ロヴァノリヤ禽獣旅紀 —広大なる多民族國家の命運、大衆の暗く斃れる先には、何が在るのか—   作:南部 八十一朗

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閉幕夜戦と開幕黎明 Ⅷ

さぁ、劇の始まりの火蓋が切られた。

ノヴォークに偽クォデネンツを双方の手に握り、イデナは改造でもした軽機関銃を携え、大きく壮麗な黒い翼を生やし、ペーテは畳んだ襟を伸ばすと首周りから黝い火が溢れるのと同時に黝い外套(コート)の中から絶対外套に入らないのに出て来る細い剣(レイピア)を取り出す、其れも黒く濁ったかの様な鉛色の鉄の細い刃。其処から黝い火が刃先だけを燈す。

 

私は剣に大きく振り、魔物の頭や身体を搗ち割る様に磨かれた刃先を魔物の體の奥へ突き刺す。隙だと思って近づく魔物を銃で脳天辺りを撃つ。そうすれば、反動で頭が思いっ切り後ろへ行く、其の姿が面白い。其れも額から血パラパラと降り落としながら。

 

カキィィンと刃と刃が擦り奏でる甲高い金属の金切り声。

ヴァンヴァンと火薬と硝煙が漂う銃口と雷管の雄叫び。

 

そして、後ろからは、イデナの軽機関銃のババババと言う重厚な銃声と閃光が僅かに視える。其れにペーテの方からは軽快に舞う様な革靴の音と共に風すら切り裂くような剣の音が聞こえる。

 

彼奴等も十分戦えて要るだな。

なら、私も思う存分、闘わないとな、折角の闘いの薔薇舞台が潰えて仕舞うだろ。

そう思うと、剣の握る手、腕から血管がピツピツと膨れる。

「喰らえ!!塵共!!」

 

物凄い勢いと共に風の命を切り裂くかの力で縦に横に大きく振り回す。

その瞬間、バガン!!バシャン!!と言う硝子でも割れた様な音と共に、魔物達の剣を搗ち割った。

 

其の刃物の斬撃の勢いは凄まじく魔物達の剣が割れるのと同時にそのまま、魔物達の胸部辺りを()の形の切り傷蕾が花咲く。演出でもされたかの様に綺麗に倒れる魔物達。毒々しく細い目の様に開いた傷から血が零れる。一瞬にして、見た目が零落した様に感じ取れる。

 

私の吐息が此奴等の鼻を突いたのだろうか、鼻が少し痺れる様にピク突いて居る。

火薬に硝煙に煙草に今までの殺した者達の香水の余りと言う死臭が鼻を突いたか。

さぁ、花咲と蕾は現れた、じゃあ次は枯れと播種だな。

 

ボロボロに成った煙草を床に落として、靴で踏み潰す。

其の瞬間。

 

ギャアァァァァァ!!

 

甲高い、低い断末魔が斃れる魔物達から響く。

播種をした。私の吐息が魔物の體に入って、体の中を巡り、其の吐息の煙は今、無数の剣に化け返ったのだ。

 

魔物達の體の到る処から剣が露出する。串刺し刑にでも処されたかの様にね。

溢れる血、月光や星光に晒され、より赤み掛かる血が濁流の様に魔物の服や甲板に拡がる。口やら瞳孔が空いたまま、吐血やら命乞いの涙を垂らす、斃れた魔物達。

 

もう一回、紫煙を吐くと、剣は煙の様に霧に成って、私の體に戻る。

抜いたからか、より朱は垂れる。オディール役共お疲れ様、もう要らないよ。

人間の様に死に倒れる魔物達の屍を吐息の紫煙が包み込み...

 

背後二人の戦闘の金属音がする中、私の方は片付いた。

二人の援護へ回るか。紫煙は屍を包み、私の體へ還る。之で此奴等は私の腸の中で死体としての余生を過ごす事に成った、食糧として商品として。

「さぁ、二人の方へ周ろうか」

 

海風の嗤いが吹き、夜が更け、黎明の馨りと橙の日色が海の向こう側から顔を出す。夜戦と言う劇は最終章さ、最後の盛り上げの時、壮大で壮麗な演出が幕と顔を出す時!!血管と本能の観衆の朱い声援が聴こえる。白薔薇を紅く染める様に冬色に絡まった偽の純白を本来の色に戻す時、残りの魔物から朱と言う薔薇を咲かせよう。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

黝い火が先端に燈された聖火の松明の様な此の麗しいレイピア。

突く刺すのは、此奴等の生命の首都の心臓!!

円やかな薔薇の花蜜を吹き出す等に可憐で絢爛な斬撃で倒そう!!

俺の此の剣捌きは其処等の雑技団の剣の小物芸でも無ければ、此の美の火が敵を薙ぎ燃やす。燃える刃先を奴等に向ける。

「さぁ、俺の剣捌きに耐えれるか!!」

 

俺は馬人(カヴァッロ・ぺルソネ)よりも遅い、驢馬人(ムーロ・ぺルソネ)よりも力は弱い。でも混血だから、明確な性別が無いのだから、俺と言う存在が生きる(有る)。此の黝い火の様に麗々しい火色でも鉛色に濁った此の突く為の剣も今なら、俺として存在意義の火に成ってくれる。さぁ、行こう!!

 

甲板の床を蹴り上げるかの様に低い姿勢で一気に奴等に近づく。

奴等の鋭い金属の天幕が降り注ぐが、左や右に転がったり、避けたりして天幕の様な金属の攻撃を避ける。

 

風の早まる音、速度の限界点の血管の唸りと怪しい膨れを感じるし、鼓動も激しく鳴って居る様に感じる。今だ!!

「喰らえ!!」

 

レイピアの先端を奴等の體と言う鍵穴に差し込みまくる、黝い火の鍵が鍵穴全体に伝わり、悶え始めている。骨を切る事は出来ないが、肉を切り裂く事は出来る。なら、骨が視えるまで突き切るのみだ!!

 

天幕に斬撃の斬りが私を襲うが、軽快な踊りの様にパッパッと避け、黝い火が先端に燈る聖火松明のレイピアを首元や脚、脇腹、湶の隙間等、刺せ突ける場所を突き通す。紙を切る様に薄い斬撃を食らわせたりする。

 

黝い火が身体の中に入り、内側から爛れる様な痺れと大火傷を喰らう様な苦痛が奴らの表情から映る。黝い火は刺され突かれた場所から色々な所へ遷る。其れも燃やしながら遷る物なのだから、痛みの量は半端じゃない。

 

レイピアの刃に付いた血を振って落とす。

息を整え、倒したのであろう奴等の姿を見る。無我夢中で突いた跡から血が溢れ、内側を燃やされ、低く唸り悶える姿、正に瀕死と言う言葉が相応しい。

「はぁ..はぁ..」

 

闘う事は今まで何度も在った。

でも、こんな激しい戦いは久方振りで身体が驚いてるのか、頭の血管が騒いでる。

帽子を取って、扇いで少し落ち着こう...

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

金色の薬莢が落ちる。銃口からは閃光が何度も耀き、反動の連続が体を襲う。

魔物達の到る処に弾丸の星団的な彗星が襲い掛かる。弾丸は容赦亡く、魔物達の體を平然と貫く。今撃って居る軽機関銃から繰り出される火薬やら硝煙の臭いが鼻を突く中、引き金を押し続ける。

「..弾が切れた...はぁ..」

 

急いで弾無しマガジン外して、新しいマガジンを装填する。

そして、また高速的な閃光と弾丸が飛び交う。

こんな銃を握る手が僅かに震える、其れは怖さや疲弊では無くて、何処か善と言う感情の抑制剤が作用して居る様に感じる。

 

今、射殺して居る魔物にも人と言う人生は在るの?

向こうにも家族と言う概念や存在は在るのだろうか...

之は正義なの?悪事なの?向こうが先に手を掛けたとは言え、私達まで其の純白な掌を紅く染めて仕舞うのか?

 

魔物だから殺す、だなんて、我ら亜人を差別する人間と同じ思考回路をしているだけじゃない。魔法が使えるって事は祖先を辿れば同じで遠い遠い血族かも知れない。

...結局、私も此の殺しの引き金を引いた時点で大衆に跋扈する平等思想やら共産と言う言葉通りの意味を成し遂げて居ないでは無いか...

 

下の者が歴史を越えようと動くと、大きな者に潰される様に私達も、こうやって殺人したから死刑ね。と喉と心臓に長い刃物を刺され殺される。

 

じゃあ、何で魔物は存在して居るのだろう?

だって、此奴等は当たり前の生活を壊すし、食人やら蛮行を犯すし、社会的な地位も私達よりも居ないし、じゃあ存在する意味は在るのか。犯した罪を償う事もしないと思うし、何よりこんな好戦的で私達の社会で適応しようと奮闘して居ると言う事は、自分達は底辺の存在を認めて居るし、魔物特有の力も私らも持ってるし、こんな迷惑しか掛けない此奴等は要らないのでは...?

 

途方も無い長寿な亜人と短命的だけど知恵は在る人間。其れに比べて魔物達は力は在っても、知恵は無いし、亜人達の命の火を蝋燭毎消すし、存在意義は在るのか?魔力しか取り柄無いけど、其の魔力を持って居て、一定の理性が在るのは我々、魔法の使える亜人や人間では...?

 

そんな思考の血が頭から下へ垂れ伝わると、今行って居る事への正当性が芽生えて仕舞った。更に引き金を引く指が奥の方へ強く押す。

 

銃口からの火薬と硝煙の香りが鼻を突いて来る。

だが、其れは何処か甘く、言葉では表せにくいが、こう心に支えが建って不安や緊張や迷いと言う物が無くなるみたいな感じで此の黄金の弾丸一発一発が放たれる時のババババと言う轟音と同時に薬莢が飛び出る、其の工程に私は善い事をしているんだ。と言う気持ちが溢れて来る。

 

気付けば、魔物達の脈々とした動きも痙攣したかの様な僅かな動き一粍も無い。

銃口から多量の濃霧の硝煙に刺激強い火薬の馨り、抗いの動きも亡い。

ただただ、血溜りが拡がるだけの時間を感じる、そして咄嗟に自分の掌を見つめる。

薄朱桃色の暖色寄りの手色。細かく複雑な手相が広がって居るだけだ。

 

しかし、其の掌の一際、朱い処。

其処から小さな小さな朱い人型の何かが芽生える様に感じた。

其れは痛み悶えて助けを求めて居る様な誰か達の姿、一種の罪悪の金縛りの様だ。

(其れでも今はこんな物は押し殺し潰して...)

 

もう片方の手で力一杯、覆い潰す様にもう一方に掌で潰した。

苺のジャムの様に何か少しベタ付く朱い汁が掌の隙間を縫って、床に垂れる。

同時に自分の中に縛られて居た何かが全身を巡り、心を染める様な...そんな独特な感覚が染み渡った。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

二人の援護を周ろうかなと思ったが、意外と対処出来てるじゃん。

(あーあ、一先ず、此の楽しみは此処までか...)

 

陽の黎明が果て亡き濁る碧の海から出て来る。

朱い光が甲板を差し込み始め、同時に此の夜戦と言う劇は閉幕し、新たに明日と言う月日と此の朱い黎明による新劇が開幕するのだ。

「眩しい...」

 

煙草が入る紙箱と火点け機(ライター)外套(コート)(ポッケ)から取り、早々に一服の準備は出来た。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

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