ロヴァノリヤ禽獣旅紀 —広大なる多民族國家の命運、大衆の暗く斃れる先には、何が在るのか— 作:南部 八十一朗
寒地の禽獣 Ⅰ
聖歴1575年。今から45年も前、私は生まれていない。そんな時代に一つの幕が閉じた。剣と魔の時代。
産業大革命が起きて、あらゆる物が生活の習慣を変え、文化に建築、戦を根本から変え、銃と魔の時代ができた。それに伴い、格差が生まれた。国によって、発展度が違い、発展が良いほど、地位は高く、発展が遅いほど、地位は低い。私の祖国ロヴァノリャはかなり国土が広く、帝都やその周辺都市は近代的だったが、革命の中心の
シャベリン地方の入り口、ウラテリンブルク地方ウラテリンブルク市、此処が私の故郷にして、最悪な所だ。
別に発展の度合いは悪くなかった。格差・差別がひどかった。もう25年前の事だ。今はどうなってるのかは分からないが、幼少期は2食か1食の生活を強いられ、15で働いた。ボロボロの服に身体、時に人間に嘲笑され、罵倒された、それが日常だった。私は、
転機は17の時、親が死んだ時だ。
悲しみも涙も出なかった、謎に。ただ、その日の夢に親が出てきた。
「ミュハーン、自由に成りなさい。家に在る鞄に服と金が有る。それで、遠くに行きなさい。」
そんな声?幻覚?と思いながらも、家の中に有る者を漁る。その時、一つの鞄を見つける。立派な革製の鞄。開けると服と金が入っていた。綺麗な純白の
全て着る。極上で温かい。さっきまで、
「早く
無我夢中で走った。時期は冬、夜は-30以下へ下がり、森に棲む魔獣に喰われる可能性も有った。
隣町も十数キロも遠く、豪雨の様な雪が吹き荒れる。
そんな中を走る、走った。体中の感覚が徐々に徐々に失いながらも、隣町のペラルまで走り切った。
時間も夜遅くを超え、宵が明ける寸前だった。
手を擦って、暖めながら、街を徘徊していた。寒さで腹が減っていたことも分からないし、四肢の感覚が消失しそうな程、何も感じなかった。
「あと少し...あと少し...」
そうして、宵は明け、晴天が広がる。
四肢の感覚がジワリジワリと戻る中、私は街中を
「何処に行けばいいの...?」
ただ、人がいない。
口から多量の
そんな時だった。
「其処の獣人!!止まれ!!」
低く重厚感の在る男の声、声のする方へ顔を向ける。其処に居たのは、
「お前、こんな時間に何をしている。」
「いや...何も...」
「嘘を付くな!!...こっちに来い!!」
そう言うと私の手を引っ張り、官憲所に連行された。
所に入れられると、
「これでも食べなさい」
そういうと、柔らかくもっちりとしたパンにシチューをくれた。
美味しい、口の中から体の芯に暖かみが広がる。
「そんなに美味しいか?...」
「は...はい..」
「それは良かった。」
その後、私は、あの
「君は、自由だ。だが、これからはどうする?ミュハーンよ?」
「私は、旅に出たい。此の世界を見てみたい。」
「そうか...だが、良い事だと思うぞ。」
旅立ちの日、家前に立つ私。鞄を持ち、服装を整える。
「怪我するなよ。ミュハーン」
「はい!」
「気をつけろ。特に最近は、治安が悪くなってるからな、巻き込まれない様にな」
「子供じゃ有るまいし、大丈夫ですよ!」
「そうだな....そうだよな!旅頑張れよ!」
「はい!」
こうして、私の旅は始まった。当時は齢17
正直、まだ子供の部分も有った。だが、幼少期の苦労が精神を鍛え、心は強靭だったし、農作業で備わった筋力も在る、親譲りの
旅の面白さを感じたのは、街中の事だった、建物に描かれた文字を読むことが出来た事だった。パン屋に本屋、銀行等、それは、鮮やかで生々しい感じで有った。
産業大革命が起きてから、20年後、私は産まれた。15で働き、17で旅を始め、今現在25の私は今でも旅をしている。
過去を振り返る事は、私にとっては大事な事の一つだ。一度学んだ物を復習する様な物にして、気が楽になる。此処は、帝都近郊の都市ヤレンスク。
今は
「明日は帝都で民衆のデモが在るらしい...店も閉まるだろうし、最悪だなぁ...」
1つの新聞を手に取る。
新聞の情報じゃない、
「もういいや...ウォッカ飲もう」
産業大革命で近代化はしたが、収入の格差が激しく、工場主の様な
「また、デモで列車遅延か?...帝都はデモ、周辺都市も治安不安定だし、
賃金改正の権利も持ち、此処が許可しないと、賃金は上がりも下がりもしない。つまり、
「此の国はどうなってしまうのやら...」
そうな憂国的な考えはさておき、ウォッカの栓を開けるので有った。