ロヴァノリヤ禽獣旅紀 —広大なる多民族國家の命運、大衆の暗く斃れる先には、何が在るのか— 作:南部 八十一朗
地上の星の様な硝子の破片の星々が光って見えた。或るテーブルの処、一つだけ硝子の盃が割れて持ち手だけしか残って居ない、誰が座って居たのであろう椅子も少しずれている。
椅子の下の脚の方を見れば。
額から血を流して、床に横たわって、か細い息を吐きながら眼を閉じる女?が居た。
服装的には、其処らの所謂、上級階級の塵共よりも低い階級の奴に見える、其れに凄く男か女か解らない容姿をして居る。黝い
額から流れる血の一部が床に滴ってている、屍の様にピクリとも身体は動いて無いが、か細い息遣いでゼェ..ハァ..と薄く息して居る。
「未だ生きてる」
「大丈夫なの?」
「額から出血してるけど、生きては居る」
横たわる姿勢から仰向けに寝かす。
膨らみと縮みの呼吸音、何も無い喜劇的な風の交響曲。色々と交じった食事の混臭、不気味な屍達の食事風景が拡がっている。嘸かし奇々妙々なのだろう。
イデナは銃を構えながら、周囲を見渡して居る、無音に等しい程、静寂に包まれ皿の上に置かれた食の様に何処か鋭い空気が吹いている。
其の時、大きな咳きと共に瞳が開く。
「あれ...俺は何をして...?..お前等は誰だ?其れに何でこんなに静かなんだ?」
其奴は起き上がり、食堂を見渡し、額を優しく撫でるかの様に触る。
「....何が起きたんだ?其れに何で血が...おい、之はお前等が殺ったのか...?」
辺りの景色と自分の状態を確認すると、まだ何一つ共、喋って居ない私に少しの怯えと戸惑いを露わにする表情で私に問いかける。
「...私らが殺った訳じゃない、私らも良く解らないんだ、部屋で過ごして居たら、急に変な奴に襲われ掛けて、急いで此処まで逃げて来たんだ...」
「そうなのか...?」
如何言えば解らないが、凄く曖昧で雑だが、そいつに詳しい状況を話す。
「と言う感じ何だ、取り敢えず私らは此処等で休憩でもしようかなと...」
「...成る程、良く解ら無いが取り敢えず不味い状況なんだな...」
「そういう事、此処は一緒に手を組まないか?」
「そんな怪しい感じで勧誘するのか?面白い奴だな...でも、今は単体は危険だろうし、まぁ一緒に今は居よう」
「おぅ、宜しく私はミュハーン、ミュハと呼んでくれ。隣に居るのが相方のイデナ」
「気軽にイデナって呼んでくれ」
「ミュハにイデナか...俺はぺヴェーテ、まぁぺーテとでも呼んでくれ」
「...よろしくぺーテ」
「宜しく」
「あぁ、宜しく...」
「...と言いたい処だけど、取り敢えずぺーテ、額の出血が凄いし、止血しないとな...」
「ちょっと手伝ってくれ、眼に少し血が入ってて、やり難いしでね...」
「おう、代わりに私らがやるよ」
「ありがと」
包帯やらタオルで傷跡を抑えて少し強く巻き締める。淡く染まる朱のタオルや包帯の純白のパレット。
「すまないな、助かったよ」
「別に大した事じゃ無いしなぁ...」
ペタペタと巻かれた所を柔らかく触るペーテ
少し痛みからか顔を顰めながらも眼を大きく開いたりする。
「少し痺れるな...」
そう小言を吐き捨てて、首を大きく廻す。
イデナは肩を思いっきり落とし、私は其の場で立っている。
平和とは言い難い空気感。鋭利な空気が周囲を吹かす。皆静かで落ち着く、イデナもペーテも眼の前で死んで居る者等に関係無いと言わんばかりに驚きも叫びの唸りも上げない。
双方共、凄く慣れた様な表情を浮かんで居る。
イデナなら未だしもでは無いが、ペーテはどう言う事何だろうか。そんな血塗ろな骸でも無いし、私が煙で燻り殺した時の様な死体をして居るけども、眼の前で死体が有るのに何ら驚きとか叫びを上げない。
世の中って広いんだな。
其れに人間だと思ったが、獣系亜人か。耳を折っていたのか?其れに
「なぁ、ペーテ」
「..何だ?」
「ペーテは
「..惜しいな、何時も皆は俺の事を
「じゃあ、何だ?」
「俺は、
「へぇ〜始めて聞いたな、騾馬人?馬人とは何が違うんだ?」
「簡単に言えば、
「...カヴァッロ・ぺルソネって何?」
「えっ?馬人だろ?カヴァッロ・ぺルソネって言うじゃ無いか?其れにドラフチェラって何?」
「...ペーテは何処の國から来た?」
「私か?私はヴィテリヤって国から来た」
「ヴィテリヤ..知らない国だな」
「良い国さ、飯も酒も娯楽もある、恋以外は楽しい国さ」
「そうなのか」
「そういう君達は何処から来たんだ?」
「強いて言えば、泰東の方」
「..何となく予想は出来た、まぁ..」
「...ちょっと少し話題を変えよう、ペーテは男か?女か?何かどっち付かずな顔立ちをしてるからさ、気に成る」
「...其のなぁ、俺には生まれつき
「じゃあ、性別ペーテで良いじゃん」
「男か女の二択で収まる訳無いよね」
「何で私を見るんだよ、どう見ても女だろ?」
「...面白いな、君達は」
何処か少し笑みを浮かべながら、照れ臭そうな仕草をする。
僅かに仲睦まじいと言う言葉の片鱗の粉吹雪を感じる。未だ、其の風も些かで、全然仲が良いとは一厘も未だ感じない。其れに異様な光景を無視するかの様な空気感。
でも、誰もが今は自己優先を貫いて会話をしている。目の前に誰かも知れぬ者共の骸が座ったり、テーブルに伏せたりしているが、こんなにも眠る様に死んでいるなら良かったんじゃないか?老衰みたいじゃないか、射殺や殴殺とか毒殺でも無いんだからさ。
偽物の賑やかさが此の空間を色褪せて居る。奇妙奇怪の二つ言葉が馨り、憂愁の油にも滑らない程には生命としての優秀さ、人外さが際立っている。軋む呼吸と囀る鼓動、傾ぐ時の刻み。其れ位には異様な静寂感と何か奇妙な事が今にも起きそうだと思える様な空気感が肌の土壌を鍬で耕す様な敏感にさせて来れる。まるで、捕食者から逃げ隠れる弱者の様で黄ばんだ古い書籍に綴られた文字が掠れ潰れる様な儚い透明な空気と雰囲気が溢れている。
膨れ犇めく煙草の箱を
銃に刻まれた安い傷も其れが歴戦の猛者の様で凄く重厚さと甘い砂糖の様な硝煙の味が聞こえる。神話に出て来る神々の武器よりも生命の知恵で研がれ集い聚まって創られた文明品の方が洒落ているだろ?
研がれた鋼のナイフや斧の様に鋭い刃先の様に此の弾丸は人も国も焦がせるだろう。鉛が飛んで朱葡萄酒を垂らす様に、美麗の華は咲かなくても、弾の種で紅い花が咲くんだから、其れなりにはお洒落では在るだろう。命と言う水分と土も付属しているんだし、悉く吸われてしまうな、命と違って花は広壮だし。
其の時、言葉には表し難い轟音と共に揺れが食堂を襲う。
テーブルや机上に置かれた皿や盃は倒れ、テーブルや椅子からは擦れる低い音が出ている。
「何だ!?」
「扉から離れようか」
「何か危ない気配がする...」
食堂の大きな扉から重い音がした後、扉は倒される。
其処から溢れ出て来たのは、異形と言っても良いぐらいには人型の様な何かが幾つも佇んで居た。服は紳士服やらドレスを着ているが、返り血が付いて居るし、血滴った刃物を持って居る。其れに何か骸が転がって居る。
明らかにこいつ等が犯人だ。
「此奴等が...」
「そうだ、此奴等が魔物なのだろうな」
「どうするんだ?此処だと死体を傷つけるが...でも、入口は塞がれて居るし...」
「決まってるだろ、此処で死ぬ気で戦わないと死ぬぞ」
銃と剣を握る手も腕も血脈が加速し血の流れが零れる程に力が湧き出て来る。
イデナは銃を魔物達に向け、息を整える。一方でペーテは其処等のテーブルに置かれた硝子の盃を手に取ると、上品な酒でも飲むかの様に掌で盃を回し揺らすのと同時に白いテーブルクロスを手に取って居る。
魔物達は律儀に刃物の刃先を此方に向けると、勢いのまま、私らに突撃を開始する。
「
宣戦布告からの専制攻撃はイデナの銃声だ。
物凄い連射と黄色い閃光と共に、多量の弾丸雨は魔物の體を貫いた。
しかし...
「此奴等硬いぞ、傷は与えたが致命傷に成って居ないぞ!!」
「なら、之ならどうだ!!」
ペーテを視ると、黝い炎が巻き付いて居る、黝い酒でも注がれた盃に其の炎に燃やされた白いテーブルクロスを双方の手に握ると、黝い酒を飲み干し大きく口を開け魔物の方へ息を吐く。
其の瞬間、黝い美麗な炎の息が魔物を包み込む。同時に黝い火色のテーブルクロスは丸められて細い木の棒の様な姿に成って居た。黝い炎の中、魔物達の少し五月蠅い唸り声が聞こえる。今度は私のターン、ノヴォークを魔物共に構える。
視える黝い炎の中で悶えるかの様に燃える魔物達の姿が刻々と視える...
視線と射線の二重線に合致した瞬間、轟音と共に一弾の鈍き黄金の弾丸は黝い炎の濃霧を貫き、見事、一つの魔物の脳天に直撃した。確かな命中弾、銃口から零れる微かな煙は私の中に取り込まれて行く。
「命中...(炎で損害が解らないな...)」
半分に折るかの様にノヴォークのシリンダーを見る。
後、5発は撃てる。大丈夫だ、まだまだ
黝く燃える魔物達は悶えながらも、私らに迫って来てる。
一つ言えば、完全に
「イデナ、ペーテ、私の後ろまで下がれ、怪我するぞ」
「「えっ...」」
二人とも私の射線からは遠のいた。
「全銃発射!!」
巨体の上半身、腹から鎖骨までの範囲、数多の銃が顔を出している。
銃の種類何ぞ、時代も大きさも関係無い、今此の瞬間、銃口から放たれる閃光の星夜と鉛の彗星は、硝煙の霧を産ませる程に、綺麗な銃の群れだ。
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本編・続
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登場人物の解説
ぺヴェーテ=ラディノ・テヴェリーノ=サンロジネ
(名前→ミドルネーム→名字)
性別
種族
民族 ヴィテリヤ人
能力 黝い火を熾す事
年齢 29歳 (12か月換算:36歳)
出身 ヴィテリヤ王国パルテニオ県サン・ヴェッレ・デル・サンテリオ市
身長 174㎝
体重 ??
誕生日 12月25日
好物 葡萄酒、煙草
外観・・・
濃い茶髪で長さは若干肩に当たって居る位の長さで前髪は左目が僅かに前髪で少し隠れている様な感じ。黝い(外套、ズボン)紳士服を着てフェザー帽を被り、青銅色の瞳をしている。
精神・・・
黝い火・・・ペーテの熾す黝い火は、生活にも戦闘にも使える。粘土で造形するように黝い火を練ったり折ったり捏ねたり出来るがペーテ限定。
馬人と驢馬人の混血・・・馬人と驢馬人は、見た目は似ているが体格や性能は別で在り、速度は馬人、力は驢馬人が強い。男性の驢馬人と女性の馬人の間の子供を騾馬人と言う。速度も其れなりには速く、力も有る、優れた種族だが、生殖の力が無い。今でも騾馬人の生体研究で生殖能力が研究されている。古代の大戦の頃から居る為、意外と歴史の在る種族では在る。
地名から国への下剋上民族・・・元々、ヴィテリヤと言う所は泰西の列強共の遊戯盤上の地名に過ぎなかったが、産業大革命後、急速に統一運動が激化し、列強の影響下の小国や其の連合体等が合併や併合がされ、1573年にはヴィテリヤと言う歴史的な地名は国に成った。此の国で産れた者達は大勢で戦うよりも少数精鋭で戦う事に成れている。其れはかつての統一運動の名残で在り、ヴィテリヤ人のアイデンティティで在る。
無性・・・馬人と驢馬人の混血でも解説したが、騾馬人には生殖能力が無い、若しくは弱い事が多い。其の為、一代種族等の蔑称が存在する。しかし、稀に子供が生まれる者も居る。騾馬人にも一応性別は在るが、男性器・女性器が無い者も一定数は居る
其の例がペーテで在る。
ヴィテリヤ=ファミリーエ・・・ヴィテリヤ人は少数精鋭だと物凄く戦闘に強い。ヴィテリヤ人の起源は元々、少数精鋭で戦う兵団・軍団の移民で在り、自分に関りの在る友達や家族等の団結力・絆が深く、戦闘に成ると其の団結力が勝利への道を築く材料に生るのだ。
能力・・・
黝い火を熾す事と言う能力は、単純に言えば、火を出すだけの能力で火の色が青いみたいな感じです。使用方法として、生活で言えば、料理や冬の凌ぎ切る為。戦闘に言えば敵や建物等を燃やす事が出来る。ただ、此の魔法を使う時は何かしらの道具を使って能力を上手く魅せている。如何いう事だと言うと、単に手から炎を出したり、口から火を出したりする事も良いですが、ペーテの場合、小道具等を使って、手品の様に攻撃をしてくる。例えば、盃に炎を貯めて、其れを飲む様な仕草をしたら、口から炎を吐く等、何かしらの手順の踏んで攻撃に入る事をしている。あくまで、ペーテの戦闘方法で在り、他の炎を使う者達は直ぐに攻撃する者も居るかも知れません。
※
ミュハーン:25歳→31歳
イデナウアー:25歳→31歳
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続