十三英傑と凡才の男 作:鴉の巣
一つ二つ三つと、的に穴が開く。
無機質な回転する鉄の弾が、連続で放たれ的を抉る。
その光景も、見慣れたものである。
その動作も慣れたものであり、目を瞑ってもできる────いや嘘、目を瞑ってもはできない。
まだそんな事をできるほどに人間離れはしていない。
そんなこんなで俺がやっているのは、射撃練習場での訓練だ。
この生きるか死ぬかの世界において、銃の命中率は生存率に直結する。
だからこそ手を抜くことはできない。
もう一度立ち上がった的に対して、再び銃撃を加えたところで銃を下げる。
マガジンを取り外し、付け替える。
「────うん、上々だな。さすがはクライン」
そんなことを口にして、俺は背中に小銃を背負い直す。
長く戦場にいすぎて、この動作も染み付いてしまった。
俺は平穏を愛する凡人なのに、どうしてこんなことになるのやら。
訓練場を後にして、俺は現在の所属組織────火を追う蛾の廊下を歩いていた。
大体が白い景色のままで、ところどころに扉があるからそこで部屋に入るのだが。
現在は自分が寝泊まりしている自室に帰っているところだ。
「あーあ、どうせ少ししたらまた出撃なんだろうな……」
そもそもとしてどうして死にたくない俺がこの組織に所属しているのかというと、ひとえに生きるにはこれしか道がなかったからだ。
この世界に転生して、意識がはっきりした直後。
なんと俺は孤児だった。
親もおらずその日寝泊まりするのは橋の下などで、全くもっていい暮らしとは言えなかった。
そのため食い扶持を探していたらここに行き着いたわけだが。
「なんで生きるために命懸けにならなきゃならんのだ……」
この世界に於いて命懸けで生きている人なんて五万といるだろうが、それでも俺は生きるために死にたくはないのだ。
だからこそ、早いとこ貯金やツテを作ってこんな命懸けの職場から離れたいものだ。
「────あら、
突如として、後ろから声が掛かった。
少し振り向けば、ピンク髪がゆらめく女性が見える。
顔は美しく、見れば万人が振り向くような美少女にも見えるだろう。
それだけその人物の美貌は完成されていた。
「なんだ、
「あら、ごめんなさいね?姿が見えたものだから♩」
火を追う蛾に於いて、俺ら戦闘員の中にも差がある。
俺みたいな一般の戦闘員から、最上位の
その点に於いて、崩壊耐性しか持っていない今の俺は最底辺と言えるだろう。
まあつまりなにが言いたいかというと、彼女────エリシアは俺なんか及ばないほどの重役ということだ。
なんでそんな重役とこんな気安く話しているのかというと、わからん。
なぜかこうやって話す仲になったのだ。意味不明。
「ああまあそんなとこだよ、こうやってやらないと俺みたいな凡人は死にかねないからな」
「あなたの努力家なところ、私は好きよ?」
「嬉しいけど、マジでそういう言い方はやめた方がいいよ。勘違いする人も出てくるから」
俺の言った言葉がいまいち理解できていないのか、可愛らしく小首を傾げるエリシア。
こういった言動一つ一つがまた可愛らしいのだが、なんか男を勘違いさせそうで不安だ。
ちなみに俺は最初どきマギしていたが、次第に慣れた。
「あ、いけない、私メイに呼ばれてるんだったわ!じゃあね!ゲン、また今度!」
「ああ、またなエリシア」
そんな事を考えていたら、エリシアは用事があったようで去っていった。
普通に考えれば目を掛けられてるって喜ぶべきなんだけど、相手があのエリシアだからな。
いまいち油断できないというか、いい人なのは間違い無いんだが。
これからのことや彼女の正体を考えれば、普通に関わるべきではない。
俺の目的は、普通に生きることなのだから。
「────まっいっか、今考えてもしょうがない……そういうことは明日考えよう」
さらりと思考放棄をしながら、俺は自室へと再び歩み出した。
◇◇──────────────◇◇
彼と出会ったのは、いつだったか。
いつものように過労で倒れそうになりながら、私は書類を運んでいた。
並行感覚さえ寝不足で曖昧になりながら、一心不乱に博士のために働いていたのだが、そこで書類をうっかり落としてしまったのだ。
それを拾いあげたのが、彼────ゲンだった。
「大丈夫か?」と聞いてくる彼に、提携文のように大丈夫だと答える。
しかしどう見ても尋常ではない状態だったらしく、再びふらついたところを支えられてしまった。
その後、彼の好意で自販機のコーヒーを奢ってもらった時に、その礼として一方的に愚痴を聞かされたことが関わり合いの始まりだった。
最初は鬱陶しかったし、ことあるごとに話しかけてくる彼を暇人だと思っていた。
私が仕事をしていれば、二人ぶんのコーヒーを片手にこちらの仕事を手伝ったり。
女媧と伏義がやらかした時は、一緒になって後片付けをしていたり。
そんな日々を過ごしつつ、彼が何かとかまってくることに疑問を抱いていた。
しかしある会議で、博士の代わりに出席した時に見た戦闘資料では、全く違う顔を晒していた。
冷徹な顔で引き金を引き、崩壊獣を殺す。
ゼロ距離で口の中をビームブレードで焼き切る。
一騎当千というわけではなく、傷を作りながらも着実に確実に敵を殺すその様を。
恐怖を抱くほどの殺戮者の顔を。
もちろん、崩壊と戦う以上殺す覚悟は必要だ。
しかし彼は、死にたく無いと言いながら冷酷に殺し続けていた。
悪く言えば、気が狂っているとしか言えない精神性。
だけれども彼は、会議中の誰の目にも留まらない。
敵を殺しながら、映像の中を動いてた。
研究室に帰った私は、女媧がまたやらかして彼に締め上げられているところを目撃した。
そんなゲンは、こちらに気づくと「おかえり」と挨拶をした。
先ほどの映像の顔なんて、微塵も感じさせぬ程に。
その時私が彼に向かってなにを思ったのかはわからないけれど、その日から私は彼の武器のメンテナンスや改良をするようになったのだったか。
会議中に誰の目にもあまり止まっていないのはちゃんと理由がありますが、ここで話すとネタバレになるので言いません。
一つ言うなら、崩壊:スターレイルのタグが原因とだけ。
クラインの律者化の出来事どうやって収集つけようマジで。