ロヴァノリヤ禽獣旅紀 —広大なる多民族國家の命運、大衆の暗く斃れる先には、何が在るのか— 作:南部 八十一朗
此処へ来て、1ヶ月の月日が煌々と濁り流れた。
革命の火は絶えず、新聞の第二の弾丸戦争が飛び散っている。
その間に、ヴロツレスカに頼んだ一時国籍...いや、ビザを発行出来た。
其れに伴い、そろそろ別れが来た。
旅は別れと出会いが醍醐味だ。
人生と言う大河が枯れるまで、別れも出会いも再会も在る。
決して、此処で二度と会わないと言う意味では無いのだ、其処まで重い事では無い。
後はトルミール港までの道程を辿るのみ、章の改変だな。
此の驫々とした街を抜け、新天地に行くのだ。
そう言えば、ユジノーは新しい友達を作って居たな、リューリヤって奴だっけ?
其れなりには此処での生活には慣れて来たんだろう、良かった良かった。
グレイトアゼイ鉄道トルミール線、トルミール港行き
また寝台列車に乗らされる、贅沢な文句か...
此処カルパドルア駅から行く、亦も数日の夜渡りの列車。
だが、其れが過ぎれば今度は船旅。船なんか人生で初めて乗るな...
お前ら、船って何か苦労する事は有るのか?
...少し、干渉し過ぎた。また裏方が変な事起こそうとして来るなぁ...
イデナは最近気分が良い、如何してかは知らないが、何処か前よりも笑みが輝いて見えた、黒い翼とは真反対で。
カルパドルア駅トルミール港行きの寝台列車が停まる5番線のホーム
残り3分前の発車ベルが鳴る中、革製のトランクケースを持つ私とイデナは、5人に見送られることに生った。
中には見慣れない者も居たが、其れはユジノーが此処で上手く生活している事を現わしている様に感じた。
「あっと言う間に別れの時が来ましたね...」
「そうだな、でも良かった...此処まで色々と在ったが、此処まで来れたのはハルィーヴのおかげさ、有難う」
「...」
「おいおい!!私にも感謝の一言くらいは無いのか!?」
「すまんすまん、ヴロツ...ありがとな、また酒飲もうぜ」
「そうこなくちゃ!!」
「イデナさん」
「ん?」
「ありがとうございました!!」
「...ありがとね、此処でも頑張ってね」
「うん!!」
その時、発車目前のベルが鳴る。
「...此処で別れる事では無い、また会おう!!」
急いで、部屋まで走り、車窓を開ける。
其の時、
車窓から二人で顔出し、大きく手を振る。
其れに対する様に5人は大きく手を振る。
列車が駅を出るまでの僅かの時間、私とイデナは手を振り続けた。
こうして、私らはユジノーと別れ、イデナの第二祖国、ミズホへ行く事に成った。
世論の鋭い視線を無視して、とっとと海を渡ろう。
どうせ、革命は哀愁臭い歌の様に静かに寂びた最後を送るだけか甲高い稚児の声の様に火は火海に成るだけかの問題。所詮、一人二人では揺れる事は無い。
車窓に映り往く景色、街波は消え、山と台地が広がって居る。
其れは徐々に思い出が過ぎていく様だ。でも、此処で別れる訳では無い、また会う事も有るかもしれない、私に死と言う物が来るまで。
「なぁ、イデナ」
「ん?如何した?」
「一本吸う?」
「...じゃあくれ」
車内、紫煙の匂いと埃っぽい雪の粒が舞って居る。
何ら変哲の無い二人の空間、しかし、其れが何処か良い気がした。
渋いって物は良いものだ。言葉では無く雰囲気が好きだ、渋いと平凡は好きな言葉さ。同時に其の言葉通りの生活が送りたいものだね。
そう言えば、最近身長が伸びなくった。でも、身長自体はお前らとはかなりの差が在るのだろう。測ったが、211ぐらいだった気がする、巨体だな。
身体自体が大きくなっているから、前よりも煙草が小さく見える。ただでさえ、掌ぐらいの大きさの煙草がもっと小さく成った。周りも小さく見える様に成った。ただ、何も利点は無い。生活に馴染むのに時間は掛るし、服が問題かな。
今着ているのは巨人用の服だしなぁ...金が掛かるさ。布を大量に使用するから、金が掛かるんだろうね、巫山戯んなよ。
物価が違うんじゃなくて、自国紙幣の価値が無さ過ぎる、札束が玩具に等しい物に成りそうだ、其れくらい安い。
とは言え、其処まで節約と倹約病の闘病生活みたいな生活では無い、でも自然と質素倹約寄りの生活を送るんだよな。
金が有っても、使い方に支障が有るんだよね。
お前等、ルーブル紙幣居る?あっ、でも通貨としての価値無いから、実質玩具じゃん、上げないわ。
「なぁ、ミュハ」
「どうした?」
「何でも無い」
「...」
「ねぇ、ミュハ」
「何?」
「何でも無い」
「構って欲しいのか」
「だって暇何だよ、話す様な話題も浮かばないし...」
「しょうがない、話題に出来ない程、退屈な人生送ってるからだろ」
「其処まで退屈な人生では無いよ、でも色の彩度も光沢も無い白黒な世界みたい」
「良いじゃないか、写真みたいに一枚一枚思い出が残せるみたいで」
「そういう事では無いの、何かこう色が無いと現実に華が無いでしょ?」
「いや、別に無くても体に流れる血色で色は確立してるよ」
「赤色しかないじゃん!!」
「別に良いだろ!!」
五月蠅い列車の吹きが聞こえる。
開いたままの車窓からは寒風と同時に贅沢品に感じる平穏と言う空気が吸えた。
「そう言えば、ミズホ?って国にお前の家族?か何かが居るんだろ?どんな奴なんだ?とりあえず、翼人の奴らだろ?」
「まぁ、そうだね...私の母の一族が棲んで居るさ、後、彼方に着いたら、私の名前が変わる事に生るね」
「そうなのか、どんな名前に成るんだ?」
「泉北鵬って名前」
「イズミホクホウ...面白い名前だな、二つも名前が有って面白いな」
「何ならもっと有る泉有山とか」
「何で複数も有るんだ?」
「母の一族が勝手に私に名前付けてるんだけど、一族の者によって名前変わるんだよね...」
「...何で?」
「解らない、そもそも私の母自体、謎が多い。何で泰西まで来たのか、母の一族は旅人と答えるだけだし...私を一族を知ったの数年前ぐらいだし、私自身向こうでの名前何か決めて無かったから向こうに任せたら、此の有様」
「之が所謂、複雑怪奇って奴?」
「そう」
「でも...どうやって其の一族と連絡してんの?」
「其れは、特殊な魔法、簡単に言えば手紙を相手に渡せる魔法」
「ふーん...何か凄い事は解った」
「来た手紙は行によって色んな人のメッセージに成ってるんだけど、行ごとに名前が変わるんだよね」
「じゃあ、北鵬って呼んでくださいって伝えればいいじゃん」
「其れ書いたけど、効果はいま一つって所、読んでくれる人は現れたけど、現状は色んな呼び名で埋め尽くされてる」
「じゃあ、向こう行って一族集まって決めたら」
「其のつもり」
「...そう言えば、向こうに着いたら、何する?名所やら何処か行くか?」
「まぁ、別に期限は無いし、気楽に過ごそう、其れに向こうって異文化だから、其れを堪能したいね...」
「いいじゃん、まぁでも着いてからのお楽しみって奴だな」
「そうだね」
銀色の叢雲が流れ、遠くにカルパドルアとは別の街が見えて来る。
ただ、遠くに佇む街からは黒い煙が立ち上って居る、火災かそれとも黒雲...そんな訳無いか、火災が起きているのか?
「まぁ、あそこの街観てみろ、黒煙が昇ってるぞ」
「本当だ、何?火事?」
「解んない...でも列車が停まっては無いし、大丈夫なんだろ」
「それか単にそう見えてるだけで在って、火災とか火事では無いだけかもしれないしね...」
「まぁ、線路は其の街に近づいているから、着いたら解る筈さ...」
「そう言えば、トゥラードって国は何か変な宗教が国教なんだな、えっーと...忘れたけど何とか教の何とか派?みたいな...」
「私は神とか存在を信じてても、宗教には嫌いだからなー」
「まぁ、私もそんな感じかな」
「まぁ、この世界にはいろんな国と文化が存在するんだから、色んな宗教も存在するさ、その中でも変と称する事も有るさ」
「そうそう...」
「勧誘が嫌いなんだよなーカルパドルア居た時もそうだけど、急に話しかけて来て、何か貴方は不純だから、祈りなさいみたいな事言われた。とりあえず、紫煙を顔に吐いといた」
「私も変な勧誘みたいなのされたけど、其処まではしなかったよ」
「あと、変な本みたいなの貰った」
「えっ、どんなの?」
「これ」
「何か凄く分厚い本だね...これ、何て書いてあるの?」
「解んない、ただ何か聖典?みたいな事は言ってた」
「へぇー」
「読めないし、分厚いから持ち運びも面倒で使えないから、千切ってメモ帳とか自由帳にしたり、火を点ける時に新聞紙の代用とかに使ってる」
「本当だ、何頁か千切られた跡が在るけど、まぁ、知らない宗教の知らない聖典だし、冒涜的では無いか...」
「そうそう、知らない宗教の感性なんか私には意味は無いからね」
「ミュハの宗教観、凄そう」
「宗教は嫌い、ロヴァノの正教会もそうだけど、自由を縛られる感じがして嫌なんだよ...何か肉は不浄だとか、平気で種族差別するし、神を崇める振りした馬鹿者なんだから...」
「やばい、何か消されそう」
「先に消すから、大丈夫」
「怖」
「はいはい、こんな塵みたいな話はするな...イライラする」
「解ったよ...じゃあ話題を変えて...って、うわ!!何!?」
「止まった?と思ったが、ただ傾斜の凄い曲がりか...」
「びっくりした~」
「何か一種の楽しみみたいだね」
「何処が?」
「何か驚く時、喜んで無かった?」
「そんな訳無いだろ!!」
列車が駅に到着する。
止め具の金切り声が響き、僅かに静寂気味た駅内が見える。
「此処は何処駅?」
「ちょっと待てよ...」
地図を広げ見る。此処がカルパドルアで之がトルミール港行きの路線で...
「此処はネルヒシェル駅の筈...」
「後、どの位在るの?」
「後十駅くらい」
「まだまだか...」
「そりゃ、まだ乗って間もないんだから、そうでしょ」
「まぁ、そっか...」
数時間後...
既に時間帯は黄昏時。食堂車の窓には、宵入りのカーテンが幕開けようとしていて、硝子に反射する料理が写る。幸い、注文では無く勝手に料理が提供される仕組みで、何とか助かった。トゥラード語は片言しか話せないしね...
鉛色に鈍く輝くスプーンとフォーク、食堂車の壁は独特な模様で絢爛豪華とは打って変わって異文化と称して相応しい何か模様の壁。白いテーブルクロス、クロス上には透明硝子の花瓶、ムスカリの浮き城が築かれている。
皿は幾つか在り。一つは取り皿で、他はパセリが添えられたペースト状の挽肉みたいな物、血色ビーツのスープやジャガイモに包囲されたハンバーグの様な物に檸檬の仄かな匂いが浮かぶ水入りの濁り銅色の水差しが聳えている。
いや、正確にはへ来て、1ヶ月の月日が煌々と濁り流れた。
革命の火は絶えず、新聞の第二の弾丸戦争が飛び散っている。
その間に、ヴロツレスカに頼んだ一時国籍...いや、ビザを発行出来た。
其れに伴い、そろそろ別れが来た。
旅は別れと出会いが醍醐味だ。
人生と言う大河が枯れるまで、別れも出会いも再会も在る。
決して、此処で二度と会わないと言う意味では無いのだ、其処まで重い事では無い。
後はトルミール港までの道程を辿るのみ、章の改変だな。
此の驫々とした街を抜け、新天地に行くのだ。
そう言えば、ユジノーは新しい友達を作って居たな、リューリヤって奴だっけ?
其れなりには此処での生活には慣れて来たんだろう、良かった良かった。
グレイトアゼイ鉄道トルミール線、トルミール港行き
また寝台列車に乗らされる、贅沢な文句か...
此処カルパドルア駅から行く、亦も数日の夜渡りの列車。
だが、其れが過ぎれば今度は船旅。船なんか人生で初めて乗るな...
お前ら、船って何か苦労する事は有るのか?
...少し、干渉し過ぎた。また裏方が変な事起こそうとして来るなぁ...
イデナは最近気分が良い、如何してかは知らないが、何処か前よりも笑みが輝いて見えた、黒い翼とは真反対で。
カルパドルア駅トルミール港行きの寝台列車が停まる5番線のホーム
残り3分前の発車ベルが鳴る中、革製のトランクケースを持つ私とイデナは、5人に見送られることに生った。
中には見慣れない者も居たが、其れはユジノーが此処で上手く生活している事を現わしている様に感じた。
「あっと言う間に別れの時が来ましたね...」
「そうだな、でも良かった...此処まで色々と在ったが、此処まで来れたのはハルィーヴのおかげさ、有難う」
「...」
「おいおい!!私にも感謝の一言くらいは無いのか!?」
「すまんすまん、ヴロツ...ありがとな、また酒飲もうぜ」
「そうこなくちゃ!!」
「イデナさん」
「ん?」
「ありがとうございました!!」
「...ありがとね、此処でも頑張ってね」
「うん!!」
その時、発車目前のベルが鳴る。
「...此処で別れる事では無い、また会おう!!」
急いで、部屋まで走り、車窓を開ける。
其の時、
車窓から二人で顔出し、大きく手を振る。
其れに対する様に5人は大きく手を振る。
列車が駅を出るまでの僅かの時間、私とイデナは手を振り続けた。
こうして、私らはユジノーと別れ、イデナの第二祖国、ミズホへ行く事に成った。
世論の鋭い視線を無視して、とっとと海を渡ろう。
どうせ、革命は哀愁臭い歌の様に静かに寂びた最後を送るだけか甲高い稚児の声の様に火は火海に成るだけかの問題。所詮、一人二人では揺れる事は無い。
車窓に映り往く景色、街波は消え、山と台地が広がって居る。
其れは徐々に思い出が過ぎていく様だ。でも、此処で別れる訳では無い、また会う事も有るかもしれない、私に死と言う物が来るまで。
「なぁ、イデナ」
「ん?如何した?」
「一本吸う?」
「...じゃあくれ」
車内、紫煙の匂いと埃っぽい雪の粒が舞って居る。
何ら変哲の無い二人の空間、しかし、其れが何処か良い気がした。
渋いって物は良いものだ。言葉では無く雰囲気が好きだ、渋いと平凡は好きな言葉さ。同時に其の言葉通りの生活が送りたいものだね。
そう言えば、最近身長が伸びなくった。でも、身長自体はお前らとはかなりの差が在るのだろう。測ったが、211ぐらいだった気がする、巨体だな。
身体自体が大きくなっているから、前よりも煙草が小さく見える。ただでさえ、掌ぐらいの大きさの煙草がもっと小さく成った。周りも小さく見える様に成った。ただ、何も利点は無い。生活に馴染むのに時間は掛るし、服が問題かな。
今着ているのは巨人用の服だしなぁ...金が掛かるさ。布を大量に使用するから、金が掛かるんだろうね、巫山戯んなよ。
物価が違うんじゃなくて、自国紙幣の価値が無さ過ぎる、札束が玩具に等しい物に成りそうだ、其れくらい安い。
とは言え、其処まで節約と倹約病の闘病生活みたいな生活では無い、でも自然と質素倹約寄りの生活を送るんだよな。
金が有っても、使い方に支障が有るんだよね。
お前等、ルーブル紙幣居る?あっ、でも通貨としての価値無いから、実質玩具じゃん、上げないわ。
「なぁ、ミュハ」
「どうした?」
「何でも無い」
「...」
「ねぇ、ミュハ」
「何?」
「何でも無い」
「構って欲しいのか」
「だって暇何だよ、話す様な話題も浮かばないし...」
「しょうがない、話題に出来ない程、退屈な人生送ってるからだろ」
「其処まで退屈な人生では無いよ、でも色の彩度も光沢も無い白黒な世界みたい」
「良いじゃないか、写真みたいに一枚一枚思い出が残せるみたいで」
「そういう事では無いの、何かこう色が無いと現実に華が無いでしょ?」
「いや、別に無くても体に流れる血色で色は確立してるよ」
「赤色しかないじゃん!!」
「別に良いだろ!!」
五月蠅い列車の吹きが聞こえる。
開いたままの車窓からは寒風と同時に贅沢品に感じる平穏と言う空気が吸えた。
「そう言えば、ミズホ?って国にお前の家族?か何かが居るんだろ?どんな奴なんだ?とりあえず、翼人の奴らだろ?」
「まぁ、そうだね...私の母の一族が棲んで居るさ、後、彼方に着いたら、私の名前が変わる事に生るね」
「そうなのか、どんな名前に成るんだ?」
「泉北鵬って名前」
「イズミホクホウ...面白い名前だな、二つも名前が有って面白いな」
「何ならもっと有る泉有山とか」
「何で複数も有るんだ?」
「母の一族が勝手に私に名前付けてるんだけど、一族の者によって名前変わるんだよね...」
「...何で?」
「解らない、そもそも私の母自体、謎が多い。何で泰西まで来たのか、母の一族は旅人と答えるだけだし...私を一族を知ったの数年前ぐらいだし、私自身向こうでの名前何か決めて無かったから向こうに任せたら、此の有様」
「之が所謂、複雑怪奇って奴?」
「そう」
「でも...どうやって其の一族と連絡してんの?」
「其れは、特殊な魔法、簡単に言えば手紙を相手に渡せる魔法」
「ふーん...何か凄い事は解った」
「来た手紙は行によって色んな人のメッセージに成ってるんだけど、行ごとに名前が変わるんだよね」
「じゃあ、北鵬って呼んでくださいって伝えればいいじゃん」
「其れ書いたけど、効果はいま一つって所、読んでくれる人は現れたけど、現状は色んな呼び名で埋め尽くされてる」
「じゃあ、向こう行って一族集まって決めたら」
「其のつもり」
「...そう言えば、向こうに着いたら、何する?名所やら何処か行くか?」
「まぁ、別に期限は無いし、気楽に過ごそう、其れに向こうって異文化だから、其れを堪能したいね...」
「いいじゃん、まぁでも着いてからのお楽しみって奴だな」
「そうだね」
銀色の叢雲が流れ、遠くにカルパドルアとは別の街が見えて来る。
ただ、遠くに佇む街からは黒い煙が立ち上って居る、火災かそれとも黒雲...そんな訳無いか、火災が起きているのか?
「まぁ、あそこの街観てみろ、黒煙が昇ってるぞ」
「本当だ、何?火事?」
「解んない...でも列車が停まっては無いし、大丈夫なんだろ」
「それか単にそう見えてるだけで在って、火災とか火事では無いだけかもしれないしね...」
「まぁ、線路は其の街に近づいているから、着いたら解る筈さ...」
「そう言えば、トゥラードって国は何か変な宗教が国教なんだな、えっーと...忘れたけど何とか教の何とか派?みたいな...」
「私は神とか存在を信じてても、宗教には嫌いだからなー」
「まぁ、私もそんな感じかな」
「まぁ、この世界にはいろんな国と文化が存在するんだから、色んな宗教も存在するさ、その中でも変と称する事も有るさ」
「そうそう...」
「勧誘が嫌いなんだよなーカルパドルア居た時もそうだけど、急に話しかけて来て、何か貴方は不純だから、祈りなさいみたいな事言われた。とりあえず、紫煙を顔に吐いといた」
「私も変な勧誘みたいなのされたけど、其処まではしなかったよ」
「あと、変な本みたいなの貰った」
「えっ、どんなの?」
「これ」
「何か凄く分厚い本だね...これ、何て書いてあるの?」
「解んない、ただ何か聖典?みたいな事は言ってた」
「へぇー」
「読めないし、分厚いから持ち運びも面倒で使えないから、千切ってメモ帳とか自由帳にしたり、火を点ける時に新聞紙の代用とかに使ってる」
「本当だ、何頁か千切られた跡が在るけど、まぁ、知らない宗教の知らない聖典だし、冒涜的では無いか...」
「そうそう、知らない宗教の感性なんか私には意味は無いからね」
「ミュハの宗教観、凄そう」
「宗教は嫌い、ロヴァノの正教会もそうだけど、自由を縛られる感じがして嫌なんだよ...何か肉は不浄だとか、平気で種族差別するし、神を崇める振りした馬鹿者なんだから...」
「やばい、何か消されそう」
「先に消すから、大丈夫」
「怖」
「はいはい、こんな塵みたいな話はするな...イライラする」
「解ったよ...じゃあ話題を変えて...って、うわ!!何!?」
「止まった?と思ったが、ただ傾斜の凄い曲がりか...」
「びっくりした~」
「何か一種の楽しみみたいだね」
「何処が?」
「何か驚く時、喜んで無かった?」
「そんな訳無いだろ!!」
列車が駅に到着する。
止め具の金切り声が響き、僅かに静寂気味た駅内が見える。
「此処は何処駅?」
「ちょっと待てよ...」
地図を広げ見る。此処がカルパドルアで之がトルミール港行きの路線で...
「此処はネルヒシェル駅の筈...」
「後、どの位在るの?」
「後十駅くらい」
「まだまだか...」
「そりゃ、まだ乗って間もないんだから、そうでしょ」
「まぁ、そっか...」
数時間後...
既に時間帯は黄昏時。食堂車の窓には、宵入りのカーテンが幕開けようとしていて、硝子に反射する料理が写る。幸い、注文では無く勝手に料理が提供される仕組みで、何とか助かった。トゥラード語は片言しか話せないしね...
鉛色に鈍く輝くスプーンとフォーク、食堂車の壁は独特な模様で絢爛豪華とは打って変わって異文化と称して相応しい何か模様の壁。白いテーブルクロス、クロス上には透明硝子の花瓶、ムスカリの浮き城が築かれている。
皿は幾つか在り。一つは取り皿で、他はパセリが添えられたペースト状の挽肉みたいな物、血色ビーツのスープやジャガイモに包囲されたハンバーグの様な物に檸檬の仄かな匂いが浮かぶ水入りの濁り銅色の水差しが聳えている。
いや、正確には私の方が聳えている。
そして、私はスプーンを握って、ペースト状の挽肉を口に入れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
続