ロヴァノリヤ禽獣旅紀 —広大なる多民族國家の命運、大衆の暗く斃れる先には、何が在るのか— 作:南部 八十一朗
そして其の数分後には事件が起きた。
私はベッドに座り、イデナは椅子に座り、優雅に足汲んで居た。空気感は別に気まずい訳でも無く、単に会話が無いだけの状況が続いて居た。そんな中を切り裂く空気が扉の僅かな隙間を突く様に漂って来た。
何処か鮮やかで重い空気の息吹が吹いている。
私もイデナも何処か其の風に違和感と不快感が在った。何か物騒で刺激の在る匂いで、臭いとか悪臭とは違う何か特徴的な匂いが扉の奥から部屋の中へ誘われている。
煙草を吸うイデナも煙草の匂いよりも此の異様な臭いの方が強い様で、少し顰めている。私も似たような感じだ。
「なぁ、何か変な臭いが扉からするんだけど...」
「そうだよな、何かこう、臭いと言うか鼻に突く臭いだよな」
「本当に何だ此の臭い?」
「外で何か在ったのか?」
両手はベッドの白い皺波を握って居る。イデナは煙草を強く深く吸っている。
其の時、シトリシトリと水が滴る様な音が扉の方から聞こえ、扉の方へ向かうと、扉の下側の僅かな隙間から、水では無く濃く暗い紅い血が流れていた。
「如何したんだ?」
イデナも扉の方へ来た。その間も血は扉の隙間を通過して部屋の中に入って来る。
其れも意外と早くドロドロと流れ入って来る。
「えっ?何...之..?血...?」
「...判らない」
「扉の先で何が起きてるんだ...?」
「解らない...ただ、今は絶対に開けたら駄目だ」
「...あぁ...」
「取り敢えず、扉からは離れよう、其れに此の血もそうだが、扉から変な気配がする...人間でも無く、亜人でも無い何かの気配が...」
イデナも私も後ろ歩きで部屋の奥へ逃れる。
今は如何する事も出来ない。開けたらもし、魔物が居て、直ぐに攻撃された如何する?私でも死ぬだろう。其れに一つとは限らない。複数かもしれない、私よりも強い可能性も十分在る。下手に行動するよりも、此処で護りに徹する方が未だ良い筈だ。
其れに異様に静かだ。部屋に居ても、其れなりには隣の部屋から多少の声がする筈だ、しかし、其れが無いのだ。怯えて息を殺しているのか、其れとも、もう手遅れか...判らないが、今は此の自分の事を衛る事に専念しようか。
少し扉から離れて、私が扉を見張っている間に、イデナは寝ていたベッドの下を漁り始め、何時も持って居た軽機関銃を取り出すが、見た目が変わって居た。銃身が長く成ってて、先端付近に斜めに
私も外套の中からノヴォークを取り出す。弾も少ないから、慎重に撃たないといけないし、右手にノヴォーク、左に偽クォデネンツ事、
「之で少しは戦闘には耐えれそうだな...」
「先ず、何が起きているのかの状況が欲しんだけど...」
「そんな事解らない、でも扉の先で何か起きている、もしかしたら、壊されて入ってくるかも知れないだろ?」
「...まぁ、そうなのかもしれないけど...」
其の時、ドン!!と扉を叩く様な音が聞こえた
「...之は、不味い状況じゃないか...?」
「未だ解らない」
「でも...」
「之で死ぬなんて誰が言った?今は備えろ、其れに此の儘、凌げるかも知れない」
さっきの音がもしかしたら、扉を叩く様な音では無くて、例えば、魔物が誰かを食べる時に壁か扉に当てた音かも知れない、其れに何か此処で下手に動く方が駄目な気がする...だって、イデナは感じないのかも知れないが、扉の奥から、凄い魔力を感じる...
準備を始めよう、煙が体に満ち始めた。心臓の鼓動の様にドクンドクンと身体の隅々まで血の様に巡り、手相の小さい線さえも煙の一部に成る。...半煙化も其れなりには出来る。魔法には魔法で抗うんだよ。
しかし、今度は本当にこの部屋に誰かに露見されたかの様に、部屋の扉を斧か何か振り下ろされ、僅かに扉に穴が開く。
「まずい、バレたぞ!?」
「待て、私の手を握れ」
「...わ、分かった...之で良いか?」
「良いぞ...後、少しだ...」
ガシャン!!と扉が倒された、其の刹那に私の感覚の刺激が頂に達した。
「今だ!!」
イデナ毎、煙に成って、風何かに乗らずに急いで、広い処へ
雲を切り裂いて、綺麗な星夜を覗く様に、煙に成った時には全てが暗く星の様に周りが見える。其れも魔物達が複数も居るし、人間、・亜人関係無く、喰い荒らして居る。そんな事は無視して、急いで広い所まで向かう。
食堂前の大広間みたいな処。
煙は晴れて、私とイデナが出て来る。同時にイデナの軽機関銃を
「此処なら、未だ大丈夫じゃ無いか?」
そうイデナに言いながら、半煙化で液状化し掛ける腕から滴る液を手で払っている。
「ゲホッゲホッ、そうかも、ゲホッゲホッ...」
「大丈夫か?」
「大丈夫、ちょっと息がね...」
自分は煙に慣れているが、他人は慣れて無い。其れに普通、煙何か、吸ったりしたら、身体に悪影響しか無いだろう。半煙化と言えど、多少なりとも煙が入ってしまう...集団よりも個人に適した魔法だ。其れに未だ、此の魔法も全てを知ってる訳では無いし、未だ何かしらの影響が及ぶ可能性も在るかも知れない...
床に両手を置きながら、大きくそして、激しく咳き込むイデナ。大広間と言うか、色んな道への
周りには誰も居ないし、イデナ以外の気配は誰も居ない。火の点かない煙草一本銜えながら、周囲を警戒する。イデナの激動の咳きも和らいで来た。ノヴォークの大口径銃と私にとって、片手剣な両手剣を携える。
「大丈夫?」
「何とか収まった....之からどうする?もう、何が起きたのか、分からないよ」
「私も解らないさ、でも命に関わる様な危ういと言う事は解った」
「でも、安全な場所何て、此処に在るの?」
「...分かんない、取り敢えず待機か安全地帯を目指して動くか...」
「う〜ん、でも流石に距離は在るし、来た道から離れる様に行こう」
「成る程、そしたら、此方の方か...」
「二つの道、単体行動は危険かも知れないし、二人で行こう」
「どっちから行く?右か左か...」
「う〜ん、左へ行こう」
「解った」
そうして、左の方への道を行く事にした。
勿論、お互い武器を携え、聴こえない筈の閑静とした交響曲が流れる道を一歩一歩と奥へ進んで行く。
照明も一部壊されているのか、暗かったり明るかったり不気味で良くも悪くもそう言う雰囲気が風と影の様に吹き敷かれている。革靴の床を踏む音に閑静な交響曲の様な雰囲気、其れに僅かながらに吹く風の声。
愚図れた高級模様な壁が誘う船内の何処かへの一本道、私は船内の事なんて、全部知って居る訳でも無いし、此処の一本道の先には何が在るのだろうか。
其れに、床を踏む時にピチャパチャと水を踏んだ様な音は誰かも解らない雑血だ。其れも一人二人とか寄りも多い。恐らく数十人は魔物とかに殺されたのだろう。ただ、其の殺されたであろう、者達の骸一つも無いのだ。
其れも僅かな肉片やら小骨か骨の一部、何一つも見当たら無い。ただ、床に血の大河が流れているだけなのだ。魔物と言う物は蛮の一つ文字の象徴と思っていたが、こんなにも夥しくて、変で奇行の極みとしか表せない歪さが在るだ何てな、此の船に居る魔物はかなりの大物なのか?
華の蜜を吸う者の様に可憐で全て吸い切る様に生命を吸い取る何かかも知れない。
まぁ、私も完全に批判出来ないが、此処までの異質な事は起こさないよ、だって、外見が綺麗だと売れるし、そんな解体業者みたいに生命を部位や臓器ごとに解体するだ何て事はしないしね。
「...本当に何が起きているんだ?誰も居ない、凄く違和感しか無い...」
「..確かに私達以外、誰も居ないのも違和感だ、声とか気配も一切しないし、まるで二人だけが巻き込まれている様だ」
「何か凄く不気味だね...早く行こう...?」
「あぁ、そうだな」
皺が靡く服、明暗曖昧な廊下の先へ誘われている。丸いマガジンから聞こえる弾薬の密な音、水溜まりを踏む様な血飛沫の燥ぐ音に淡々と其の一滴一滴が僅かに飛んで、壁とかに飛び散る。イデナは恐怖を押し殺して、銃を握る手が少し血管が浮き出ている。
対して私は剣と人間には大きすぎる銃を如何さず、聳える刃先は肩に担がれ、銃が指差す様に目の先を向く。迷宮の様な直線道、床は明度様々な血の混じり池が淡々と流れ、壁とかに付いて居る。
そう直線道を歩く事、十数分は掛っただろうか、目の前から白い光が見え始める。
其れが此の廊下の迷宮の終着地点で同時にこんな不気味で不思議な所から脱出の希望の様に見えた。
「もうすぐ広い処に出そうだな」
「...広い処なら、もしかしたら誰か居るかもしれないね...」
「...居れば良いんだが...」
「確かにな...」
そんなこんなで明暗曖昧な廊下を出て、白く光り輝く方へ誘われた。
少し眩しいが、此処は...
「食堂前の大広間か?此処は?」
「そうじゃないかな...」
「此処は何も荒れたりした感じの事は無いね...」
「でも、誰も居ないよ?」
「もう少し、周りを探してみようか」
「...取り敢えず、食堂の方へ行く?誰か居そうだけど...?」
「まぁ、行ってみるか...」
明るいし、特に荒らされたりもして居ない食堂付近の所。ただ、まるで人々が消えたかの様に誰一人も居ない。何処へ行ってしまったのか?其処に響くのは足音ぐらいで風の音も少なく、気だけなら食堂の方からも静寂だけの返答しか来ない。そうして、食堂が目と鼻の先までに視える距離へ行く、其処には...
「...此処か...」
「...」
食堂。其処には直前まで優雅に食事をしていたのであろう者達の骸が大勢も在った。
其れも見た通り、酷い外傷も無く、まるで毒殺されたかの様に机や椅子から転げ落ちる様に倒れ込む者や陶酔して寝ている様に死んでいる。だが、中には口から血を吐いている者みたいに体の何処かから血を出している者も居た。
料理は冷めていた。其れ位には時間が経って居るのだろう。
「...一体此処で何が起きたんだ...」
「...之、皆死んでいるのか...?」
「..そうだ、皆眠る様に死んでいるだ、例外も居るが...」
「....酷い惨状だ、誰がこんな事を...?」
「..恐らく、魔物達だろうな...」
「何で魔物が船内に?」
「多分、人間や亜人に扮して居たのだろうな...」
「其れに魔物と言う言葉自体、凄く久しく感じる...」
「そりゃ、魔物自体、もうとっくの昔に人間と亜人への交配で存在が無く成ったみたい事を言われて居るしな...ただ、此の船内に居る魔物の姿はそんあ一目で化け物と判別出来ない程に人間や亜人に化けているのかもしれない...」
そう言った後、ガシャン!!と何か硝子の物でも割れた様な音が聞こえる。
「何だ!?」
「...待て、魔物では無さそうだ...」
「えっ...?じゃあ、何だ...?」
硝子の何かの割れる音がしたのは、此の食堂内だ。
座り死ぬ者を除いて、床の方を見る。其の時、遠くの方から硝子の破片が光った様に見えて、其の視えた方へ向かうのであった。
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続