ロヴァノリヤ禽獣旅紀 —広大なる多民族國家の命運、大衆の暗く斃れる先には、何が在るのか— 作:南部 八十一朗
剣も銃も出して居ない、零の状態。
殺したら不味いかも知れないだろ?煙草の箱も出さずに、無防備で隙だらけで、大穴が空いて居るくらい、直ぐに攻撃出来る様な状態を晒して居る。
「武器は出すな、手ぶらの状態を見せろ、で眼を深く瞑れ」
「は?何で?」
「良いから早く、さも無いと眼が死ぬぞ」
「...!?」
皺が出来る位に深々と瞑るイデナ、片手を大きく天に上げる。
掌から煙が出ると、すぐさま、銃に変わる。そして、勢い良く引き金を引いた。
バン!!
銃声と硝煙がタラタラと溢れ叫び出る。
直ぐに腕を降ろし、少し怠けた様な姿勢で其の場を佇む。銃声が鳴り、腕を下した、其の4秒の刹那が過ぎると。
叢や曇の隠れや正面の大門の隙間からダラリと出血する様に出て来る、翼人や私と同じ様な獣人みたいな奴が盾と剣を携えたり、少し年季の有る火縄銃や旧式のライフル等を構える奴等、50以上は居るだろうか、丁度良い位だ。
「よし、準備は出来た、イデナは未だ瞑っとけよ!!」
「あ、あぁ...(何をする気なんだ...?)」
「...今だ!!」
其の瞬間、私の體全身に煙の血が回り、天に輝く陽の白光が雷の様に私に一気に当たる。そして、其の光りを倍返しで反射する様に全方位に光が思いっ切り撒き散らす。真面に目を大きく開けて居るのならば、多分目が焼けるか、直ぐに重軽症は負うだろな、可哀そうに宣戦布告して来た相手を間違えたね。
光りの豪雨は約5秒で終わった。
終わった瞬間、人の雨と路に気絶やか細く悶える奴が溢れる。樹の枝に上手く引っ掛かる奴や目の前に生える草を握る奇行芸をして居る奴も居る。之が地獄絵図と言う奴だろうな。
「もう眼は開けても良いよ」
「...何だ之は...」
「敵なんだろ?安心しろ、全員気絶してるだけだ」
「な、何をしたの?」
「な~に、眼を少し刺激しただけだ、時間が経てば、直ぐに正常に成る、さっ、早く行こう」
「え、でも本当に大丈夫だよね...?」
「...さっさと行こう、ちょっとな、力加減が収まら無く成るからさ」
「あぁぁ...行こう行こう」
少し強く言ってしまったかな。
手の甲側の青血管が勇々と脈と膨張を興して居る。
ちょっと白煙不足だな、後で煙草吸わないと落ち着きの酒が過不足してる。
灰皿用意して貰わないとな...
ガチャグチャと土を踏み進みながら、建物街を見渡す。
建物自体は木造だが、本当に見慣れない建物の容をして居て、凄く面白い。
気配はするが、殆どが建物の中から感じる避難でもして居るのだろうか、良かったな、命拾いして、イデナが居なかったら、既に呼吸出来ないかも知れなかったね。
駄目だね、調子が変な状態だな、猟奇の味がする。
「...」
「...」
会話等無い儘に、建物街を徘徊する。
其の中で、獣道な粗々しい山道を進む、散ばり歪んだ石煉瓦の床みたいな山道。
静寂が弾き渡る中、急勾配で畝々しい山道を歩く、只ならぬ雑な気配が風吹く様に私達に襲う中で、ポツンと孤独に佇む一つの建物が露に成る。
歪んだ様に感じる空気感、目の前に有る建物から感じる。
此の建物の奥、何かが有る様に感じる。窪み先に更に大きな窪みが有る様なそんな感じだ。空を見れば、不可解に雲が自我を現わす様に一箇所に集中して居る。此の建物の裏側だ。色々と可笑しく感じる、不快感だろうか、好奇心だろうか。
「此処には何も無いな」
「そうだね、既に使い古された建物っぽいね」
「何か使えそうな道具とか無いかな...」
想像以上に瓦礫が蔓延って居る。
壊れかけの道具も無く、木屑や折れた板の数々。
穴開いた床に散らばる家具の部品や一部。清潔とは程遠いボロボロの空き家の中で在った。
「彼処の庭の柵、壊れて穴開いてるけど、何か路みたいな物が無いか?」
「確かに綺麗に整った路が有るね、もしかしたら、何処かへ続く路なのかも」
「よし行ってみよう」
広い庭に不自然と言うか庭を囲う柵に幾つかの穴が開いて居るが、其の中で一つ穴の中で路が続いて居る処が在った。潜って柵穴を通ると、本当に路が蜿蜒と続いて居た。
好奇心と漫ろが背筋を擽って来る感じがした。
其の二心に乗じて二人で其の路を辿る事にした。戻っても、又、瞳を焼かす反射光を出すだけだ。
其れから...
霧籠る山道を駆ける。
燦陽も頬掠める微風の様に微弱と成り、目の前も近視みたいな視界に成って居る。
「迷うなよ、私捜さないぞ」
「迷いそうなのは、ミュハの方でしょ」
「...あっそうだ」
「んっ?如何した?」
「ちょっと待てよ」
両掌を前に大きく翳すと、其の瞬間、両掌に叢がる様に其の深く濃い霧は刻々と張り込んで来る。埃を払って窓へ出す様に、掌の窓へ埃霧が入り込んで来る。何の感覚も無く淡々と、そして痛みや痒みも無く、冷酷な掌の悪魔が、煙々の楽園を亡ぼそうと吸う。
流石に山から溢れ出る濃霧は完全には吸え切れないが。
「結構、晴れただろ?之で何とか、先が見えるんじゃないか?」
「そうだな...って見て!!凄い景色!!」
「之は流石に凄いな、何だ之、大きな窪みに大きな街が出来て居るのか?別世界みたいな景色だな、此処にイデナの母の一族が居るのかも知れないな、こんな壮大な処に居なかったら、私、流石にな...」
「きっと居る、筈」
「まぁ、とっとと行こう、此処で話しても時間の無駄だ」
畦り下り道、低い叢が生える中を歩く。
遠目で見ても、星夜の星々の様に点々と建物が浮かんで居る。遠くで儚く薄く見える家々が陽炎の様に畝々と廻って居る。
「之でお前も或る意味、実家に還れるな、良かったな、めでたしめでたし...結局、私は何の為に此処まで、旅をして来たんだろうな」
「...」
「考えて見ろよ、何ら血縁関係も無い奴の血族の祖国まで行こう!!だなんて普通思うか?」
「...」
「革命で拠り所が喪ったと言えど、こんな遠地まで来たんだから、其れに似合った価値位、元は取りたい」
「私との旅だと、元は取れないの?」
「そう言う事じゃ無い、私は其の國の見た事の無い物に触れたいんだ」
「此の光景は如何なの?ロヴァノとは違う風景では有るでしょ?見た事の無い物に当て嵌まるんじゃ無いの?此処までこうして文句云々零しながらも来てるんだから、天邪鬼にでも成りたいの?」
「其のアマノジャクと言う奴は知らないが、そりゃ、此処まで来たんだから、思う存分、文句と言い訳が
「で、私との旅は?」
「あ?そんな物、良いに決まってるだろ、何、価値低いとか思って居るのか?」
「そ、そうだよね」
「そんな訳無いよね」
「巫山戯けんな」
「何時も通りのイデナだな」
そうこうして居る内に、此の見た事の無い奇怪な街が刻々と眼の前に近づいて来る。其れは、此の國文化の建物の群が広がって居る。綺麗な空が誘う儘に白曇一つも無い青天が広がって、緑の飆が頬をやわりと触れ、果ての有る路が淡々と綴られて居る。
癖に染み付いた歩き煙草をして居る、お前等は真似するなよ、咽そうだからな。
街へ着く前に、小さな短い林の天幕を渡った。
跨ぐ事も必要無い、小川渡る。遠くに誰かが居る、真面な奴では無さそうだ。そうか、あれが奇者、此処で言う魔物みたいな言葉だ。私もイデナも該当者だから、気軽には言え無い言葉では有る。差別用語らしいし、亜人で良いか、お前等から見れば、人間の容をした何か何だからな。
「此処は一種の理想郷なのかも知れないね」
「理想郷?」
「此処は閑静で長閑な所、曇も陽も銃弾の様に鋭く物を貫く事も無いし、淡々と流れる水面に映るのは、緑の樹々だけだ、小賢しい匪賊も苛立たしい
「其れって、今まで通用して来た常識や価値観が此処では全く違うって意味にも成るだろ、もし、此処に一族が居て、此処で住まうと成ったら、此処での常識が染まる迄、かなり苦労するだろ」
「でも、其の常識がどれ程、違うのかも解らない状況で言っても解らないじゃない、取り敢えず、行って見よう」
林を抜ければ、大きな門が佇んで居た。
其れも歓迎らしき風を大きく開いた門の中からヒューヒューと吹かしながら、私達を潜らそうと笑みをして居た。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
続