ロヴァノリヤ禽獣旅紀 —広大なる多民族國家の命運、大衆の暗く斃れる先には、何が在るのか— 作:南部 八十一朗
「見ろ!!朱軍だ!!」
「皆、銃を構えろ!!...放て!!」
銃撃の轟音が響き、戦闘が始まる。粗悪な鉛玉が辺りを荒し、硝煙が薄霧の様に立ち始める。此処は帝都南東部の農村、ドルキスイ。此処には”緑軍”と呼ばれる、農本主義・農奴の連中が組織する派閥が在る。我ら都市型の叛乱とは違い、彼らは農村を中心に勢力を拡大している。しかし、彼らも我ら同様に、資源や装備不足で在り、敵を見ると、農具を槍の様に投げる者も居る。
「発射!!」
5門の野砲が敵が潜む建物方面へ砲撃を敢行、其れとは別で、機関銃の声が響く。
「がぁ...」
「うぅ...」
銃撃に仆れる自軍、敵軍の群れ。風が強く吹き、両軍の朱旗、緑旗は激しく揺れる。しかし、風の音は戦闘音で消え去り、代わりに負傷した兵の呻きや無情に響く兵器の声。
「今が好機だ!!突撃だ、進め!!」
そう指揮官が叫ぶと、大きな歩幅で前に攻勢をする。敵の弾幕は弱く薄まり、遂には敵の前線を突破し、勝利した。
薄汚れた白い旗を掲げる緑軍の連中の姿、ドルキスイの街に浸透する我ら朱軍の軍勢。そして、緑の旗を破り、台に朱旗を掲げる。
「我らの勝利だ!!」
ドルキスイ解放完了、しかし、緑軍の連中の本拠地、リャヴァンを占領しない限り、緑軍は抵抗して来るだろう。
「やめてくれ!!命だけはぁ...」
「...勘弁してくれ!!家族がぁ...」
「私は、何もしてないのぉ!!だから...」
命乞いをしてくる緑軍の残党達を次々と射殺する朱軍の連中。公開処刑と言っても過言ではない程の悲惨な風景。高く鈍い銃撃音が何発も鳴り響く。縄に縛られ、壁に付けられ、的の様に撃たれる。
之が戦場だ。味方の仇取るばかりに、他者からは虐殺とも言えるほどの惨状を産み出してしまう。
刻々と時間が過ぎる度、銃や刃物で打ち切られる緑軍。
断末魔が響き、農村に蓄えれている収穫品を奪い、食糧と称して持ち出していく。
之が革命の真実である。敵は容赦無く殺し、無辜な者達まで被害を与えられる、悲惨な状況。しかし、双方、命掛けで在る。いつ死ぬかも解らぬ状況の中、勝利や食糧の供給は大事だ。指揮も上がるし、今日何とか生きれることが出来るからだ。
「よくやった、何とか朱軍の影響を強めれるな、今は部隊を休ませろ」
「了解しました」
何かが有る。嬉しみ?之はそうなのだろう?勝ち者が正義で、負けが悪い。でも、その気持ちが無い。之は何だ?思考は違えど、同じ苦境を乗り越えようとする同国民。明日と言う希望を胸に秘め、戦う同国民が、勢力や思想が違うだけ...
我々は何しているのだ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ようやく大樹に着いた私とイデナにユジノー、世にも珍しい常緑の大樹の下。地面から出る大きな根の集合帯が創る寝具にユジノー寝かせる。そして、大樹の枝何本か集め、火点け機《ライター》で火を点け、焚火にする。
体に潜む煙の中から、
(何をすべきか...)
極寒が襲う中、何ができるか...辺りは吹雪で見えにくい状態。敵も民間人も何処にいるのか、解らない。ただ生きることに注力せよ。
この悪天候、自然の結界が二人を守ってくれるかは不明だが、暫くは此処で待機だ。...私は腹が減ってきた。...食糧《人間に亜人に魔獣の血肉》は有るが、二人は私みたいに、生では喰わないだろう。少しばかり調理しよう。勿論、何肉は露呈されない様に、じっくりと面影が無いようにしないとな。
「まぁ、もう既に面影は無いがな...」
煙にされた骸の中には、既に骨と肉が
「所詮、私《獣半人》には、関係無い。本能は、イデナとユジノーを喰いたい。しかし、人間思考は仲間としての証が有り、裏切り殺す等出来ない」
...乱期を極限まで抑えるんだ。獣半人特有の双方の本能の制御に何が真実か信用できない情報の大津波が襲い、権力と言う統制で自由は制限。国王が死んだ事も絶賛第内戦を強いているこの国も、全ての報道がプロパガンダに感じる。真実《プラウダ》が満たされていない。
「今のまでの描写《過去》が嘘なら、どうする?」
私には、嘘も事実も解らない、其れが一般回答だと思う。この混沌とした世の中、何が正しいなんて見分けるのは至難の業。だが、この一つの物語《人生》全てが虚像で真の像は別なら君はどうする?こう語り掛けるのは、君達、読者《傍観者》はどう思う?
「之は、
何が空想か、何が現実か。そんな定義が存在するのか?問う。日常的に、何かに依存するお前らに、何かを説教する資格が有るのか?物語は現実に侵食しないなんて迷信いつから信仰していた?今、こうやって、
今みたいに真面な作品の現実進出は、此処で引き返されちまう。
此の物語《作品》は、此の国ロヴァノリヤの事を話している。退屈で刺激が後天的だ。刺激が欲しいだろ?空想と現実の領域は硝子細工の様に脆く、簡単に擦り抜けれる。言わば、此の物語は貴様らの世界と似てる部分が有る。其れが何かは知らないがな。しかし、時間は早い。時間が来た。
この描写を批判しても良い。ただ、この作品《生き様》は、他と違う。これ以上やると、修正班が私に影響を与えかねない。
この作品は、曖昧だ。私は国内情報を知らない。地名も地理も、解らない。歴史は延々と振り子の様に踊り、全てが変わる。複雑怪奇は容易になり、私はまた”空想”へ送られる。
「おい、ミュハ!!しっかりしろ!!」
「...ぅうん...あぁ...」
「良かったぁ...急に、倒れて心配したぞ」
「あぁ...すまんすまん、急に
「大丈夫なのか!?」
「今、
「...そうか、良かった」
「なぁ、イデナ...」
「如何した?ミュハ?」
「腹減っただろ?」
「まぁ...そうだな...」
「今、私は、食料を持っている。之で飢えは凌げるはずだ」
「...本当か!?...でも、本当に食べれるのか?」
「肉だが、別に翼人《クルィチェラ》や馬人《ドラフチェラ》じゃないし、別に衛生状態も悪くない。調理すれば食える奴だ」
「...其れなら、良いんだが、ミュハが料理?出来るのか?(イメージ出来ないなぁ...)」
「あまり、私を舐めるなよ。
「...それなら、宜しく頼むよ」
「
煙の中から、調理器具に下処理済みの
(私の料理でも喰いたいか?傍観者どもよ?駄目だな)
焚火の上に黒鉄のフライパン乗せ、豪快な一口サイズの肉塊群を乗せる。香ばしい匂いがする。其処に黒胡椒や名前を忘れた山椒系の香辛料を掛け、焼く。
その匂いに誘われたのか、仮昏睡状態《長時間睡眠状態》なユジノーが目を覚ます。
「...あれぇ?此処は?」
「やっと、起きたか、ユジノー...今は、何と言うか...」
「...足が...」
「...ユジノー、今は安静に足を休ませろ。今は私とミュハが守るから」
「...そうですか...でも、お腹空きました。何か食べたいし、何か香ばしい匂いがします...」
「今、ミュハが調理してるからな...」
「...物凄く楽しみです!!」
ハードル上げやがったな、ユジノーの野郎。まぁいい、このまま焼けば完成する。レタスかキャベツか解らない野菜を千切って、添えればいいだろう。