ロヴァノリヤ禽獣旅紀 —広大なる多民族國家の命運、大衆の暗く斃れる先には、何が在るのか— 作:南部 八十一朗
「なぁ...イデナ」
「此処に新聞が有ったんだけど...」
「それが如何したの?」
「新聞が最近の奴でロヴァノリヤの事を書かれているぞ」
「何か書かれているの?」
「問題、何が報道されてるでしょう」
「え、えぇーと...革命関係とか?」
「正解は、ヴルジア語で書かれてるので解らないでした、不正解、金寄越せ」
「何だ此のクソ問題!!」
「時間は結構残ってるんだ、軽い時間潰しには生っただろ?」
「軽すぎる退屈潰しだよ」
「それじゃあ、ヴルジア語はロヴァノ語の影響を受けてるので、多少文は読めるので、読んでみようと思いまーす」
「じゃあ、半分正解ぐらいが丁度良い筈だろ...」
「はい、静かに...」
「そんな、音読会みたいな事しなくて良いだろ...」
「十三月号トヴィリシィ新聞、大熊ロヴァノリヤ帝国の内戦状況、隣国ロヴァノリヤでは数週間前に帝都で大規模反乱が興り、皇帝ニゴール二世や王族や貴族関係者が反乱軍に射殺され、各地の都市等で大規模反乱の主軍組織、朱軍こと、コミューンの叛乱が相次ぎで発生しており、泰西諸国の干渉軍やニゴール2世の弟に当たる、ニコラエフ皇太子率いる王党派が朱軍との戦闘をしていますが、膠着状態が続いており、更にロヴァノリヤの過酷な冬が舞っており、更に戦闘を過酷化しております。また、国内ではロヴァノリヤ朱軍の影響を受ける社会派政党、
「何か、現実が浸透して来て、気分が枯れたんだけど...」
「しょうがないだろ、私達は旅行感覚で来た訳じゃない、生き残る為に逃げたんだ」
「そうだが、もう十三月に入ってしまったか...後、2か月で年を超えるのか...此の革命戦争は何年、年を越えたら、収まるのか...」
「...推定でも五年は掛かりそうだ、朱軍や王党派や干渉軍が主役だが、朱軍内部にも敵は居るだろうし、ロヴァノリヤは多民族国家で双方に属さない勢力や軍閥、自治国も居るから、そいつ等の動きも仕留めないと、戦争は終わらない」
「どっちにしろ、今の私らには居場所は無い、其れだけははっきりと指し示してる」
「いつか、本場《祖国》の酒が飲めたら良いな...」
「私も結局は、ずっとあそこで暮らして来て、いきなり異国生活は適応できないし...苦労しか降ってこないなぁ...」
「そんなもんさ、人生、苦しみの方が持続するのが性さ、でも、イデナはまだ第二祖国が有るだろう?まだ、希望は有るだろうよ」
「第二祖国には船で行くんだけど、金が高いは掛かる時間も一か月半と長い...」
「でも、其れでも行きたいんでしょ?」
「其れはそうだ、母に教えてもらったが、第二祖国は良き国と評してたし、トゥラードとも交流は有る。其れに、トゥラードの港湾都市、トルミールへ行けば、母の祖国、ミズホへの舩が留まってる...」
「要は金が必要なんだろ?」
「そうだよ...」
「幾ら?」
「??え?」
「料金を教えてくれないと、払えないだろ」
「いや...ミュハには関係無い...」
「五月蠅いで、幾らだ?」
「...ざっと、
「なんだ、払える額だ(
「いや、払えたとしても...」
「あのなぁ...何処に居ようが、私はいつも通り、お前を支え続けるだけだ、其れに金で崩れるなんて辛いだろ、恩返しはいらない、此処は払わせろ」
「...ありがと...」
「...急に落ち着いたな...」
「...(そう言う所...)」
「まぁ、今はゆったりと過ごそうや」
「まぁ...そうだね...」
そう話し終わると、また、私は酒瓶を一瓶、二瓶と平気で飲み干す。列車は音静かなまま、車窓の情景は変化する。山岳地帯特有の畦りと高低差の有る道を進み続けている。
十三月の冬は十二月の冬よりも厳しく、ロヴァノリヤの中では、冬将軍がで始める時期だ。そう言えば、お前らには伝えて居なかったが、私らの世界は一年十五ヶ月も有る。恐らく此方の方が年を越すのが長いだろう。
私をお前らの年月でやれば、何歳ぐらい若返るかな...言うて、数か月か数十日程度ぐらいで、其処まで変化もないだろう。と言うか更けるか...酒と煙草の馨りに私の独特な野生の匂いにイデナからの萎れた花から漂わす濃密の華の薫りの様な渋い酒に似た薫りが交じり、変な薫りが部屋に舞って居る。
会話が無くなると、部屋はとても枯れしい雰囲気に成る。端的な楽器で奏でられる哀愁が秋の実の様に馨る民謡、黒い瞳の様に感じる。寒風吹き荒れる中、店内で流れる民謡の蓄音機が店先の薄い硝子扉を貫き、外に居る者に聞こえる、其の薄い温もりを感じる愛苦しさ、其れと寒風の無情さが合わさっている、其れが此の部屋の雰囲気に似ている。気まずさと言う酸性の橙色の果実と煙草と酒の凛々しさの熟し着れた果実が二つ在る。
しかし、車窓から見える景色は冷気溢れ零れるに哀愁の香水舞うロヴァノリヤの銀景色と違い、ヴルジアには薄い黄色の陽が希望の様に舞って居る、彩度が違うように感じる。
だが、落ち着けないな、酒を嗜んでも、会話しても、何処か心の盃《はい》は満たされていない感覚が有る、中途半端に飲み残れた酒瓶の様だ。今の言の液では足らぬ何かの言葉、感情が私を染めようとしている。言わば、欲求不満的な物だ。
九瓶の酒を飲み干し、八瓶の空瓶、僅かに残る九瓶目を煙にして、仕舞い込む瓶よりも長い濁り銀色の私の毛が入りながらも...
煙の出ない煙草を銜え、ジッと何もしない、火も点けずにただただ、飴を銜えるかの様に淡泊な色白の煙草、しかし、之は煙草では無い、あくまで、煙草の見た目をした、銃弾で在る。私の煙を操る力は単に煙を自由自在に操る事以外に、物事の見た目も変えてしまう。見た目は林檎でも、中身は無花果、煙草に見えても、中身は銃弾。要は一を二や三、五や六に自由に化かす事が出来る。
其の化かしが他者に化けると言う事も出来る。要は変装みたいな物だ、煙は曖昧と変化が有る煙が集まれば、霧でも雲でも何でも成れる変化する。其れは私だけの変装で在る。者も物も無機物で在れば、煙にしても変化はしない。服は汚れないし、果実も腐らない、骸も蠅や蛆共が湧かない保存状態が良いままで続く、使い勝手が良い力だ
しかし、今は私の力が十分に活かし切れて居ない。何故か?其れは、今は平期で在るからだ。未だ、私は乱期と言う強欲には飲まれて居ない。乱期の良い点は力を容赦無く発揮出来る。だが、其れしか無い。後は、敵味方関係無く、殺してしまう。如何にか、乱期時の力と平期時の平穏さを両立して行きたいが...そんな都合の良いこと等、本来の獣の本能に阻止されて出来ない。其れに、今もこうやって、乱期時に感じる高揚感がひしひしと感じる。
「なぁ...ミュハ」
「如何した?」
「何で煙草に火を点けないんだ?吸わないのか?」
「...之は煙草じゃない」
「?どう見ても、煙草じゃないか」
「いや、之は銃弾だ」
手に煙草を掴んで握り、机に落とす。鳴った音は金属音、そして、一弾の銃弾が落ちる。黄金に輝く新品擬きの銃弾...
「?...手品か何かか?」
「まぁ、そんな物だ...」
銃本体を取り出し、シリンダーを開け、一弾を装填し、手でシリンダーを戻す
「あれ、其の銃、ナガン-7でしょ?ソリッドフレーム式じゃ無かった?」
「改造式のナガン-7だもん」
「改造式のナガン-7?」
「無理やり、魔改造して、シリンダー出る様にした、そしたら、命中精度が悪くなった...」
「改造の弊害が出てるね...」
「だから、もう一丁、別のリボルバーを携帯してる」
「どんなリボルバー?」
「之だよ」
そう言うと私はもう一丁のリボルバーを取り出す。
「何か、リボルバーにしては、かなり大きいな...」
「ナガン-7は人間用のリボルバーだからね、之は違う、此奴はノヴォーク1578。巨体の獣人・獣半人や巨人用のリボルバーだ、此奴は中折式で弾も大きく攻撃力も有る...けど...」
「けど?」
「弾の流通が過疎ってるから、貯めないと行けないのと、弾の生産が泰西に主力だから、輸入やらで時間も費用も掛かる事、でも性能は申し分無い」
「まぁ...仕方のない事だよ」
「だから、安易に入手できて、命中精度悪くても、其れなりには威力は有るからナガンの方に軍配は上がるね...」
「私はリボルバーを使う機会が無い所か、連射出来る軽機関銃とかが有効だからねぇ...」
そうこう会話する内に、時間も情景も変化していく、小振りに振動する車内の中、銃話で盛り上がっている。だが、あくまでの退屈凌ぎだ...列車は速度を落とさずに、だが、着々と速度を上げている。何時の間にか、山岳の風景と言うよりも丘陵の風景に成り、バフーミへと近づいて来て居る。
此処からは、トゥラードへ行く事に成る。しかし、トゥラードと言う国はどんな国だろうか?其処等辺は少し楽しみが湧いて来る...
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
続