ロヴァノリヤ禽獣旅紀 —広大なる多民族國家の命運、大衆の暗く斃れる先には、何が在るのか— 作:南部 八十一朗
用事で薦さんも帰って仕舞い、二人に成った。其の矢先、私達は或る山を登って居る。何かイデナの貰った手紙では此の山に一族が居るみたいな事を言って居た。樹の実や青葉の匂いが幽かに感じる。枯草色の路を行く、枯れ落ちた若葛の跡欠片の血池がペシャリと零れて居た。
其れは誰かが来たと言う証明にも成り得た。
若葛が垂れる路を進めば、雑木林の壁幕の小径を隙間縫う様に通り、浅瀬で綺麗な小河を浮く砂利の諸島の足場で飛び越え、看板一つも無い何処かへの路を辿る。
数十分も時間の針が刻まれたのだろうか。
畝々とした山道を歩いて、山頂付近、石垣が並んで居る。之も城なのだろうか、苔生し皴生えた石段を登れば、黄金の実を産む植物の叢れと枯草の路、何も無い叢の城が築かれて居るだけだった。之も城跡か、でも山上なのも相まって、凄く見晴らしが良いし、此の苔生した石垣も雰囲気が出て居て、より一層歴史の重さを知れる。
枯草な実を稔らして居る叢、樹一つも生えて居ない、悲しい石垣の上。だが、そんな悲劇も直ぐに終わった。向こう側の方面の石垣の方へ行けば、解った。向こう側、山の中心部だろうか、凄く窪んで居て、其処に建物がズラリと並んで居る。
「すげぇな、あれがイデナの一族の所か?こんな山奥に栄えた街何か有るのか、凄く面白いな」
「未だ、私の一族の棲む所は解らないよ、でも取り敢えず、行って見ないと解らない...」
「じゃあ、とっと行こう、見た通り、其処まで遠くは無さそうだろ?だからな...」
「おい、待て、私に運んで欲しいだけだろ、厭に決まってるだろ!!」
「何だと!?私くらい、其の大きな翼で行けるだろ!?」
「ミュハは十分重いし、両手繋ぎながら、飛ぶんだろ?何か恥ずかしくて無理に決まってる!!」
「恥何か捨てろ!!さっきの山道もそうだが、樹々が顔に当たりまくって苦労するんだよ!!」
「下り路だし、潜って行けるでしょ!!」
「私の腰がどんだけ悪いか知ってるか!?」
「知らねぇよ!!」
「此の歳でギックリ腰、何度も経験する程、腰が可笑しいんだぞ、凄いだろ!!」
「誇らしく言うな!!」
結局、建物群寸前まで掴まれて飛ぶ事に成った。綺麗な山景が広がって、青天の光りが心地よく照って居る。颪の源流の柔風がそよりと吹き靡く。
「いや~凄く良い景色だな..って何でそんなに踏ん張る様な力の入れ方をして居るの?」
「ミュハ..普通に重い、拷問」
「はい、鍛えろ鍛えろ!!」
「此のド畜生駄犬野郎が...」
「犬じゃ無ねぇ、狼だ、間違えると次の晩御飯が焼き鳥にするぞ」
「じゃあ、火の鳥に成る」
「次元を超えて来るな」
飛び散るイデナの黒く生暖かい羽、翼が風切り、ピューピューと音が鳴る。徐々に近づく、街波。異端な狼が鳥に摘まれて珍妙な光景に成って居る。バサバサと動く大きな黒い翼が赴く儘に空を舞う。
数分もすれば、異端二人は地の元に竚ん出る。
若さが途絶えた三十路超えの二人、若さの身体では無いので、腰に来る物だ。イデナが腰を痛めたので、歩きに成った。やっぱ、若いって良いよな?お前等、亜人は人間の倍も生きる癖に直ぐに身体を痛める、湿布を寄越せ。
「お前、重過ぎ、腰から擦れた可笑しい音鳴ってるんだけど、如何してくれるの?」
「まぁ、赦して、自分が重いだ何て、思って無かったからさ」
「此奴...凄く腹立つ、此の鉄塔野郎!!」
「其れは悪口なのか?」
「此の駄犬野郎!!」
「犬じゃ無い」
「此の肺黒野郎!!」
「喫煙してても、黒い肺は大丈夫だから(?)」
「此の...」
「ネタ無さ過ぎだろ」
「くそ、こんな頭の中、煙草・酒しか無さそうな奴に負けるとは...」
「お前の思う私、極端過ぎるだろ」
「実際、こんな物でしょ」
「確かに煙草と酒は好きだけど、他には有るは、色々と好きな物、得意な事とか、巨体も其の中に入るだろ!!良い加減にしろ!!」
「いやいや、そう言う物だよ?」
柔らかく腰を擦りながら、山道を歩く。
カサカサと鳴る土道の音、冬に消え逝った落ち葉の残骸も踏まれ泣いて居る。
「本当に此処で合ってるのか?」
「其の筈だよ...」
「こんな辺鄙な山に棲むだ何て、面白い奴だな」
「其れ褒めてる?」
「興味が湧いてる」
「判定外か...」
「でも、此処等辺は山が多くて高低差が激しいな、歩くのにも一苦労する」
「そうか」
「お前は翼有るから飛べるから良いだろ、無視出来るじゃん」
「そうだった」
「腑抜けな処が存分に目立って居るぞ」
「見るんじゃ無い、変態」
「自分から出してる癖に何をほざいて居るんだ」
大きな足跡が付く中、下り山道も緩やかに成って来た。大きな窪みの中に何が在るのだろう。建物街とは言え、無人跡かも知れないし、運試しみたいだ。山風薫る招きに誘われ、建物街に辿り着いた。
「此処がイデナの母の一族の住む処か?中々に穏やかな場所だな、飛べるからこんな辺鄙な処に街を創ったのかな?」
「そんなの判ら無い、でも此処が一族の土地なのか、確認して見ないと...」
「んじゃまぁ、さっさと行こう」
「ちょっと先に行くな、こう言う処って何か仕掛けでも在るだろ?」
「まさか、こんな入口に罠でも有るとでも?」
土道を過ぎ、大きな建物街の入口に相応しいのかは不明だが、素朴な大門が段々と近づいて来る、其の瞬間。
バサッ―――!!
「「......?」」
「之、落とし穴だよね?」
「そうだな」
「な何で普通に浮いてるの?」
「多分、時差」
「そんな訳有るか」
「正確には、今の私は煙だから、落ち無いんだよ」
「そうなのか」
「未だ在るかも知らないから、気を付けろよ」
「あぁ...」
落ち葉の散らばる土道に扮した巧妙な罠が仕掛けられて居た。然し、コメディの一描写の様な浮くと言う変な光景が起きて居る。
イデナも慎重に土道を踏み入れるが、一向に落とし穴の罠は無いのか、落ち無い。もしかして、之、単体?嘘だろ、こう言う罠って複数だからこそ、効果が有るんじゃ無いか?
「本当に落とし穴一つなの、嘘じゃ無いのか?」
「罠一つ有って、発動しても何も無いって何かの冗談?」
「そんな訳無いだろ、紛れも無い事実だ」
「面白い一幕が台無しで終わったね」
「私に配慮しない奴が悪い」
「めちゃくちゃ自己中心的じゃん」
「後、此の穴の中、鋭い針みたいなのが光ってる」
「危ない」
その瞬間に背後から来る大矢を人差しと中指で銜え止める。
背後から誰かの気配がする。通々しい風が背後から吹く中にただ一つ、気配の重石を感じる。指に銜えられた大矢を見る、鋭い殺意の愛情籠った光沢の有る鋼の矢。
「之が入場特典か?」
「そんな訳無いだろ!!」
「う~ん、じゃあ之は何だろうな?」
「......」
「如何した?」
「ミュハの背後に二桁以下の敵、私の背後にも二桁以下の敵、曇に紛れて翼人の敵かも知れない者が大体、20以上」
「前後も上も敵って事か」
「之は降伏した方が良い奴だ、下手に刺激したら不味い奴、マジで」
「...嫌だね、其れだと、私の
「
「あぁぁ?そうさ、私は馬鹿だ、だから抗戦を選ぶ」
「馬鹿野郎!!」
「何とでも言え、安心はしろ、お前への攻撃は防いでやるからさ」
「そう言う事じゃない!!穏便に解決した方が私達も軽い刑で終わるかも知れないじゃん、何で此処で抗戦を選ぶんだよ!?」
「イデナには解らないと思うが、気配が鋭い、虎視眈々と獲物を狙う様な視線と気配、そんな奴に穏便な解決が出来る程の知恵が有るのか?不死鳥みたいに蘇生出来ないんだ、今だって」
また投げられた球を取るかの様に軽々と飛ぶ矢を取る。
風を切り裂く音、鋭利な殺しの鉄、和平や交渉の可能性を踏み潰す証明材料だ。
「ほら、もう私達は敵に成ったんだ」
「...」
「安心しろ、こんぐらい
「....は?」
殺すのは、イデナの一族だった時にかなり不味い状況に成る。
勇者には成れないが、今なら、真偽不明な私の本性をお前らの食卓に振る舞う事が、
出来るかも知れないな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
続