ロヴァノリヤ禽獣旅紀 —広大なる多民族國家の命運、大衆の暗く斃れる先には、何が在るのか—   作:南部 八十一朗

15 / 40
禽と狼と馬の旅 Ⅲ

朝、其れは何とも楽しい時なのだろうか。

「ふぅあ~、朝かぁ...」

 

私、ユジノーの朝は早い。いつも、何時ぐらいに起きるだろうか、5時?4時?ぐらいだろうか。

早朝からやる事は一つ、この豊かで広大な原野に向かって、走る事!!走る事は、私にとって掛け替えのない事だ。この広い原野、走り回ってみたいではないか、絶対、楽しいではないか。私達、馬人(ドラフチェラ)にとって、走る事は誇りであり、快足と俊敏は、更なる誇り。

 

遅ければ、馬人(ドラフチェラ)としての地位が崩れてしまうからね。私は自分が言うのも難だがかなりの足の速さの持ち主だ。...自称ぐらい別に良いだろうしねぇ...

 

平野を駆ける。心地よい風が私をなぞり、地を踏み、硬い土を僅かに掘り起こす程の脚の動き、凄まじい脚の筋力、私の大きな取り柄。昔、50mを測定時、早すぎて計測者が反応出来なくて、何十回も走らされて、唯一測れた記録は、1.4秒。ただ、この時は前述した何十回も測られた影響で怠くなって、意図して遅くした結果なんだよね。だからね、本来はもっと速い。後、こんな速さで跳ぶと、凄く高く飛べるから、天馬(ペガスス)なんて言われてたなぁ、懐かしいなぁ...

 

あの頃は、何もかも多彩で鮮やかで楽しい日常生活だったなぁ...毎日、友達と遊んでは飯を食べ、スクスクと寝る日々、でも齢が上がる度、楽しいより現実と言う暗雲が身も心を埋めて来るんだよね。昔の様に子供も大人も陽気に話す、あの日々は何処に行ったんだろうか。早く楽にならない(暗黒で悲惨な今世から)かなぁ...

 

デモにストライキ、何なら新聞に載らないが、片田舎の農村では餓死する者も居るし、騎国(コサック達の)議会(国家議会)宗主国(ロヴァノリヤ)国民議会(ドゥーマ)も腐ってるし、情けない金の駄才者(貴族に上級国民)、無産者にして災い、国王(ツァーリ)。皆、そう蔑む...いや称えるの間違いか、そんな感じで日々、此の国では、荒れが増してる。叛乱にデモにストライキに馬賊(馬人の匪賊)の増加、終わってる色々と。之が現実、慾と金が支配して、挙句の果てには物資巡って殺し合い、もう皆可笑しくなってる。

 

そう思うと私は凄いと思う。今日まで餓死も自決もせず、懸命に生きてる。其れだけでこの平野の様に広大な価値があるんじゃないか。まだ、その価値は増える、明日、明後日、来週、来月、来年。まだまだ、この価値を増幅させる収入源はあるじゃないか、だから、これからも頑張って行こう。そんな事は当たり前だけどねぇ...

 

原野を駆けた私は、あの場所に戻る、今の私には仲間が要るんだ。

ミュハさんにイデナさん、あの人達は優しくて面白くて愉しい、ずっと旅したい...

流石に、人生の伴侶は...ちょっと...かな...?

 

「おっ、ユジノー、おはよう」

「あっ、ミュハさん、おはようございます!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

あぁぁ、腹が何か変な感覚だよ。昨日の夜は、ユジノーに腹枕されたからかな...

「あの、昨日は...枕になってもらって...良かったです..」

「ぉぉおお...そ、そうかい...」

「柔らかったし、包容力がありましたし、何というかタプタプしてました!!」

「言わんではいいわ!!..(ちょっと気にしてるんだよぉ...)」

 

あぁ...此奴も...って危ない、また、手に掛ける所だった。流石に、未だに平期なんだ。乱暴で残虐な事をしたら、亦、乱期が舞い降りてしまうじゃないか、此処は抑えて耐えよう。ふぅ...

これ以上の殺人はこいつ等にも迷惑掛けるし、何なら、隠蔽で燻り殺すかもしれないしな、感情抑えて抑えて...心で殺意を抑えるんだ。

 

いや、待てよ...馬の血...美味そうじゃないか、馬肉抉り貪るのも、良きかな...

落ち着け私。焦るな、殺意は消す。幸い裏方の攻撃も無い、穏便に済ませれる...

(ふぅぅ.....)

「許してくださいよぉ...」

「はいはい、次言ったら、其の尻尾引き千切って、毛皮商に売るよ~」

「ひぃ~!!其れだけは勘弁して下さい!!」

「しないよ」

 

本当にしようかな?いや、肉体じゃないと美味しくないからな...

まぁ、そんな事は無いけど...

 

う~ん、今日もこの馬車兼拷問走行させられるのか...早いのは物事を早期に終わらせれるけど、

その分の犠牲が酷過ぎる。なぜ、移動で身体を傷つかないといけないのか、意味が分からない。

 

そして、旅は再開する。馬車の座席に私とイデナは座り、ユジノーが馬車を牽こうと馬車から出るハンドルを持つ。

「ちゃんと速度調整してくれ...」

「私が気絶したら、お前を殺す」

「許して...ちゃんと速度落としますからぁ!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。