レモングラスはこれでも譲歩しているつもりらしい。

 価値観の違い。感情移入のし過ぎ。

「レモングラスだっけ? じゃあ一個言おうか」

 鬱陶しいので一言トドメをリタは言う。

 気に入らないなら、GBNから出て行け。

 運営の方針に逆らって、不愉快ならGBNを止めろ。

 単なるダイバーが、大局的に物事を判断する運営に口出しするな。この逆張りアンチ。

「……」

 ぐうの音も出ない正論にレモングラスは結局勝てない。

 GBNは多くのダイバーの楽しみだ。

 それを下らない感情論でネチネチと粘着行為を繰り返すなら、いっそ自分から消えろ。

 その方がお互いに良いだろう。ストレス感じない。

「つまりね、出て行けば良いじゃん。気に入らないなら」

「リタの言い分はその通りだ。貴様らに付き合うほどワシ達は暇では無い。自分から動かず変わらぬ臆病者、感情論だけで動く子供なぞ運営が堪忍袋の緒が切れる前に立ち去れ。ワシ達は構っている時間が惜しいのだ」

 結論はついた。

 大勢のコンパスのダイバーが舌戦を見て二人に見る視線は、大抵が馬鹿を見る目だ。

 どうしようもない自分勝手。

「……臆病者、ですか。そうですね……。私は、ただコンパスやAVALONが憎かっただけかもしれません」

 ベルが呟く。憎い。

 自分の居場所だったのに、違反行為を理由に奪ったAVALONやコンパスが。

「結局、私達が悪いって事ですか。……ええ、まあ。分かってますよ。私も大概感情的だとは思うんですけど、人生的にこの手の所業が嫌いなんです。申し訳ないですね。ホント、感情丸出しで」

 最終的にレモングラスも折れた。分かってはいた。

 でも我慢できないのが性だと言う。

「マジでストレス抱えてGBN続ける事無いよ」

 憐れみすら感じるリタ。

 何せ執着心が見え見えのレモングラス。

「世の中、そういうもんですよね。あー……折り合いがつかないなー……。俯瞰的に見ればマスダイバーは間違いなく悪いのに、ベルさん知ったせいで腑に落ちない」

「持て余す感情は自分を殺すよ」

 ガンダムっぽい言い回しでリタが言うと肯定するレモングラス。

 あの悲惨なエンディングの鉄血のような、理不尽さを本人は感じていた。

「どうしてもモヤモヤする……」

「一回GBNから離れなよ。迷惑だから、周りに」

 ハッキリ指摘すると、止めたくないので運営の決定を飲み込む努力はすると彼女は返答する。

「エゴだよ? それは」

「アムロの名言どうも。いえ、本当に感情論でごめんなさい。剰え乗り込んで。これフォース同士のトラブルになりますよね」

 レモングラスは所属するフォースは無関係だと言って、処分なら自分だけにして欲しいという。

「いや、貴様は意見と価値観の違いで直談判に来ただけならワシ達があれこれ言うほど器量は狭くなど無い。問題はこのベルというダイバーだ」

 そう。厄介なのはこっち。

 実際運営の支持で動くAVALONとコンパスに妨害してきたダイバー。

 レッドカード貰ってるらしいし。

「今は個人でやってるんですけど……。元々、雇われだったので……」

 マスダイバーの所属も誘われたからだった。

 まあ、そいつらは追放されたわけだが。

「チャンピオンは反省するなら今後ワシ達に手出しするなと言っておる。ワシ達も貴様ほどの腕のダイバーを相手するのは骨が折れる」

 ベルは気弱に見えてAVALONのダイバーを返り討ちにしたほどだ。

 余程上手いのだろう。

「これからどうしようかな……。私に、居場所なんて……」

 ベルも途方に暮れていた。

 乗り込んできたと言うのに、その瞬間的な憎しみは熱が冷め、八つ当たりにしかならないと理解できている。

「リタよ、貴様ならどうする?」

「とっとと引退した方が良いと思う」

 リタが懲りたならGBN止めろと言う。

 ハッキリ言ったがPK行為を繰り返しているマスダイバーと大差ない違反行為。

「悪いけど私は同情しないよ。自分の意思で刃向かって、チャンピオンに叩きのめされて行き場が無いんだから」

「……あの、聞いても良いですか?」

 ベルは敢えて問う。

 リタはもしかして、オールラウンダーという異名のコンパスの最強ダイバーのリタだったか。

「そうだけど」

「……なら、教えて下さい。仲間って、本当はどういうモノか私は分からないから」

「えー?」

 縋るような声で頼まれるリタ。

 ガレムソンも意外そうに見る。

「貴様はそもそもマスダイバーのフォースに関わったのも、己の浅はかな因果というモノだ。だが、更生する気か?」

「……出来ることなら。私も何処かで、ただの逆恨みだって、分かってましたから。やり直せるなら、正しいフォースの一員になって、償いをしたいです」

 反省して、やり直せるならやり直したい。

 ガレムソンは渋い顔になった。

「そうか。己の失敗を悔いるというなら、ワシ達も黙って処する訳にはいかん」

「ガレムソン、いいの?」

 レッドカード食らっているダイバーにチャンスを与えるのか。

 リタがビックリしてガレムソンに訪ねた。

「リタよ。ケースバイケースというだろう。ワシ達が撃滅するのは悪びれないマスダイバーだ。此奴は悔いている。ならば、正しく更生に導くのが上位フォースの役目だろう」

 ガレムソンは唖然とするリタに言って、運営に待ったをさっそくメニュー画面から申請していた。

「あれ。ケースバイケースってコンパスもやるんですね。だったら最初からそう言って下さいよ。だったら文句なんか言いに来ないのに」

「ワシ達にも建前があるのだ。最初から甘さを見せればマスダイバーは助長するだろう」

 レモングラスも問答無用で全部処すると思っていたので、そうならそうと言って欲しかった。

 こんな駄々をこねることも無かったのに。

「良いんですか……?」

「当然のこと。ワシ達が追い詰めるのは天狗になっているマスダイバー。そもそも貴様はブレイクデカールは使ってないだろうに。邪魔をしただけだ。過ちを繰り返すつもりが無いなら、ワシ達も多少は助けてやる。だが、もう流されるままではなく自分の意思で動けよ。SEEDでも言っていただろう。運命を決めるのは自分自身だと」

 助け船は最低限。自分のことは自分で決めろ。

 ベルはそう言われて、決心をつける。

「はい……! 先ずは、今回はすみませんでした!」

 コンパスやAVALONに謝罪から入って、とある少女はやり直す。

(……私も感情的かなぁ……)

 ふと正論で叩き潰すリタも、ユニコーンのセリフを思い出す。

 正しさが人を救うとは限らない。

 まさにベルは正しさでは救えないダイバーだった。

(バナージ言ってたね。それでも……か)

 ユニコーンの主人公はそれでも、と何度も言う。

 リタはユニコーンを都合の良い未来しか見ていない、考えないと思う。

 本当の可能性とは、バナージの言うような都合の良い展開だけじゃ無いのだから。

 真理は続編、ナラティブのゾルタンの言葉だと思う。

 都合の良い夢を見すぎている。

 それでも。彼女はやり直すと言っている。

「……あー!」

 リタは突然大声を出した。

 ガレムソンがいきなりどうしたと問う。

「ユニコーンみたいにそれでもって言うなら、私だって子供じゃんか!」

「……ん? 何が言いたい?」

「私も客観的に見て子供だったよガレムソン!!」

 自分が正論という武器を振り回す同類であると分かったからだ。

 レモングラスの言い分も、少しは見るべきだった。

 AVALONもコンパスも正しさだけで、動いている。

 正義に振りかざす舞台装置。治安維持。必要だろう。

 でも、行き過ぎた正論は反発を呼ぶのだと少し考えれば分かるのに。

 バカだった。自分が正しいと言って疑わない。

 これが、押しつけだと言うならその通りだった。

「……そっちの人も、何か苦悩してますね」

 レモングラスも、リタの叫びに理解は出来た。

 こう言うとき懊悩するのが人間。非常に恥ずかしい。

「兎に角、私帰るねガレムソン。知り合い待たせてるから」

 ハズいまま、ばつが悪いので帰るリタ。

 見送るガレムソンに、後日連絡が来る。

 それは流れのダイバーのベルが、本格的に動く知らせ。

 同時に。鬼の剣が、自由の翼に斬りかかるまで時間はかからないのだった。

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