ロヴァノリヤ禽獣旅紀 —広大なる多民族國家の命運、大衆の暗く斃れる先には、何が在るのか— 作:南部 八十一朗
榮と別れ、屋敷に戻った後も、ずっと、私は何かに囚われて居た。
此の耳と尾は何の為に有る。如何して、私は殺しをしたんだ?
私の存在意義は何なんだ?親も誰も、私の事を褒めず、逆に暴力を振るって来るばかり、そんな奴に自由は必要なのか?私のやって居る事は、民衆には称賛の声が上がって居る。殺しは一般常識だと、犯罪と分類されるが、そんな事、あくまで、法と言う者が平等に機能して居る國だけだ。権力者が好き勝手に色々と改竄する國の中で平等何か、其処には存在しない。
じゃあ、殺しは良い事なのか?
私のして来た事は正義に反し、悪と言う事に属すのか?
襤褸紙一枚で契約が確定する様な世界で、簡単に民族も文化も粛正と言う大義名分で虐殺される世界で、私の行いは国家に反する反逆なのか?殺しは駄目な事なのか?其れでも其れを称賛する連中が居ると言う事は実質的に、殺しを許可して居るのと、同然では無いか?
雷が直撃する様な頭痛。
血管が悲鳴を上げる様に膨らむ感覚、孤独の風が私に当たり吹く。
其れが嘲笑的な嗤い様に感じる、まるで無数の民衆に笑われ、罵倒される、死刑直前の国王の様な感覚。凍結した大河に潜り込む様な危機感と孤高感を大いに感じる。人気は感じても、私だけが避けられて居る様な感じ。
一見の匙加減で産れた偏見だけで、総合評価する皆。
強いとか金持ちとか、都合が良くて、金蔓に成りそうな奴を見つける捕食者に成った世の中、新聞一つで悪役は決まり、金が零れ、音が立つのと同時に、硝煙の揺り籠に誑かされた鉛の弾だけが、贋物の悪役を粛清する。証拠も虚像で、言葉と金だけで、着せ替え人形の様に立場も変わる世の中。
大人も子供、種族も文化も外見も違うだけで、証拠も無い偏見だけを創って、平和と言う容易な言葉だけを用意して争う。そんな矛盾と理不尽が溢れた世界に残る格言も偉人達は、厳選された出世街道の元で、才能と言う高級品を嗜んで繕う。
貧民出身でも、金と権力を持てば、誰しも、豹変して仕舞う。
其れが過度に変動して、今日、泥沼に化した戦場と飢餓の派手な舞踏会が開かれるのは、祖国。利益と結果に媚びた愚者が、過程を飛ばして、結末を叶えようと、疲弊と言う言葉も知らない儘、日々が過ぎて行く。
個人よりも集団に染まって仕舞った世界で、一人の言葉で世界も人も動く事は稀有な事に過ぎないのかも知れない。命に価値を付ける様な世界が、今も広がって居るのだから、私は其れに免れる様に、犯罪も普通に冒して、自由と言う名の仮初を掴んで居るのかも。
之を訳して陰謀論と言うのかも知れないな。
真実も偽りも全て、陰謀論と言う称号を持って居るのだ。
もう疲れた。
何かしたいと言う願望も潰えた。
絶望も希望も無い。仮初の契約で成り立った相棒も、血族も居ない。
心も身体も居場所も無い儘、負った精神の傷を誰が癒してくれるのだ?聖女も神父も宗教も信用して居ない私に誰が回復と看護と世話をしてくれるのだ。何もかもが信用出来無く成って来た。この世の中は弱肉強食、糸も簡単に裏切りは起こり、疑心暗鬼の世間の中、信用は自身の情報公開に成って仕舞った。簡単に口を緩める事が出来ない無情な世界。私は何がしたいのだろう。自分の彩が規制されて、偽物の彩で自分の作って居る、此の世の中で、私は一体、何の存在証明をして居るのだろうか。
畳みに大きく寝そべって、天井を見渡しても、誰も助言はしてくれ無い。
ただの風が吹き、孤独だけが其処には居座って居る。誰もが、家族の様な心の巣を持って居る訳では無い。イデナも私も、誰も之も、真の家族には成れない。
もう、私は此処で何かする事は無い。
もう、潔く、祖国に帰って、孤独と書いて、私と読む人生を送ろうでは無いか。
此処に居たって、私は何時までも荷物と概念に過ぎないのだ。
食事も思う通りに喉を通らなかったが、時間が過ぎて、何とか食べ切った。
儀が心配そうに私を見るが、其れを無視する様に、早々に私は部屋に戻った。
風呂も何も感じ取れず、最後の湯番で、お湯に沈むだけで、口も開いた儘、何もかも、刺激と言う物に感じない。
風呂上りも何も感じ取れない。
退屈と書いても、其の退屈にも段階が有って、其の退屈が、深く刺さる大矢の様な重傷に感じる。虚ろで憂鬱な瞳、楽しいと言う事が凄く高嶺の花な存在に成った。何も奏でられて居ない静寂な部屋の帳に遮られて、何もかも、可笑しく感じて仕舞う。演劇の中に潜む、主役を妬む脇役の復讐劇。違う外観で簡単に殺しの正当化が出来て仕舞う事に疑問が有った。私の様な混合の存在は一体何の為に産まれたのだろうか。本音を隠して、表側を演じたのは幾度と無くして来た事だ。
誰が幸福を得て、誰が不幸を得るかも知らない儘、私達は大人に成って仕舞った。
容易に信頼出来た人物も皆、時代の光景が様変わりする様に、性格も外観も変化して仕舞った。狂気と猟奇と言う言葉の通り、私は精神も外観も可笑しい人物なのかも知れない。其れでも、其の朱き瞳に映る私は何者だ?
曖昧に化した魔法と言う名の呪いに掛けられて、私は裏方と成り、虚像のミュハーンを翳から見て来た。あれは私の振りをした贋物に過ぎなくて、其れで居て、翻訳者と言う上位存在を呼び出して来た。私は世界の理を一部だけ知って仕舞ったのかも知れない。知らない筈の劇の内容に役者の台詞を知った儘、知らない観客を演じて、視ている様な気持ちに成って仕舞う。
何がどうとか、具体的な感想も気分も曖昧な儘、私はこうして秒針も日付も融ける様な生活を送って居るのだろうか。窓際から微笑む星彩、誰かを差し置いて、一番の役者に成る奴が嫌いだった。誰もが、平等で戦争なんか存在しない好きと言う概念に染まった世界に暮らしたかった。理屈も不明な言葉で簡単に戦争が始まって仕舞う、此の世界で私は何が出来る。歴史は何時までも大勢の栄光だけに勲章を上げない。齢は関係無く、瓦礫と弾丸で妊婦も殺され、同意も無い不幸だけが其処には流行病の様に蔓延して居た。
だから、夢を見る様にお前等の世界を羨望した。
でも、其れが理想郷でも桃源郷でも無かった。私の様な亜人が居ないだけで、人間達が醜い戦争だけを器にして、星を彫刻刀で削るだけの世界だった。神話に出て来る様な平和な國は、本当に天壌だった。命を手に掛けても、戦争の前では、悲劇が矮小化される。被害者の声は一部分に訳され、教科書の片隅に書かされる。絵本や新聞で被害者の声を書いても、本当の言葉を知らないし、此の世界に平和と言う言葉は存在しないし、正義と言う言葉は悪役の使う言葉に成り下がった。
如何したら、平和を掴める?
私の犯した罪を滅ぼす事何か、如何でも良い。如何して、命に価値を付けて仕舞う。
私は一体、何の為に生まれて、何をする為に、此処迄来たのだ?
一つの人生は儚いと言いながら、劣等と称したレッテルの足枷を付けた命を滅ぼす奴に私はそう言う奴なのか?幼少期の綺麗な服装を纏った上位階級の奴等が初々しい顔付きで学校へ行ってる処を見て、児童労働なんざ、一般常識だった時代で、私は羨望に囚われた。
今は如何だ。
螺旋階段と迷宮の融合に囚われて仕舞ったでは無いか。
殺したと言う記録だけが辞書の様に山積みで、知らない間に私は殺した骸の厳選の玉座に居座って居た。
「私は、何なのだろう」
家族も虐待の復讐で殺して、金と紙幣の束で殴って来た富農も同族も殺して来た。
露見に怯えて、煙の様に姿も存在も消して、真実から逃げて来た。罪滅ぼしも意味の無い儘、私は積もり積もった殺の朱雪が積もって往くだけ。
人間から獣人と言われ、獣人から人間と言われる。
私は何者なのだろうか。民族同和、全族平和、民族尊重、民族浄化、民族自決、種族和平。差別を語って置いて、今更に相手の靴を舐める様な政府や種族の対応に反吐が出た。ずっと心の中は辛いだけだった。誰も獣半人を一つの存在にしてくれ無い。握る拳から血が出る程に怒りと悲しみだけが情け無く、其処には残って居た。
机の上、 両掌を置いて俯く。
嗚咽と同時に、ポタッポタッと小さく少量の澄んだ泣の唾液だけが毀れる。
夢は平和の味を知りたい。でも、誰もが、平和に背を向け、正義の錦旗だけ、掲げて、平和を創ろうとしない。しょうも無い歴史の解釈の違いで争いを産み、本当の意味も知る由も無い儘、種族同士で争い、国家で死者を漏らす。
私は弱い。
糸も簡単に他者を手に掛けて、両手の大きな白い掌には大きな異種族の生首の葡萄の樹だけが聳えて居るのだ。歴史に名を遺す事何か如何でも良い。ただ、両親に愛を得て、学校と言う処に行って、教育を受けて、友達と違い認め合って、仲良くして、苦労に悩みながらも誠心誠意生きたかった。もう、何が正義で悪で、罪で罰で、幸福で不幸なのか...
私もお前等も解らなく成って仕舞った。
激しく吐く様な咳が口は放たれる。
其の瞬間に何かが背筋に雷が放たれた。
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続