ロヴァノリヤ禽獣旅紀 —広大なる多民族國家の命運、大衆の暗く斃れる先には、何が在るのか— 作:南部 八十一朗
数多の銃達が閃光の星夜と弾丸の彗星が黝く燃え悶える魔物達に降り注がれる。溢れる硝煙は私に取り込まれ、凄い銃声の轟音の狂騒曲が流れている。二分もすれば、銃の弾は切れ私の視線の先には壁もテーブルも転がる骸も全てが歪になって居た。其の時には上半身の銃の群れは煙の中へ眠りに着いた。
「ふぅ...之位なら、流石にな...」
そう安堵?を感じた、其の時
「ミュハ、下がれ!!」
「?!」
魔物の一つが私の目の前まで来て、私を切り殺すかの勢いで鉛色の剣を振り落とそうとして居る。
「..危ねぇ!!」
咄嗟に避ける様に躱した筈だが...
額から斜めに剣は掠り、血が出始める。煙を腹部から鎖骨の方に集中していたせいで顔の方に間に合わなかったか...切られた処が何かスースーする。そんな痛い事では無いな...
「大丈夫か!?ミュハ!?」
「少し掠っただけだ」
「その割には凄く血が出ているぞ!?」
「其処まで酷い傷じゃない、其れに今は此奴等をどう毟ってやろうか、色々な提案が流れて来た」
スースーと冷たさを感じる。だが、其れが逆に高揚感を産み出してくれる。
偽クォデネンツの刃先を魔物達に向ける。舌も歯も力んでいる、武者震いは無いが、震えが鋭い刃の様に貫きに生って居る。
「お前ら、行くぞぉ!!」
「ちょっ待って、ミュハ!!」
「血迷ってんのか!?」
血脈の波が茂ている。魔物の群れへ一気に距離を詰める。
「
剣と銃の連続攻撃、魔物の腕、脚、臓器群、顔、四肢も関係無い。
血飛沫が上がれば、即ち攻撃は通って居るんだ。切り裂いた魔物の體の穴に銃を刺し入れて撃つ。薄い粒の血飛沫の返り血が身体に掛かる、がそんな事はどうでも良い。
此の作業は随分と楽しい。之が精肉屋の作業なのか?良い物では無いか、魔物らの断末魔?唸り?悶え?そんな事は関係無いし、此の黝い炎も私に燃えようが、煙何だから関係無い。
遠くでイデナとペーテを此方を視ている。其れは何処か私に畏怖している様で驚愕に似た引きの顔をしている。此奴らの五臓六腑を解体して売れば、其れなりには売れそうだし、売れなくても、私の非常食に成るだけだし、此処で処理しても何ら、罪は問われないし、一石二鳥以上の価値が有るじゃないか、良かったね。
だから、とっとと私の腸行きか加工商品か食糧に成れよ。
しょうも無い攻撃で一丁前に抵抗して来るが、一対複数で戦いが押されているんだから潔く散れ、裏の皮剥がし掛けて居るんだからさ...
「結局、抵抗しても無駄なのに態々、手間を掛けやがって...」
目の前に転がる、魔物の屍もとい材料。黝い炎も弱まり...あぁ、もうどうでも良い、先に殺したのは此奴等なんだから、正当防衛に成るだろうしな、正当化は何時でも出来た。虐さ...じゃなくて、価値の有る
(取り敢えず、此処に転がってる物は、全部貰うか...返り血も凄いし、一気に変わるか...)
体中の到る処から黙々と煙が出て来る。其れは大きく膨れ上がり、複数の屍を包み込める位には大きく濃霧な煙の曇が棚引いて居る。屍も煙に代わり、私の中へ吸い取られて行く、同時に付いた返り血も煙に成っては私の中へ吸収されて行く。
ふと、床に滴る血の池で自分の目が光って居た。黒とは違う紅い瞳が一瞬だけ光って居た...外套やズボン、顔に着いた雑血も無くなり、新品同様では無いが、其れなりには綺麗には成ったのだろう。
濃霧で棚引く煙も直ぐに私の體に入り、直ぐに煙は晴れた。
其れと同時に私は、イデナとペーテの方へ歩み出した。其れに反して、二人は後ろへ下がる、其れも何処か子供が怯えるかの様に少しの震えを立たせ乍ら、表情は凄く引いて居る?恐怖な表情を浮かべている。
「如何したんだよ...如何して後ろに下がるんだよ?」
そう問いかけても、口が縫われて居るかの様に、何も言葉を話してくれない。
腰を抜かしたのか急に二人共、床に腰を落とす。ペーテが持って居た、黝く燃えるテーブルクロスも全て焼き散り、イデナの持つ軽機関銃も腰を落とした反動で飛んで行ってしまい、二人共無防備な状態だ。
二人共、私がどう言う風に視えているのだろうか。
確かに私の裏の皮の一枚が剝がれ掛けたが、精々一枚目にしか過ぎない。
其れにお前らが私に怯えたら、私の表看板が壊れてしまうだろうが...
其れなら...此処で殺すか?今は都合が良い、誰も密告する奴も居ないし、此処で殺しても、屍は私の腸の寝具で眠りに着くだけだ。精々、二人だ、十分に私の煙に包まれる人数だ、其れなら...
...駄目だ、不味い。
そんな屑で馬鹿な考えは辞めよう、今の考えは過去のミュハーンだけで良い。
今の私には仲間が居る、誰か信頼で出来る者が居る。大丈夫だ、孤独の病菌はもう無いんだ。落ち着け、私にはイデナが居るじゃないか、信用は未だ完全では無いが、決して裏切る様な者じゃ無い。
息を整えよう。深く吸って吐いて、冷静に成ろうか...
其の後、何とか話せるくらいには二人は回復?して居た。何時ものイデナと変わらない、まるでさっき迄の震えが無かったかの様な素振り。ペーテもそうだ。二人共、私を視て居る様で何処か裏側を隠したままで見逃して居るんだ。私も裏側は存在しているんだから、深く突き刺せる程には言えないがね。
でも巫山戯ている様に感じる。
しかし、こうでも無いと私達は本当の顔を表の仮面で隠したまま、此の生活の盤上を置かれている日常から逸脱して、仮面の内側を見て仕舞えば、私達は此の生活も日常も崩れ散ってしまうのだろう。心に思う事等、色々在るが、少なからず私の裏の顔は検閲されるのだろう、
黒胡椒な塵、其れはペーテが燃やした白いテーブルクロスの燃えた塵だ。其れも全部燃え尽きたのだから、塵の量が半端では無いな。鼻が刺激されるぞ、嚏が出るよりも鼻の中が放りつく様な不快感が残響している。
其れはそうとして、私達は食堂を出て、取り敢えず、甲板へ移動する事にした。正当な理由は無いけれど、寂しい廊下も階段も血飛沫と血糊が蕩け散って居る。
まるで掌で絵の具を大きく開き広げる様に雑な藝術が輝き塗られ溢れ描かれて居る。まるで、幼稚な素振りの片仮面を被った深い大人の様で子供の様な譏る無邪気さが出て居る。
此の船内の魔物の知能は、低いのか?其れとも、そう思わして、何か企んでるぐらいの知能と策略でも在るのか、其れは解らない。
雫の様な血の池の絨毯の音、革靴が紅く染まる。床の絨毯は落ち葉の砂利道みたいで、壁や床に染まった紅は季節で言えば、秋くらいの言葉が合ってる気がする。
そうして、秋の路を越えれば、甲板上の木材床の舞踏会平原へ招かれ来た。詳しく言えば、楚々と絢爛の二言葉の景色が拡がって居て、黒い濁る鏡の海と清楚な碧空に絢爛豪華な服装を纏った者共の骸が矢印状の絨毯みたいにバタバタと倒れているのだ。
まるで、命や其の死体諸共、一つの藝術として扱って居る様だ。幾ら人を殺せば、気が済むんだ?魔物達の阿片窟みたいじゃないか、此の船内は。私も少し分け前と言う物を寄越せよ、臓器群は其れなりに金が入るんだからさ。
「此処も手遅れか...」
「何処にも安全な所が無いじゃないか..」
「如何するんだ、逃げる場所何て、他に在るのか?他の場所に逃げる時にも彼奴等に会うかも知れないし...」
「其れに此処が何処で、次の港まで後、何日掛かるかにも影響は在るぞ」
「次は確かバリガルール港だろうな、遠地だから船客は降りないけど、船の燃料補給とかで、恐らく何港かで補給ぐらいはするだろうな、でも後何日で着くかも解らないけどな」
「少なからず、数日の攻防戦が展開されるだろうな...」
「如何するんだ?幾ら銃が在っても、何時かは弾切れに成る、そうなれば私達も殺されるよ...」
「何言ってんだ?...喰われても腸から食い千切って出て来たら良いじゃん」
「..ミュ、ミュハらしいね...」
「...俺もそう思う...」
...如何やら価値観と倫理観の差が激しい様で、何処か強い力に耐えるのに弱い力で弾ける硝子の様だ。乾いた空気が口の中へ入り、間接的に砂の様な味が拡がる。或る意味、火薬や硝煙の様な香りにも似て居る様にも感じる。
海も舩も静かだ。何時も静かや寂しいやら、負に近しい言葉が思い浮かぶが、之は本当に風の声もしないし、息遣いも其処まで深くしない限りに聴こえないし、逆に体内の鼓動や振動の音を感じ取れる程の外部の音の静けさが際立っている。其れは鼓膜でも切れたかの様に。其れが異界、異様な雰囲気を醸し出して居るし、此の船内の生存者は此の3人だけだと晒されて居る様にも感じる。
少しは楽しませてくれるよな?
私も色々と抑え付けている者が泥々と決壊しそうで、困って居るんだよ。特に裏方の無言の干渉に嫌気が刺すし、そろそろ乱期の黎明の様にも感じる。本能は素直だろうが、表側の私と言う盃が溢れる本能と言う酒を飲み干してるから、大丈夫だが、そろそろ、零れる時だ。
今夜は、満月では無い。
だが...少しは紅いのが大胆に降り注ぐ夜も良いだろう?
人間の混血と言えど、少しは狼の血が呻くんだよ。肉食と本能に表側は電撃戦でも仕掛けられた様な物だ。其れ位には不意打ちで乱期と言う本能が赴くままに殺すのが、孤高の狼の宿命って奴だろ?
だからさ...今夜は月何かよりも無数の金平糖の星々で暴れるんだよ。
今はイデナもペーテも危機的状況だろ、少しぐらい喰らい殺しても良いだろ。
そして、運命にして、宣戦布告にして、闘争の戦場に様変わりするかも知れない、夜前の夕焼けが私らを照らす。
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続