ロヴァノリヤ禽獣旅紀 —広大なる多民族國家の命運、大衆の暗く斃れる先には、何が在るのか— 作:南部 八十一朗
「斃《くたば》りやがれぇ!!」
其のイデナの声と同時に、軽機関銃を乱射し始める。銃から出る排煙が自然と私の体の方へ引き付けられながらも、私は足の筋肉を震わせながら、林へ突撃する。
(間に合え!!)
滑り込む様に林の中へ入り、同時に枝や茂みの歓迎的な鞭を喰らいながらも、何とか潜めた。
(何とか、行けたが...)
此処から、如何するか...いや、策は思い付いたぞ。背中から、煙を溢れんばかりに吐き出す。同時に煙は、兵士共の方へ、流れていく。
「なんだ、之は、霧か!?」
「いや、煙だ!!」
「何にも、見えないなぞ!!」
「...如何やら、ミュハがやってくれたのか...よし、今の内に、ミュハの所へ行くか」
よしよし、成功だ。
「ふぅ...助かったぞ、ミュハ」
「おぉ...其れなら良かった」
「次だが...どうやって、ハルィーヴの所まで行くかだな...」
「何か、聞いて居ないのか?」
「...ユジノーならな、聞いてる筈だと思う...」
「...時間が掛かるな...」
「なぁ、本当にユジノーは生きてるんだよなぁ?」
「何言ってるんだ、ユジノーはちゃんと息してるし、特に異常はなさそうだ」
「なぁ...其れって、要は寝て無いか?」
「....確かに...」
「早く起こせ!!」
「あぁ...おーい、ユジノー起きろー」
ユジノーの肩を揺さ振る、すると...
「ぅ~ん...」
ユジノーの目が動く。どうやら、寝ていた様だ。
「何とか、起こせたぞ」
「ぅ〜ん、此処はぁ?」
「おはよう、ユジノー」
「んぁ、おはよう、ミュハ...あれ?此処は何処?」
「...実はな...ユジノー」
イデナが、ユジノーが寝てる?気絶?して居る間に起きた、出来事を話す。
「...なるほど...ハルィーヴの場所かぁ...」
「何か解る事は無いか?」
「ぅう~ん...あっ、」
「何か思い出したか?」
「いや、あそこ...何と言うか...首位までは、昇って来てるんだけど...うぅ~ん、何かハルィーヴが言ってた気がするんだよなぁ...」
「早く思い出してくれ...」
「此処もいよいよ、危なく成って来たぞ」
「そろそろ、別の所に逃げるぞ」
...何か違和感を感じてしまう。こうも着々と上手く展開が進んでいるのに、違和感が溢れて来る。何だ?何か真実との辻褄が合わない気がする。何故、ハルィーヴだけ先に行くんだ?知らない国の中にイデナとユジノーを残して、先に行くものなのか?何処か妖しく感じてしまう。
......
...其れに先ほどから、何かの視線を感じる。誰だ、私を見てるのは...ハルィーヴ?
その瞬間。眩しい白光が目に刺さる。
「!?」
「何だ、此の光は!?」
「眩しい!!」
眩しすぎて、咄嗟に瞼を閉じる。
一体、何が起きたんだ?
ただ、直ぐに眩しくなく成って、目を開ける。其処には...ハルィーヴの姿が在った。
「ふぅ...皆さん、何とか連れてこれました...」
そんな事を小さな声で独り言の様に発する。其れに、僅かに汗を垂らし、息切れまで、起している。
「ハルィーヴ...」
「どうして急に、ハルィーヴの所に来たんだ?」
「実は誰かを連れてこれる事が出来るんです...でも、之は私の力では無くて、此の鞄のお陰なんです...」
「ん?何だその鞄?」
「此の鞄は、魔力を持たない者用の特殊な道具です、所謂、魔法道具とやらです」
「其の鞄で、私達を連れて来たのか?」
「そうです、本当は3人一緒に行きたかったけど、私だけ先に行ってしまって、すみません...」
「まぁ、何とか、ハルィーヴの所まで行けたから、私は良いけどねぇ...」
「(魔法道具って凄いなぁ)」
何の前触れも無く、突如としてハルィーヴの所に連れてこられた私ら。周りは先程とは打って変わり、閑静とした雰囲気のボロい街中だ。
「皆さん、此処も危なくなって来てます、案内するので、付いて来て下さい」
どういう状況かも解らないままにハルィーヴに案内される。ハルィーヴの奥の方、其処にはヴルジアの兵とは違う、服装の兵達。もしかしたら、トゥラードの兵士達かも知れない。
「皆さん、もうすぐです」
「此方だ!!」
「早く!!早く!!」
トゥラードの兵達が、叫ぶ。後ろからは、重苦しい砲撃や銃撃の歌声に大衆の荒い声。其処まで、魔の手がやって来ているのだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「何とか、着きましたね...ようこそ、トゥラード大共和国へ」
大きく両腕を伸ばし、私やイデナ、ユジノーの目の前に仁王立ちみたいな事をするハルィーヴ。
「さぁ、急いで、今はもう少し奥の方へ行きましょうか」
瞬時に、態度を切り替え、私らをトゥラード内部へ誘う。そうか、此処は安全なのか...感覚が麻痺したのか、何処か安心感を抱く。
「此処は、モハと言うバフーミの隣のトゥラードの都市です、一先ず数日間は此処で生活してもらいます。勿論、宿屋とかは用意していますから、安心してください」
「そうなのか、有難い」
「之で何とか、休めれるな...」
「あぁ...私もう疲れたねぇ...」
「なぁ、ハルィーヴ...」
「はい?」
「私、腹が減って来たんだ...何か食事処は無いのか?」
「一応、宿屋の所に食事処が在りますよ」
「よし、早く行こう、私、腹が減って来たぞ...早く行こう!!」
「何か私もお腹空いて来た...」
「...分かりましたよ...では、急いで食事処に行きましょうか...ただ、まだ此処もまだ、安全とは言い切れませんよ」
「...なぁ、何が在ったんだ?」
「...バフーミ港に停泊していたヴルジア籍の戦艦が急にバフーミ市内に発砲、其れと同時に、ロヴァノリヤの革命に影響を受けた過激派組織達が蜂起したらしいです...私も其処まで詳しくは知らないんですがね...」
「また、変な事に巻き込まれてしまったのか...」
「ともかく、私達はトゥラードまで来れたんですよ、別にトゥラード国内は南東部以外は其処まで治安は悪く無いので、安心して下さいよ」
「其の南東部が気になるんですけども...」
「何ら巻き込まれる事は滅多に無いですよ...さぁ、此方ですよ、宿屋は...」
何処か闇を感じる言葉が吹かしながらも、目の前には宿屋らしき建物が視える。あそこに食事処が在るのか。何の料理が在るのか、楽しみだ...
それにしても、此処がトゥラードか...ヴルジアとは色々と違う物を感じる。まず、兵士の服装に建物、後、街中の看板に書かれた文字列。震えた手が書いたかのような荒れた字。ロヴァノの言語とは違った別の雰囲気が薫って来る。
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「之がトゥラード料理...?」
宿屋に着いて、直ぐに食事処に行った。宿屋は、閑散としていて寂れていたが、食事処は、香ばしい肉や香辛料の薫が吹く流れていたし、普通にトゥラードの兵や民間人も食事をしていた。皆、席に座り、暫くすると、注文もしていないのに、料理が届いた。見た目は...何と言うか、肉と緑野菜を挟んだ薄焼きの...皮?と其の皮を野菜や肉を巻いたみたいな物。
「なぁ...ハルィーヴ」
「はい?」
「之は何だ?」
「之は...此の薄焼きはシュトルヴで、之はシュトルヴサンドですね...此の皮は、小麦かトウモロコシを磨り潰して、薄く延ばして、乾燥させた生地です、焼いたりするとパリッとして野菜や肉を巻いて食べると美味しんですよ...」
「へぇ~、そんなんだ...」
「シュトルヴね...」
「まぁ...食べてみないと解らないし、早速...」
大きな一口でシュトルヴサンドを平らげる。味は...何だか独特だな、肉に色々と香辛料が掛かってて、野菜に掛かったであろうドレッシングが交じって、ロヴァノでは、あまり味わえない不思議な味だ...でも、不味くは無いし、良いか...
「あっ、味変には、此のソース使ってくださいね」
「...何だ、其のソース?」
「ザクロのソースです、甘酸っぱい感じで、良い刺激に成りますよ」
「じゃあ、私は掛けてみようかな」
イデナがスプーンでザクロのソースをサンドに掛ける。そして、頬張る。
「おぉ...確かに、凄い刺激のある味に成った」
「そうでしょう?じゃんじゃん食べてくださいね...」
私もザクロのソースを掛けて、頬張る。
...確かに、良い刺激だが、私には掛けない方が美味しい気がするな...
まぁ...どっちにしろ、面白い料理だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
続